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記憶喪失……?
2-22 闘技場
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「おはよう! これとこれとこれ! どう?」
翌日、朝食を食べてすぐイシドロさんのお店に行ったらすでに下絵ができていて、3枚見せてくれた。
紅い実と黒い実の蔓草が絡みあう楕円形、ライン状の石畳が斜めに走る長方形、そして紅い輪が黒い輪と重なり合う形。
「これは重なり合う運命の輪をイメージしてね! 1番最初に浮かんだんだよ。でも念のため珊瑚の色を活かしたものと定番デザインをね」
運命の輪!?
それは最高かも知れない。
記憶喪失同士なんて絶対、運命の悪戯だもんね。見知らぬ旦那様がいるのもきっと運命のスパイス的な何かで障害にはならない!
……はず。
「この、運命の輪にしてください!!」
「よし! 引き受けた!!」
水晶のカット練習に疲れたからすぐに作ってくれるという。気分転換らしい。
イシドロさんは素材を受け取ると嬉々としてパーツ作りを始めた。
夕べは手加減してくれたので今日はバルへ行ける。お昼を食べて一緒にお店に行った。
「新しい弟が嫁入りした!?」
「タカラが嫁入り? あぁ、やっぱりしたのか……」
まだ恋人だよ!
あの……、不倫て犯罪になる?
「でもいいの? 旦那様の手がかりも分かったんだろ?」
「俺は身代わりだ。旦那が見つかったら……、大人しく身を引くさ」
「はぁぁ? アンタはそれで良いかも知れないけどねぇ! タカラはどうなるんだよ! 浮気を責められたら? 殴られたら!?」
ぶわりとウィシェールさんから何かが噴き出した気がする。何かは分からないけどゾクゾク、きゅんきゅんするからフェロモン? でもこのタイミングで???
「さっ、殺気なんて出すくらいなら連れて逃げちまいな!!」
「えっ! これ、殺気なの?」
「タカラ……、なんともないの?」
「えっと、エロい気分になる……?」
「なんでだよ!!」
えー?
だって怖くないし。
お義兄さんが真っ青な顔で包丁握りしめて出てきたし、アニタさんの足が震えている。ツッコミに忙しそうなハリーは椅子に腰掛けてるけど腰が抜けているようだ。
「旦那様についてはその時で」
「そんなんで良いのかい?」
「なるようにしかならないからね~」
スキル・能天気発動!!
その日、楽しく働くオレをお店の隅から眺めるウィシェールさんにお客さん達は驚いたり喜んだり呆れたりしてたけど、だいたい受け入れてくれたように感じた。
なんか突然の腕相撲大会て圧勝したり、飲み比べで一人勝ちしたり、役者に勧誘されたり。
オレより楽しんでない!?
いやオレ仕事だった。
翌日、ウィシェールさんはオレが店で働いている間だけどこかへ行った。終わる頃には迎えに来てくれたから寂しくはないけどどこへ行ってるんだろう。お仕事?
「まぁ、仕事……、とも言えるか」
「何してるの?」
「闘技場で稼いできた」
「危なくない!?」
「素人が出場できる程度の場所だ。問題ない」
まぁ、強そうだしなぁ。
殺気も出せるみたいだし、大丈夫、なのかな。
「怪我……、しないでね?」
「もちろん。夜の体力も残しておかなくてはならないしな」
「~~~~~~っ!!」
そっ、それは喜ばしいですね!?
さらに翌日は魔道具屋さんに行って浄化プラグの進捗を確認してまた仕事をしていたら常連さん達がご機嫌でやってきた。
「ウィシェールさんに感謝を!」
「タカラ! ウィシェールの旦那はどこだい?」
「ウィシェールさん最高!!」
聞いてみるとウィシェールさんが出ると言うからみんなで闘技場へ繰り出し、勝ち抜き戦の優勝者を当てる賭けでウィシェールさんに賭けて儲けたのだとか。見るからに強そうだから倍率はそこまで高くなかったらしいけど、それでもみんな大銀貨1~2枚の儲けが出たらしい。
さすが!!
