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おお!っと王都で驚いた
熱中症
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理由を聞いてシャツの袖とズボンの丈をバッサリ切ってくれたザシャさん。ズボンは膝上で切りすぎな気がするけど、まぁ良いか。
「……ミュラー?」
「……チサト先生?」
「知り合いかい?」
ばったりと会ったのは孤児院にいたミュラーだった。人攫いの被害者兄弟の兄だ。ここの制服着てるって事はどこかに引き取られて入学したのかな?
「元気だった? ドロテアは? いつからここに?」
「オレとドロテアは2人一緒に雇ってもらえて、雇用主の息子のお目付役としてここにも通わせてもらってるんだ」
「お目付役?」
「そう。だからすぐ戻らないと……あ」
「遅いぞミュラー! あっ! 誰その可愛い子!?」
「先生と呼びな」
「わぁっ! あー……怖い人もいる~……」
「アウグスティン、礼儀」
「失礼いたしました! 王立学院騎士科の2年、アウグスティンです! 見学の方でしょうか?」
「高等科のダンスのお手伝いをしているチサト・デーメルです。よろしくね」
「ダンスの手伝い? ですか?」
「ここの3年生と高等科の1年生でダンスの合同練習が始まっただろう? そこで人数が足りない時にフォローをするのがチサトだ」
「えっと……じゃあ踊ってもらえるの? ですか?」
「高等科に進んで上手ければチサトと踊らせてやっても良い。下手な奴と踊らせると怪我をするからね」
先日、ドレスの裾が絡まって転んだ事を付け足した。
「チサト先生、何もない所でも転ぶもんね」
「そんな事ない! ちゃんと何かがっ! わぁっ!」
「すまっ! ……おや?」
廊下の曲がり角でぶつかってしまったのは見覚えのある赤髪の人だった。転んでないよ! 事故だよ!
「あ、去年怪我をした時に立ち入りを許可して下さった先生ですね。あの時はありがとうございました」
「やはりあの時の。お元気そうですね」
「はい。ラウリ先生にも良くしていただいてすぐに良くなりました」
「んんっ!」
「失礼した!!」
よろけた所を支えてくれた手がそのまま背中に回っていたけど、ザシャさん心配し過ぎ。赤髪の先生は会釈をして去って行った。
「……あの先生があんなに大人しくなるなんて……」
「いつもの暑苦しさが……」
以前会った時と印象は変わらないけど、普段と違うのかな?
ドロテアは13歳だから入学は来年か。
良い人に雇ってもらえて良かったね。
学食が戦場になっていた。
移動のロスを考えて午前中いっぱい、週2回の授業だったダンスを丸1日にして週1回に変更してこちらに来ているので、学食を利用する人数が増えてしまったせいだ。おれが余計な事言ったから?
「チサト先生のせいじゃないよ。この学校がいい加減なんだ。午前中に気づいて今、向こうで作った分と食器を全部運んでるから気にしないで」
食堂では席が足りないので教室で食べる許可も出ているらしい。向こうから来たおれたち職員は会議室で食べさせてもらう事になった。
「チサト先生、午後のドレスはどうします?」
「あ、また倒れると困りますよね」
体温調節ができなくて具合が悪くなった事は伝えられている。涼しいドレス?
「食べ終わったらその辺で買って来よう。少し遅れるかもしれないがね」
「よろしくお願いします!」
試着するために一緒に行くと。
「テオフィールは文句を言うだろうが具合が悪くなるよりマシだ。チサトはこのデザインは嫌いかい?」
「正直、フィールが妬くのが理解できません。涼しいしスカートもサラサラしてて気持ち良いです」
女装の恥ずかしさはあるけど。
ビスチェと言う、胸に晒しを巻いたみたいな物の上に大きくV字に開いた布を肩にひっかけてブローチで胸元を固定する。後ろがどうなっているかは分からない。
スカートのサラサラ具合がクセになりそう……。
そのまま行っちゃえって事になり、ザシャさんに抱っこで運ばれた。おれが歩くより早いから。
「お待たせ」
「遅くなりました!」
「「「「「おおーーーー!」」」」」
いつもと違うドレスにどよめきが起きる。いや、おれのドレスだけじゃなくておれを抱いたまま入ったりするからザシャ先生がかっこよくてどよめいたんだ。だってザシャさん、ドレスに着替えてないから。
「今日は手が足りてるから私はこのままで良いね。さ、指導するよ」
新しいドレスは軽くて涼しくてとても踊りやすかった。
そして普段着は体温調節ができるようになるまでは襟なしの半袖と膝丈のハーフパンツに変わった。
「チサト先生、若返ったねー」
「ハラルドくん……いくつに見える?」
「15……歳?」
「13歳!」
「「「「12歳!」」」」
「いやだぁー!」
ディトマールくんが言いにくそうに15歳と言ったけど、ハラルドくんは13歳って、そして他の子達は声を揃えて12歳だって……!!
「この学院に入学する14歳より下に見えます……」
ディトマールくんが言いにくそうに補足してくれたけどショートパンツのせいだ! せめて膝を隠せば!!
ザシャさんからの報告でおれの魔力コントロール訓練についての話になり、ラウリ先生から紹介された魔力制御が覚束ない子供を集めてコントロールを教えてくれる研究所に行く事と普段着のデザインの変更が決まった。さらさら生地のゆったり目のハーフパンツ。めっちゃ楽!
「……ミュラー?」
「……チサト先生?」
「知り合いかい?」
ばったりと会ったのは孤児院にいたミュラーだった。人攫いの被害者兄弟の兄だ。ここの制服着てるって事はどこかに引き取られて入学したのかな?
「元気だった? ドロテアは? いつからここに?」
「オレとドロテアは2人一緒に雇ってもらえて、雇用主の息子のお目付役としてここにも通わせてもらってるんだ」
「お目付役?」
「そう。だからすぐ戻らないと……あ」
「遅いぞミュラー! あっ! 誰その可愛い子!?」
「先生と呼びな」
「わぁっ! あー……怖い人もいる~……」
「アウグスティン、礼儀」
「失礼いたしました! 王立学院騎士科の2年、アウグスティンです! 見学の方でしょうか?」
「高等科のダンスのお手伝いをしているチサト・デーメルです。よろしくね」
「ダンスの手伝い? ですか?」
「ここの3年生と高等科の1年生でダンスの合同練習が始まっただろう? そこで人数が足りない時にフォローをするのがチサトだ」
「えっと……じゃあ踊ってもらえるの? ですか?」
「高等科に進んで上手ければチサトと踊らせてやっても良い。下手な奴と踊らせると怪我をするからね」
先日、ドレスの裾が絡まって転んだ事を付け足した。
「チサト先生、何もない所でも転ぶもんね」
「そんな事ない! ちゃんと何かがっ! わぁっ!」
「すまっ! ……おや?」
廊下の曲がり角でぶつかってしまったのは見覚えのある赤髪の人だった。転んでないよ! 事故だよ!
「あ、去年怪我をした時に立ち入りを許可して下さった先生ですね。あの時はありがとうございました」
「やはりあの時の。お元気そうですね」
「はい。ラウリ先生にも良くしていただいてすぐに良くなりました」
「んんっ!」
「失礼した!!」
よろけた所を支えてくれた手がそのまま背中に回っていたけど、ザシャさん心配し過ぎ。赤髪の先生は会釈をして去って行った。
「……あの先生があんなに大人しくなるなんて……」
「いつもの暑苦しさが……」
以前会った時と印象は変わらないけど、普段と違うのかな?
ドロテアは13歳だから入学は来年か。
良い人に雇ってもらえて良かったね。
学食が戦場になっていた。
移動のロスを考えて午前中いっぱい、週2回の授業だったダンスを丸1日にして週1回に変更してこちらに来ているので、学食を利用する人数が増えてしまったせいだ。おれが余計な事言ったから?
「チサト先生のせいじゃないよ。この学校がいい加減なんだ。午前中に気づいて今、向こうで作った分と食器を全部運んでるから気にしないで」
食堂では席が足りないので教室で食べる許可も出ているらしい。向こうから来たおれたち職員は会議室で食べさせてもらう事になった。
「チサト先生、午後のドレスはどうします?」
「あ、また倒れると困りますよね」
体温調節ができなくて具合が悪くなった事は伝えられている。涼しいドレス?
「食べ終わったらその辺で買って来よう。少し遅れるかもしれないがね」
「よろしくお願いします!」
試着するために一緒に行くと。
「テオフィールは文句を言うだろうが具合が悪くなるよりマシだ。チサトはこのデザインは嫌いかい?」
「正直、フィールが妬くのが理解できません。涼しいしスカートもサラサラしてて気持ち良いです」
女装の恥ずかしさはあるけど。
ビスチェと言う、胸に晒しを巻いたみたいな物の上に大きくV字に開いた布を肩にひっかけてブローチで胸元を固定する。後ろがどうなっているかは分からない。
スカートのサラサラ具合がクセになりそう……。
そのまま行っちゃえって事になり、ザシャさんに抱っこで運ばれた。おれが歩くより早いから。
「お待たせ」
「遅くなりました!」
「「「「「おおーーーー!」」」」」
いつもと違うドレスにどよめきが起きる。いや、おれのドレスだけじゃなくておれを抱いたまま入ったりするからザシャ先生がかっこよくてどよめいたんだ。だってザシャさん、ドレスに着替えてないから。
「今日は手が足りてるから私はこのままで良いね。さ、指導するよ」
新しいドレスは軽くて涼しくてとても踊りやすかった。
そして普段着は体温調節ができるようになるまでは襟なしの半袖と膝丈のハーフパンツに変わった。
「チサト先生、若返ったねー」
「ハラルドくん……いくつに見える?」
「15……歳?」
「13歳!」
「「「「12歳!」」」」
「いやだぁー!」
ディトマールくんが言いにくそうに15歳と言ったけど、ハラルドくんは13歳って、そして他の子達は声を揃えて12歳だって……!!
「この学院に入学する14歳より下に見えます……」
ディトマールくんが言いにくそうに補足してくれたけどショートパンツのせいだ! せめて膝を隠せば!!
ザシャさんからの報告でおれの魔力コントロール訓練についての話になり、ラウリ先生から紹介された魔力制御が覚束ない子供を集めてコントロールを教えてくれる研究所に行く事と普段着のデザインの変更が決まった。さらさら生地のゆったり目のハーフパンツ。めっちゃ楽!
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