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第12話
しおりを挟む砦から町までは一本道だ。
初めは森の中。そして川を渡った荒地の先にもう一度川がある。そこを渡れば町だ。
今から出て日暮れごろに到着する見込み。
「気をつけろよ!イラリオ、何があってもヨシキを守れ。命令だ。」
「了解致しました!!」
無茶な命令だけど、返事を濁す場面じゃない。
「可愛い服とエロい下着を仕入れて来ます!」
「真面目にやって下さい!!」
可愛い服は子供服なのか女の子の服なのか分からないから置いといて、エロい下着は似合わないよ!絶対無駄になるから!
「…冗談だよね?」
「冗談半分、本気半分だよ。似合えばなんでも良いじゃない。」
「エロい下着なんか似合いません。」
「隊の予算使うんだから気にしなくても良いのに。」
「ムダ遣い反対!」
イラリオさんが分かった分かったと適当に流すのを不安に思いながらも、不毛な言い争いは終わりにした。
時々馬車を止めては何かを採集する。つる植物のつるが膨らんで色づいている所だ。
「それは何?」
「魔獣除けだよ。」
虫が卵を産みつけると植物が栄養を取られまいと防御反応を示す。それがこの変色した部分で、これを火にくべると魔獣が嫌がる匂いが出る。乾燥させても効果は変わらないので見つけたら必ず採集して乾燥させるんだそうだ。そう説明しながら馬車の脇にぶら下げた。
また馬車を停め、今度は木の皮を剥がす。
するとそこには小さな丸い粒がずらっと並んでいた。
「これは?」
「食べ物。美味しいよ?」
見た目は丸いチョコレートに似ている。
緊張しながら1つ口に入れると、味はビターチョコだった。
「美味しい!!これたくさん採れるの?」
「そんなには取れないかな?樹皮の内側に稔る種なんだけど…」
剥がした部分の樹皮は少し他と色が変わっている。食べられるくらい熟すとこうなるんだって。自力で見つけられるようになりたい!
注意点は採り過ぎると枯れてしまうので加減を忘れない事。
自然の摂理だね。
イラリオさんが色々教えてくれて楽しい道中だ。昼休憩には馬車を停め、火を起こしてお茶を淹れてくれた。ピタパンサンドは好評だった。
…それは良かったんだけど、クッションの薄い御者台で揺られ続けた結果、お尻が痛くなって来た。
「あのう…お尻が痛くなりました。」
恥を忍んでそう言うと、イラリオさんは一瞬驚いた顔をした後、申しわけなさそうに眉を下げた。
「気づかなくてごめん。大丈夫?ちょっと見せて!」
「えっ!?いや、あの…」
狼狽えるおれにお構い無しにうつ伏せで膝に乗せられ、ズボンと下着をずり下ろして赤くなって熱を持った尻を見られる。
外気が涼しくて気持ちいい、けどそれ以上に恥ずかしくて顔が熱くなる。
「いっ!?」
「あぁ、かわいそうに。こんなに赤くなっちゃって…これじゃあ座れないね。そうだ!」
そのまま放置されたので服を直して立ったまま待つと、傷薬と何やら皮袋を持って来てくれた。
「これをクッションにするとどうかな?」
聞くと皮じゃなくて大型動物の膀胱で、防水性に優れているそうだ。当たり前か。
その中にスライムゼリーを入れたんだって。
そっと触ると感触は衝撃吸収材その物だった!
「ありがとう!これならかなり良さそうだよ!!」
「うん、でも薬を塗るからもう一度脱いでね?」
にっこり。
「いや、自分で塗るよ!?」
「ダメダメ。ヨシキの世話は隊長命令だからね!ほら、脱いで脱いで。」
「さっきのも恥ずかしかったのに…」
「…脱がされたいの?」
ひぃぃっ!
自分で脱ぎます!
後ろを向いておずおずとズボンとパンツを脱ぐと、それじゃあ塗りにくいと、またしても膝に乗せられた。
柔らかめの軟膏なのでかなりぬるぬるする。これ、パンツ履いたら気持ち悪いような気がする。
…そして…
だんだん…
沁みてきた!!
「いいい痛い!何これ!?しみる!!」
ひりひりじんじんお尻が痛い。
「すぐに慣れるから大丈夫。」
その言葉通り1分経たずに痛みは治まってきた。でもその1分が辛かった。
「…す…すごく痛かった…」
目にいっぱいの涙を溜めて訴えたのに喜ばれた。面白がってぇ!!
この薬は良く効く代わりに沁みるので、一般の人には敬遠される代物だそうだ。でも兵士にはこちらが好まれる。
傷によったら命に関わるからね。それに新人歓迎の儀式にも使われるらしい。
「でもほら、治ったでしょ?」
まだ薬でぬるぬるする手でお尻を撫でられけど、そこはもう全く痛くない。イラリオさんはお尻を拭いてくれた。
自分で触っても痛くない!
傷薬すごい!!
痛くないのは分かったから揉むのヤメて。
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