「まさか連日出場するとは思わなかったから、ここに居ると思ったんだがなぁ」
「考えてみたらあの人、まだまだ余裕だったね」
「明日も行くのか聞いといてくれ」
「はーい!」
……オレも賭けたいな。
「アニタさん、オレも闘技場行きたい」
「うーん、まぁ、明日休んで良いよ」
「ありがとう!! 皆さん、明日の分までお金落としてってね~」
「よっしゃ! 明日また儲けさせてもらうから昨日の儲けでパーっとやるか!」
「タカラ、一緒に行こうぜ!」
お店は大いに盛り上がり、ワイン樽が空になってアニタさんに喜ばれた。大銀貨数枚でそんなことになるはずないから儲け以上に散財してるな。
この辺の人は宵越しの金は持たないタイプなの?
売り上げが増えたから、と日当の他にご祝儀までもらえた。やったー!!
店が終わる頃、迎えに来てくれたウィシェールさんに翌日のことを告げる。闘技場は客達の柄が悪いそうで来るなら常連さん達と離れないよう約束させられたけど、全財産俺に賭けろなんて言われて心配しつつも喜んでいることにほっこりした。
ビビりなオレは全財産なんて賭けられないけど、思い切って金貨5枚! 賭けちゃうぞー!!
ご、五十万円!!
翌日に疲れを残さないよう、騎乗位したけどうまく動けなくて、逆に火をつけてしまった。呼び方は違うけど駅弁やら松葉崩しやら鵯越えやら。いろんな体位で喘がされました。
しかも!
しっかり手加減されてて怠さはあっても腰を抜かさない程度って言うね……。
もしかして性技のヒーロー!?
自分でも何言ってるのか分からないや……。
*******
ウィシェールさんに連れられて治安の良い地区と悪い地区の間にある映画館くらいの建物に着いた。まだ人はまばらだけど、見知らぬお客さんがウィシェールさんに気づいて声援を送る。
早くも1番人気らしい。
文字が読めないのでオッズも分からないけど、トーナメントの初戦でどちらが勝つかを当てるもの、優勝者を当てるもの、1~3位を当てるもの、全員の順位を当てるもの、バトルロイヤルで優勝者を当てるもの。色々なパターンがあるらしい。
人数が集まらないとバトルロイヤルはやらないって言うけど、それはできないだけだよね。まぁいいか。
出場者は8人。トーナメントだと3回勝てば優勝。少なく感じるかも知れないけど数時間で3回も闘うんだから選手はバテると思う。それに毎日やってるらしいからね。
全員の順位を当ててみようと思う。
ウィシェールさんが1位なのは固定として前に優勝争いをしていたという2人のどっちが2番になるか、かな? うんうん唸っていたらウィシェールさんが予想した番号を書いた紙をくれた。オレはそれを胴元に渡し、お金を払う。結局、金貨1枚しか出せなかったよ……。
どうせチキンだよ!!
いや、10万円出せたら充分だよね?
賭け札を受け取り、喋っていたら常連さん達が来たのでそちらに合流してウィシェールさんを控え室へ見送る。
どんな感じかなぁ?
カァンッ!
ガキンッ!
ドゴッ!
痛そうな音が響き渡ってる。
革鎧を着て盾と剣を持ち、闘う姿は映画のグラディエーターさながらで、会場が狭いから迫力がありすぎる。木剣らしいけどね。
1位、2位、3位は初戦でぶつかり合わないよう試合順が固定されている。でも相手はランダムだし毎日出場する選手は少ない。怪我をしたらしばらく出られないし。
怖がりつつも薄目で試合を見守りようやくウィシェールさんの出番。
頑張ってー!
怪我しないでー!!
叫ぶオレに向かってニヤリと笑い、対戦相手に向き直る。審判の合図で打ち合いが始まるけどあっという間に終わったようだ。危なげないのでさほど怖くなかった。
相手も振り下ろした木剣をいなされ、盾で手を叩かれて剣を落としての敗退だったので呆気に取られている。籠手の上からだから怪我もしてないんじゃないかな?
昨日2位だった人は初出場の小柄な選手に負けてしまった。この人とウィシェールさんはたぶん、決勝で当たる。
確かに動きが速いし、無駄がない感じがするけど地味だと観客からブーイングが出る。でも小柄な選手は気にした様子もない。
ロニーくんて何者なんだろう?
何はともあれ、慣れてきて楽しめるようになってきたオレです。
翌日、朝食を食べてすぐイシドロさんのお店に行ったらすでに下絵ができていて、3枚見せてくれた。
紅い実と黒い実の蔓草が絡みあう楕円形、ライン状の石畳が斜めに走る長方形、そして紅い輪が黒い輪と重なり合う形。
「これは重なり合う運命の輪をイメージしてね! 1番最初に浮かんだんだよ。でも念のため珊瑚の色を活かしたものと定番デザインをね」
運命の輪!?
