美醜逆転?おれぶちゃくないけど?

香月ミツほ

文字の大きさ
上 下
8 / 32

8 〜ペーッ〜

しおりを挟む
「こんにちはー!」

詰所の留守番係に声を掛けると、昨日恋人がいるか聞いて来た人、だと思う。ベールを外して顔を見せる。

「昨日の美人!」

あれ?名前言ってなかったっけ?

「ミチルです。」
「お…私はエニスです!仲良くして下さい!」

思わず吹き出してしまったじゃないか。

「あはは、仲良くして下さいね。」

笑われて明らかに失敗した!って顔のエニスは笑いかけると途端に笑顔になった。子供か。

今日の用件を聞かれてお金の事とか色々知りたいので説明上手な人はいませんか?って言ったら経理のチェックは副隊長がやっている上に今日は非番らしいので呼んでもらえる事になった。

「説明なら俺がいくらでも…」
「ジェミルは報酬の事、判ってなさそうだったから…おれもここの人達が普通にいくらもらってるのか知らないしさ。」
「…確かに、欲しい物もないし食事もエルのツケでどうとでもなるし必要な物はエルが支払いしてるし…」
「夫婦じゃないんだから財布の紐は自分で握ろうね?」
「エルと夫婦だなんて考えたくもない!」

そう言う事じゃなくてね…

「お待たせいたしました。」

って、回り込んで跪いて両手を握って。
なにこの対応。むずむずするよー!
ジェミルが手を外そうとしてるけどさすが鍛えているだけあって外れない。

「副隊長さん、これじゃお話も聞けないしお茶も飲めません。手を離して下さい。」
「失礼いたしました。それにしてもミチルさんは容姿だけでなく肌もきれいなんですね。」
「そうですか?」

撫で回した後に離してくれた手を逆に触ってみたら少し硬い気がしたけど、これは鍛えてるから?民族的特徴?ジェミルはどうだろう?

2人の手を引き寄せて揉んだり撫でたりしてみたら皮膚が厚いような気がした。

「おれ、皮膚が薄いんですかね?わひゃっ!?」

皮膚の薄さを見てもらおうと手を差し出したんだけど、2人掛かりで撫でられて変な声が出てしまった。くすぐったいでしょ!!

文句言いながら手を引っ込めたら2人とも謝ってくれたけどてへぺろ感満載。まったくもう。

「それで、なにを説明しましょうか?」
「聞きたいのは一般的な生活に必要な金額、警備隊員の新人の給料、結婚について。」
「結婚!?」

俺が知ってる結婚とここの結婚が同じかどうか判らないから聞きたいんだけど、めっちゃ食いついてきた。

「えー、結婚はですね…」

説明では2人以上の人が契約を交わして生活を支え合う、と言う事らしい。
…2人以上?
婚姻関係にある者同士が同意すれば何人だろうと問題はないし、身体の関係も本人同士が納得ずくなら他に求めてもOK。ただし、一般的には2~3人の婚姻関係が多く、それ以外との性的関係はごく少数だそうだ。3人での婚姻も育児を助け合うのに都合が良いから、らしい。

ワンオペは良くないもんね!

離婚もできる。
とにかく基本は話し合いで、仲裁に入ってくれる相談役もいる。

…ヤンデレとかDVとかはあまりないようだけど、結婚する必要、ある?気持ちの問題?

「じゃぁ、とにかく良い事と嫌な事を話し合ってOKなら結婚もありってことだね。」
「「お願いします!!」」

「え?副隊長さんも?」
「はい!」

と言われても、副隊長さんが気に入ってるの、見た目だけだよね?
ジェミルだって吊り橋効果みたいなものだし、いくら結婚のシステムが軽くてももう少し考えたい。



それから教えてもらった貨幣価値。

通貨はタバルで警備隊員の初任給は月30万タバル。食事がだいたい1食500タバル。
家賃は1Kなら10万タバル、2Kなら15万タバル。集合住宅では薪代は家賃に含まれていて、水は井戸だから無料。ただし室内に井戸があるのか共同かで家賃に2~3万タバルくらい差が出る。バストイレ付きか風呂なしトイレ共同か、って感じで判りやすい。

