召喚農夫の田舎暮らし

香月ミツほ

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魔力の新たな使い道5

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「お帰りなさいませ、旦那様、スイ様」
「ただいま、ロルカン」
「ただいまー!」
「スイ様はご機嫌でございますね」
「うん! きれいな人達ばかりで楽しかった! 緊張して何を話したか覚えてないけど!」
「あんなに嫌味を言われていたのに覚えていないのですか?」
「いやみ? ……言われてた?」
「気づいてないなら良いんです。お風呂に入ってから食事にしましょう」
「うん! ……ねぇ、ブリアンがそんなに疲れてるの、お客様の顔のせいじゃなくて、いやみからぼくを守ってくれてたの……?」
「そのつもりでしたが、スイは私が考えるより強かったようですね」

強いと言うより鈍いんじゃないかな?

……って、聞いてる人たち全員の気持ちが1つになった気がした。


********************


お風呂に入って食事をして、部屋でまったりしています。
ファーガスさんも一緒にお酒を飲んでいる。

「ねぇ、ブリアン。またお茶会へ行くならぼく1人で大丈夫だからね?」
「ですが……」
「だってぼく、ブリアンの伴侶だよ。ブリアンの負担になりたくないし、全然嫌じゃなかったもの」

なおも渋るブリアン。
次があれば、って話なんだから今から心配する必要ないからね?

「なんだブリアン、疲れたのか?」
「えぇ、まぁ」
「スイと一緒にゆっくり眠れば疲れも取れるだろ」
「疲労回復ポーションも飲んでね?」
「そうだ、熱砂虫が届いたらしいぞ」
「ほんと!? 明日受け取りに行かなくちゃ!!」

生き物だから受け取りは早い方がいいだろう。

「ミツアリツメクサはどうですか?」
「一応、順調…… かな? 少しずつは伸びて来てるし」

暖かい部屋に置いているからだけど。
熱砂虫は獲物の魔力を吸うんだから、スイ水ボールを気に入ると思う。そうすれば増えてミツアリツメクサを温かく保ってくれるはず!
早く受け取りたいな。

「スイはもう、立派な領主夫人ですね」
「えぇ!? そ、そうかな?」
「あぁ、領民の役に立とうとあれこれ考えているお前は立派な領主婦人だよ」
「そうですよ。それから年明けの結婚式に招待されました。幸せな領主夫婦が出席する結婚式は縁起が良いと喜ばれます。私達と、たくさんの人達を幸せにする為にずっと私の側に居てください」

ぼく達の幸せが領民の幸せに繋がる。そう言う事なら喜んでぼく達3人、仲良く一緒に長生きしていこう、と約束した。 


********************



スイ水ボールの有用性は確かにあるんだけど、周知するには色々な問題があるので、口外しない事になった。領主一族の秘密!!

結婚して1年後、ぼくはめでたく妊娠。ブリアンの子供なのは大ちゃんのお墨付き! 可愛い子が生まれると良いなぁ。ぼくに似ちゃうと将来が心配だからなぁ。

ファーガスさんは事後、必ず浄化して気をつけてくれていた。後継者問題に関わり合いたくないとか言ってるけど、気を使う人だから1人目をブリアンに譲ったのだと思う。次の子はどっちのが生まれるか分からないように交代でやろうか、なんて冗談言ってるし。

ミツアリツメクサの栽培は順調なのに、ミツアリが来ない。なぜだろうと悩んでいたらマンドラゴラの縄張りになっているからミツアリが入ってこられないんだと小ちゃんが教えてくれた。マンドラゴラ、5株になったからなぁ。

マンドラゴラはスイ水ボールがあれば構わないらしいので地植えを止めて大きな鉢で育てる事にした。するとすぐにミツアリが集まり出した。
ミツが採れるのは巣作りを始めてから1年以上後なので、まだしばらくは買ってくるしかない。



それから王都でりんちゃんが噂になって、なんと王様に呼び出されてしまった。
さすがに断れず、ブリアンとガチガチに緊張したぼくとりんちゃんでお城のバルコニーに降り立った。失礼になりそうだけど、結界を部分的に解くのはここが一番都合が良いと言われて従った。

威厳たっぷりだった王様がりんちゃんのたてがみに触れた途端、でろでろに蕩けてスリスリもふもふしてびっくりした。普段は我慢してるけどもふもふ大好きで、毎晩、守護聖獣のケット・シーをブラッシングして癒されているそうだ。

自分の国の王様の事なのに知らなかった……。
あ、秘密なのか。
なら知らなくて当たり前だね!!

りんちゃんもブラッシングされて気持ち良さそうで、自然に抜けたたてがみはそのまま王様にプレゼント。たまになら遊びに来てあげる、と約束してた。ぼくは緊張するから留守番してるね。

少しずつ大きくなるお腹にいろんな事を話しかけながら、畑を見回ったり、ブリアンに可愛がられたり、お菓子作り教室を開いたり、ファーガスさんに可愛がられたり、鋼蜘蛛さんと仲良くしたり、大ちゃんやりんちゃんと仲良くしたり。



とにかく毎日のんびりと、とっても幸せに暮らしています。 
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