行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな異世界へ

15 コロンブスの卵

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こちらに来て11日しか経ってないのに新しい家で3人同居を決めてしまった。
しかも家賃は料理してくれればタダ、って。
3人だけど作る量は6人分だから俺からしたらちょうど良い対価かも知れないけど‥‥

毎食6人分‥‥慣れてないから大変だけど大皿料理なら何とかなる、かな?

明日は筍ご飯食べたいな。



ギルドの部屋に戻って寝る前に魔術の練習。ヒントが欲しくてティスさんに魔力紡いでもらったけど目で見えるものじゃない。

触ってみると指先から2cmほどの見えない細い何かがある感じ。

手のひらに円を描くように動かすと触れてないのに擽ったい。‥‥何か‥‥この感覚、覚えがあるような‥‥?

「この感覚に覚えがあるような気がするんですが‥‥」

そう言ったらティスさんが手のひら以外もなぞる。

手のひら、腕、肩、額、頬、鼻、顎、首筋、鎖骨‥‥

首筋、鎖骨はゾクゾクしてしまうのを「擽ったい」フリをして誤魔化す。普通に触られるより皮膚が薄くなったような、皮膚の奥を触られている様な感覚。

「あれ? ‥‥森の王‥‥?」

ふと森の王を思い出した。
契約印を胸にもらった時、身体中を満たした温かい何か。もしかしてあれが魔力?

「ティスさん、森の王の印に魔力で触れてみて貰えますか?」

シャツのボタンを外して契約印を晒す。
ティスさんが頷いて若草色の紋章に触れる。

「ふぁっ!!」

体中舐め回されるのが途中から急に気持ち良くなっちゃったあの感じ。‥やばい‥‥あぅ‥‥ダ、メ、感じちゃ‥‥

「もう‥‥もう‥‥良いです。ありがとうございました‥‥」

立っていられなくてへにゃりと床に座り込んで肩で息をしながら言うものだから心配させてしまった。
大丈夫ですぅ。

と、とにかく体内の魔力を感じる手がかりは掴んだ。‥‥たぶん。
深呼吸をして息を整え、体を満たすあの温かいさざ波を思い出す。そのさざ波が流れを作り体を巡って右手の指先からスルスルと流れ出る感じ。

試しに七輪の火種(?)に魔力を注いでみると、一瞬で満タンになった。

「ぃやったーーーー!!」

一度できると無限に紡ぐ事ができそうなくらい自然にできる。ノズルが詰まっていた接着剤の先端の固まりを取り去った様な感じと言えば良いだろうか。ティスさんもストゥさんも我が事のように喜んでくれた。

「ところで、先ほどの契約印に魔力を流した時、どんな感じだったんですか?」

うぅっ‥‥流して欲しかった‥‥
でも誰でも魔力を流すとあんな風になるのかな?そうだとこれからが心配なんだけど。
俺は正直に説明した。

「そんな反応は聞いた事がありません。試しに私に魔力を流してみてくれますか?」

まず手、顔、胸と魔力を流してみたけど温かくて気持ちがいいだけらしい。ストゥさんにも試したけど結果は同じ。何それ、俺だけ魔力過敏症とか?

「スキエンティア師に聞いてみるか?」

「気にはなるけど恥ずかしくて聞けません!!」

問題が起きそうならその時相談すれば良いんじゃないかな?うん、保留で。

不安の種が解消され、清々しい気持ちでシャワーを浴びて寝る。何故だか今夜はティスさんのベッドで寝る事が決定していた。不思議だけど嫌ではないので買い出しの時についでに買った寝間着を着て寝る。ウエストが紐なだけで、ごく普通のパジャマだ。

「おやすみなさーい。」


**********************


爽やかな目覚め。魔力はちゃんと紡げる。良かった、夢じゃなかった!