それならジェミルは週4万タバルもらっていいと思うんだけど…

「ジェミル食費と家賃と必要経費別でいくらもらってる?」
「…週に1万…。」
「少なすぎるだろう!!」

副隊長に怒られた。(笑)

無趣味な人が実家住みでお小遣いもらってるみたい…でも少な過ぎ。

「警備隊に入れば宿舎は月8万タバル、食事は1食400タバルで大盛りも同じ金額。給料日に1ヶ月分を集金する。光熱費は不要だが薪割りは交代制だ。鍛錬と見廻りと取り締まり、それから住民の相談も受ける。どうだ?入らないか?」
「人事の決定権は現場に任されているんですか?」

普通、組織の人事ってもっと上の方だよね。

「見習いの採用は現場が判断する。そして1年の見習い期間を終えたら隊長の推薦状を持って本採用試験を受けに王都へ行ってもらう事になる。」

見習いだから現場判断でOKで、1年かけて様子を見るのか。へー。

「それで、おれにできそうな仕事ってありますか?体力も腕力もないし、料理もできません。掃除は何とかなるかも知れませんが、それしかできないんじゃ、ダメですよね。」

「事務仕事もあるが、一応正規の隊員がする事になっているし、やはり掃除か…。」

仕事なさそう…



分からないことがあったらいつでも来るように言われ、お礼を言って帰る。

「ちゃんとベールを被らないと…」

ジェミルが気を使ってくれるけど、すでに結構、顔晒してるよね。まぁ、それほどの騒ぎにはなってないから、良いか。

夕飯を食べて帰ろうと、食堂兼酒場に行く。ここもエルヴァンのツケが効く店だそうだ。

なるべく目立たない席を選ぶ。

どんなお酒があるのか興味があるので、お勧めを頼んで見た。フルーティで飲みやすい、ジュースみたいなお酒。

「甘いけどさっぱりしてて美味しいね。」

爽やかな酸味が美味しい。
春巻きっぽいのと焼きそばと蒸し鶏?
しかもお箸!

「ミチルはお箸の使い方が上手いな。」
「そうかな?」
「食べ方も上品だし、その容姿の美しさを損なわないなんて…」

焼きそばを上品に…?
春巻きには大口開けてかぶりついてるよ?

変なのー、と思いながら美味しい食事を堪能していると、お約束がやって来た。

「よう、そんな型押し相手にしてないで俺らと飲もうぜ。」
「型押し?」

「…型で押して作ったような特徴のない顔、と言う意味だ。」
「何だ、あんた他所から来たのか?」

面倒くさそうなので顔を隠そうとしたけど、引っぱられてベールが外れた。あーあ。

「お酌をして欲しいなら、頼み方があるんじゃない?」
「あぁっ!?そこまでもったいぶる…」

文句を言いながらゆっくり振り返ると、その人は口を開けたまま絶句した。

「もったいぶる、なに?」

椅子に座ったまま身体を横に向けてテーブルに肘をついて両手を組み、シナを作る。あざとく頬杖に切り替えて見上げると、ナンパ男はぶるぶると震えだした。

「結婚してくれ!!」

合言葉か!!
ここの結婚、やっすぅ。軽ぅ。

「言いたい事はそれだけか?遺言があれば言ってみろ。」

どうしたの!?
ジェミルのキャラが変わってるよ?
立ち上がってテーブル越しに凄むジェミルがカッコいい…じゃなくて。

「あの…ただの酔っ払いでしょ?怒るほどの事じゃないよね。」
「不愉快じゃないか?」
「別にどうでも良いよ。でも顔隠す必要無くなったからそっちに座って良い?」
「無視しないでくれ!!」

「結婚はお断りします。」

はい、返事したよー。

************************************************
2タバル=1円です。
適当なので何とな~くで考えて下さい。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です

花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。 けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。 そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。 醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。 多分短い話になると思われます。 サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

処理中です...