転生神子は『タネを撒く人』

香月ミツほ

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16.渡り鳥狩り

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神子のやるべきことはどの町でも同じ。

朝の禊と生命樹に水やり。水やりは神子じゃなくても良いんだけど、生命樹が気になるのでやっている。それ以外は自由時間。食事の時間は決まってくるけど。

自由時間といってもふらふら出かけられる訳じゃない。でも今回は宝石の実の加工を見せてもらったり、山羊の牧畜を見せてもらったり、保存食作りを見せてもらったりする。

観光っぽい。

宝石の実の加工は神殿の集会室みたいな所で、特に加工が上手いと言われている職人さんが来て実演してくれた。

茹でて乾かすところまでは終わっている。それをひとまとめに桶に入れ、桶を斜めに立てかける台にセットして回転させる。そうすると実が互いに擦れ合ってつるつるになると言う。

仕上げに油を吸わせた皮で満遍なく拭いて、また乾かして完成。

1つ1つ手で磨くのかと思ってたから、意外に合理的で驚いた。

「これに穴を開けて首飾りや耳飾り、髪飾り、ベルトの飾りに使います」

いろんな色があるから、色を揃えたり2色使いにしたり、カラフルにしたりとセンスが問われる。穴あけを体験させてもらったけど、まっすぐきれいな穴を開けるのって、めちゃくちゃ難しかった。

きれいな白い粒をもらって3人お揃いのペンダントを作ってアルシャーブさんとサバールさんにプレゼントした。

穴は開けてもらいました……。


「えへへ。額飾りはあるけど、これも良いよね」
「神子様……! 大切にします! 死んでも離しません!」
「いや、無理はしないでね?」
「おれも大切にする。……なんだか温かいな」
「うん。幸せな気持ちになるね」

職人さんがおれ達のこのやりとりを見て、プロポーズしようと考えていたことには、当然ながら気づかなかった。


午後は牧畜を見に!

山羊……、だよね?
なんだか違和感があるんだけど。もふもふした毛に覆われた首の長い動物。頭に『リャマ』って名前が浮かんだ。それに柵もなく、ただ山の草原くさはらに山羊(?)がたくさんいるだけ。これ、逃げないの?

「危険な動物や魔獣から守ってくれる人間の側を離れたりしないんですよ。言うことは聞きませんが、日が落ちると自主的に小屋に戻ってきます」
「なるほど。もう1つ気になっているんですが、全部の山羊の背中に乗っているのは?」
「あれは楽天鼠です。どの家庭でも餌をやっているので誰のものでもありませんが、冬の食料ですね」
「食料!?」
「昨夜召し上がっておられましたよね?」
「き……、気づかなかった……」
「お嫌いでしたか? 知らぬこととはいえ、申し訳あ……」
「謝らないでください! 初めて食べたってだけで、美味しかったし、ここでは普通の食料なのですよね」
「どちらかと言えばご馳走ですね」

山羊の上に乗った鼠は小型犬サイズで、気性が穏やかでで繁殖力が強いため、家畜として飼われているらしい。

郷に入りては郷に従うべきだ。
食文化を否定してはいけない!!

虫だけは食べられないけど、幸いこの世界で虫は出てきていない。植物だから虫は天敵なのかも!

……食虫植物いたな。

昆虫食、出てこなくて良かった……!!



それから見せてもらった加工食品は、山羊のチーズと鼠の燻製、山葡萄のジュース。

他にナッツ類は炒って保存、穀類や芋類は地下室でそのまま、干し肉や干し魚、野菜も乾燥できるものは乾燥させて保存。

「忙しいですね」
「秋ですからね」

ここではそれが当たり前。
誰も不満を抱かず、協力しあって冬を越す。

最初から大人なのは少しだけ楽かも?

生命樹は今日、花を咲かせた。



「明日の渡り鳥狩りは夜明けになりますが、起こしてよろしいですか?」
「起きます! 起こしてください!!」

少し空気が薄いようで、動き回ったら疲れた。だから早く眠れる! 滅多にない渡り鳥狩りを見学しなくっちゃ!!

