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パスト編4
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「あ…ごめん。今日はパストの恋人なのに…」
「ソイツの恋人になる時間は夕食後から次の朝までだ。さっきも今も時間外だろ。」
「そんな事務的な…」
むくれた顔も可愛い…じゃなくて。
舞い上がってたけどヨシキにとって今回のは新人歓迎の一環で…恋人に対しておれが嫉妬したりがっかりしたりするのはお門違いだろう。
「いえ、こちらこそすみません。」
「夕食の仕込みの手伝いに来ました!あれ?新人君は今日、休みだろ?」
「そうなんですが、時間を持て余しまして…」
「おぉ!じゃぁ、一緒にパン捏ねようぜ!俺はエネコ、よろしくな。」
世話好きなのか喜々としてパンの捏ね方を教えてくれる。
ちゃっかり3分の2をおれに押し付けて来るが、ちょうどいい運動だ。
無心で捏ねているうちに頭も冷えた。
「新人はまだヨシキにどんな給仕をして欲しいとかないのか?」
ヨシキに初めて会った時に一緒に居たじーさんが話しかけて来た。
「して欲しい給仕、ですか?」
「おぉ。好みの姿で看板娘や看板息子、まれに看板女将になってもらって、みんなにちやほやされてるのを連れて帰るって演出だ。」
少し考えてみたが思いつかない。
「楽しそうですがすぐには思いつかないので、今日は諦めます。」
「そうだな。他の奴らのを見て考えておくと良いぞ。」
「ありがとうございます。…あの、それであなたは?」
「おれはセサル、元はここの隊員だったが年で引退して隣の家に住みながらここの雑用をしてるんだ。」
「ヨシキの恋人だよ!」
このじーさんが!?
口を挟んだエネコさんの言葉に驚いて固まってしまった。
「良い顔で驚くなぁ。」
はははと笑われてからかわれたのかと思ったけど本当だと言われてしまった。
「ヨシキは歳をとらないから、とっくに追い越してしまったしな。」
「歳を…取らないんですか。」
「あぁ、永遠にあの姿だからずっと28歳だ。」
「28!?」
「ま、本人に聞いてみろ。」
やっぱりからかわれてて、聞いたら怒られるんじゃないのか?
「何の話?」
「もちろんヨシキがいかに魅力的かって話だよ。」
食べ終わった頃に来たヨシキが笑っている。
「もう夕飯は食べたのか?」
「うん。料理長と一緒に食べたよ。」
「ふぅん。」
じーさんが意味ありげに笑うからおれが赤面してしまう。見透かされてる…?
「じゃあ、食べ終わったら部屋に行く?それとも温泉?」
「えっ…と……部屋、で。」
絶対にからかわれるのが分かっていて温泉に行く勇気はない。おれの隣に寄り添うように歩く小さなヨシキが、おれの意識を支配する。
ついさっき、焦らなくて良いと思ったばかりなのに全くままならない。
部屋に入り、自分の部屋だと言うのに所在なく立ち尽くしていると、背後からヨシキが抱きついて来た。
「広い背中…カッコいいね。」
「は…体格には恵まれましたので…」
「ぼくは隊員じゃないから敬語は要らないよ?」
「いえ…28歳と聞きまして…」
「夢魔になった時の年齢だね。確かに不老だから歳をとらないけど、逆に何歳でも良いって言うか…16歳にしとけば?ってよく言われてる。」
「…16歳」
「16歳はさすがに無理があるよねぇ。」
「いや…可愛いから…何歳でも…」
寧ろもっと下に見えるんだが。
「みんなも成人してる方がいやらしい事できるからって、16って言ってる気がするんだよね。」
「そう言う理由ですか!?」
「多分ね。」
腕の下から顔を出してイタズラっぽく笑うヨシキの見た目はは13~14歳がせいぜいだ。
おれは自分が16だからそこまで罪悪感はないが、年が離れるほど気になるのかも知れないな。
「で、どんな姿になる?女の子でも大人の女性でも男性でもなれるよ?」
そう言えばそんな事を言っていたけど、ヨシキを一目見た時から他の姿なんて考えもしなかった。
「今のままの姿…が良いです。」
「嬉しい!ありがと!!」
前に回ってぎゅっと抱きつくヨシキはおれの唇の高さくらいまでしかない。
恐る恐る腕を回し、見上げる額にキスをすると真っ赤になって慌てている。どうしたのか?
