行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

文字の大きさ
上 下
7 / 203
行ってみたいな異世界へ

6 馬の乗り心地

しおりを挟む
3月の末、朝晩はまだ肌寒い。
部屋へ招き入れると彼は勢い良く頭を下げた。

「あの!さっきはすみませんでした!!」

子供達を代表して謝りに来たと言う。
深々と頭を下げて小振りな籠を1つ差し出した。

「これ、ウィーヌムベリーです!
すごくおいしいけど、なかなかみつからないからこれしかないんだけど、たべてください!!おわびです。かわごとたべられます。」

「珍しがられて勝手に触られるのが嫌なんだ、って分かってくれたら良いよ。貴重な果物をありがとう。」

ウィーヌムベリーを受け取って仲直りの握手をして、また窓から帰る彼を見送る。
良い子達だったようだ。

ソファに戻り、せっかくなので味見をする。
見た目は見慣れた物より大粒でカラフルなマスカット。1つ摘まんで口に入れる。
柔らかな皮がプチっと弾け、芳醇で瑞々しい果汁が口いっぱいに広がる。

‥‥?

アルコールの香りがするような‥‥‥
不思議に思ってもう1つ口に入れてみる。

やっぱりお酒の香りがする!!

2人にも確認してもらうと確かに酒の味がすると言う。
どこから見ても果物なのに、どう言う事なのか?しかも2人が知るこの果物は普通の果物で、アルコールを含む物は知らないそうだ。この辺にしかないのかな?

美味しかったけど、下戸なのでこれ以上食べるのはやめておく。すでに少し顔が熱い。
ひとまずティスさんが保存袋に入れて預かってくれた。

豊かだけど小さな国なので王族も気さくだとか、色々なギルドがあるから適正を見て登録すると良いとか色々教えてくれた。

「タケルも気になってる事があれば、どんどん聞いてくださいね。」

と言われ、少し考えた。
気になる事だらけで何を聞くべきかまだ良く分からないけど‥‥そうだ!

「胸って男でも感じるんですか?」

ブーーーーーーーーーーーーッ!!!

2人が同時に吹いた。
驚愕の表情で口をパクパクさせている。

「だって、気持ち良いって聞くけど
自分で触っても何ともないんですよ?」

服の上から自分で摘んだり撫でたりクリクリしてみるけど、何ともない。直接触ってもおんなじだ。
他の人はどうなのか、とても興味がある。

「どうなんですか?」

「「‥‥‥‥‥」」

真剣に聞いてるのに2人は視線を彷徨わせて目を合わせてくれない。

目を合わせてくれない事にむっとして、無理やり目を合わせてもらおうとストゥさんの膝に跨がって下から顔を覗き込む。

ストゥさんの顔が赤いのは村長が持って来た酒のせい?

拒否されないのを良い事にニッと笑ってシャツを開く。

「しまえ」

速攻で閉じられる。

また開ける。

「やめろ」

閉じられる。

肩も出して胸を突き出す。

「怒るぞ」

着せられた。

むぅ。
それならば、とティスさんの膝へ。

今度は初めからもろ肌を脱ぐ。
奇跡の身体だよー、触って良いよー!
てゆーか触ってー!

ティスさんは固まっている。
でも頬染めて瞳をキラキラさせて嬉しそうに凝視してる。触ってくれるかなー?






‥‥‥触ってくれない。

ならば!

ティスさんの手を取って手のひらを胸に押し付けると、ティスさんは感動しているかのように頬を紅潮させている。

ゆっくりと優しく撫で始めた。

???

モヤモヤする。
やわやわと撫でられ揉まれるのはむず痒いような息が詰まるような感じでどきどきするけど、快感と言うには程遠い。触れ合う肌の心地良さだけがはっきりと分かる。

「‥‥‥」

うーん‥‥。
嫌ではないなーとか考えていたら、すぃっと胸の先端を指先が掠めた。

「ふぁっ!」

ピリッとした刺激が胸から下腹部へ走り、ビクッと身体を震わせる。
そんな俺の反応を見て、ぷくっと膨らみ始めたそこを優しく摘まんだり撫でたりする。

「あっ‥あっ‥あっ‥‥」

何これ、凄く気持ち良い。

「‥はぁ‥‥あ‥‥ふあぁん!」

鼻から抜けるような今度の声は間違いなく喘ぎ声だ。

「もっと‥‥触って‥‥‥」

快楽に身を任せて更なる刺激を要求するとティスさんは頭を下げた。
胸に触れるぬるっとした感触。

「ひゃあぁぁぁんっ!!」

仰け反って嬌声を上げる。
胸の飾りから下腹部へ、電気が走るように快感が 駆け抜ける。

その余韻に浸る暇もなく

「あー、もぅ!このバカティスっっっ!!」

グイッ!

バチーーンッ!!!

ストゥさんは俺をティスさんから引き離し、ソファに座ったままのティスさんをビンタした。
ソファがひっくり返り、少し身体が浮いたように見えたが大丈夫だろうか?