今夜は1回ずつだよ!



*******


コンコンコン

「神子様、お目覚めですか?」
「あぁ、神子様なら起きている」
「それでは朝食の前になりますが、出かけましょう」

狩り人は15人で、渡り鳥は100羽くらい狩るのが目標。一昨日治療した人もいる。

町を出る前に全員に応援の口づけを送り、町長さんの説明を受けて、邪魔にならないよう静かについていった。 

……夜明け前って1番暗い気がする。何も見えないし、山道は歩きにくいし、で結局サバールさんに抱っこで運ばれています。

サバールさんもアルシャーブさんも狩りに参加することになり、アルシャーブさんも普段とは違う動きやすそうな服で、弓を持っている。サバールさんの武器は石。帯状の革に石を入れて振り回して飛ばす、スリングだ。おれの握り拳の半分くらいの石だから、当たれば即死だな。

目的地に到着し、安全な場所に降ろされたおれに、町長が手振りで眠る鳥を示してくれた。暗くてシルエットしか見えない。

やがて空の色が紫紺から薄桃色へと変わり、稜線から放射状の光が見えた。

ざわ

と鳥が動き出す気配がして、太陽が顔を出す。夕日に比べてかなり眩しい朝日に照らされた渡り鳥が一斉に飛び立った。

誰も何も言わず、飛び道具で狩る。
弓が多いがブーメランや投げ槍の人もいる。

そして、狩りはあっという間に終わった。

「もう音を立てても大丈夫です」
「すごいですね!」

興奮で語彙力が死んでいる。
狩人達は音もなく連携をとり、なだらかな山の斜面にはたくさんの事切れた鳥達。


1人6羽は毎年の目標らしい。でも応援の口づけが効いたようで少ない人で6羽、多い人で8羽仕留めた。そしてアルシャーブさんは10羽、サバールさんは12羽!!

すごい!
かっこいい!!

「まぁまぁだな」
「ふん」

張り合ってるけど、2人ともすごいよ?

「いやはや、さすが月のお方ですな」
「私も先日治療していただいてから、いつになく調子が良かったのですが、やはり月のお方には敵いません」

町長さんと治療した人が2人を褒めてくれて、嬉しくなった。



渡り鳥は結構大きくて、とてもじゃないけど17人では運べない。だから頃合いを見て手伝いの人達が来る。山道なので馬車は来られず、1人3羽以上を担いでいく。

非力なおれは、何故か町長さんにおんぶされて帰りました。行きは音を立てないために、帰りは滑って転んだから。

アルシャーブさんとサバールさんが不満げだったけど、2人とも力持ちだから鳥を運んでもらった方が効率がいいと思う。

だって合計127羽だよ?
1羽が12kgくらいあるのに、4羽も5羽も担いで平然と歩く。おれの体重と変わらなくても嵩張るし、大変なはずだ。

町長さんはひょろりとしているから、申し訳ないと思ったけど、おんぶされて分かった。細マッチョです。

山で鍛えてるもんね。

って、少しくらいコケても歩けば良かったような……?

町長の足取りがやけに軽いから、これで良かったんじゃないかな。


100羽を超えたら宴会になるらしい。

一斉に血抜きをして羽をむしって、内臓を取り出す。全部綺麗に洗って、今夜はもつ鍋。レバーはペーストにして保存するらしいけど、今日も少し食べられる。肉もね!

血も羽も骨も、余すところなく使うのは、大地への感謝の印。

狩猟や採集は個人の財産に、渡り鳥と畜産、畑は協力して作業をするので共有財産になるという。この町は200人くらいしかいないので、肉の配給が6kgずつ?塩漬けと干し肉にして分け合うけど、全然足りないよね。

あ、そっか。
家畜は生きてるから新鮮な肉も食べられるのか。

それでも野菜は食べられなくなる。

よし!
気合を入れて神聖水作ろう!!


─────────────────


渡り鳥はオオハクチョウサイズです。

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