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6 〜ホック〜

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ファンデーションとかアイシャドウとかアイラインて、現代は知らないけど昔は顔料、つまりカラフルな石や貝殻を細かく細かく擂り潰して塗っていたって聞いた事がある。あと炭ね。炭は墨を作るときみたいに油を燃やして出る煤を使えば擂り潰す手間をかけずにきめ細かくて粒子の揃った物が作れる、ハズ。

何か乾くと薄い膜みたいに固まる物があったら良いなぁ。

そんなざっくりとした知識と思いつきをエルヴァンが書き留めて行く。
口紅の作り方も判れば良かったのに…紅花みたいな植物、あるかな?



とりあえずのメモが終わったので着替えて町に出る。
シャツとひもパンまでは良かったんだけど1枚布のズボンが履けない。
ジェミルに着付けしてもらったけど、股間に近づくジェミルの顔が妙に色っぽく見えて緊張しちゃって居たたまれなかった。早く着付けを覚えよう。

おれの顔は目立ちすぎるから、とベールを用意してくれたので顔を隠す。なんか怪しくない?

「昼食も目立たない店に行こう。」

屋台だと外に席があるから、建物の中に席がある食堂に入る。やっぱりエスニック料理だった。チャーハンみたいなのと目玉焼きと串焼き肉。

「美味しいね。」
「ここは美味しいし落ち着くからオススメのお店なの。」

内装はシンプルだけど清潔で確かに落ち着く。

「サービスだ。」

そう言ってフルーツの盛り合わせも出してくれた。

「ギュルセル、いつもながら美味しかったわ。」
「お前、エルヴァン…だよな?」
「そうよ。」
「何があった?…おまえはいつもきれいだが…今日は更に美しい。」

甘い!フルーツも甘いけど2人の空気が甘い!!恋人同士なの!?

「恋人じゃぁないわよ?」
「俺はいつだってOKなんだけどな。って、アンタすっげぇ美人だな。」

取って付けたような感じだけど、エルヴァンしか目に入ってなかったんならそうなるよね。

「何でお前みたいな平凡顔がこんな美人2人も連れて歩いてんだ?」
「私はエルヴァンとは一緒にいたい訳じゃない。今だけしかたなく同席しているんだ。」
「幼なじみだか何だか知らねえが偉そうに…」

何かこう、一触即発?
エルヴァンはニヤニヤしながら見ているし、ジェミルと…ギュルセルさん?は睨み合っているし。面倒くさいから早く店を出たい。

「ごちそうさまでした~。とっても美味しかったです。」

割り込むように近づいて感想を伝えるとギュルセルさんがおれの顔に見惚れて怒気が薄れる。くるりと振り返ってジェミルに腕を絡めて早く服屋に行こうと促した。

「あぁ、早く行こう。」

なんか暗示かけたみたいになっちゃった。(笑)

「あれ?支払いは?」
「稼ぎの管理はエルがしているので食事の支払いはエルがする。」
「それ以外は?」
「ある程度は週ごとに受け取ってるな。」

それ、大丈夫?

「エルヴァン…後でジェミルの報酬について教えて?」
「…い、良いわよもちろん!」

少し挙動不審…怪しい…とは言え、ここの相場を知らずに聞いても判断できないので後で警備隊に初任給を聞いておこう。



気を取り直して服屋さん。
半分露天みたいなお店で、エルヴァンが表から声をかける。

「ベルケル~、絶世の美人を見せに来たわよ~♡」

ハードル上げた!?
興味なさそうな様子で奥から出てきた人はジェミルと同じくらいの大きさの模様が描いてある。平均顔って事なのか。

「こんにちは。」

まずは挨拶、とベールを外して声をかけたのに返事がない。
あー、見惚れてるねー。(棒)

「ね、見惚れちゃうでしょう?賭けは私の勝ちね。」
「本当に良いんですか?
いくらなんでもあんなにたくさんもらっちゃうなんて、気が引けるんですけど…」

「あっ!あぁ…構わない。できればこの服でこの店を売り込んでくれればありがたい。」

マネキンか。
それなら喜んで引き受けます!