「ん‥‥おはようございます。」

ティスさんが起きた。なんか寝起きのティスさんて色っぽい気がする‥‥ストゥさんはもう起きて武器の手入れをしている。

「メシ行くか?」

顔を洗って着替えて食堂へ行く。
かりかりベーコンとスクランブルエッグ、サラダにトーストにポタージュスープ、ミックスジュース。王道朝食を盛りつけて食べる。デザートはフルーツゼリーを分けてもらった。だからゼリーカップが大きいってば。

食べ終わったら今日のお弁当は筍ご飯にしたいので市場に行く。昨日買っておけば良かったんだけどうっかりしてしまった。ストゥさんが今日は依頼を受けると言うからティスさんと2人で大急ぎで買い物だ。献立は筍ご飯のおにぎり、クレソンのごま和え、シャケの照り焼き、そら豆は茹でて塩をふるだけで良いか。ペルさんとの約束はおにぎりとおかず2品だったからこれで良いな。引っ越したらもっと計画的に買ってストックも作らないとね。

今後を考えてお弁当箱と魔法瓶を3つずつ買って、ストゥさんのために春キャベツの味噌汁も作ろう。

急いでお弁当を作っていってらっしゃいと送り出す。めちゃくちゃ嬉しそうに出て行くストゥさんを見送ってティスさんが明日は自分が依頼を受けるからお弁当といってらっしゃいをお願いします!なんて言う。
そんなティスさんが可愛くて笑っちゃった。

急な指名依頼が入ったのかと思ったら家を買うからには稼がないとね、って。
確かに家なんて普通、一生に一度の買い物だよね。上級冒険者とは言えまだ若いストゥさん達はさすがに即金では買えない。友達なので金融ギルドを通さず分割で買う事になってるらしい。

やっぱり俺も家賃払いたいなぁ。

なるべく早く依頼を受けたい、って言ったらはじめは指導用の採集依頼があるので今日にでも行けるって。お約束のポーション素材はもちろん、この辺で採集できる毒消しや栄養剤の素材を一通り持ち帰るクエストだ。ついでに食材も教えてもらおう。


**********************


スキエンティア師に魔力を紡げるようになった事を報告するととても喜ばれた。特に森の王と契約をした時に魔力が全身に満ちる感じがした事と他人の魔力の刺激でそれを思い出した事。次の客人まろうどに教える時の参考になるからだ。森の王との契約は望み薄らしいけど、魔力を流し込むのを試してみるって。
感じちゃったのは恥ずかしくて言えなかったので次の客人まろうどが女性でない事を祈ろう。

俺の属性は光と地と火だった。3属性ゲット!
あと森の王が風属性なので少しなら風属性も使えるようになる可能性がある。
‥‥あくまで可能性の話。
魔力量は測定不能だったけど測定器が壊れる程ではなかった。(笑)

光は回復系とか解呪とかで地は地面を砂に変えたり穴掘ったり、火は燃やしたり高熱にしたりだけど属性を元にイメージで術を織り上げるので火属性魔術で火災旋風を起こせば上昇気流で強風も起こせるとか、土属性で水脈見つけて水攻撃もできるかも。危なくないやつから試したい!

魔方陣の基礎の基礎を学び、その後は自力で研鑽を積むも良し、魔術学校へ入るも良し。

「個人でずっと教えても良いが、ワシは授業料高いぞ?」

いかにも悪そうな顔でニッと笑うじーちゃん先生、かっこいい。魔術学校(無料)は興味が湧いたら入ると言う事にします。ティスさんがいるしね。

今日で個人教授はおしまい。

「スキエンティア師、ご指導ありがとうございました!!」

お弁当を食べて午後は練習クエスト!!
ティス先生、お願いします!


**********************


宿に戻って装備を整える。
ロングベスト、ブーツ、ベルトに短剣、ローブ、ポーション、採集カゴとショルダーバッグ。それからずっと着けてて欲しいと居場所探知用イヤーカフを貰った。心配し過ぎだと思うけど市場で迷子になっても見つけられるらしいので有り難く受け取った。

ギルドの受付カウンターで指導員とパーティーを組み、指導用採集依頼を受ける。
ポーションの主原料レフェクの葉10枚とアケビアの蔓とエピメディウムの茎葉、ケラススの樹皮の採集だ。
品物の状態や数、近くで採集できる物の特徴も教えてもらう。後で試験があるので特徴をしっかり覚えなければならない。他に指導用魔獣討伐依頼もあり、それぞれ試験に合格しないと単独で依頼を受ける事はできない。魔獣とは人間を襲う魔力を持った動物の事で、殺した後に消えてなくなったりドロップアイテムが出る事はない。証明部位を剥ぎ取って持ち帰りギルドで鑑定してもらう事で討伐終了となる。

剥ぎ取り‥‥屠殺? 解体? が、頑張る!!
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