いつまででも甘えたい

香月ミツほ

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第22話

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「ちゃんとメシ食わせただろ?酌をしろよ、妖精ちゃん。」

誰が妖精か。妖精になるのは30過ぎの処女だろう。僕は魔法使いになるんだよ!

…きっとなるな。(心の汗)

「おじさんは何者なの?」
「オニーサンは商人だよ。」
「何を売ってるの?」
「売れそうなら何でも売るさ。」
「非合法な物も売るって事?」
「そうは言ってねぇなぁ。」

「…他の人にお酌しなくていいの?」
「いらね「お頭!酌!酌して欲しい!!あと着がえて欲しい!」

1人がそう言うと皆、我も我もと声を上げる。
ん?着がえ?

「荷はおめぇの服だろ?あんな服着せようなんてやっぱり色子だろうに…」

ワンピースの事言ってるのかな?
服を並べて皆でアレが良いコレが良いと言い合って多数決でショートパンツに決まった。シャツはこのままで良いらしい。

余分に裾を折り返されて、下着の方のパンツが見えそうです。

言われた通りお酌をしながら懐柔できそうな人を物色する。
と、見張りの人がいる。そばにイラリオを転がして…

「見張りの人が宴会に参加してる?」
「もうすぐ交代だし、どこで見張ってたって構わねぇだろ。…って、あぁ!お前もうすぐ交代なのにそんなに飲みやがって!」

何やってんだか。

「じゃぁ、もう交代って事で。はい、どうぞ。」

グラスを渡してお酒を注ぐ。
躊躇っている所を酔わない程度にしておけば大丈夫でしょ?って煽ったら乗って来た。
逃げ出す体力は無いけど、時間稼ぎしてればきっとガウルさんが探しに来てくれるだろう。

…来てくれるよね?

それからも次々と酒を勧めていると、何かにつけてリーダーに呼び戻される。

「おじさんは寂しがり屋ですか?」

と弄ってみる。

「オニーサンだって言ってんだろ!」
「えー?何歳?」
「26だ!」
「えぇっ!?歳下なの?」
「お前いくつだ?」
「28。」

「…本物の妖精だったのか。」

ンな訳ない!

「まぁ、大人に見られたいんだろうが、もうちょっと信じそうな嘘をついたらどうなんだ?背伸びしたい年頃だよな。」
「じゃぁおじさんも若く見られたい年頃なんだね。」
「んだとゴラァッ!」

怒って立ち上がるおじさんを大きい人が羽交い締めにして止める。

「殺さずに捕まえろ!!」

突然、大きな声が聞こえて何人もの人が周りの木の陰から飛び出して来た。
驚いて固まっていると後ろからこっちだと呼ぶイラリオの声がしたので何も考えずにそちらへ向かった。

あっという間に一網打尽。

イラリオも拘束を解かれていいた。

「大丈夫?」
「何ともない。俺がかっこよく助けたかったのに、残念だなぁ。」
「でも一緒にいてくれるだけで心強かったよ。」
「次はかっこいいとこ見せるから!」
「次は無い方が良いかなぁ?」

クスクス笑い合いながらそんな会話をしていたら遠くから蹄の音が聞こえて来た。

「ヨシキ!そこにいるのか!?」

ガウルさんだ。

「ガウルさん!ここにいます!助けてもらいました!!」
「助けられた!?」
「よう!ガウル。久しぶりだな!ちょっとコイツら町へ運ぶ前に一晩泊めてくれ。」
「パスクアル!なんでアンタがここに!?」

知り合いだったのかな?

悪者たちは何人も殺している強盗団で隣国へ逃げる為この森を抜けようとしていたらしい。それを追いかけて来ていたのが昨夜一緒に飲んだ武装集団で、リーダーはパスクアルさん。ガウルさんの先輩兵士だったんだけど窮屈だと言って兵士を辞め、賞金稼ぎをしているうちに集団になった。

で、町より近いし馬車で運ぶと楽だから1晩砦に泊って馬車を借りたいんだって。
賞金首を取り締まるのは砦も協力しないといけないので否やは無い。一気に人数が増えた。

「ヨシキ、こっちに乗って行かないか?」

ガウルさんが馬に乗らないかと誘う。その高さと脚がぶら下がる感覚、ぜったい無理です。

「あ…うぅ…その、おれ高い所が苦手で…」
「…そうか。」

残念そうだけど分かってくれて良かった。
馭者台のイラリオの隣に座って、今度こそ砦に帰る。

「それにしても…ヨシキの脚は目の毒だね。」
「お見苦しい物を…」
「違うよ!クリーム色がかったなめらかな肌がカンテラに照らされて艶かしさが際立って…触りたくなるんだよ。」

月明かりで見るとみんな美しく見えてしまう現象かな?
ちょっと恥ずかしくなった。

砦につくと強盗団をどこかに連れて行ったり、荷物を運んだり増えた人数分の食事を作ったりといろいろ慌ただしかったけど、何とか落ち着いた。

強盗団が飲んでたお酒は砦の品だったのでまた買いに行かなきゃならないらしい。ごめん、どんどん飲ませちゃった。

「良い判断だ。逆らわずに判断力と戦闘力を削いでくれていたおかげで捕獲が簡単だった。礼を言う。」

パスクアルさんが褒めてくれた。

「じゃぁ、馬車を返しに来る時、お酒持って来てくれる?」
「もちろんだ。協力者として賞金の一部も受け取ってもらわなきゃな。」
「お金要らないけど…」
「欲しい物は無いのか?」

しばし考え込んで思いついたのは、ちゃんとした男物の服。

「そうだ、ちゃんとした男物の服が欲しい!」
「今の服、似合ってるぞ。」
「これ仕立て屋さんが娘さんに作った服だから女物なんです。」

腰のリボンが恥ずかしい。

それにしても何でおれはガウルさんの片足に座らされているんだろうか。
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