13 / 39
第13話
しおりを挟む幅5mくらいの川を渡る。小川だ。
その上に架かる橋には、恐ろしい事に欄干がない。雪解け水で川が増水した時になるべく物が引っかからないように、だって。それでも数年に1度流される橋。砦の兵士総出で橋を架けるって…大変だなぁ。
そこから先は荒れ地だけどところどころに草原が見える。
地下水脈が浅くなっているのかも知れない。
森を抜けてからは軽快に進む。
スライムジェルクッションのおかげでお尻はノーダメージです。
「ドラゴンとかいないかな?」
「ドラゴンは洞窟の中とかじゃない?」
「いるの!?」
「伝説でしか知らないねぇ。」
なんだぁ。
基本、魔獣も魔の森の中だけで存在しているので、それ以外の場所には普通の生き物しかいない。スライムもそうだって。ただ、世界中に魔の森が点在しているので森によって違う魔獣がいると言う。イラリオさんも行った事はないので噂だけ。それと、魔獣と普通の生き物の違いは姿と敵意。異世界から来た別種族でも敵意がなければ魔獣扱いにはならない。
おれだ!
夕方近くになって大きな川に辿り着いた。
150mくらいありそうな川幅。ちゃんと橋が架かっているのが凄い。でもここも欄干がないから怖いです。
「ここを渡れば町だよ。」
そう言って指し示す先には城壁に囲まれたかなり大きな建造物。川が増水する事があるので城門が高い位置にあり、そこまではスロープになっている。川の水が入らないよう、川下の向こう側から上がらなくてはならない。そしてその門から入ると、広場に出る。盛り土がしてあって街全体が城門の高さになっているので、その分、地下室も多い。
増水する春先は地下室は塞がれる。
台風対策のように。
そんな説明を聞きながら町に辿り着いた。
もう日が暮れる。……お腹空いたよー!!
宿屋で馬車も預かってくれて毛馬も世話してくれる契約になっている。
部屋は中級以上のダブルの部屋だった。
いつもは1人なのにこの部屋?
貧乏性のおれには居心地が悪い部屋だ。
で、すぐに夕飯を!って期待したけどスライムゼリーを早く売りたいんだって。素材屋さんがあるらしい。そこでさっきのスライムクッションも加工し直して防腐加工もしてもらう。
それなら行かねばなるまい。
大きな素材も引き取るから荷馬車で行ける所に店はある。量の多さに驚かれた。
買い取り価格は相場も貨幣価値も分からないのでチンプンカンプンだ。でもイラリオさんが交渉しているから希望額より安いのかも知れない。
と、突然引っ張られて話に引き込まれた。
「無理を承知で頼むよ。この可愛い子のお尻が真っ赤に腫れ上がったら可哀想だろう?砦から森を抜けもしないうちに擦り剥けて真っ赤になってたんだ。で、傷薬塗ったら泣いちゃってさぁ…」
どうしてその話になってるの?
あと泣いてないから!涙目になってただけだから!!
「ぼうず、尻はもう大丈夫か?」
「はい、傷薬とスライムクッションのおかげでもう大丈夫です。」
「見せてみろ。」
「お尻を!?」
いきなり尻を見せろなんて言われて見せる訳がない。
男同士でも!!
「大げさに言って無理を通そうって腹だろうが、他にも仕事が山ほどあるんだよ!!」
だから何の話?
イラリオさんに問いかけると、明後日帰るまでにちゃんとしたスライムクッションを作ってくれと頼んでいるんだけど間に合わん、と断られているそうだ。
それなら仕方ない。
この頼りない二の腕を見せよう!
袖を捲って腕を出して触らせると、おじさんは唸った。後ろからおれの二の腕を揉むイラリオさんがお尻と同じくらい軟らかい~って嬉しそうだ。
「…仕方ない。無理を聞いてやる。」
「ありがとうございます。」
赤ん坊かよ、しかたねぇなって聞こえたけど聞かなかった事にして笑顔でお礼を言った。
そうして宿に戻って食堂で夕飯を食べる。
スープとサラダとステーキとキッシュとパン。梨のような果物も出た。
お腹いっぱいになって部屋に戻ってシャワーを浴びる。当然のようにイラリオさんも入って来ておれを洗う。隊長命令だからね、とウィンクするけど、そこは命令されてなかったと思うよ。
まぁ、別に良いか。
この世界では寝間着は冬に着るものでそれ以外は肌着とパンツで寝るモノらしい。特にこだわりもないのでその通りにする。明日は自分サイズの服が着られるかな?
「さぁ、おいで。」
またか、と思いながらベッドに入ると抱きしめられて頭を撫でられる。
はぁ…気持良い。
「抱き心地、最高。」
それは良かった。
もう瞼が重くて目が開かない…
丸1日馴れない馬車に揺られてかなり疲れていたらしい。
10
お気に入りに追加
401
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる