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おお!っと王都で驚いた
着替えてみれば
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心配しながら謝ってくれる船頭さんにお礼を言い、気にしないよう伝えて舟を降りた。悪いのはぜーんぶ向こうの人だし、濡れた以外の被害はない。
フィールの提案で着替えを買って宿で休憩する事にした。まだ帰るのは早いし!
港のお土産屋さんや食べ物屋さんがたくさん並ぶエリアへ行く。服は港から少し離れた所にあるけど、それほど遠くはない。それにお土産屋さんには外国の人向けと国内の人向けの両方の服が売っているので見ていて楽しい。
そこになかなか賑わっているお店があった。
「さぁさぁお客さん、今日入荷したばかりの新作だよ! 異国情緒たっぷりのセクシーな服で、愛しいあの人をメロメロにしましょうや!」
お土産屋さんだけあってすぐに着られる既製服がたくさん売っている。ハンガーに掛けた服が軒先で揺れる。女性ダンサーの衣装っぽい?
「おや! そちらの方はシーヴァティの方ですか? こちら本場より取り寄せましたのでさぞお似合いなのでしょうね」
あぁ、あの人の国の服なのか。え? おれ、そこまで黒くないよね。さっきの人、かなり黒かったよ?
「先程、シーヴァティの者によって多大な迷惑を被ったところだ。その国の品に興味は持てない」
「そっ、そんな事が? ……ですがその者が国の代表と言う訳では……」
「麗しき姫よ、探したぞ。私はそなたを気に入った。その濡れた服の代わりを用立てるから着てくれぬか?」
「お、王太子殿下!?」
偉そうだと思ったら王太子だったのか。代表だったね。
「断る」
「そなたではなく、そちらの姫に、と申しておるのだが」
「お断りします」
フィールの後ろに隠れたのにしつこい。こんなお土産用の服じゃ目立って仕方ないよ。他の服だったとしてもシーヴァティ国の服じゃ目立つ。欲しいのは普段着! せいぜいよそ行き! それにこんな話の通じない人から服なんてもらったら、後で何を要求されるか分からないじゃないか。
「王太子殿下であるならば大人しく歓待を受けていろ。護衛も付けずに勝手をしているのなら王族として扱う必要などない」
フィールの気持ちは分かるけど、それはそれで良いの? 失礼だって怒られない?
「身分を隠し、民草の生活を知るのは良い経験になる、と父王から教えられ、その通りにしたのだが……」
「隠していないようだが?」
「あぁ、こやつが口を滑らせたからな」
「ひぃっ! お、お許しを!」
おじさんが口を滑らさなくても偉そうだからバレバレだよ。ぼんやりしてるし、天然なの? ……でも、もしかして実は怖い人なのかな? 人集りはますます増えて大騒ぎになってきた。
「おい! 騒ぎの原因は何だ?」
「隊長様! こ、これは、その……」
「……王太子殿下………………、とテオフィール? それにチサト……か?」
港内警備隊が来た事で野次馬は解散し、王太子とおれ達は詰め所に連れて行かれた。着替えができる~!!
詰め所へ行く途中、ユリアヌスさんは隊員におれの着替えを用意するよう指示を出してくれたので、シャワーを借りて出てくる頃には乾いた服が用意されていた。
……でも、例の土産物。
嫌だけど他に服もないし、近くに人もいない。諦めて踊り子みたいなど派手な衣装を着た。
「ユリアヌスさん! 着替えがこれなんですけど!!」
「ぶっ! す、すまん……、それを用意したやつは後で締め上げておくから」
「おぉ、姫、もっと上質な物を贈るつもりであったのだが、やはり似合うな」
褐色イケメンの蕩ける笑顔、いらない。
着方が分からなかったけど合ってるかな? どうでもいいか。
足首で絞られたふんわりしたズボンはスケスケで、下着が透ける。この下着がまた、前は逆三角形で真ん中から帯が伸びて紐を通す輪が作ってある。右にだけ長いリボンが付いていて、それを紐を通す輪に入れて左でリボンを結ぶTバック。プリーツのミニ巻きスカートみたいなのがあったからこれを腰に巻いて下着を隠した。上衣はボタンのない前合わせのベストみたいな感じで幅広のリボンと言うか帯?があったのでそれで押さえた。
うぅ……この下着、落ち着かない!
「それでは王太子殿下はここで迎えを待っていただきます。お前達はもう帰って良い。運が悪かったな」
「全くだ。チサトが怪我でもしたら殺していただろう」
「国際問題になるからやめてくれ」
当事者の王太子はおれの事見てにこにこしてる。
「ところでチサト、その肌の色はどうしたんだ? 変装か?」
「日焼けです。海で泳いでたら陽の光の反射が強くて、日焼けしました」
「ひやけ?」
ユリアヌスさんに日焼けについて説明したら王太子が食いついた。
「ではその肌の色は偽物なのか!?」
「……説明しましたよ。本来の肌とは違う色ですが自然に色が変わるんだから偽物とは違います」
「元の色が見たい…… 頼む!」
「イ! ヤ! です!」
「殺されたいようだな……?」
「テオフィール! 待て!」
「王太子殿下!!」
カオスになりかけた所でお迎えが来たらしい。あれ? 豪華な縦ロールには見覚えが……。
「迎えはオスヴァルト殿下か。厄介者同士で誰が手綱を取るんだ」
「私だ。オスヴァルト殿下と護衛と侍従だけでは力不足と判断されたので今から私がこの2人の護衛だ」
「トラウゴット……」
「トラさん!」
王太子も王子も5人ずつの護衛と3人ずつの侍従に見張らせていたのに、出し抜かれてしまったらしい。それで現役を退いたトラさんに白羽の矢が立ったと言う。
こってり絞ってくれると良いなぁ。
トラさんはまかせとけって小さく囁いて問題児たちを連れて帰った。
フィールの提案で着替えを買って宿で休憩する事にした。まだ帰るのは早いし!
