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結婚しよう7
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この領地は標高が高く、特産物はワインの原料になるビティスとイェシム絹糸。
現場は切り立った崖を削って作られた細い道で、もともと馬も通れないくらいの難所だった。
これは崩れるよね。幸い巻き込まれた人はいなくて3日に1度の定期便が発見したそうだ。
復旧作業を始めるために必要物資と人材支援を緊急用伝書鳥エンナを飛ばして届いたのが今朝。こんなに速く領主が来るなんて思っていなかったんだろう、配達係の人がめちゃくちゃ驚いている。驚かせてごめんね?
「状況は?」
「は、はい! ごらんの通りです。ここは岩盤が硬く、道を広げる事もままなりません」
「運ぶ物は?」
「今回は調味料と衣類と大工道具です」
今回は受け取りがメインだからこっちから持って行く物は少ないらしい。
でも今後を考えれば小型の荷車くらい通れる道を作りたいな。
「小ちゃーん!」
大ちゃんだと大きすぎる気がしたので小ちゃんを呼ぶ。
程なくして顔を出した小ちゃんに山の外側ではなくてトンネルを掘れないか調べてもらおうと考えたからだ。岩盤が硬いのはむしろ安全だと思う。
「小ちゃんが調べてくれてる間にご飯食べましょう! お腹空いたでしょ?」
「あ、あの……こちらの方は?」
「紹介が遅れたな。私の伴侶になる人で召喚術士で薬師のスイだ」
「はじめまして、スイです。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします!」
コナンさんが淹れてくれたお茶とパンとハムと野菜とスープを無限収納から取り出した。
「無限収納をお持ちなんですか!?」
「はい。召喚術の応用なんですよー」
「うちの祖父も持っておりましたが、中に入れる物の大きさや重さで魔力を消費するとかでたいした物は入れられませんでしたよ?」
「……そうなの?」
……倉庫代わりに大量に入れてるけど。
「こんな素晴らしい方がブリアン様と結婚して下さるんですか? みんなでお祝いしなくちゃ! やっぱり婚礼衣装はイェシム絹で?」
「もちろんだ。私の自慢の領民が心を込めて紡いでくれる糸で織った衣装を着たスイはどれほど愛らしいだろうね」
イェシム絹って最高級品だよ?
いいの?
僕からもみんなにお礼の品を用意したいなぁ。
そんな話をしながら寛いでいたら、小ちゃんが戻ってきた。
『スイ、集落の少し手前に出るよう、トンネルが掘れる』
「良かった! アリさん呼ぶ?」
『ここは鋼蜘蛛に頼む方が良い』
「鋼蜘蛛さん?」
「そりゃこの山に巣食ってる魔獣ですよ!?」
鋼蜘蛛さんはこの山を縄張りとする魔獣で、獣道に罠を張って通りかかった生き物を獲って食べるんだけど、その罠は見えない鋭い糸なのでうっかり人が通ると酷い怪我をするらしい。
杖をついてゆっくり歩けば大丈夫なんだけど、他の動物に追いかけられた時なんてその罠にかかって死んじゃう事もあるんだって。それは危ないね。
よし! お話ししてみよう!!
《この地に住まう気高きものよ。力無き我に運命を紡ぐその偉大なる姿を目にする栄誉をあたえたまえ》
魔力を乗せた祈りの言葉は山全体に広がり、必ず魔獣に届く。
程なくして鋼蜘蛛が姿を表した。
上半身は人間で頭に丸い被り物をしているように見える。そこには赤く輝く宝石のような瞳がいくつも並んでいる。そして下半身は蜘蛛で焦茶色に緑のまだら模様。
意外にも背の高さはブリアンと同じくらいだった。
『妾を呼ぶはお前か?』
「はい。ぼくはスイと言います。ここに横穴を掘りたいのですが許可して頂けますか?」
『ここに横穴を?』
「はい。今まではこの山肌に道を作って通っておりましたがご覧のとおり崩れて通れなくなってしまいました。代わりに山を歩くと貴方の鋼糸に人間が引っかかってしまいます」
『うむ。人間が掛かっても不味くて食えぬし、血の匂いで糸の在りかが知られてしまう。なればその横道とやらを作らせた方が得策か』
「ありがとうございます!」
ぼくがお礼をいうと鋼蜘蛛さんは一番後ろの脚で立ち上がり蜘蛛らしくお尻から糸を出した。
ドガガガガッ!!
『穴はこのくらいか?』
「出来ればもっと大きくして欲しいです」
『ふむ。なればこれ程か』
「お畏れながら貴女様が成体となっても悠々と通れるくらいにして頂ければ、と」
『そうか。なればこうだな』
鋼蜘蛛さんが開けてくれた穴は荷馬車が通ってまだまだ余裕の大きさだった。
って事はこの鋼蜘蛛さんて子供???
