22 / 39
第22話
しおりを挟む「ちゃんとメシ食わせただろ?酌をしろよ、妖精ちゃん。」
誰が妖精か。妖精になるのは30過ぎの処女だろう。僕は魔法使いになるんだよ!
…きっとなるな。(心の汗)
「おじさんは何者なの?」
「オニーサンは商人だよ。」
「何を売ってるの?」
「売れそうなら何でも売るさ。」
「非合法な物も売るって事?」
「そうは言ってねぇなぁ。」
「…他の人にお酌しなくていいの?」
「いらね「お頭!酌!酌して欲しい!!あと着がえて欲しい!」
1人がそう言うと皆、我も我もと声を上げる。
ん?着がえ?
「荷はおめぇの服だろ?あんな服着せようなんてやっぱり色子だろうに…」
ワンピースの事言ってるのかな?
服を並べて皆でアレが良いコレが良いと言い合って多数決でショートパンツに決まった。シャツはこのままで良いらしい。
余分に裾を折り返されて、下着の方のパンツが見えそうです。
言われた通りお酌をしながら懐柔できそうな人を物色する。
と、見張りの人がいる。そばにイラリオを転がして…
「見張りの人が宴会に参加してる?」
「もうすぐ交代だし、どこで見張ってたって構わねぇだろ。…って、あぁ!お前もうすぐ交代なのにそんなに飲みやがって!」
何やってんだか。
「じゃぁ、もう交代って事で。はい、どうぞ。」
グラスを渡してお酒を注ぐ。
躊躇っている所を酔わない程度にしておけば大丈夫でしょ?って煽ったら乗って来た。
逃げ出す体力は無いけど、時間稼ぎしてればきっとガウルさんが探しに来てくれるだろう。
…来てくれるよね?
それからも次々と酒を勧めていると、何かにつけてリーダーに呼び戻される。
「おじさんは寂しがり屋ですか?」
と弄ってみる。
「オニーサンだって言ってんだろ!」
「えー?何歳?」
「26だ!」
「えぇっ!?歳下なの?」
「お前いくつだ?」
「28。」
「…本物の妖精だったのか。」
ンな訳ない!
「まぁ、大人に見られたいんだろうが、もうちょっと信じそうな嘘をついたらどうなんだ?背伸びしたい年頃だよな。」
「じゃぁおじさんも若く見られたい年頃なんだね。」
「んだとゴラァッ!」
怒って立ち上がるおじさんを大きい人が羽交い締めにして止める。
「殺さずに捕まえろ!!」
突然、大きな声が聞こえて何人もの人が周りの木の陰から飛び出して来た。
驚いて固まっていると後ろからこっちだと呼ぶイラリオの声がしたので何も考えずにそちらへ向かった。
あっという間に一網打尽。
イラリオも拘束を解かれていいた。
「大丈夫?」
「何ともない。俺がかっこよく助けたかったのに、残念だなぁ。」
「でも一緒にいてくれるだけで心強かったよ。」
「次はかっこいいとこ見せるから!」
「次は無い方が良いかなぁ?」
クスクス笑い合いながらそんな会話をしていたら遠くから蹄の音が聞こえて来た。
「ヨシキ!そこにいるのか!?」
ガウルさんだ。
「ガウルさん!ここにいます!助けてもらいました!!」
「助けられた!?」
「よう!ガウル。久しぶりだな!ちょっとコイツら町へ運ぶ前に一晩泊めてくれ。」
「パスクアル!なんでアンタがここに!?」
知り合いだったのかな?
悪者たちは何人も殺している強盗団で隣国へ逃げる為この森を抜けようとしていたらしい。それを追いかけて来ていたのが昨夜一緒に飲んだ武装集団で、リーダーはパスクアルさん。ガウルさんの先輩兵士だったんだけど窮屈だと言って兵士を辞め、賞金稼ぎをしているうちに集団になった。
で、町より近いし馬車で運ぶと楽だから1晩砦に泊って馬車を借りたいんだって。
賞金首を取り締まるのは砦も協力しないといけないので否やは無い。一気に人数が増えた。
「ヨシキ、こっちに乗って行かないか?」
ガウルさんが馬に乗らないかと誘う。その高さと脚がぶら下がる感覚、ぜったい無理です。
「あ…うぅ…その、おれ高い所が苦手で…」
「…そうか。」
残念そうだけど分かってくれて良かった。
馭者台のイラリオの隣に座って、今度こそ砦に帰る。
「それにしても…ヨシキの脚は目の毒だね。」
「お見苦しい物を…」
「違うよ!クリーム色がかったなめらかな肌がカンテラに照らされて艶かしさが際立って…触りたくなるんだよ。」
月明かりで見るとみんな美しく見えてしまう現象かな?
ちょっと恥ずかしくなった。
砦につくと強盗団をどこかに連れて行ったり、荷物を運んだり増えた人数分の食事を作ったりといろいろ慌ただしかったけど、何とか落ち着いた。
強盗団が飲んでたお酒は砦の品だったのでまた買いに行かなきゃならないらしい。ごめん、どんどん飲ませちゃった。
「良い判断だ。逆らわずに判断力と戦闘力を削いでくれていたおかげで捕獲が簡単だった。礼を言う。」
パスクアルさんが褒めてくれた。
「じゃぁ、馬車を返しに来る時、お酒持って来てくれる?」
「もちろんだ。協力者として賞金の一部も受け取ってもらわなきゃな。」
「お金要らないけど…」
「欲しい物は無いのか?」
しばし考え込んで思いついたのは、ちゃんとした男物の服。
「そうだ、ちゃんとした男物の服が欲しい!」
「今の服、似合ってるぞ。」
「これ仕立て屋さんが娘さんに作った服だから女物なんです。」
腰のリボンが恥ずかしい。
それにしても何でおれはガウルさんの片足に座らされているんだろうか。
10
お気に入りに追加
401
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる