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第12話

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ーー リーフ side ーー

もらった酒を飲む前にイーノは潰れてしまった。仕方がないので部屋に運び、ベッドに寝かせる。浄化して服を脱がせて……

改めて眺める。

何がこんなに心を揺さぶるのか。
私にとって愛らしい容姿ではあるがただの気のいい人間で、通常ならば見向きもしないはずだ。だがあの町で成長を見守るうちに何かが芽生えたのは確かだ。

「んん……」

おっと。
下着を履かせてやり、同衾して朝を楽しみに眠りに落ちた。



期待通りの朝の触れ合いを楽しんで宿の朝食を食べ、次の馬車に乗った。昨日の料理人見習いが合流したエスグリをなかなか離さず、構わないから、と馬車を出発させたがすぐ追いついてきた。

「置いていくな!」
「離れる口実を作ってやったんだ」
「かわいかったんだぞ。もう少しくらい……」
「行き先は分かっているのだし、後から来ても良いだろう」
「そんなのつまらないじゃないか」

エスグリの楽しさなど知った事ではないのだが。イーノが「一緒の方が楽しいですよね」と言うのでイーノを楽しませるためにいても良い。



ーー イーノ side ーー

また迷惑をかけてしまった……。
酔いつぶれて運んでもらってお世話されて……。

性的なお世話まで!!

正直、神々しいまでの美しさを誇るエルフ様が色気まで出してきたら瞬きすらできない。目が覚めたら眼を奪われ、固まったまま可愛がられてあふん。

……リーフ様が楽しそうだから良いか。甘えてしまおう。

出発する馬車に乗らずにいちゃつくエスグリさんと料理人見習いくん。昨日はちょっとかわいいかも、と言う感じだったのに今朝は目はうるうるで頬を染めてて唇は心なしかぷっくりしていて赤く色づいている。

色気が!
一晩で色気が!!

驚いて眺めていたらリーフ様はエスグリさんを置いて行こうとした。勝手に追いかけてくれば良い、と。

「そんなのつまらないじゃないか」

意外に寂しがり屋なのかな?

2人のやり取りを微笑ましく見守る同乗した熟年夫婦は初孫に会いに行くそうだ。赤ちゃん、かわいいだろうなぁ。女の子だからきれいに育って欲しいとリーフ様を拝んでたけどご利益はあるのだろうか?

今回は魔獣も現れず、平和に次の街に着いた。次の馬車では野宿があるらしい。湿地帯なので街ができず、キャンプ場を作ったと言う。

だから馬車はベッドになる座席付きのを貸し切り。……残念だけど朝のいちゃいちゃはお預けだ。何かあったら飛び出せるように衣服はつけたままで眠った。




……目を覚ますとなぜかエスグリさんが刺々した荊でぐるぐる巻きに縛られていた。痛そう……(怯)

「リーフぅぅぅ! これ、解いてっ! 漏れる!!」
「そのまま引きずって行きましょう」
「な、何が……あったんですか? リーフ様、冗談ですよね?」

リーフ様、怒ってる?

「あぁ、怖がらなくて良いんだよ。ちょっとしたお仕置きだからね」

ちょっとしたお仕置きで湿地帯を馬車に引きずられるとか怖すぎるよ! ヒルも毒ガエルもいるのに……。沼サソリもいるよ!

ツタを解いて許してくれるようお願いして解いてもらった。気づかなかったけど、寝ぼけておれに足を乗っけたのを怒ってくれたらしい。リーフ様、過保護……。

エスグリさんに続いて朝のトイレを済ませ、簡単な朝食を食べて出発した。湿地帯は意外に広く、2泊してようやく次の街に辿り着いた。

途中、襲って来たオオドクガエルをリーフ様がスパッと切ってやっつけてくれた。背中の皮の間に毒があるので上手く剥いで毒専用保存袋に入れて亜空間収納バッグへしまった。脚は食用だから食料保存袋に入れてからだ。間違えないよう、毒の保存袋には触るとピリピリする魔法がかけられている。




「明日はいよいよハーフエルフの街だ」
「そんな名前の街なんですか?」
「翠珠街、だ」

そ、そうだよね!!
バカなこと言っちゃって呆れられてないかな? ……あ、温かい目で見られてる。

うわうわうわ、恥ずかしい!!



ーー リーフ side ーー

湿地帯を抜けるには馬車だと3日かかる。イーノがウマに乗れたら2日で行けたのだが仕方がない。帰りは郷で2人乗りできる程度まで練習させよう。

エスグリが転がって来てイーノにしがみついた時には思わず荊の拘束を放ってしまったがダメージを無効化された。縛り上げられたから良しとするが、物足りない。

ダメージ無効化されているから動けないだけなのに荊に巻きつかれた見た目にイーノは怯えていた。ベルトに付与した守護魔法でイーノには傷1つつかない魔法なので、気にする必要もないのだが。

そんな小動物のような様も愛らしさに拍車をかけているな。

『ハーフエルフの街』と聞いて反射的に街の名だと受け取ったようだが『翠珠街』だ。エルフの住む湖水地帯の森の奥の里『碧翠郷』からこぼれ落ちた者達の街だからだが、きれいな響きだとうっとりしていたので余計なことは言わずにおいた。
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