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迷惑な客人
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ーー デーメルside ーー
先日オルトが持って来た料理をまた食べたいとチサトが言うので、どこの店の料理なのか聞くと、酒場なので今夜行こうと言い出した。
夕飯を孤児院で作る事になっていると言うと、見回りのついでに夕飯は外食だと伝えて来たらしい。酒に弱いチサトが少々心配だが側を離れなければ大丈夫だろう。
何があってもチサトの痴態を他人に見せはしない。
側にいるはずだったのに……
突然、隣町の領主がやって来た。いつもの事ではあるがやはり迷惑だ。田舎領主同士で親睦を深め、町の発展について意見を交換し合うとの名目で息抜きにやって来る。
しかも毎回、私を指名する。迷惑極まりない。
「俺が面倒見るからチサトは任せとけ!」
仕方なく数人の部下を連れて領主の屋敷へ向かった。
「テオフィール! 久しぶりだな!!」
「………………ご無沙汰いたしております」
「仕事を辞めて私に嫁ぐ気になったか?」
「なりません」
「では専属護衛は?」
「謹んでご辞退申し上げます」
「では侍従に」
「この屋敷の警備は万全です。護衛の必要はないようなので下がらせていただきます」
「まぁまぁ、少しくらい付き合え」
隣町の領主のツィーゲ伯爵がいつも通りの誘いにいつも通りの断りを返していると、うちの領主のフィッツェンハーゲン伯爵が取り成しに入った。
「早く家に帰りたいのだろうが、夜には解放するから」
「……家? 宿舎住まいではなかったのか?」
領主が余計な事を言った挙句、チサトの事を喋ってしまった。ツィーゲ伯爵に知られたくなかったのだが。
「可愛いのか? その子は可愛いのか!?」
「見せません」
「一目でいいから!」
「お断りいたします」
容姿の優れた者を側に置きたがるツィーゲ伯爵に視察と晩餐に付き合わされ、最後までごねられ、帰りには跡を付けられたので撒いて来た。
まったく、迷惑にも程がある。
遠回りして目的の店に着くと、チサトが厨房にいた。
エプロンを胸に巻き、木箱に乗って包丁を振るっている。……泣きながら。
「チサト、どうしたんだ!?」
「あ、デーメルざん……おづがれざまでず……」
心配したが涙の訳は玉ねぎを切っていたせいだと分かり、胸をなでおろした。
店主はチサトに盛り付けもやらせ、料理を運ばせる。エプロンをして料理を運ぶ姿がたまらなく可愛い。家でもエプロンを着けさせよう。
「ローストビーフと温野菜の塩玉ねぎダレです」
「美味そうだな」
「良い出来に見えるが、味はどうだ?」
「美味いに決まっている」
オルトが茶化すのを真面目に否定すると厨房からも不安なら食べるな!と援護が届いた。
「美味い」
「美味しいです!」
「こりゃあ良い」
酒が進む一品だ。
チサトの飲み物が気になったが果実水だと聞いて安心した。
「デ……フィール、ここの店主さんが働きに来ないかって誘ってくれたんです。孤児院で働いてるから断りましたけど」
賢明な判断だ。料理が美味くても酒場だ。酔っ払いに絡まれる事もあるだろう。
……と、考えていたら酔っ払い以上にタチの悪いのに見つかってしまった。
「見つけたぞテオフィール! お前の愛し子はどこだ!? 私にも見せてくれ!!」
「撒けなかったのか」
「……そのようだな」
「お知り合いですか?」
危険だからとチサトを抱きかかえてオルトの後ろに回る。心得たオルトが進み出てツィーゲ伯爵に話しかけ、行く手を塞いでいる間に裏口から出て家に帰った。
「あの……さっきの方は……? 偉い人じゃないんですか?」
「怖がらせてしまったな。アイツは隣町の領主でツィーゲ伯爵と言う。容姿の優れた者を見つけるとしつこく側に置こうとするんだ」
「容姿の優れた? フィールの事?」
「……私もしつこく誘われているが、チサトも狙われるだろう」
「ぼくが!?」
これほど可愛らしい容姿で何を驚く事があるのか。
……自覚がないのか?
