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第1話
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また断られた。
5回目の恋は清楚な見た目にそぐわない「おととい来やがれ」と言う古風な言葉で終わりを告げた。ちょっと言葉遣いが乱暴な娘だったね。
容姿も性格も成績も悪くないのに…
モテるために料理も頑張ったのに…
悪くはないけど良くないって。
料理は上手すぎ。嫌味か!って。
中肉中背でモブ顔で料理上手な28歳。
それが僕、菅田良樹です。本名です。ウケ狙いでもハンドルネームでもありません。営業としては地味顔のくせにこの名前です、で覚えてもらいやすかったけど営業成績はそれほどではなかった。
誰でも良いから優しくしてくれないかなぁ…
ばっしゃーん!
「いたた…」
お風呂場で走ってはいけません。
分かっています。走ってません。ハッテン場だと噂に聞いた健康ランドであちこち視線を彷徨わせてキョドってただけです。
おっさんとデブとマッチョだらけだった。
…場違いだった。
心が疲れていたんだと思う。もう優しくしてもらえるなら男同士でも良いかな?って思ってここに来たけど、浮きまくってキョドってたら浴槽の縁に足引っ掛けて湯の中にダイブとなった訳です。
うん。
ダイブしたのは健康ランドの室内のタイルの浴槽だったはず。でもここは露天風呂?硫黄のような匂いは温泉?
「おい。」
「ひゃい!」
後ろから声を掛けられて変な声を出してしまった。
そして声の方を見るとマッチョなイケメンがいた。
て言うか、周りには彫りの深いマッチョしかいない。
あれ?デブどこ行った?
あれ?平たい顔族は僕だけ?
おっさんもいるけどやっぱり彫りの深いマッチョ。
イケメンマッチョ率がハンパない。しかもみんな股間の物がデカい。ここはもしかして、BL系異世界でしょうか?男性向け異世界ならみんなちっちゃくて普通サイズの僕がデカちん無双するはずだ。
「何者だ。」
アホな事を考えていたらドスの効いた声で誰何される。
イケメンすごい。マッパでも絵になる。
「突然申し訳ございません。わたくし良樹《よしき》と申します。」
とりあえず営業マンらしく笑顔で腰の低い自己紹介をする。なんとなく名字を告げずに名前を言った。フルネームは聞かれたら答えれば良いだろう。
気をつけの姿勢から45度のお辞儀をして粗末な股間が晒されている事を思い出した。
「ここに何用だ。」
そんな事言われてもここは僕の目的地ではないので正直に答える。
「ここに用はありません。迷い込みました。」
「風呂場に裸で入っておいて迷い込んだだと?」
「わたくしが入った筈の風呂場は残念ながら温泉ではありませんでした。大きな浴槽に湯を沸かした風呂です。」
「そんな贅沢な風呂に入る筈だったのか?貴族か?豪商か?」
「…あの、温泉の方が贅沢なのでは?」
文化の違いが現れている。
うん。異世界決定。
「詳しく話を聞かせてもらおうか。」
「は、はい…」
長い物には巻かれなければ。(使命感)
「ヨシキ、お前は迷い人で間違いないな。」
「ええと…間違いないなと言われると自信がありません。」
「では生まれ育った世界を説明してみろ。」
何を話せば良いんだろう?
1番小柄な人の服を借りて着ても少し大きい。俺は168cm58kgで日本ではほぼ平均(ちょいひょろ)だったけど、ここはある意味最前線で鍛えた人ばかりだから服が大きいのは仕方ない。
それはともかく、どのへんを説明しよう?
「えー、武器を持ち歩くと逮捕されます。」
「異世界だな。」
これだけで!
「他国ではなく、異世界ですか?」
おれも異世界だとは思うけど、念のために聞いて見る。
「この砦は異世界からやって来る魔物を水際で防ぐために存在する。取り逃がした魔物が少数ながら繁殖もしている。短剣すら持ち歩けない世界に魔物がいるのか?」
「なるほど、いません。」
納得した。
でも、え?もしかして僕、討伐対象???
「わ…私は…魔物として殺されるのでしょうか?」
声も身体も震える。
「この砦には害意や魔力を感知して発動する結界が張られている。そこをすり抜けて来たお前は害意も魔力もないのだろう。殺す必要はない。」
良かった~!
「だが異世界から人間が来た試しはないから、どのような扱いになるかは判らん。上に報告をして沙汰を待つ。」
「私にできる事ならなんでもします!ですからどうか、仕事を下さい!!」
「命乞いかと思ったら仕事を欲しがるのか。」
「仕事をしていないと不安で押しつぶされそうになります。」
染み付いた社畜根性が仕事のない恐怖を頭の中に次々と映像化する。
「性奴隷…、と言ったら?」
「それは仕事なのでしょうか?」
それはちょっと泣いちゃうかも。
「冷静だな。」
「そんな事はありません。仕事への不安と仕事のない不安で…正直泣きそうです。」
「先ほども言った通り、ここは辺境の砦で客を置いておく余裕はない。まぁ、調理場か洗濯場か、手伝いを欲しがっている部署に回す事になるだろう。」
「あ、ありがとうございます!」
良かった、まともな仕事だ!
