美醜逆転?おれぶちゃくないけど?

香月ミツほ

文字の大きさ
上 下
21 / 32

21 〜イーシップエッ〜

しおりを挟む
「おはよう、ミチル!今日もメイクしてくれる?」
「おはよう、エルヴァン。いいよー!あ、ショートパンツ履いてる。けっこう短いね。」
「家の中ではね。外ではシンよ。」

シンと言うのは巻きスカートだ。
こっちもパカマーと同じ1枚の布だけど、広げた時の大きさが違うし、生地の厚みも違う。

昨日、迎えの人を待たせちゃったからささっとエルヴァンにメイクをして着替えて待つ。

「エルヴァンはこの前言ってた商品は売れたの?」
「あれは置いといて、今は化粧品の試作に付き合ってるわ。ミチルに言われた通りのやり方で煤を集めて、練ってもらって…まずは目立たない部分の皮膚につけてみてかぶれないかと、どれくらい腐らないかを実験中よ。他の顔料もね。」

レンキさんの意見も聞きつつ、試してくれているそうだ。
丸投げしちゃってたな。まぁ、強力なスポンサーもいるし、良いか。

「そうそう、今度また来てね、ってマサキが言ってたわよ。」
「うん。次の休み…明後日行くよ!」

イザーニさんから酔い止めの薬をもらっておいてくれるよう頼んだ。

迎えに来た人に向かって、メイク済みで機嫌の良いエルヴァンがにっこり笑ってミチルをよろしく、なんて言ってる。迎えの人がエルヴァンの顔と脚を交互に見てるので笑いそうになった。





「おはようございます!」
「おはよう、ミチル!」
「ミチルちゃん、おはよ~。」
「おはようございます。」

いつものように身支度をしてスケジュール確認。
今日の昼食会は面接の時にいたうちの1人で、井戸を掘ったり道の整備をしたりする人達のまとめ役。相手は大工さんの大元締め。うん、ガテン系の人達ってことだね。

夜は面接の時の人達、全員。

「質問があります!」

おれは昨日の控え室でのやり取りを覗かれてた件について質問した。

「知らずにやってたの~?」
「サービス精神が旺盛なのかと思ってたけど素なの!?」
「知らせない方が良いと判断しました。」

う~ん…知ってたらぎこちなく…なってたかも???
まぁいいや。それで、おれがそこらの酒場に出没するとそのサービスの価値が下がるのかな?って考えちゃって。

「私達は庶民の酒場にはほとんど行きません。できればあなたにも行って欲しくはありません。ただ、人は覗く事に興奮を覚えるものですから、頻繁にでなければ禁止はしません。」

奢ってもらったお礼にお酌と回し飲みした、って言ったら今度、食事に行こうってヒューリャに誘われた。ここで一緒に食べてるのに?

それはそれ、これはこれ、と言う事で次の次の休みの日に約束した。3日働いて1日休み、のサイクル。




ガテン系の人達は昼間っから強いお酒を飲むようだ。お酌をする時の匂いがもう…

「すみません、匂いで酔いそうです…」

エジェさんにこそっと訴えればお酌をネルミンと交代させてくれた。

「…どうした?」

担当を代わった事が気になったようだ。

「ミチルはお酒に弱くて、粗相をしかねないので交代させていただきました。」
「粗相?してくれて構わないが。多少の事でいちいち腹をたてるほど小さい男じゃないぞ。だいたい飲んでないだろう。」
「いえ!匂いだけで粗相どころか仕事にならなくなりそうですので。」

腰砕けになったら従業員どころか客としても迷惑だよね。

「どうなるのか見せてくれなぁい?」

大工の元締めがまさかのオネエ。
ガチムチ寄りなのに…

「ほらほら、私のお膝に乗って?飲まなくて良いから。」

どうするべきかとエジェさんを見ると、断っても構わないと言う。この世界にはまだ、セクハラの概念はなくて、嫌がる事をしない、がマナーと言うか常識らしい。

ただし、嫌なら嫌とはっきり言えないと止めてもらえない。人によってはちょっとハードルが高いと思う。お膝においで、なんて女の子にやったら絶対ダメだけど、男同士だし、まぁ良いか。

いや、お酒がダメなんだって!!