「無体な事をする人ではないし、私はまだ抵抗できるから良いがチサトでは無理だろう。関わらないのが一番だ」
今ひとつ納得していないようだが1人で外出しない事を約束させた。
店では1品しか食べられなかったので家にある物で簡単な料理を作ってもらい、一緒に食べた。そして少しだけ、と果実酒をグラス半分だけ飲ませたところ、恥じらいながら検証の為1度だけ後孔へ精を注いで欲しいと言ってきた。
理性が残っているようで本当に1度だけと念を押されたので、ようく解して1度だけ中へ注ぎ込んだ。それが済んでも萎えない私を気遣い、チサトは太ももに私のものを挟んで擬似性行為をさせてくれた。素股と言うらしい。
すべすべの柔らかな太ももに擦られて私1人が快楽を得ているのでは?と不安になったが、チサトのものも擦れて感じるようで、もう1度、と小さな声で強請ってきたので嬉しくなった。
唯一の不満は蕩けるとフィールと呼んでくれなくなることか。
早く名前にな馴染んで、敬語もなくなると良いのだけれど。
先日オルトが持って来た料理をまた食べたいとチサトが言うので、どこの店の料理なのか聞くと、酒場なので今夜行こうと言い出した。
夕飯を孤児院で作る事になっていると言うと、見回りのついでに夕飯は外食だと伝えて来たらしい。酒に弱いチサトが少々心配だが側を離れなければ大丈夫だろう。
何があってもチサトの痴態を他人に見せはしない。
側にいるはずだったのに……
突然、隣町の領主がやって来た。いつもの事ではあるがやはり迷惑だ。田舎領主同士で親睦を深め、町の発展について意見を交換し合うとの名目で息抜きにやって来る。
しかも毎回、私を指名する。迷惑極まりない。
「俺が面倒見るからチサトは任せとけ!」
仕方なく数人の部下を連れて領主の屋敷へ向かった。
「テオフィール! 久しぶりだな!!」
「………………ご無沙汰いたしております」
「仕事を辞めて私に嫁ぐ気になったか?」
「なりません」
「では専属護衛は?」
「謹んでご辞退申し上げます」
「では侍従に」
「この屋敷の警備は万全です。護衛の必要はないようなので下がらせていただきます」
「まぁまぁ、少しくらい付き合え」
隣町の領主のツィーゲ伯爵がいつも通りの誘いにいつも通りの断りを返していると、うちの領主のフィッツェンハーゲン伯爵が取り成しに入った。
「早く家に帰りたいのだろうが、夜には解放するから」
「……家? 宿舎住まいではなかったのか?」
領主が余計な事を言った挙句、チサトの事を喋ってしまった。ツィーゲ伯爵に知られたくなかったのだが。
「可愛いのか? その子は可愛いのか!?」
「見せません」
「一目でいいから!」
「お断りいたします」
容姿の優れた者を側に置きたがるツィーゲ伯爵に視察と晩餐に付き合わされ、最後までごねられ、帰りには跡を付けられたので撒いて来た。
まったく、迷惑にも程がある。
遠回りして目的の店に着くと、チサトが厨房にいた。
エプロンを胸に巻き、木箱に乗って包丁を振るっている。……泣きながら。
「チサト、どうしたんだ!?」
「あ、デーメルざん……おづがれざまでず……」
心配したが涙の訳は玉ねぎを切っていたせいだと分かり、胸をなでおろした。
店主はチサトに盛り付けもやらせ、料理を運ばせる。エプロンをして料理を運ぶ姿がたまらなく可愛い。家でもエプロンを着けさせよう。
「ローストビーフと温野菜の塩玉ねぎダレです」
「美味そうだな」
「良い出来に見えるが、味はどうだ?」
「美味いに決まっている」
オルトが茶化すのを真面目に否定すると厨房からも不安なら食べるな!と援護が届いた。
「美味い」
「美味しいです!」
「こりゃあ良い」
酒が進む一品だ。
チサトの飲み物が気になったが果実水だと聞いて安心した。
「デ……フィール、ここの店主さんが働きに来ないかって誘ってくれたんです。孤児院で働いてるから断りましたけど」
賢明な判断だ。料理が美味くても酒場だ。酔っ払いに絡まれる事もあるだろう。
……と、考えていたら酔っ払い以上にタチの悪いのに見つかってしまった。
「見つけたぞテオフィール! お前の愛し子はどこだ!? 私にも見せてくれ!!」
「撒けなかったのか」
「……そのようだな」
「お知り合いですか?」
危険だからとチサトを抱きかかえてオルトの後ろに回る。心得たオルトが進み出てツィーゲ伯爵に話しかけ、行く手を塞いでいる間に裏口から出て家に帰った。
「あの……さっきの方は……? 偉い人じゃないんですか?」
「怖がらせてしまったな。アイツは隣町の領主でツィーゲ伯爵と言う。容姿の優れた者を見つけるとしつこく側に置こうとするんだ」
「容姿の優れた? フィールの事?」
「……私もしつこく誘われているが、チサトも狙われるだろう」
「ぼくが!?」
これほど可愛らしい容姿で何を驚く事があるのか。
……自覚がないのか?
「無体な事をする人ではないし、私はまだ抵抗できるから良いがチサトでは無理だろう。関わらないのが一番だ」
今ひとつ納得していないようだが1人で外出しない事を約束させた。
店では1品しか食べられなかったので家にある物で簡単な料理を作ってもらい、一緒に食べた。そして少しだけ、と果実酒をグラス半分だけ飲ませたところ、恥じらいながら検証の為1度だけ後孔へ精を注いで欲しいと言ってきた。
理性が残っているようで本当に1度だけと念を押されたので、ようく解して1度だけ中へ注ぎ込んだ。それが済んでも萎えない私を気遣い、チサトは太ももに私のものを挟んで擬似性行為をさせてくれた。素股と言うらしい。
すべすべの柔らかな太ももに擦られて私1人が快楽を得ているのでは?と不安になったが、チサトのものも擦れて感じるようで、もう1度、と小さな声で強請ってきたので嬉しくなった。
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