行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな異世界へ

14 看板メニュー

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朝食はもちろんギルドの朝バイキング。
デザートも数種類あって目移りする。今日はミルクプリンにベリータルトにパウンドケーキ。バイキングだから全部食べたいんだけど1つ1つが大きいから食べきれない。パウンドケーキなんて10cm×20cm×10cmが1人分だよ?デザートじゃなくて主食かな?

諦めてミルクプリンに決めたら2人が他のデザートにして味見させてくれて朝から幸せ~。
ちなみにミルクプリンもBIGサイズでした。

ここの食べ物は弁当用に買ってく事もできるんだって。食堂内で食べれば宿泊費の内で持ち出すのは有料。お昼のサンドイッチ用にパンを買った。いや、買ってもらった。美味しいの作ります!!

わざわざお店まで行かずに美味しいパンが買えるのがありがたい。BLTサンドと照り焼きキサンドにした。玉子スープも作って魔法瓶(魔道具)に入れた。じーちゃん先生とウェーヌ様の分も作った。そう言えばペルさんは別行動なのかな?足りるかな?


**********************


とにかく、魔力を紡ぐコツを掴まなくては何も始まらない。じーちゃん先生が昔を思い出しながらアドバイスをくれるけどやっぱりピンと来ない。時間だけが過ぎて行く。

今日もまた挫折して早めのお昼にする。

お弁当を作ってきた事を伝えると2人はとても喜んでくれた。ウェーヌ様達2人の分はペルさんが持って来てたのでそれも合わせてみんなで食べる。お弁当交換、楽しいよね!作ってもらった料理は美味しいし、さらにデザートにイチゴタルトまでついた。

ペルさんに明日は炊き込みご飯のおにぎりにする予定だと言ったらすまし汁とデザートを作ってきてくれるって。他にも2品ずつおかずを作って来て一緒に食べる約束をした。

‥‥魔力の感覚を掴むのは宿題になった。

早く終わったのでティスさんが知り合いの家で料理をして欲しいと言う。故郷に帰って料理店を開く予定の人が客人まろうどの料理を食べてみたい、できれば看板メニューにしたいのだそうだ。

俺の腕で看板メニューなんて荷が重いと言ったら、ストゥさんが絶対大丈夫だと太鼓判を押す。ティスさんも大丈夫だと言うし、あいつも料理人なのだから自分なりの工夫もするだろうと言われると断れず、引き受ける事にした。

メニューを決める前に挨拶に行く。

その家は学校とギルドの間くらいにあった。

緑の屋根のログハウスで壁は落ち着いた木の色。南向きのそれほど大きくはない庭は綺麗に手入れされていて、植えられた植物は多分ハーブ類。西側の木は常緑樹で上の方だけ丸い黄色い実をつけている。2階建でバルコニー付き。玄関までのアプローチは飛び石が並べられ、雨が降っても靴を汚さずに家に入れるだろう。

ストゥさんが丸いシンプルなドアノッカーでノックすると、ドタドタと慌てて走る音がして恰幅の良い青年が顔をだした。

「ティス!ストゥ!!連れて来てくれたのか!?」

勢い良く開けたドアの向こうから姿を現しキョロキョロしている。ストゥさんの体にすっぽり隠れて俺が見えないらしい。
立ち位置間違えたな。
昨日のティスさんの用事がこの話だったようだ。

「僕はグラウィス、駆け出しの料理人だ。よろしく頼むよ。」

ストゥさんの後から出て挨拶をした。

キッチンを見せてもらうとコンロが3つ、流しは2つ。鍋やフライパンやお玉がたくさんあって、しかもとても綺麗に磨かれていた。さすが料理人!包丁も毎日研いでてキラキラだ。

この広さなら何でも作れる。
でも看板メニューか‥‥。そう言えば外国人にトンカツが大人気だってニュースで言ってたな。あとフルーツサンド。トンカツはカツサンドにもできるし、これで行こう!
豚肉、キャベツの千切りは必須だし味噌汁も要るよね。漬物は浅漬けだ。白米も炊かなくちゃ。春だから菜の花のペペロンチーノも作って見よう。アスパラのベーコン巻きは普通だったかな?

グラウィスさんも一緒にみんなで買い出しに行った。切り餅と小豆とイチゴが売っていたので苺大福にもチャレンジだ!

