召喚農夫の田舎暮らし

香月ミツほ

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魔力の新たな使い道4

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「目が覚めましたか?」
「身体は大丈夫か?」

返事をしようとしたけど身体中怠いし、声も出なかった。
このために作った疲労回復ポーションを飲むと体のだるさも喘ぎ過ぎて枯れた喉も数分で回復。大成功!!

……ただ、マンドラゴラの皮を使うから毎日はさすがに使えない。そのためにマンドラゴラを増やそうとしてるんだけどね。(遠い目)

「いよいよ今日はお茶会ですよ」
「緊張するけど頑張る!!」
「……負けるなよ?」

何か勝負するような事、あったっけ???

お茶会は午後なのでお昼頃に到着すれば良いとブリアンが言う。
だから午前中はのんびり朝ごはん食べて薬草園の様子を見て、お風呂に入って色々お手入れされて、りんちゃんもブラッシングして出発!

ファーガスさんは留守番しながらスイ水ボール交換をしてくれるそうです。
やっぱり薬草はスイ水ボールに近いほど育ちが良く、さらに薬効の強いものほど影響が顕著だった。1番はマンドラゴラでタネの数も多かったし、質も良かった。

……でも恥ずかしくて発表できない。



*********************



エルネッド様のお茶会は王都のブリアンの実家で開かれる。
最近パワーアップしたりんちゃんは1時間で到着した。
ブリアンの風属性魔術で風を避けられたのも大きいかも知れない。

晩秋と思っていたけど、王都はまだまだ秋真っ盛りで庭の木々は紅葉し、綺麗に整えられた下草は雪が降る頃まで枯れない種類で青々と茂っている。さすがに花は咲いてないけど、代わりに花をかたどったお菓子やケーキが並べられる。

て事は、テーブルの上のあれ、お菓子なの!?

上空で留まって眺める限り、本物のお花に見える。早く近くで見たい!!

「りんちゃん、早く降りよう?」
「スイ、この庭には風の結界が張ってあるので、正面の門から入らないとならないんです」
「そうなの?」
「はい。寒く無いように、また風で髪が乱れないように、風の結界を張るんです」
「……その為だけに雇われる魔術師さんがいるの?」
「そうです」

そんな職業が(以下略)



ぼくたちは門の前に降り立ち、結界を抜けられる通行証を受け取ってお屋敷に入った。

「母上、お招きありがとう存じます」
「ブリアンはおまけなんだけど」
「母上?」

バチバチと火花が散っているみたいな気がするけど気のせいかな? 

「君たちはお客様じゃなくて主催者側だよ。私と一緒におもてなしをする側」
「はい! 頑張ります!」
「でもブリアンは引っ込んでて良いよ」
「嫌です」
「若さをひけらかす気なの!?」
「衰えを感じていらっしゃるのですか?」
「そっ! そんな事ないし! 私はまだまだ若いし!」
「なら私がそばにいても構いませんね」

ぐぬぬとなってるお義母様。
そっくりな分、比べやすくなるよね。でも母子と言うより少し年の離れた兄弟に見えるよ? そうだ!

「お義母様、今度ぼくの実家の温泉に来ませんか? 両親が宿屋をやってるんですが美肌効果があるし、マンドラゴラの皮を入れたらブリアンより若くなるかも知れませんよ?」
「な……なんでもっと早く言わないの!?」
「だってとってもキレイだから必要だなんて思わなくって……」
「なんて良い子なの!!」

ガシッと抱きしめられた。
あ、ブリアンほど鍛えてないし、花の香りがするしで別人なのは分かるんだけど、頭の撫で方がおんなじ。親子だなぁ。

「ブリアン、この子ちょうだい」
「絶対いやです」

おもしろーい!

やがて時間になってお客様が集まりだした。と言っても6人ほどらしく、小さなお茶会だ。エルネッド様は自分大好きで他の貴族とはそれほど交流していないらしい。

それでも向こうから絡んで来る人はいる。

今日は全ての貴族当主夫人に敵愾心を抱くブロデウウェッド公爵婦人とその取り巻きの方々。確かに綺麗な人ばかり。4人が女性で2人が男性。

すごーい!
みんな見てるだけで幸せになれる。

「本日はお招きありがとう存じます。ご機嫌いかが?」
「ようこそおいで下さいました。ブロデウウェッド公爵婦人におかれましてはご健勝の事とお見受けいたします。おかげさまで息子も良き伴侶を迎え、幸せに過ごしております。スイ、こちらブロデウウェッド公爵婦人です。ご挨拶なさい」
「は、はじめまして! ぼくは……えっと、ブリアンの伴侶となりました、召喚術師のスイです。どうぞ仲良くして下さい!」

教えられた礼儀作法なんて緊張ですっ飛んでしまい、なんか普通の挨拶をしてしまった。怒られるかなぁ?

「まぁ、可愛らしい方ね。うちの息子の伴侶と仲良くして下さるかしら?」
「はい! 喜んで!!」

優しい人で良かった! 

それからは何を、誰と話したのか覚えていない。お義母様は公爵夫人とお喋り、ぼくとブリアンは他の人達とお喋りしていた。

召喚術師が珍しいらしく色々聞かれたし、全員、マンドラゴラに並々ならぬ興味を持っていて少し怖かった。ブリアンに止められてなかったらうっかりたくさん持ってるよー、って言ってしまっていただろう。

お義母様には言っちゃったけど、独り占めしたがるだろうから大丈夫。



*********************



「きれいな人たちばっかりだったねー」
「一番は!?」
「ブリアン!!」
「そこはお義母様って言うところでしょ!!」

あ、そうか。
つい本音が出てしまった。

「お義母様きれい!!」
「遅い!」

お母様って楽しい人だなぁ。

「スイ、帰りましょう」
「ブリアン、どうしたの?」
「私はどうもあの様な顔立ちが好みではなくて…… とても疲れました。早く帰ってスイだけを見て癒されたいんです」

きれいな人たちを見て疲れるって不思議だけど、ぼくで癒せるならいくらでも!!

「お義母様、また来ますね」
「帰っちゃうの?」
「ブリアンを癒すのがぼくの願いですから」
「ブリアンのヘタレ! 親孝行しなさい!!」
「あなたは親らしいことなんて何一つしていないでしょう」
「……そうだっけ?」

覚えてないの?
思ったより面白い人だったけど、覚えてないなら仕方ないね。

「とにかく帰ります。りんちゃん!」

お茶会が終わって風の結界も解除されて居るのですぐに来てくれた。

「なんでコレ自慢させてくれなかったのーーーー!?」
「りんちゃんは“コレ”じゃありません!」
「母上、失礼にも程があります。神聖獣の麒麟ですよ?」
「げ…… ご、ごめん!! きれいで珍しかったから、つい、ね? 暴れない?」

ビクビクするお義母様を無視してぼくたちを背中に乗せるりんちゃん。
怒ってはいないけど機嫌は悪そうだ。

屋敷に戻ったらいっぱい甘やかしてあげるからね!!

片付けをしている使用人の人達もりんちゃんに見惚れている。
話だけでも自慢にできるんじゃない?

ぼくたちは颯爽と王都を後にした。
ちなみにぼくたちの姿は来た時からみんなに目撃されていたので、あとで話題の中心になれたお義母様はりんちゃんをしつこく招待したがったけど、りんちゃんが嫌がるので断りました。 
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