上 下
117 / 134
おお!っと王都で驚いた

武闘派の祭り

しおりを挟む
この日焼けであの服はダメか……。
あ、違う、肌を晒すのがダメなんだった。半裸だもんね。でもハルト達のも肩と背中は出るよ?

ふと見るとエーギンハルトさんがハラルドくんをいやらしい目で見てる! やっぱり上半身半裸はやめた方が良いな。

「肌を晒さない着方もあるよ」

リーシュがそう言って侍従さんに指示を出すとマオカラーの白い長袖シャツが出て来た。それを着てアレクと同じ不思議なズボンを履いて腰に帯を締める。

これなら大丈夫!!

と、見回した時、エーギンハルトさんの残念そうな視線と、それに気づいたマインラートくんの悲しそうな顔。……マインラートくん、エーギンハルトさんの事、本気で好きになっちゃったの?

あ、子供達に負けてハラルドくんがかわいい方の服、着せられた。少しごついけど似合うよ!



───────────────────


「エーギンハルト! 手合わせしてもらえませんか?」
「んぁ? おお、良いぞ。けどガキばっかじゃつまんねぇから王太子の護衛ともやらせてくれ。トラウゴットのじーさんもやろうぜ」

ディトマールくんなら当然そう言うだろう。
そしてエーギンハルトさんもそうなるよね。

て言うかトラウゴットのじーさん?

「お前、いつまで子供のつもりだ」
「少しは強くなったぜ?」
「わしの出る幕なんぞなかろう。王太子の護衛、なかなか強いぞ」

トラさんが一時期剣術指南していて、エーギンハルトさんは門下生だったらしい。やんちゃそう。(笑)

トラさんの高評価にリーシュもリーシュの護衛の人も嬉しそうだ。手合わせは怖いけど見たい気もする。だって護衛の人の剣、曲刀だよ? タルワールかな?

「一体、何がどうしたんだ?」
「あ、フィール! お帰りなさい」
「とた! おかりー!」
「テオフィールさん、すごいんです! えいゆうのたたかいが みられるんです!」
「えいゆうでしゅ!」

子供達に大きい人から英雄に格上げ(?)されたエーギンハルトさん。お前もやるか? ってフィールを誘ってるけどおれが怖がるからって断ってる。

「フィール、ごめんね? 信じてない訳じゃないんだけど心配で……」
「強さをひけらかす趣味はないから構わない」

フィールが怪我しないか気が気じゃなくて泣きそうになっちゃうんだよね。強いのは分かってるんだけど強い人同士の対戦なんて何もわからないし、前は隊員の実力向上の為だったし。

手合わせ自体は嫌いじゃないけど、フィールは教える方が好きなんだって。だからディトマールくんとハラルドくんの成長には興味津々だ。

「あの! 異国の剣術にも興味があります! 先にエーギンハルトと護衛の方で手合わせして見せて下さいませんか?」

ディトマールくんの提案に嬉々として乗るエーギンハルト。あ、護衛の人、ターバンの影と濃い褐色の肌の中にギラリと光る瞳。ライバルを見つけた感じ?

何故かタイミング良く帰って来たザシャさんとギュンターさんとエミールさんが子供達(おれとマインラートくん含む)が危なくないよう、守りを固めてくれた。

中庭で即席の闘技大会が始まる。

「子供達が見るにふさわしい美しい試合を」

リーシュの言葉で前に進み出たエーギンハルトさんと護衛さんが剣を抜き、顔の前に掲げて見つめ合う。

「それでは、始め!」

リーシュの鋭い掛け声にキンッ! と軽やかな金属音を奏でて離れる。次は打ち込み? 立ち位置を入れ替わっただけ? 目まぐるしく動く2人に視力が追いつかない。

漠然とエーギンハルトさんが直線的、護衛の人が円を描いている、ように感じる。……たぶん。

ターバンから垂れた布がひらひらと舞い踊り、踊っているようにも見える。なんだか幻想的。

対等に渡り合っているように見えてたけど護衛の人だけ動きが見やすくなって来た。疲れて来たのかな? やがて試合終了の声がかかり、引き分けとなった。

「「かっこいいーーーー!!」」
「すごい! すごい……♡」

ディトマールくん達は声を揃え、マインラートくんは感極まっている。子供達はきゃーきゃーと喜び、フィールがウズウズしている。やっぱりフィールも武闘派だ。

「テオフィール、私達もひと勝負してからそいつらと手合わせ願わんか?」
「……だが」
「フィール、無理を言うけどおれを心配させないで? それなら手合わせして良いよ」

同じくウズウズしちゃったギュンターさんが最初の2人の疲労を考え、対等に勝負するための提案をして来た。

「わざわざそんな事しないで来いよ」
「ほう。負けて言い訳するなよ」
「ワタシもかまいません」

少しカタコトの護衛さんが乗ってくる。
エーギンハルトさん対ギュンターさん、フィール対護衛さん。

ディトマールくん達が置いてきぼりになってしまった。

「手合わせ、お預けだね」
「この勝負を見られるのならそのくらい構いません!」
「俺たちじゃまだ、全然本気を出してもらえそうもないから、見るだけでも良いです」

少し自信をなくしてしまったのか、ハラルドくんが弱気な発言をした。

「なっさけないねぇ!」

ザシャさんとトラさんが後で指導してくれるって約束してた。早起きして朝稽古に来るんだって。睡眠はちゃんととってね。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺は勇者のお友だち

むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。 2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。

こうもりのねがいごと

宇井
BL
美形な主と二人きりの世界で、コウは愛され生きる喜びを知る。 蝙蝠のコウは十歳でじいちゃんを亡くしてからは一人きり。辛い環境の中にあっても誰を恨むことなく精一杯に生きていた。 ある時、同じ種族の蝙蝠たちに追われ、崖の先にある危険な神域に飛び出してしまう。しかしそこでコウの人生が大きく変わることになった。 姿が見えない人に頼まれたのは、崖下にいる男のお世話。木々に囲まれ光あふれる箱庭で新たな生活が始まる。 森の中の小屋の脇には小花、裏には透き通る泉。二人を邪魔するようににやってくる珍客達。 出会ってすぐに両想い。困難が次々とやってきますが基本はほのぼの。 最後まで死という単語が度々出てきますのでご注意を。 ご都合主義です。間違いが多々あるでしょうが、広い心をでお読みいただけますように。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ダメですお義父さん! 妻が起きてしまいます……

周防
BL
居候は肩身が狭い

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

処理中です...