ほんのちょっと言語チート、くっださーいな!

香月ミツほ

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闘技大会

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ーー チサト side ーー

フィールが忙しそうだ。
盗品の件は一段落したようだけど、町は闘技大会の話で盛り上がり、賞金がどれくらいになるか、とか誰に賭けるか、とかあちこちから聞こえてくる。

フィールの強さは皆が知ってるけど他の町からの参加者や招待選手が誰なのか分からないのでなかなかに盛り上がっている。

ちなみに1位から3位までを当てるタイプと、試合開始前に賭け札を買い、賭けた選手が勝つたびに配当金がもらえるシステムがあって1度でも勝てば選手にも賞金が出る。

孤児院は闘技大会に関係ないからいつも通りに過ごしている。ただ、三角バッグがたくさん売れないかな?と期待してせっせと作っているくらいだ。





そして大会当日。
おれはなぜかお茶会で着た服を着て関係者席にいる。

「皆さま、ようこそおいで下さいました!」

領主がノリノリで開会宣言をする。
恋人や伴侶が選手を応援すると選手達のやる気が上がるから、と特別席を設けたそうだけどフィールと副隊長さんはシードなので出番は明日。……今日は普通の服で良いんじゃない?

「コリンさん、こんな格好する必要、あるんですか?」
「なんかね、見せびらかしたいらしいよ?」

コリンさんはゆったりとしたシャツにぴったりとしたベストとパンツを合わせていてすらりとかっこいい。でも髪に小さな花を飾っている。おれはツィーゲ伯のお茶会で着た服なんだけど、なぜか髪に飾られた。しかも花が大きいような気がする。周りを見ると結構な割合で花をつけているからそういうものなのかな?

戦っている選手の相手が最前列になるので、おれたちは特別席の後ろにいる。だけど他の選手のお相手の視線が痛い。

「目立ちたくないぃ」
「かわいいよ! ちゃんと16歳に見えるし!」
「でも……」
「あ、ほら試合が始まるよ! エルマー頑張ってたんだから応援してあげて!」

そう言えばエルマーさんの好きな人って誰なんだろう? こっちの席にはいないみたい。エルマーさんは無事に2回戦を勝ち抜き、3回戦へと進んだ。

「エルマー! 最低でも4回戦に進めよー!!」

一般観客席から大きな声が聞こえたのでそちらを見ればそれはアライさんの声だった。
声援(?)を受け、疲労を感じ始めているように見えたエルマーさんの雰囲気が変わった。

なんだかかっこいい!

「エルマーさん頑張ってー!」
「オルトが太鼓判押したんだから自信持てぇ!」

おれたちの応援が届いたかは分からないけど、エルマーさんは勝った。次の相手は隣町の向こうから来た若い騎士だ。シードになるくらいだから強いんだろうな。

シード選手との試合は明日。
疲れを癒して試合に臨むそうだ。

「アライダ、少しはエルマーの事考えてくれるかな?」
「アライ……ダ、さん?」
「あれ? 知ってるでしょ。確か料理教わった、とか……」

新井さんでも荒井さんでもなかった……。

「エルマーさんの好きな人ってアライさんなんですか?」
「そうそう。何度も当たっては砕けてるらしいんだけど、めげないんだって。アライダももう、新しい恋人作って良い頃だと思うんだよね」

アライさんは以前、恋人に捨てられてからずっと独り身。そしてエルマーさんは年下は好みじゃないと断られながらも通い続けているらしい。

2人とも幸せになって欲しいから、アライさんが絆されたら良いな。それにしてもコリンさんて情報通?

「あ、あのどっちかが明日オルトと最初に当たるんだ」

コリンさんは強さをチェックしてるみたい。見て分かるものなのかな?





翌日、副隊長さん圧勝。
相手は隣町の人で負けてがっかりしてるけど、恋人が駆け寄って励ましてるから観客から冷やかされてる。あ、激しくキスして審判につまみ出された。(笑)

「おめでとうございます」
「ありがと。まぁ、普通の人には負けないよね。ほら、次はデーメルさんだよ?」
「応援、行ってきます!」

最前列に行くと、小さな赤ちゃんを抱っこした人がいた。

「フィー……デーメル隊長の対戦相手の方の奥様ですか?」
「そうだよ。まぁ、ここまでだろうけど」
「えーっと……」

何と言えばいいのか。

「ね、君がチサト先生?」
「え? はい、そうですけど……」
「息子たちが世話になったね。ありがとう。おかげでバルドゥルが張り切ってお手伝いしてくれてるよ」
「あ! アーベルとバルドゥルの?」
「そう。あれ? この前うちの旦那に会わなかった?」

2人を迎えに来たお父さんは確かにガッチリしてて強そうだったけど……ヒゲか!

「印象が変わっていて気づきませんでした」
「あ、そう言えばヒゲ剃ったね。あ、始まるよ」

促されて慌てて見ればフィールが少し不機嫌? あれ?

そして試合は開始すぐに武器を跳ね飛ばして終わってしまった。

……気がついたら地面に斧が刺さってた……?

「ま、こんなもんだろう。お礼がしたいから今度、うちに遊びにおいでよ。カイって子も連れてさ」
「良いんですか?」
「もちろん!」

赤ちゃんの手を握らせてもらってから見送った。遊びに行ったら赤ちゃん、抱っこさせてもらおう!!

向き直ってフィールに手を振ったらちょっと拗ねたような顔をしてた。
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