行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

1 合同討伐

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今回の依頼は他のパーティーと合同の討伐、3日間。

北西の山の土砂崩れで発見された洞窟から多数の中型魔獣が出て来て暴れているのでそれの討伐だ。数を減らせば大人しくなるらしい。

洞窟から出て来た中型魔獣はなるほど、洞窟と言うか地中が似つかわしいモグラのような姿をしていた。サイズはヒグマ。これが思いのほか俊敏で波状攻撃を仕掛けて来るから少し苦戦している。

ティスの水弾と俺のやじり型石つぶてで体力を削って動きが鈍くなった所でストゥや他の剣士達が全員で飛びかかって止めを刺す。俺の魔術で向こうのパーティーの弓使いの人のやじりの鋭さを上げて貫通力をUPさせる。貫通力をUPしたこの弓の攻撃は2体ほど急所まで届いて即死させたので向こうのパーティーの人がびっくりしていた。堅い野菜を切るとき、包丁を強化してたのが役に立った。

足場の悪い洞窟の地面を玄武を助けた時の要領で平にならし、ある程度の広さの足場の良い狩り場を作った。壁の凸凹は前衛が立体的に動くのに都合が良いからそのままだ。

7人の討伐隊で1日目は21体の魔獣を仕留めた。
向こうのパーティーはリーダーの弓使いアルクスさんが上級で、剣士3人が中級。上級ってやっぱり少ないんだ。

暗くて足場の悪い場所での戦いでみんな軽い怪我をしている。爪に毒がある個体もいたようで治癒と解毒をした。

解体は任せて調理担当の剣士ファケレさんとベースへ行く。火をおこし、ベースの周りを歩きながらファケレさんに教えてもらって野草を採集する。野草と言えば天ぷら!ヒグマモグラ(俺命名)の脂肪は使えるかな?

ヒグマモグラの脂肪はほぼ無臭だった。地中で獲物を探すのに嗅覚を使っているため、自分の匂いが強いと邪魔になるのではないか、とタートリクスさんが言った。

肉は淡白で硬い…ミンチにして香草と岩塩で味付けしたミートボールにした。匂いで獲物を捕る敵に対して香草はどうなんだろう?と思ったけど美味い方が良いから、とのリクエストだ。問題が出たらそれから対処すれば良いって。
野草の天ぷらと木の芽と干し魚のスープ、パン。

近くに生えてた香草がニンニクっぽくてミートボールがすごく美味しい!かなり作ったのにあっという間になくなった。みんな感動している。この香草はキトと言うらしい。

アルクスさんのパーティーはみんな料理が苦手でファケレさんがいちばんマシ、なんだとか。でも基本塩味ばかりなので長期の依頼が受けられない、ってパーティーとしてどうなの?
え?冒険者なんてそんなもの?

「こんなに有能で可愛い治癒術師がうちにもいてくれたら!!」

と、スカウトと言うか懇願と言うか、とにかくパーティーに誘われたけど当然断った。
あれ?俺もち肌が凶器なだけで容姿は普通っだたはずなのに可愛いって連呼されてる。なんで?

「前は普通に可愛い感じでしたけどきれいになりましたよ?」
「今はエロ可愛いな。」

テントに入って聞いたらこんな答えが返って来た。それって2人に抱かれるようになったから?

……なにそれ、恥ずかしいんですけど!!

「タケルを家にしまっておきたい…」

ティスがしまっちゃうおじさ…お兄さんになろうとしている。せっかく楽しい異世界生活なのに家にばかりいるのは嫌です。抱きしめられて頬ずりされてキスされて……

「キスが深い!!」

蕩けそうになる理性を総動員して押しのけると後ろから引倒されてストゥにも深いキスをされた。断ろうとするのにいつの間にか服を脱がされて身体中いやらしく可愛がられてた。

「あっ、あっ、あっ…、ふぅんっ」

しっかり用意されていた香油で解される。

「今日は1回だけで我慢するから、な?」

普段から我慢を強いているのでそう言われると絆されてしまう。

「わかっ… ふぅっ、んん…っ!!」

身体はだいぶ馴れて来たのですぐに解れ、ティスに入れられてストゥに奉仕しながらそれほどかからずに絶頂へ駆け上る。俺にタイミングを合わせてくれて3人で一緒に達する幸福感に酔いしれる。…タイミング合わせられるの、すごいと思う。


**********************


翌朝、朝食を作っていたら寝ぼけながら起きて来たティスを見てアルクスさんとタートリクスさんが顔を赤くして目をそらした。ティスの寝起きは色っぽいもんね!気持は良~く分かります。

ストゥに指導して欲しい、とファケレさんとパティエンスさんが朝食前の軽い手合わせをして戻って来た。

「ティス、目ぇ覚ませよ。」

呆れたような声を出すストゥに覚めてますよ、と返事をしているけど反応が微妙。

「いつもより寝ぼけてる?」

俺がそう聞くとストゥが昨日の戦闘の、精神力の消耗だろうと言う。狭い洞窟の中で仲間に当てないよう集中力を持続させるのは大規模討伐より疲れるらしい。…大人しく寝た方が良かったんじゃないかと思うんだけど。

メシ食えば起きるだろうと言う事で朝食です。
堅い肉を一晩じっくりとろ火で煮込んだシチューとパンと野草のおひたし。スープは無しで食後にお茶を淹れる。お昼用にローストビーフっぽい物を作って可能な限り薄くスライスしてサンドイッチにする。シチューも残るかな?