「ありがとうございます!」
『うむ。ではここを通る時は鹿を1頭差し出せ。さすれば通してやろうぞ』
ずいぶん協力的だと思ったら、まさかの通行料要求‥‥‥。
「1回とは行きと帰り合わせてでよろしいでしょうか?」
『良いだろう』
「鹿だけですか?猪や山羊や兎や熊では駄目なのでしょうか?」
『兎は小さ過ぎる。熊にはよく人のほうが狩られているようだが。それと熊は毛皮が不味い』
「人間は毛皮や角、牙を必要とすることもあります。毛皮を剥いで角や牙を外しても?」
『構わぬ。だが臓物は好物だ』
「承知いたしました。では鹿1頭分の肉と臓物の量を目安に用意しましょう」
「あ、今は獲物がないから、今回だけ魔力でいい?」
通常の通行料はブリアンが交渉してくれたので、ぼくは今回の分の交渉をしてみた。
『そなたの魔力はぜひ味見したいと思うておった』
「はい! どうぞ!」
「スイ!? 大丈夫なのか?」
ブリアンが心配してるけどいつもやってるから平気!
鋼蜘蛛さんとハグ。
遠目には分からなかったけど、肌に見えた上半身には肌色の体毛がみっしり生えていてビロードのようなとても滑らかな手触りだった。
『なんと甘美な魔力であることか!! これは‥‥‥ 通行料の他に月に1度妾にその魔力を捧げに来い。さすればこの山の中で妾の糸に傷つけられぬ加護をすべてのニンゲンに授けてやろう』
「すごい! 鋼蜘蛛さん優しい!!」
「スイは大丈夫なのか?」
「大丈夫だよー! あ、でももし病気や怪我をして来られなかったらどうしよう?」
『その時はそのミミズに言付けをさせろ』
『仰せのままに』
ミミズって…… でも、優しい魔獣で良かったね。
僕たちは向こう側までトンネルを掘ってくれる鋼蜘蛛さんにお礼を言って、配達係の人と別れてブリアンの家に戻った。もちろん小ちゃんにもお礼の魔力をあげた。開通に丸1日かかると言われたので配達係の人は1度家に帰って出直すそうです。
「お帰りなさいませ」
「ただいま、コナン」
「コナンさん、ただいま」
「スイ、コナンも呼び捨てにしないと示しがつかないよ」
「あ、そっか! コナンさ……コナン、ただいま」
「お帰りなさいませ、スイ様」
ちょっと居心地悪いけどそのうち慣れるかな?
山にトンネルができたことをブリアンが報告したらコナンさんの目が点になっていた。
通行料の手配をして残りの書類の処理をして、こっちのブリアンの家に泊まる事になった。
うぅ‥‥‥
慣れないし、明日の朝の畑はどうしよう???
現場は切り立った崖を削って作られた細い道で、もともと馬も通れないくらいの難所だった。
これは崩れるよね。幸い巻き込まれた人はいなくて3日に1度の定期便が発見したそうだ。
復旧作業を始めるために必要物資と人材支援を緊急用伝書鳥エンナを飛ばして届いたのが今朝。こんなに速く領主が来るなんて思っていなかったんだろう、配達係の人がめちゃくちゃ驚いている。驚かせてごめんね?
「状況は?」
「は、はい! ごらんの通りです。ここは岩盤が硬く、道を広げる事もままなりません」
「運ぶ物は?」
「今回は調味料と衣類と大工道具です」
今回は受け取りがメインだからこっちから持って行く物は少ないらしい。
でも今後を考えれば小型の荷車くらい通れる道を作りたいな。
「小ちゃーん!」
大ちゃんだと大きすぎる気がしたので小ちゃんを呼ぶ。
程なくして顔を出した小ちゃんに山の外側ではなくてトンネルを掘れないか調べてもらおうと考えたからだ。岩盤が硬いのはむしろ安全だと思う。
「小ちゃんが調べてくれてる間にご飯食べましょう! お腹空いたでしょ?」
「あ、あの……こちらの方は?」
「紹介が遅れたな。私の伴侶になる人で召喚術士で薬師のスイだ」
「はじめまして、スイです。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします!」
コナンさんが淹れてくれたお茶とパンとハムと野菜とスープを無限収納から取り出した。
「無限収納をお持ちなんですか!?」
「はい。召喚術の応用なんですよー」
「うちの祖父も持っておりましたが、中に入れる物の大きさや重さで魔力を消費するとかでたいした物は入れられませんでしたよ?」
「……そうなの?」
……倉庫代わりに大量に入れてるけど。
「こんな素晴らしい方がブリアン様と結婚して下さるんですか? みんなでお祝いしなくちゃ! やっぱり婚礼衣装はイェシム絹で?」
「もちろんだ。私の自慢の領民が心を込めて紡いでくれる糸で織った衣装を着たスイはどれほど愛らしいだろうね」
イェシム絹って最高級品だよ?
いいの?