この出来事に驚いて呆けていた俺は抱き上げ
られてベッドに運ばれ、放心しているうちにいつの間にか寝てしまった。


**********************


「正気に戻ったか?」

タケルをベッドに寝かしつけ、倒れたソファを直しているティスに声をかけた。

「‥‥ありがとうございました。」

そう言いながら赤く腫れて触れると痛む頬を冷やすおしぼりを自分で作る。

「お前のその流されやすい所は治らんな。」

「面目無い‥‥」

「王に謁見するまでは客人まろうどへの性的接触は厳禁なんだからな。」

「分かってはいるんですが‥‥
若くて可愛い客人まろうどなんて‥‥それだけで奇跡なのにあんな風にされたら!!掌に吸い付くきめ細かい白い肌、そこに少し紅を滲ませたような小さな胸の飾りは更に柔らかく頼りなく、けれどほんの軽い刺激でぷくりと立ち上がり‥‥」

「おい!」

「‥‥‥すみません、私もしばらく禁酒した方が良さそうです。」

「そうだな。」


**********************


俺は翌朝、自分のやらかした事は綺麗さっぱり覚えていなかった。ただ少し、二日酔いで頭が痛かった。

「おはようございます。
あの‥‥ティスさん、その頬は‥‥?」

軽い二日酔いの不快感よりも気になるティスさんのおしぼりを当てた頬。
昨夜は楽しかった記憶しかないけど、もしかして俺が何かやったのかと不安に駆られ、恐る恐る聞いてみた。

「これは私がしでかしただけです。タケルが何かした訳ではありません。」

困ったように笑うティスさんの言葉‥‥
素直には信じられない。

「本当に?」

と聞くと

「タケルの手の大きさじゃあないだろ?」

グイッとおしぼりを押さえる手をストゥさんが外すと、確かに俺の手より大きな手形がくっきりと赤く浮かび上がっていた。

「確かに‥‥でもそれなら、何があったんですか?」

「俺たちの仕事の話で、タケルには関係ない。」

取りつく島もないストゥさんに余計に不安が募る。だいたい今の2人の仕事は俺の世話係なんだから仕事の話だとしても俺と無関係なのは疑わしい。
俺が何がやらかしたのを隠してるんじゃないのか?

「‥‥仕事‥‥ですか。余計な事を言ってすみません。」

仲間ハズレみたいで悲しいけど、俺はただの接待相手で仲間じゃないんだ。

「悪いな。」

悲しさが顔に出ていたらしい。
謝られたけど作り笑顔も上手くいかなかった。友達じゃないんだから仕方ない、と頑張って気持ちを切り替える。

「‥‥また今度、一緒に飲んで下さいね。」

ビシィッ!!と音を立てて空気が凍ったような気がした。

やっぱり俺、やらかしてる!確信した。

「やっぱり迷惑かけたんですね。ごめんなさい!!今度は1人で飲みに行きます。」

「っダメだ!タケルは、その‥‥いきなり寝たんだ。だから1人で飲むのは危ない!!」

俺が寝ただけで手形がつく程殴られるのはおかしい。風呂場で少し暴走した事はあったが、撫でる程度だったし意識のない相手に何かするとはとても思えない。

「本当の事を教えてもらえないと気になって余計試したくなります。護衛の仕事は謁見までですよね。その後なら2人の手を煩わせる事、ないですね。」

「煩わせるなんて!タケルの側に居る事は私の喜びなんですよ!」

ティスさん、本気っぽいけど社交辞令かも知れない。
本当の事を話してくれないのが分かるから心から信じる事ができない。胸がちくちくする。

「‥‥そう言ってもらえるとありがたいです。」

そう言ってはみたものの、胸の痛みは治らない。仕方ないから今は諦めよう。
そして俺がやらかしたであろう事は確実なので気をつけようと心に決めた。

朝食を食べたら出発だ。
ここからは馬での移動になる。
馬ってでかい。今まで馬を近くで見た事がないのでサラブレッドと比べて大きいのかどうか分からない。

俺はストゥさんの前に乗るよう言われた。

そう言えばティスさんを見た村長がオロオロしてたけど内輪揉めだから、となだめてた。

そしてなんだか盛大に見送られた。
小さな村なのに結構、人が多い印象。
子供達も元気に手を振っている。

次の村の温泉はゆっくり楽しめるかな?

王都まであと2泊。
風景も村もさほど変わらないらしい。確かに見渡す限り春先の野原。柔らかな若草と控えめに咲く小さな花。時折見かける色とりどりの小鳥は地面に降りてはまた飛び上がる。何か食べているのだろうか。

そうやってのんびりと進んでいたが、昼食の頃には慣れない乗馬で身体中が痛くなっていた。

手を貸してもらったのに地面に足がついても膝に力が入らずその場にへたり込む。乗り物酔いもしているようだ。

支えてもらって疲労回復のお茶を飲む。インフルエンザに罹ったような身体中のだるさは筋肉痛の前触れだ。乗馬ってめっちゃきつい‥‥‥

食欲もないけど食べた方が良いと、温かいスープを作ってくれた。ミントのような香りの葉をもらって噛む。1時間ほど休むと酔いが楽になった。

再び馬に乗ろうとしたが直ぐに気分が悪くなったので歩くしかなかった。
次の村に今日中に着けそうもなくて2人に申し訳ない‥‥

謁見は義務だけど日時は決まっていないから気にするな、と言ってくれた。
しおりを挟む
こちらの拍手ボタンをクリックすると
「連れて行きたい日本へ」で
ストゥとタケルがラブホに行った時のいちゃいちゃが読めます。
拍手する

感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...