ほんのちょっと言語チート、くっださーいな!

香月ミツほ

文字の大きさ
上 下
23 / 134

モテ期(?)到来

しおりを挟む

ーー チサト side ーー


まったくデーメルさんてば!

「愛してる」ってものすごく特別な言葉なのに、あんなに軽く冗談にするなんて! ……まぁ、友達に大げさに感謝する表現として使う事もあるみたいだけど、そんな友達いなかったし。


ここはそう言うノリの国なのかな?


それとも実は遊び慣れてるのかなぁ? 人付き合いが苦手とか言ってた気もするけど。

……すぐからかうんだから。


あんな泣きそうな顔まで作って!!


普通にからかわれるのは楽しいから嬉しいけど、「愛してる」は…… もっと大事にして欲しいなぁ。


「チサト、どこまで行くんだ?」

「あ……教えてくれてありがとうございます。デーメルさん、行ってらっしゃい」


考え事をしながら歩いていたら孤児院を通り過ぎそうになった。その上、せっかく教えてくれたデーメルさんへの言葉にトゲが生えちゃった。


ちょっとからかわれただけでこんなにイライラしちゃうの、なんでだろ?





「チサト先生、おはようございます」

「ちしゃとしぇんしぇー、おはよーごじゃましゅ!」

「ギゼラ、カイ、おはようございます!」

「ぎじぇのばか! カイがさいしょに ちしゃとにおはよーいいたかったのに!」

「知らないもん。ギゼだって最初にあいさつしたいもん! あっ! カイ、先生なのに呼び捨てにした!」


おれを取り合って(?)ケンカが始まるとは! モテ期到来?(笑)


「2人とも大好き!!」


左右の手でぎゅーっと抱きしめて言えば、ほっぺにちゅーが返ってきたので、おれも2人のほっぺにちゅーした。





「ギゼ、チサト先生と一緒に寝る!」

「ちしゃとしぇんしぇーと寝るのはカイ!」


職員は子供達と一緒に寝ないものだけど、禁止されてる訳ではない。来たばかりで不安定な子や小さな子は職員と寝ることもある。


お風呂も同じく禁止されていないが、一緒に入りたがって駄々を捏ねる子がそもそもいなかったそうだ。


今日からは泊まりの日と、帰りが遅くなる日におれはみんなと一緒にお風呂に入る事になり、夜も職員用ベッドを2つくっつけて寝る事になった。そして構造上おれのベッドに1人、くっつけたベッドに1人、となるので揉めている。どっちも隣なのになぁ。(苦笑)


「じゃぁ、ベッドはカイと一緒、掛け布団はギゼと一緒にする! 決定! 次は交代な?」

「「はーい」」



………………?

温かい……?


「あ! カイ、おねしょ!」

「んにぇ? なぁ……に? ……!!」

「えーっと、着替え持ってきてたよな? シーツを丸めて布団を叩いて吸わせて……あ、カイ冷たいだろ?先に着替えなきゃな」

「ぐすっ……カイ……おねしょ……かっこわるい……えぐっ……」

「まだ3歳なんだから大丈夫。12歳でおねしょする子もいるんだぞ」

「12しゃい……? だぁれ?」

「それは聞かないで!」

「ぷっ! あはは! なんでー?」


ギゼラはぐっすり寝ていて気づかないので、おねしょの片付けをした後、ベッドに入らせてもらった。狭いけど。(笑)


起きた時驚きながらとても嬉しそうで、喋れなくなってるおれにしっかりとべろちゅーしてくれた。いつの間にちゅーのレベルを上げたのか!? いや、レベルが上がったと言うより遠慮がなくなった感じかな? 「ぺろん」が「ぺろぺろぺろ」になっていた。


カイの寝間着と、巻き込まれたおれの寝間着、シーツと毛布を洗い、ベッドマットを干す。晴れて良かった。


おねしょをからかう10歳のパウルとカイがケンカしたので仲裁したり、字と裁縫と料理を習いながら1日を過ごした。


そして迎えに来てくれたデーメルさん……と副隊長さんとこの前送ってくれた隊員のエルマーさん。


「よう! 引越し祝いに来てやったぞ」

「副隊長、私は無理にとは……」

「2人とも来なくていいのだがな」


じーちゃんちでも近所の人がちょいちょい上がりこんで酒盛りしてたな。みんな親戚みたいなものだから遠慮もなくてツマミもお酒も持参して。


「楽しそうですね。でも夜勤明けで飲んで大丈夫なんですか?」

「鍛えてるからな!」

「私は明日非番だからいいんですが、チサトくんは嫌じゃないですか?」

「ぼくは賑やかなの好きですから、嬉しいです。でもデーメルさんは?」


「……チサトが良いなら構わない」


と、言う事で今夜は宅飲みが決まった。

持って帰る夕食は2人分なのでツマミが足りないと思ったが迎えにくる途中で串焼きとか魚の干物とか買って来たそうだ。お酒も注文してあるから届いてるはずだ、って。


帰って見たら樽が届いてた。

……たる。

生まれて初めて生で見た。


ちゃんと蛇口がついてる!

異世界でも蛇口の構造は変わらない。家の水道には魔術が使われているけど、酒樽には必要ないらしく、シンプルな蛇口だった。


「チサトは飲んではいけないよ?」

「飲みません」

「これは強いからその方がいいだろう。チサト用の甘いのはどうした? もう飲みきったのか?」

「まだありますが二日酔いが辛かったので……」

「加減を覚えりゃ良いだろ」

「そうですよ。加減を知らない方が危険です。すこ~しずつ試しましょう?」

「だがっ!」

「過保護だぞ、テオフィール」


知らない名前だけど、流れから言ってデーメルさんの名前なんだろうな。


「……お前、名前も教えてなかったのか? テオフィール・デーメル第二騎士団所属第一部隊隊長殿」

「喋れなくなった時のチサトには難しいと思って……」


確かに発音難しそう。


「まぁ、まぁ、我々はあまり長居せずに適当に切り上げますから、まずは乾杯しましょう!」


エルマーさんに促され、引越し祝いの宴会が始まった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...