作り方を覚えるためグラウィスさんも一緒に作る。煮るのに時間がかかる小豆から。まずはたっぷりの水に入れて沸騰させ1分たったら湯を切る。そしてまた水を一緒に入れて柔らかくなるまで煮る。その間に豚肉を筋切りして胡椒をして少し置く。生クリームを泡立てる。俺では時間がかかってしまうのでグラウィスさんが泡立ててくれた。パンに生クリームを塗りカットフルーツを挟む。切り口が綺麗に見えるようにフルーツの配置に注意。

味噌汁はカブ。もちろん葉も入れる。
豚肉に塩を振り馴染ませる。白菜と人参と塩昆布で浅漬けを仕込む。キャベツの千切りはグラウィスさんがあっという間にやってくれてティスさんにはパンをおろし金でパン粉にしてもらう。ストゥさんは塊のベーコンを薄切りにしてくれた。アスパラをさっと茹でてからベーコンを巻いて楊枝でとめる。

実は俺、アスパラを茹でた事がなかった。家では電子レンジだったから茹で加減はグラウィスさんにお任せだ。アスパラは茹で過ぎるとグニャグニャでマズいって若草物語で読んだ。(笑)菜の花も茹でてもらった。

小豆が柔らかくなったので砂糖を3回に分けて入れる。理由は知らないけどばーちゃんからそう教わった。

トンカツを揚げ始める。溶き卵、小麦粉、パン粉につけて揚げる。火の通りやすさを考えて1cm厚の肉。手本にいくつか揚げてグラウィスさんに引き継ぐ。どんどん山が高くなるトンカツを見ながらカツサンド用のトンカツをウスターソースに潜らせて千切りキャベツと一緒にパンに挟む。トンカツソースはなかったんだよね。

ベーコン巻きを焼き、パスタを茹でて菜の花と合わせてペペロンチーノにする。

小豆が煮えたので冷まし、切り餅を茹でる。茹でる物、多いな‥‥

柔らかくなった茹で餅に餡子と苺を入れて丸める。苺は見えてるタイプにした。きれいに包むの難しいし、見えてる方が可愛いから。

全部作り終えたら夕飯にちょうど良い時間になってた。トンカツにはグラウィスさん特製ソースとお好みで辛子もどうぞ、と添える。

「「「「いただきまーす!」」」」

みんなで一緒にいただきます。

熱々サクサクのトンカツに感動する3人。パン粉が良いんだよね。

味噌汁と浅漬けはこっちでも珍しくないのに、ただひたすら美味い美味いと食べてくれる。菜の花のペペロンチーノはお酒が飲みたくなる味だそうだ。
カツサンドも大好評。フルーツサンドは恐る恐る味見していたけど一口で気に入った様子。俺も初めて食べた時、甘いサンドイッチには警戒したなぁ。

そして最後に苺大福。
餅はまた固くならないように、茹でた後に砂糖を練り込むのがコツだ。砂糖には保湿効果がある。柔らかいティッシュが甘いのは保湿のために甘味料が使われているからなんだけど、蟻が集っていた時はびっくりしたなぁ。

知ってた?

「お役に立てそうですか?」

良い食べっぷりに喜びを隠さず聞くと、グラウィスさんが喜色満面で大きく頷いた。

「これなら大人気店になる事間違いナシだよ!ありがとう!!冷蔵庫とか大きくて運べない家具は置いて行くから自由に使ってくれ。引っ越しは来週頭にするから。」

「え?」

何の事か分からずティスさん達を見る俺。あちゃー、って顔に手を当てるティスさんと憮然とするストゥさん。

「タケルにはまだ話していなかったのですが‥‥」

「グラウィスが故郷へ帰るのでこの家を売る事になってたんだ。俺達に友達なら開店資金にするため高く買ってくれ、と。」

「でも料理をしない私達にはギルドの宿の方が都合が良かったので断わろうと思っていたのですが、タケルが料理してくれるなら買い取っても良いとストゥと話し合ったんです。」

この前の3人で一緒に住むか?って話、冗談じゃなかったの?

「でも俺、まだ家賃払えないよ?」

「タケルが料理してくれるなら家賃なんかいらん。」

「庭付きの4LDK、大浴場とは行かないけど、広めのちゃんとしたお風呂もあるよ?見てみる?」

お風呂、見たい!!

見せてもらうと確かに4~5人は入れそうな広さだ。ここは以前、見習い料理人達が共同で暮らしていたのでこう言う作りになっているんだって。最大で7人住んでいたらしい。

凄い!ここ‥‥住みたい‥‥

眼を輝かせる俺を見てグラウィスさんがニンマリしながらストゥさん、ティスさんと話しを纏めていた。

4日後に引っ越す事が決まった。
展開、速!!

ギルドの朝食バイキングは少し惜しいけど、ここのキッチンとお風呂の魅力には敵わない。頑張って美味しいごはん作るね。大きな冷蔵庫があるのも嬉しい。

そう言えば、この世界には異世界物に良くある四次元収納(インベントリだっけ?)みたいなのは無いのかな?

説明したら時間を止める魔術は存在しないのでいつまでも腐らないとか出来立てをそのまま保存とかはできない。ただ、転移魔術はあるので固定された空間同士を繋げられれば無限に近い量が入るカバンができるかも知れない。

‥‥例のポケットみたいに入り口より大きな物を入れるのは無理な気がした。
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