港のお土産屋さんや食べ物屋さんがたくさん並ぶエリアへ行く。服は港から少し離れた所にあるけど、それほど遠くはない。それにお土産屋さんには外国の人向けと国内の人向けの両方の服が売っているので見ていて楽しい。
そこになかなか賑わっているお店があった。
「さぁさぁお客さん、今日入荷したばかりの新作だよ! 異国情緒たっぷりのセクシーな服で、愛しいあの人をメロメロにしましょうや!」
お土産屋さんだけあってすぐに着られる既製服がたくさん売っている。ハンガーに掛けた服が軒先で揺れる。女性ダンサーの衣装っぽい?
「おや! そちらの方はシーヴァティの方ですか? こちら本場より取り寄せましたのでさぞお似合いなのでしょうね」
あぁ、あの人の国の服なのか。え? おれ、そこまで黒くないよね。さっきの人、かなり黒かったよ?
「先程、シーヴァティの者によって多大な迷惑を被ったところだ。その国の品に興味は持てない」
「そっ、そんな事が? ……ですがその者が国の代表と言う訳では……」
「麗しき姫よ、探したぞ。私はそなたを気に入った。その濡れた服の代わりを用立てるから着てくれぬか?」
「お、王太子殿下!?」
偉そうだと思ったら王太子だったのか。代表だったね。
「断る」
「そなたではなく、そちらの姫に、と申しておるのだが」
「お断りします」
フィールの後ろに隠れたのにしつこい。こんなお土産用の服じゃ目立って仕方ないよ。他の服だったとしてもシーヴァティ国の服じゃ目立つ。欲しいのは普段着! せいぜいよそ行き! それにこんな話の通じない人から服なんてもらったら、後で何を要求されるか分からないじゃないか。
「王太子殿下であるならば大人しく歓待を受けていろ。護衛も付けずに勝手をしているのなら王族として扱う必要などない」
フィールの気持ちは分かるけど、それはそれで良いの? 失礼だって怒られない?
「身分を隠し、民草の生活を知るのは良い経験になる、と父王から教えられ、その通りにしたのだが……」
「隠していないようだが?」
「あぁ、こやつが口を滑らせたからな」
「ひぃっ! お、お許しを!」
おじさんが口を滑らさなくても偉そうだからバレバレだよ。ぼんやりしてるし、天然なの? ……でも、もしかして実は怖い人なのかな? 人集りはますます増えて大騒ぎになってきた。
「おい! 騒ぎの原因は何だ?」
「隊長様! こ、これは、その……」
「……王太子殿下………………、とテオフィール? それにチサト……か?」
港内警備隊が来た事で野次馬は解散し、王太子とおれ達は詰め所に連れて行かれた。着替えができる~!!
詰め所へ行く途中、ユリアヌスさんは隊員におれの着替えを用意するよう指示を出してくれたので、シャワーを借りて出てくる頃には乾いた服が用意されていた。
……でも、例の土産物。
嫌だけど他に服もないし、近くに人もいない。諦めて踊り子みたいなど派手な衣装を着た。
「ユリアヌスさん! 着替えがこれなんですけど!!」
「ぶっ! す、すまん……、それを用意したやつは後で締め上げておくから」
「おぉ、姫、もっと上質な物を贈るつもりであったのだが、やはり似合うな」
褐色イケメンの蕩ける笑顔、いらない。
着方が分からなかったけど合ってるかな? どうでもいいか。
足首で絞られたふんわりしたズボンはスケスケで、下着が透ける。この下着がまた、前は逆三角形で真ん中から帯が伸びて紐を通す輪が作ってある。右にだけ長いリボンが付いていて、それを紐を通す輪に入れて左でリボンを結ぶTバック。プリーツのミニ巻きスカートみたいなのがあったからこれを腰に巻いて下着を隠した。上衣はボタンのない前合わせのベストみたいな感じで幅広のリボンと言うか帯?があったのでそれで押さえた。
うぅ……この下着、落ち着かない!
「それでは王太子殿下はここで迎えを待っていただきます。お前達はもう帰って良い。運が悪かったな」
「全くだ。チサトが怪我でもしたら殺していただろう」
「国際問題になるからやめてくれ」
当事者の王太子はおれの事見てにこにこしてる。
「ところでチサト、その肌の色はどうしたんだ? 変装か?」
「日焼けです。海で泳いでたら陽の光の反射が強くて、日焼けしました」
「ひやけ?」
ユリアヌスさんに日焼けについて説明したら王太子が食いついた。
「ではその肌の色は偽物なのか!?」
「……説明しましたよ。本来の肌とは違う色ですが自然に色が変わるんだから偽物とは違います」
「元の色が見たい…… 頼む!」
「イ! ヤ! です!」
「殺されたいようだな……?」
「テオフィール! 待て!」
「王太子殿下!!」
カオスになりかけた所でお迎えが来たらしい。あれ? 豪華な縦ロールには見覚えが……。
「迎えはオスヴァルト殿下か。厄介者同士で誰が手綱を取るんだ」
「私だ。オスヴァルト殿下と護衛と侍従だけでは力不足と判断されたので今から私がこの2人の護衛だ」
「トラウゴット……」
「トラさん!」
王太子も王子も5人ずつの護衛と3人ずつの侍従に見張らせていたのに、出し抜かれてしまったらしい。それで現役を退いたトラさんに白羽の矢が立ったと言う。
こってり絞ってくれると良いなぁ。
トラさんはまかせとけって小さく囁いて問題児たちを連れて帰った。
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