「ところでおれ、このタイプのズボン初めてで、1人で着られないんです。履きやすいズボンを作ってもらえますか?」
「どんなのだ?」

1番簡単なイージーパンツと言うかワイドパンツと言うか、を図解してお願いした。家庭科真面目に受けてて良かった!暑い国だから膝丈で。

紙はちゃんとあるんだけど、目が荒くてガサガサなのでペンではなく筆で描く。ラフだから良いけど、細かい字は難しそうだなー。

今履いてるズボンも着付けを直してくれて、動きやすさがUPした。ポイントを聞いたからジェミルに教えよう。

…自力でも頑張るよ?
でもまずは情報共有をね?

「…不器用ですまない。」
「え!?なんで?」
「チョンカベーンが上手くできなくて…」
「コレ!?そう言う名前だったの?」

何それ面白い。
腰布の事をパカマーと言い、このズボン風の着付けをチョンカベーンと言うらしい。

「私が上手くできればあいつにミチルの脚を見せなくてもすんだのに…」
「いや、脚くらいどうでも良くない?」

多少は恥ずかしかったけどさ。

「そんなにきれいな肌をどうでも良いとか!!」
「…どうでも良いなら触っても良かったのか?」

えーっと。
ベルケルさん、触りたかったの?

「触られるのは嫌だな。」

お肌の触れ合いは恥ずかしいですよ。
ほっとするジェミルとガッカリするベルケルさん。何だろうね。

とにかく、約束通り服は全て無料になり、エルヴァンは懐を傷めずに賠償を済ませたようだ。ここでエルヴァンは用事があるからと別れ、おれとジェミルの2人になった。

「ねぇ、昨日、警備隊に誘われてたけどジェミルはどうするの?」
「…考えてなかった。だが、これからミチルと暮らすならエルの家からは出ようと思う。」
「おれと暮らす?」

さらりと同棲計画が持ち上がってる?
いや、同棲じゃなくて同居か。

「もちろん、嫌でなければ…だが。」
「イヤな訳ないよ!おれだって一緒に警備隊の宿舎で暮らせたらな、って考えてたもん!」

あ、もんとか言っちゃった。

「警備隊宿舎…確かにその辺の住宅を借りるよりは安心だが…あそこだって…」
「隊長からも付き合ってくれ、なんて言われたけど断ればムリヤリする人じゃないんじゃない?」

だって「サキになっても良い」って言ってたよ。おれに気に入られるために努力するって事だよね。
うん、良い人に違いない。

それにしても仕事かぁ。

隊長にも聞いてみよう。
この町のお店は基本、半露天。食べ物屋さんは屋台。大きな通りに沿って並んでいる。
高級店はちゃんとした建物だそうだ。

武器や防具、薬も売ってたけどとりあえずは関係なさそう。アクセサリー屋さんは楽しかった。

町の中を案内してもらって居るうちにカドリさんの事を思い出し、ジェミルにハンカチを見せるとこの町の有力な商人で高級ジュエリーショップのオーナーだと言われた。

そうだったのか。

あ、宝石を扱ってるなら顔料について聞けるかな?
お店の場所だけでも知っておこうと、見に行くことにした。



うわぁ、超きらびやか。
ショーウィンドウは無いんだけど、白と金でできた建物で、あちこちに宝石らしき物が散りばめられて居る。そして窓ガラスもあって店内が見える。

「うわぁ、敷居が高~い。」
「この辺りは高級店ばかりだから私はあまり来たことが無いんだ。」
「用事も無いよね。」

庶民のおれ達には関係ないね!
顔料については他をあたろう。画家とかどうかなぁ?染物屋さんとかもあるかな。

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