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ガルデルとエウラリオ1
しおりを挟むパストが来て10年が経つ。
26歳になった彼はもう全てがパスクと同じサイズになっている。
とは言え、生い立ちが違うからそっくりだけど別個の人間。パスクはパスク、パストはパスト。つい先日、副隊長になったお祝いに金曜日をパストの日にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
町に買い出しに行って迷子になった。
56年…56年も通った町でなぜ迷子…???
まぁ、見知らぬおばあさんの荷物を家まで運んで帰り道に毛馬を避けようと小道に入ったのが原因なのは分かってる。そこから大通りに出る事すら出来ない不思議。この町が城壁で囲まれていてうっかりでは町の外に出られない作りになっているのは助かったけど。
「ふぇぇん、うぇぇぇん…」
どうしたものかと途方に暮れていると、子供の泣き声が聞こえる。迷子かな?
せめて迷子同士一緒に居たら安心させてあげられるかも、って考えて声のする方へ近づくと扉の向こうの下り階段の先だった。
「だれかいませんかー!」
「えっ、えっ、ごめん…ごめんねぇ…」
「いいから泣き止め!悪いと思うなら泣き止め!」
「ごべんだざいぃぃ……!!」
余計に泣いてる…
「そこに誰か居るの?大丈夫?」
「! 助けて下さい!階段が壊れて…」
めきめきばりばりばり
「えーっと…ホントだー…。」
木でできた階段は古くなっていて、子供の体重なら支えられた段まで僕の体重で壊れた…。
「アンタ大人じゃないのかよ!?」
「ゔぁぁぁん!もうダメなんだぁぁ!」
いや、絶対探してくれるし。
「大丈夫だよ。絶対誰かが探しに来てくれるよ。」
何はともあれ、とりあえず灯かな?
扉が閉まっちゃって真っ暗だ。
こっちの世界にライターは無いけどマッチはあった。僕は町に来る時はマッチと携帯食を必ず持っている!…てのは嘘です。
さっき手伝ったおばあさんがお礼にくれたの。箱が綺麗で褒めたら孫が箱の絵を描いてるんだって得意げに言って1箱くれたんだ。
ガスっぽい匂いはしないから大丈夫だろう、とマッチを擦って辺りを見回すと階段を降りた辺りに備え付けの燭台があった。ロウソクもある。
2本目のマッチを擦って燭台に灯をともすと、暗さに馴れた目には充分な明るさになり、子供たちが灯りにホッとするのが分かった。
「はじめまして、僕はヨシキ、16歳だよ。君たちは?」
「オレはガルデル、13歳だ。こっちは弟のエウラリオ、9歳。」
「よっよろっ、しくっ…」
まだ少ししゃくり上げているエウラリオも礼儀正しく挨拶をした。
「助けてあげられなくてごめんね?でもきっとすぐに助けが来るから大丈夫だよ。」
「う…うん。」
「リオが…ねじゅみにぃぃぃぃ…」
何の事かと思ったらネズミにお菓子を取られて追いかけて来てここに落ちたらしい。
「怖かったね。大丈夫だよ。一緒にお迎え待とうね?」
抱きしめてよしよしと頭を撫でればしがみついて余計に泣いた。
少し泣いてスッキリしたリオと兄のガルを待たせ、割れた階段の破片を1つ拾って灯をともし、松明代わりにして部屋をあちこち調べると、ほこりを被った棚にはたいした物はなく、床に置かれた箱の中に錆びた大工道具。他には古びたソファセット、ろうそくと燭台、空の木箱。
ソファに被せてあった布を外すと、座れる程度には綺麗だったので、壁の燭台のろうそくが燃え尽きたらすぐに火をつけられるように空の木箱に燭台を置き、ソファに座った。
「ヨシキ…リオ、寂しいから抱っこして?」
「お前!そんなに大きいくせに何言ってんだ!」
「だって暗いの怖いんだもん。」
確かに9歳にしては大きいけど、まだ僕よりだいぶ小さいんだから甘えても良いんだよ?
「じゃぁ、2人掛けの方にみんな一緒に座ろうか。」
長いソファの真ん中に座って左右に2人の兄弟を座らせる。
リオはぎゅっと抱きついて来て、ガルは僕の強引さに戸惑っている様だ。思春期かな?
「少し寒いからくっついている方が良いと思うけど、いや?」
「…べつに。」
ガルは照れているだけらしい。
3人で寄り添って助けを待った。
…助けが来ない。
2時間は経ったと思うけど、探す声も聞こえない。時間かかるのかなぁ?
「おしっこ!」
うとうとしていたリオが突然、部屋の端へ行ってズボンとパンツを降ろし、壁に向かって放尿する。
素早い!そして長い(笑)
戻って来たリオにおねしょしなくて偉いね、と言うともう9歳だもん!と誇らしげに言った。
「ヨシキはおしっこ出ない?」
「まだ出ないかな?」
「ガルはー?」
「おれは…」
「我慢する事ないよ?」
「………」
ガルは少し考えてからリオが行った隅っこへ行って戻って来た。
「おむかえまだかなぁ?」
「まだかなー?早く来ると良いねー。」
「ねー?」
する事がないので2人の事を聞いたり、僕の話をした。怖がるかも知れないので夢魔である事は秘密。
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