大鍋いっぱいのシチュー…残らなかった。朝なのに。
まぁ、良い。あとで簡単なスープを作ろう。食事を終えたティスがいつものかっこいいお兄さんに戻ってた。

討伐に出かける前にアルクスさんのやじりの確認。こんな強化の方法があったんだ、ってタートリクスさんに感心された。ただし、タートリクスさんは地の魔術師でもあるんだけど準備もなしにやじりに金属を付着させて鋭さと強度を上げるなんて無理だそうだ。普通はできないって。

火の魔術でも切れ味は上がるけどこっちは手が離れるとダメなので遠距離武器には使えない。

3時間ほどで18体討伐、ベースに戻ってスープを作ってサンドイッチを食べる。美味しい。予想より調子良く討伐が進んでいるので、食後の休憩時間に少し先まで足を伸ばして野草の採集に行って見た。

ニンニク風味の野草キトとレタスのようなシャキシャキとした瑞々しい若葉を付ける木。そしてその先に突然森が開け、広がる一面の蕗。大きな物はストゥの身長の1.5倍はある巨大な蕗。北海道みやげでもらったラワン蕗だろうか?

「あれ、コルって言って柔らかくて美味しいよ。」

ファケレさんが教えてくれた。こんなに大きくて太いのに柔らかくって美味しいなんて!!
肉を葉でくるんで蒸し焼きにする事もある、なんて聞いたら採ってもらうしか無い!
あ、5本でじゅうぶんです。2mで直径10cm近いって…

調理法に想いを馳せながらキャンプに戻り、蕗だから湯がいて皮をむけば良いかな?鍋に入る長さに切って茹で溢し、もう一度茹でてから水に晒して放置。

午後の討伐に向かう。

地ならしは済んでいるし、午前中よりもヒグマモグラの数が多いので討伐数を稼げる。2時間で既に19体倒している。順調、順調!

なんて、順調な時ほど油断の影は忍び寄る。

頭上からがらがらっと大きな岩が落ちて来て、分断される。そしてこの岩はヒグマモグラが洞窟の上に掘った穴から落ちた物だった。つまり、本体も落ちて来る。

岩を避けて転がった所から慌てて立ち上がった俺のぎりぎり後ろに落ちて来た。



ザッ!!



鋭い爪で背中を切られ、出血する。
痛くはなく、熱い。
心臓の音がうるさくて周りの音が聞こえない。

ドクンドクンドクン


「治…癒…」


なんとか言葉に出して治癒をする。徐々に呼吸が楽になり、背の傷の熱さも治まると漸く周りの声が聞こえて来た。

「タケル!タケルっ!」

一緒に後衛をしていたティスに抱きかかえられ名を呼ばれる。
ほぅっと息を吐き出して安心させるようににっこり笑って大丈夫だと告げる。

「一時撤退!!」

ストゥが叫ぶび、みんなが岩を乗り越えて来て出口へ向かう。俺はティスに抱きかかえられている。洞窟を出て日の光を嫌う魔獣が追いかけて来ないのを確かめてそのままキャンプに戻った。

「本当に大丈夫か?」
「大丈夫!降ろしてくれる?」

ストゥに声をかけられ皆に心配されながら大丈夫だと証明するため降ろしてもらって立ち上がると、ばさっと音がして全員、目を丸くして驚いている。

ん?やけに涼しい。

血で濡れて冷たいのとも違う自分の身体を見下ろすと靴下とブーツに破れた細身のズボンが引っかかり、それ以外の服だったものが足下にわだかまっていた。辛うじて残った破れたシャツがギリッギリの状態で1番恥ずかしい所を隠している。

「どえぇぇぇぇぇっ!?」

何がどうしてこうなったのか分からないけどその場に座り込んで身体を縮めて身を隠そうとする。すぐにティスがマントで包んでくれたけどほぼ全裸。

お、男同士だし!!

自分に言い聞かせるも水場でも何でもない所での裸は恥ずかしい。

「怪我! 怪我は!?」
「え、っと…背中…」

ストゥが青い顔でティスのマントを俺から剥がして背中を確認する。しゃがんだストゥの膝の上にうつぶせで寝かされて。背中だけじゃなくてお尻まで出てるから!丸出しだから!!!

「大丈夫だから!ふ、服ー!!」

ジタバタしているとティスがもう1度マントをかけてくれた。マントで下半身を隠し、背中を見せて安心させる。治癒はしても血まみれなのでティスが浄化してくれて、うっすらと残る傷跡が示す場所を確認している…みたいだけど見えないし痛くないから全く分からない。

「大丈夫か?」

心配してアルクスさん達が近づいて背中を確認する。……ん?触り方が何だか…

「心配するフリで撫で回さないで下さい。」

アルクスさんの手をベシッと叩き落しティスが静かに怒っている。アルクスさんは軽い口調で

「いやー、悪い。大丈夫そうだったし客人まろうどの肌なんて滅多に拝めるもんじゃないからさ。」

影の薄いパティエンスさん、ひっそりと拝まないで。

「元々あった洞窟を根城にしているのかと思っていましたが、あいつらが自分たちで掘った可能性もあるんですね。これからどうします?」

「まず服を着ます!!」

ティスが離さないのでテントまで運んでもらう。後ろの方で良いもん見た、とか感動した、とか言うのに対してストゥがふざけんな!って怒ってるけど、改めてひん剥いたのストゥだからね?

テントに入って降ろしてもらうと、足首に残った下衣が足枷のようになっていて転びそうになる。それを脱いで服を出そうとリュックを引き寄せると後ろから背中を甘噛みされた。

「ひあぁぁぁ…!」

そこ弱いんだってば!って文句を言おうとしたら

「聞こえてるぞ!!」

ってストゥの鋭い声が聞こえた。テントの遮音結界は入り口を下まで閉めないと発動しないらしい… 俺はティスをテントから追い出した。恥ずかしい…しばらく1人にして下さい…
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