で、おれを面接(?)してた隊長さんに呼ばれてやって来た案内係兼監視役のセサルさんは服を貸してくれた人。185cmくらいの細マッチョで癒し系の顔立ち。自己紹介をしたら頭を撫でられた。なんだか気持良くてうっとりしてたら早く行けって隊長さんに怒られた。
5回目の恋は清楚な見た目にそぐわない「おととい来やがれ」と言う古風な言葉で終わりを告げた。ちょっと言葉遣いが乱暴な娘だったね。
容姿も性格も成績も悪くないのに…
モテるために料理も頑張ったのに…
悪くはないけど良くないって。
料理は上手すぎ。嫌味か!って。
中肉中背でモブ顔で料理上手な28歳。
それが僕、菅田良樹です。本名です。ウケ狙いでもハンドルネームでもありません。営業としては地味顔のくせにこの名前です、で覚えてもらいやすかったけど営業成績はそれほどではなかった。
誰でも良いから優しくしてくれないかなぁ…
ばっしゃーん!
「いたた…」
お風呂場で走ってはいけません。
分かっています。走ってません。ハッテン場だと噂に聞いた健康ランドであちこち視線を彷徨わせてキョドってただけです。
おっさんとデブとマッチョだらけだった。
…場違いだった。
心が疲れていたんだと思う。もう優しくしてもらえるなら男同士でも良いかな?って思ってここに来たけど、浮きまくってキョドってたら浴槽の縁に足引っ掛けて湯の中にダイブとなった訳です。
うん。
ダイブしたのは健康ランドの室内のタイルの浴槽だったはず。でもここは露天風呂?硫黄のような匂いは温泉?
「おい。」
「ひゃい!」
後ろから声を掛けられて変な声を出してしまった。
そして声の方を見るとマッチョなイケメンがいた。
て言うか、周りには彫りの深いマッチョしかいない。
あれ?デブどこ行った?
あれ?平たい顔族は僕だけ?
おっさんもいるけどやっぱり彫りの深いマッチョ。
イケメンマッチョ率がハンパない。しかもみんな股間の物がデカい。ここはもしかして、BL系異世界でしょうか?男性向け異世界ならみんなちっちゃくて普通サイズの僕がデカちん無双するはずだ。
「何者だ。」
アホな事を考えていたらドスの効いた声で誰何される。
イケメンすごい。マッパでも絵になる。
「突然申し訳ございません。わたくし良樹《よしき》と申します。」
とりあえず営業マンらしく笑顔で腰の低い自己紹介をする。なんとなく名字を告げずに名前を言った。フルネームは聞かれたら答えれば良いだろう。
気をつけの姿勢から45度のお辞儀をして粗末な股間が晒されている事を思い出した。
「ここに何用だ。」
そんな事言われてもここは僕の目的地ではないので正直に答える。
「ここに用はありません。迷い込みました。」
「風呂場に裸で入っておいて迷い込んだだと?」
「わたくしが入った筈の風呂場は残念ながら温泉ではありませんでした。大きな浴槽に湯を沸かした風呂です。」
「そんな贅沢な風呂に入る筈だったのか?貴族か?豪商か?」
「…あの、温泉の方が贅沢なのでは?」
文化の違いが現れている。
うん。異世界決定。
「詳しく話を聞かせてもらおうか。」
「は、はい…」
長い物には巻かれなければ。(使命感)
「ヨシキ、お前は迷い人で間違いないな。」
「ええと…間違いないなと言われると自信がありません。」
「では生まれ育った世界を説明してみろ。」
何を話せば良いんだろう?
1番小柄な人の服を借りて着ても少し大きい。俺は168cm58kgで日本ではほぼ平均(ちょいひょろ)だったけど、ここはある意味最前線で鍛えた人ばかりだから服が大きいのは仕方ない。
それはともかく、どのへんを説明しよう?
「えー、武器を持ち歩くと逮捕されます。」
「異世界だな。」
これだけで!
「他国ではなく、異世界ですか?」
おれも異世界だとは思うけど、念のために聞いて見る。
「この砦は異世界からやって来る魔物を水際で防ぐために存在する。取り逃がした魔物が少数ながら繁殖もしている。短剣すら持ち歩けない世界に魔物がいるのか?」
「なるほど、いません。」
納得した。
でも、え?もしかして僕、討伐対象???
「わ…私は…魔物として殺されるのでしょうか?」
声も身体も震える。
「この砦には害意や魔力を感知して発動する結界が張られている。そこをすり抜けて来たお前は害意も魔力もないのだろう。殺す必要はない。」
良かった~!
「だが異世界から人間が来た試しはないから、どのような扱いになるかは判らん。上に報告をして沙汰を待つ。」
「私にできる事ならなんでもします!ですからどうか、仕事を下さい!!」
「命乞いかと思ったら仕事を欲しがるのか。」
「仕事をしていないと不安で押しつぶされそうになります。」
染み付いた社畜根性が仕事のない恐怖を頭の中に次々と映像化する。
「性奴隷…、と言ったら?」
「それは仕事なのでしょうか?」
それはちょっと泣いちゃうかも。
「冷静だな。」
「そんな事はありません。仕事への不安と仕事のない不安で…正直泣きそうです。」
「先ほども言った通り、ここは辺境の砦で客を置いておく余裕はない。まぁ、調理場か洗濯場か、手伝いを欲しがっている部署に回す事になるだろう。」
「あ、ありがとうございます!」
良かった、まともな仕事だ!
で、おれを面接(?)してた隊長さんに呼ばれてやって来た案内係兼監視役のセサルさんは服を貸してくれた人。185cmくらいの細マッチョで癒し系の顔立ち。自己紹介をしたら頭を撫でられた。なんだか気持良くてうっとりしてたら早く行けって隊長さんに怒られた。
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