「酔うと歩けなくなっちゃうので、お許し下さい。」
「抱っこでお持ち帰りしてあげる♡」
「イヤです。」
「え~、ザンネ~ン…」


「…ヒューリャ、酌をしてくれ。」
「はい。」

知り合いかな?お気に入りかな?
ネルミンもオネエ様の隣に座ったし、一緒に食べ始めた???

しかもあの強いお酒、勧められて飲んでる!!

「あのお酒、昼間っから普通に飲むレベルなんですか?」
「そうよ。夜なら口の中が痺れるような強いお酒じゃないと物足りないけど、昼ならあれくらいね。」

と言う事は、口の中が痛かったやつが普通で、ジェミルのは薄かったのか。そして俺が飲んでたのはほぼジュース…。日本では普通に日本酒だって飲んでたのに…でもウィスキーやブランデーはロックじゃ飲めなかったな。

昨日の人達は武闘派だから、いつでも戦えるように弱いのしか飲まなかったんだって。

「アタシもお酒弱いフリしようかしら~?」
「ランゴ様、手遅れですよ~。」
「まだ新しい出会いもあるはずよ!その時には…」
「酔い潰してお持ち帰りなさるんですか~?」

おほほほほ、と笑い合う。
不思議な接客だなぁ。会員制のレストランみたいなものなのかな?

イマイチ商談をしている感じじゃなかったけど、とにかく2人が帰ったので賄いを食べた。





夕方になって面接官達が来た。商人ギルドの四天王…じゃなくて重役達だ。ハヤル様はさっきも来てた、インフラ整備の元締めの人だ。

「ミチル様、今日もお美しい。」
「カドリ様、おれは従業員ですから呼び捨てにして下さい。」
「ですが…」
「お世話になってるのはおれの方ですよ?」

あれ?
おれじゃなくて私にした方が良いのかな?誰も気にして無いから、良いかな?

それにしても…
贅沢言っちゃいけないんだけど、なんだかやり甲斐がないなー。からかわれてうまく返して、なんて出来ないし。

はぁ…

「どうされました?」
「あっ、ご、ごめんなさい!!何でもありません。」

仕事中のため息はまずい。
気をつけよう。

会議の後の打ち上げみたいな感じで食べさせてもらった。良いのかな?

…良いのか。

それにしても存在意義が実感できない仕事だなぁ。何か隠してる?

え?例の野盗が意外にも大きなグループらしくて、商人の出入りが滞っているから商談が少ないの?そうか。早く捕まえられるといいね。

………いや、おれが出しゃばるとか、足手まといだよね。誘き出すための囮なんてね。

そうだ、もし囮が必要ならその人にメイクしてあげたら役に立てるかな?よし、聞いてみよう!

「エジェさん、デミル様にお話したい事があるんですが。」

昨日話しをしていた野盗を誘き出す計画がないか聞いてみた。

「確かにそう言った提案もあるが、まだ調査も始まっておらん。それに被害報告が複数箇所から出てきて、調査人数を増やさねばならなくなった。計画の練り直しだ。」

この前の人たちはそのままだけど、もう2ヶ所派遣しないとならなくなったそうだ。またのぞき部屋やるの?

「おう、1組はそうなるだろうな。もう1組は金に困っとるから断られるだろう。」

がははと笑うじーちゃん。

でも、みんな覗かれてるの知ってたら上品ぶってきゃっきゃっうふふしないんじゃない?

「そこはエジェがリードしてくれるんだ。」

え?
と、エジェさんを見ると、にーっこりと艶やかに笑った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です

花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。 けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。 そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。 醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。 多分短い話になると思われます。 サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

処理中です...