いつまででも甘えたい

香月ミツほ

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第26話

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それから2週間ほど平和な時が続いた。
毎日調理補助として働いて夜はガウルの部屋でセサルと3人で寝たし、元気になったイラリオは剣の稽古や体術に真剣に取り組むようになり、隙を見ては誘いをかけて来る。ガリコとはとっても仲の良い友達になった。

結局、副隊長以外は敬語不要で呼び捨て推奨だったので全員友達みたいだ。

毛馬の毛刈りもした。…近づくと遊ばれるので、見てただけ。

そうして楽しい毎日を過ごしていたら、パスクが馬車を返しに来た。
なんと、鑑定能力持ちの魔術師を連れて。

魔術師、いたんだ!

それはともかく、やっぱり異世界から来た存在は表面化していない悪意がある可能性が捨てきれないので鑑定を受けなくてはならないそうだ。表面化してない悪意を調べるのって、いじわるされたり酷い事言われて怒らないか調べるんだったらやだなぁ。

不安はあってもやましい気持はないので拒否する気はない。
大人しく隊長室の続きの応接室へ行った。
立会人はガウル、フランセスク副隊長、セサル、イラリオ、パスク。

簡単な質問に答えた後、両手を差し出すように言われた。

魔術師に言われるがまま彼の手を取り、深呼吸をすると触れ合う指先から暖かいエネルギーが流れ込んで来るのが分かった。そのエネルギーは探るように全身を緩やかに駆け巡り、また指先から魔術師に戻って行く。何か分かったのだろうか?



「…悪意がない事が分かりました。」

そんな簡単に!?

「悪意がない、つまりあなたは人間ではありません。」

「「「「「えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」」」」」

僕、人間じゃないの!?
え?え?それ、幽霊とか?まさか本当に妖精とか?

「ええと…はっきりと断定ができないのですが…おそらく…夢魔のような存在ではないかと推測します。」

「夢魔…?」

夢に出てくる魔物?悪夢を見せたりするの?

「悪夢ではなく性的な夢を見せる存在です。夢に現れてその人の理想の姿で精を貪る。」

それってインキュバスとかサキュバスとか?
じゃぁそのうちコウモリの羽と細いしっぽが生えて来るの?

ポンッ!

「え?」

「自身が何者かを自覚する事で能力が解放されたようですね。」

コウモリ羽としっぽが生えた。うそぉ…しかもちゃんと動かせるし!

「いままで自分を人間だと思っていたせいで無意識に能力を封印していたようです。これからは夢魔としての本能が目覚め、行動に現れて行くでしょう。…あなたはこれから、何がしたいですか?」

僕がしたいこと…?

「うーん… あっ!毎日温泉入りたい!あと料理のメニュー増やしたいし、家畜を飼って毎日新鮮な牛乳が飲みたい!」

「それが夢魔のやりたい事ですか!!」

「なんで怒るの…?」
「夢魔なら聖職者を堕落させたいとか男を喰いまくるとか王を籠絡して国を傾けたりしたいんじゃないんですか!?」

「ぜんっぜん興味ない。」

それ、何が楽しいの?

「それじゃぁもしかして、死んだりしないのかな?」
「精液が足りなくなれば死ぬかもしれません。」

「…寂しいと死んじゃう、みたいな?」

ウサギか!?

ポポンッ!

コウモリの羽としっぽが消えてウサ耳とウサギしっぽが生えた。

「イメージした物に変化できるようですね。」
「本当かなぁ?」

イメージして気合いを入れて…

「女の子になれ!」

ポポンッ!

「うわぁ!おっぱいだ!うわうわうわ!軟らか~い!」

普通サイズのふくらみが僕の胸に付いている。

「ふぁっ!ちょ、やぁん!」

みんなが寄ってたかって触りに来る。ふにゅふにゅされるの気持良い。誰かが股間に触れたけど、たしかにあるべきものが無く、あるはずの無いものがあるようだ。

「も、もどれ…!」

息も絶え絶えに元に戻ったけど、乳首を触られる気持良さは変わらなかった。…そうじゃなくて!!

「危険だ。砦で女になんかなったら俺が睨みを利かせた所で暴走は止められないだろう。俺達以外の前で女になるんじゃないぞ。」
「うん、気をつける…」

「魔物だったんじゃぁ、独り占めなんてできない相談だな。」

え?

「そうですね。分け隔てなく愛を注いでもらえば良いんじゃないですか?皆さん。」

副隊長が他人事のように言う。いや、他人事なんだけどさ。

「それって、1人を選ばなくて良いって事?」
「1人を選んでその人が死んだら、寂しくて死んじゃうんでしょう?そんなの嫌だよ。」
「複数の相手がいればずっと寂しくならないね?」
「あんまり相手が多すぎると順番が回って来ないからイヤだがな。」
「4人ならいいだろ。」

なんか勝手に人数が決められてますけど。

「いいの?ハーレムエンドなの?」
「ハーレムエンド?」
「全員とずっと仲良く幸せに暮らしました、って終わるお話だよ。」
「「「「それだ!」」」」



鑑定魔術師さんはおれに悪意がない事と野望がない事を報告すると言って1泊してから帰って行った。

町までは馬車で送るので結局また馬車で町へ行く。ついでにお酒の補充と靴の受け取りに行った。それで宿屋では料理人見習いの彼と仲良くなりつつも微妙に距離を取って甘酸っぱさにドキドキした。宿屋の主人から客に惚れるな、って釘を刺されてたみたい。

そんなこんなで町へ行っては宿屋でパスクの仲間達と酒を飲み、イラリオにエロい下着を着せられたり、パスクの筆下ろしもできちゃったりした。パスクはそのままの方が良いって言うから男のままでした。

夢魔だって分かる前に3人とは最後までしたけど、夢魔になってからの方が更に気持良い。
心の枷が外れたみたい。

この先、僕は年を取るのか、死ななかったら皆を見送る事に耐えられるのか、想像もつかないけど考えても仕方がないと思っている。

いまはただ、ずっとずっと甘えていたい…。
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