「ああああのね、ぼくおでこにキスされるのっていつまでたっても恥ずかしくって…ううう狼狽えちゃうて言うか…」
これが可愛い生き物か。
夢魔だと言うのに触れるだけのキスではわはわと慌てふためく姿に調子に乗らない訳がない。
「わっ!」
抱き上げてベッドに運び、そっと降ろしてキスの雨を振らせた。
「ちょっ…ひゃっ…あ……はぁん!」
甘い声が出た所を舐めるとさらに甘い声が続き、嬉しくなってしつこく舐めた。
「もう!そこばっかり…もっと…こっちも…」
そう言って顔をあげられ、唇を重ねられた。
ちろちろとくすぐるような小さな舌の動きを真似して舌を伸ばせばちゅっと吸い付かれて甘噛みされた。そして口内を舐め回されてこんな所が気持良いのだと、ついさっき教えられたのだと思い出した。
「キスって気持良いよねぇ…」
うっとりとした顔でそんなことを言われたら下腹部が苦しくなる…
暴発を防ぐためには苦しいぐらいがちょうどいい気もするが。
「ソイツの恋人になる時間は夕食後から次の朝までだ。さっきも今も時間外だろ。」
「そんな事務的な…」
むくれた顔も可愛い…じゃなくて。
舞い上がってたけどヨシキにとって今回のは新人歓迎の一環で…恋人に対しておれが嫉妬したりがっかりしたりするのはお門違いだろう。
「いえ、こちらこそすみません。」
「夕食の仕込みの手伝いに来ました!あれ?新人君は今日、休みだろ?」
「そうなんですが、時間を持て余しまして…」
「おぉ!じゃぁ、一緒にパン捏ねようぜ!俺はエネコ、よろしくな。」
世話好きなのか喜々としてパンの捏ね方を教えてくれる。
ちゃっかり3分の2をおれに押し付けて来るが、ちょうどいい運動だ。
無心で捏ねているうちに頭も冷えた。
「新人はまだヨシキにどんな給仕をして欲しいとかないのか?」
ヨシキに初めて会った時に一緒に居たじーさんが話しかけて来た。
「して欲しい給仕、ですか?」
「おぉ。好みの姿で看板娘や看板息子、まれに看板女将になってもらって、みんなにちやほやされてるのを連れて帰るって演出だ。」
少し考えてみたが思いつかない。
「楽しそうですがすぐには思いつかないので、今日は諦めます。」
「そうだな。他の奴らのを見て考えておくと良いぞ。」
「ありがとうございます。…あの、それであなたは?」
「おれはセサル、元はここの隊員だったが年で引退して隣の家に住みながらここの雑用をしてるんだ。」
「ヨシキの恋人だよ!」
このじーさんが!?
口を挟んだエネコさんの言葉に驚いて固まってしまった。
「良い顔で驚くなぁ。」
はははと笑われてからかわれたのかと思ったけど本当だと言われてしまった。
「ヨシキは歳をとらないから、とっくに追い越してしまったしな。」
「歳を…取らないんですか。」
「あぁ、永遠にあの姿だからずっと28歳だ。」
「28!?」
「ま、本人に聞いてみろ。」
やっぱりからかわれてて、聞いたら怒られるんじゃないのか?
「何の話?」
「もちろんヨシキがいかに魅力的かって話だよ。」
食べ終わった頃に来たヨシキが笑っている。
「もう夕飯は食べたのか?」
「うん。料理長と一緒に食べたよ。」
「ふぅん。」
じーさんが意味ありげに笑うからおれが赤面してしまう。見透かされてる…?
「じゃあ、食べ終わったら部屋に行く?それとも温泉?」
「えっ…と……部屋、で。」
絶対にからかわれるのが分かっていて温泉に行く勇気はない。おれの隣に寄り添うように歩く小さなヨシキが、おれの意識を支配する。
ついさっき、焦らなくて良いと思ったばかりなのに全くままならない。
部屋に入り、自分の部屋だと言うのに所在なく立ち尽くしていると、背後からヨシキが抱きついて来た。
「広い背中…カッコいいね。」
「は…体格には恵まれましたので…」
「ぼくは隊員じゃないから敬語は要らないよ?」
「いえ…28歳と聞きまして…」
「夢魔になった時の年齢だね。確かに不老だから歳をとらないけど、逆に何歳でも良いって言うか…16歳にしとけば?ってよく言われてる。」
「…16歳」
「16歳はさすがに無理があるよねぇ。」
「いや…可愛いから…何歳でも…」
寧ろもっと下に見えるんだが。
「みんなも成人してる方がいやらしい事できるからって、16って言ってる気がするんだよね。」
「そう言う理由ですか!?」
「多分ね。」
腕の下から顔を出してイタズラっぽく笑うヨシキの見た目はは13~14歳がせいぜいだ。
おれは自分が16だからそこまで罪悪感はないが、年が離れるほど気になるのかも知れないな。
「で、どんな姿になる?女の子でも大人の女性でも男性でもなれるよ?」
そう言えばそんな事を言っていたけど、ヨシキを一目見た時から他の姿なんて考えもしなかった。
「今のままの姿…が良いです。」
「嬉しい!ありがと!!」
前に回ってぎゅっと抱きつくヨシキはおれの唇の高さくらいまでしかない。
恐る恐る腕を回し、見上げる額にキスをすると真っ赤になって慌てている。どうしたのか?
「ああああのね、ぼくおでこにキスされるのっていつまでたっても恥ずかしくって…ううう狼狽えちゃうて言うか…」
これが可愛い生き物か。
夢魔だと言うのに触れるだけのキスではわはわと慌てふためく姿に調子に乗らない訳がない。
「わっ!」
抱き上げてベッドに運び、そっと降ろしてキスの雨を振らせた。
「ちょっ…ひゃっ…あ……はぁん!」
甘い声が出た所を舐めるとさらに甘い声が続き、嬉しくなってしつこく舐めた。
「もう!そこばっかり…もっと…こっちも…」
そう言って顔をあげられ、唇を重ねられた。
ちろちろとくすぐるような小さな舌の動きを真似して舌を伸ばせばちゅっと吸い付かれて甘噛みされた。そして口内を舐め回されてこんな所が気持良いのだと、ついさっき教えられたのだと思い出した。
「キスって気持良いよねぇ…」
うっとりとした顔でそんなことを言われたら下腹部が苦しくなる…
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