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第10話
しおりを挟む仲良くなったように見えたのも一瞬で、また揉め出した2人。自分のせいでいがみ合う人達を見てると悲しくなる。
「何してるの?」
ガリコさんも温泉に入りに来たようだ。
いがみ合う2人を放置して、湯船に浸かれない事を説明した。
「珍しい事もあるもんだね。」
そう呑気に言いながら、スライムをつつく。ビニールのような手触りのそれをぐっと掴んで引き上げると、端の方が少し持ち上がった。
「これは重くて運べないなぁ。ちょっと待っててね。」
腰にタオルを巻いた状態で脱衣場を抜け、大きな剣を持って戻って来た。え?スライムを切るの?
「隊長、セサル、どいてー。」
プルプルの上の睨み合いは一時休戦。
スライムを切って小さくして運ぶつもりらしい。
「ふんっ!」
気合を入れて振り下ろされる刃はぼよんと跳ね返され、スライムには傷1つ付かなかった。
「力任せに振り回すんじゃない。貸してみろ。」
ガウルさんが剣を受け取り、ガリコさんにスライムを引っ張りあげるように指示する。その状態で切るの!?
空気が張り詰めた瞬間、ひゅっと空気がなってバシャーっとスライムからお湯が流れ出た。中身はゼリー状だと予想してたのに!
いや、ゼリー状の部分もあった。外皮、温泉水、ゼリー状の核の順に層になっている。浸透圧とかの何かだろうか?(テキトー)
「温泉水を飲み過ぎて動けなくなったんだな。」
食物を外皮の中に入れてゆっくり消化して行く生態らしい。…屍肉を食べる種類だったら…ひぃっ!!
怖い考えになってしまった。
「人手がいるな。」
「集めて来ます。」
「自分は道具を持って来きます。
仕事の話になると真面目だ。
源泉掛け流しの湯は掃除の時だけ流れを変える。そしてポンプで中のお湯を汲み出す。ポンプが外を向いているのに今気がついた。
「お風呂場の掃除なら服を着ると濡れるだろうから裸のままの方が良いですか?」
「ヨシキの裸はあまり見せたくないし、明日は1日馬車に揺られるから掃除はやらなくて良い。体力を温存しておけ。」
確かに丸一日乗り物に乗っていたらかなり疲れるだろう。お言葉に甘えて見学する事にした。
やがてぞろぞろと人手が集まり、手に手に道具を持って掃除を始めた。まずは外皮を引きずり出し、外で洗って干す。水を弾く素材として使える。次にゼリー状の部分をザルで掬ってこちらは乾かないように皮袋に入れた。大きいから結構な量だ。
最後に掬いきれなかった物はお湯と一緒にポンプで流す。湯船はブラシで擦って綺麗にする。ゼリー状の部分を掬うのが1番大変そうだった。
そしてお湯が溜まるまでには1時間はかかるようなので今日は入るのを諦めた。
ガウルさんとセサルさんはまた言い合いを始めてしまって、僕が困っていたらガリコさんが喧嘩するなら今夜はヨシキを自分の部屋に連れて行きます、と連れて行ってくれた。
「隊長もセサルも、あんな風になるんだね。」
「僕のせいですね…」
「きっかけはヨシキだとしても、大人の対応ができないとダメ。ヨシキが辛くなるからね。」
ガリコさん、優しいな。
「ありがとうございます。」
「あー、おれにも敬語は要らないからね?食堂の看板息子としてみんなと仲良くするのが良いと思うよ。でも心配なら敬語で話して欲しい人がいるか、聞いておいてあげる。」
「それ、すごく助かる!!」
敬語自体は全く苦にならないけど、敬語を嫌がる人が多いみたいだ。それにしてもガリコさんは優しくて頼りになって憧れる。こんな気遣いのできる人になりたいな。
そんな話をしていたらノックの音がした。
「ヨシキ、隊長と話がまとまりました。一緒に来てくれますか?」
仲直りしてくれたならそれで良い。
ガリコさんにお休みなさいと言って部屋を出た。セサルさんに連れられ、ガウルさんの部屋に行った。
「今夜は3人で寝ます。」
へー。
どうしてそうなるのか分からないけど、雑魚寝は慣れているので問題ない。
でも2人とも大きいから流石に狭い。
「さすがに狭いね。」
クスクス笑って言ったら今日だけだと言われた。楽しいのに…。
「さっきのスライムの掃除、面白かった!中身のゼリーは何かに使えるの?」
「スライムの中身はよくすり潰してある種の植物から採った油と混ぜて潤滑油として使われる。」
…潤滑油…?
「ほら、これだ。」
この前使ったやつ!?
「ヨシキに使ったんですか?」
セサルさんの声が低くなった。
「まだだ。」
「おれには使ってないよ。確かに気持良さそうだったけ…」
「試してみるか?」
うっかり口を滑らせてしまった…
ガウルさんがいそいそと大判のタオルを取り出し、おれの下に敷く。セサルさんが下着を剥ぎ取る。そして膝を開いた状態で固定され、股間に潤滑油が垂らされた。
「ひゃぁ!」
潤滑油って掌で温めてどうのこうのするんじゃないの!?
実際は違うの?
わかんないよー!!
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