僕からもみんなにお礼の品を用意したいなぁ。
そんな話をしながら寛いでいたら、小ちゃんが戻ってきた。
『スイ、集落の少し手前に出るよう、トンネルが掘れる』
「良かった! アリさん呼ぶ?」
『ここは鋼蜘蛛に頼む方が良い』
「鋼蜘蛛さん?」
「そりゃこの山に巣食ってる魔獣ですよ!?」
鋼蜘蛛さんはこの山を縄張りとする魔獣で、獣道に罠を張って通りかかった生き物を獲って食べるんだけど、その罠は見えない鋭い糸なのでうっかり人が通ると酷い怪我をするらしい。
杖をついてゆっくり歩けば大丈夫なんだけど、他の動物に追いかけられた時なんてその罠にかかって死んじゃう事もあるんだって。それは危ないね。
よし! お話ししてみよう!!
《この地に住まう気高きものよ。力無き我に運命を紡ぐその偉大なる姿を目にする栄誉をあたえたまえ》
魔力を乗せた祈りの言葉は山全体に広がり、必ず魔獣に届く。
程なくして鋼蜘蛛が姿を表した。
上半身は人間で頭に丸い被り物をしているように見える。そこには赤く輝く宝石のような瞳がいくつも並んでいる。そして下半身は蜘蛛で焦茶色に緑のまだら模様。
意外にも背の高さはブリアンと同じくらいだった。
『妾を呼ぶはお前か?』
「はい。ぼくはスイと言います。ここに横穴を掘りたいのですが許可して頂けますか?」
『ここに横穴を?』
「はい。今まではこの山肌に道を作って通っておりましたがご覧のとおり崩れて通れなくなってしまいました。代わりに山を歩くと貴方の鋼糸に人間が引っかかってしまいます」
『うむ。人間が掛かっても不味くて食えぬし、血の匂いで糸の在りかが知られてしまう。なればその横道とやらを作らせた方が得策か』
「ありがとうございます!」
ぼくがお礼をいうと鋼蜘蛛さんは一番後ろの脚で立ち上がり蜘蛛らしくお尻から糸を出した。
ドガガガガッ!!
『穴はこのくらいか?』
「出来ればもっと大きくして欲しいです」
『ふむ。なればこれ程か』
「お畏れながら貴女様が成体となっても悠々と通れるくらいにして頂ければ、と」
『そうか。なればこうだな』
鋼蜘蛛さんが開けてくれた穴は荷馬車が通ってまだまだ余裕の大きさだった。
って事はこの鋼蜘蛛さんて子供???
「ありがとうございます!」
『うむ。ではここを通る時は鹿を1頭差し出せ。さすれば通してやろうぞ』
ずいぶん協力的だと思ったら、まさかの通行料要求‥‥‥。
「1回とは行きと帰り合わせてでよろしいでしょうか?」
『良いだろう』
「鹿だけですか?猪や山羊や兎や熊では駄目なのでしょうか?」
『兎は小さ過ぎる。熊にはよく人のほうが狩られているようだが。それと熊は毛皮が不味い』
「人間は毛皮や角、牙を必要とすることもあります。毛皮を剥いで角や牙を外しても?」
『構わぬ。だが臓物は好物だ』
「承知いたしました。では鹿1頭分の肉と臓物の量を目安に用意しましょう」
「あ、今は獲物がないから、今回だけ魔力でいい?」
通常の通行料はブリアンが交渉してくれたので、ぼくは今回の分の交渉をしてみた。
『そなたの魔力はぜひ味見したいと思うておった』
「はい! どうぞ!」
「スイ!? 大丈夫なのか?」
ブリアンが心配してるけどいつもやってるから平気!
鋼蜘蛛さんとハグ。
遠目には分からなかったけど、肌に見えた上半身には肌色の体毛がみっしり生えていてビロードのようなとても滑らかな手触りだった。
『なんと甘美な魔力であることか!! これは‥‥‥ 通行料の他に月に1度妾にその魔力を捧げに来い。さすればこの山の中で妾の糸に傷つけられぬ加護をすべてのニンゲンに授けてやろう』
「すごい! 鋼蜘蛛さん優しい!!」
「スイは大丈夫なのか?」
「大丈夫だよー! あ、でももし病気や怪我をして来られなかったらどうしよう?」
『その時はそのミミズに言付けをさせろ』
『仰せのままに』
ミミズって…… でも、優しい魔獣で良かったね。
僕たちは向こう側までトンネルを掘ってくれる鋼蜘蛛さんにお礼を言って、配達係の人と別れてブリアンの家に戻った。もちろん小ちゃんにもお礼の魔力をあげた。開通に丸1日かかると言われたので配達係の人は1度家に帰って出直すそうです。
「お帰りなさいませ」
「ただいま、コナン」
「コナンさん、ただいま」
「スイ、コナンも呼び捨てにしないと示しがつかないよ」
「あ、そっか! コナンさ……コナン、ただいま」
「お帰りなさいませ、スイ様」
ちょっと居心地悪いけどそのうち慣れるかな?
山にトンネルができたことをブリアンが報告したらコナンさんの目が点になっていた。
通行料の手配をして残りの書類の処理をして、こっちのブリアンの家に泊まる事になった。
うぅ‥‥‥
慣れないし、明日の朝の畑はどうしよう???
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