それは最高かも知れない。
記憶喪失同士なんて絶対、運命の悪戯だもんね。見知らぬ旦那様がいるのもきっと運命のスパイス的な何かで障害にはならない!
……はず。
「この、運命の輪にしてください!!」
「よし! 引き受けた!!」
水晶のカット練習に疲れたからすぐに作ってくれるという。気分転換らしい。
イシドロさんは素材を受け取ると嬉々としてパーツ作りを始めた。
夕べは手加減してくれたので今日はバルへ行ける。お昼を食べて一緒にお店に行った。
「新しい弟が嫁入りした!?」
「タカラが嫁入り? あぁ、やっぱりしたのか……」
まだ恋人だよ!
あの……、不倫て犯罪になる?
「でもいいの? 旦那様の手がかりも分かったんだろ?」
「俺は身代わりだ。旦那が見つかったら……、大人しく身を引くさ」
「はぁぁ? アンタはそれで良いかも知れないけどねぇ! タカラはどうなるんだよ! 浮気を責められたら? 殴られたら!?」
ぶわりとウィシェールさんから何かが噴き出した気がする。何かは分からないけどゾクゾク、きゅんきゅんするからフェロモン? でもこのタイミングで???
「さっ、殺気なんて出すくらいなら連れて逃げちまいな!!」
「えっ! これ、殺気なの?」
「タカラ……、なんともないの?」
「えっと、エロい気分になる……?」
「なんでだよ!!」
えー?
だって怖くないし。
お義兄さんが真っ青な顔で包丁握りしめて出てきたし、アニタさんの足が震えている。ツッコミに忙しそうなハリーは椅子に腰掛けてるけど腰が抜けているようだ。
「旦那様についてはその時で」
「そんなんで良いのかい?」
「なるようにしかならないからね~」
スキル・能天気発動!!
その日、楽しく働くオレをお店の隅から眺めるウィシェールさんにお客さん達は驚いたり喜んだり呆れたりしてたけど、だいたい受け入れてくれたように感じた。
なんか突然の腕相撲大会て圧勝したり、飲み比べで一人勝ちしたり、役者に勧誘されたり。
オレより楽しんでない!?
いやオレ仕事だった。
翌日、ウィシェールさんはオレが店で働いている間だけどこかへ行った。終わる頃には迎えに来てくれたから寂しくはないけどどこへ行ってるんだろう。お仕事?
「まぁ、仕事……、とも言えるか」
「何してるの?」
「闘技場で稼いできた」
「危なくない!?」
「素人が出場できる程度の場所だ。問題ない」
まぁ、強そうだしなぁ。
殺気も出せるみたいだし、大丈夫、なのかな。
「怪我……、しないでね?」
「もちろん。夜の体力も残しておかなくてはならないしな」
「~~~~~~っ!!」
そっ、それは喜ばしいですね!?
さらに翌日は魔道具屋さんに行って浄化プラグの進捗を確認してまた仕事をしていたら常連さん達がご機嫌でやってきた。
「ウィシェールさんに感謝を!」
「タカラ! ウィシェールの旦那はどこだい?」
「ウィシェールさん最高!!」
聞いてみるとウィシェールさんが出ると言うからみんなで闘技場へ繰り出し、勝ち抜き戦の優勝者を当てる賭けでウィシェールさんに賭けて儲けたのだとか。見るからに強そうだから倍率はそこまで高くなかったらしいけど、それでもみんな大銀貨1~2枚の儲けが出たらしい。
さすが!!
「まさか連日出場するとは思わなかったから、ここに居ると思ったんだがなぁ」
「考えてみたらあの人、まだまだ余裕だったね」
「明日も行くのか聞いといてくれ」
「はーい!」
……オレも賭けたいな。
「アニタさん、オレも闘技場行きたい」
「うーん、まぁ、明日休んで良いよ」
「ありがとう!! 皆さん、明日の分までお金落としてってね~」
「よっしゃ! 明日また儲けさせてもらうから昨日の儲けでパーっとやるか!」
「タカラ、一緒に行こうぜ!」
お店は大いに盛り上がり、ワイン樽が空になってアニタさんに喜ばれた。大銀貨数枚でそんなことになるはずないから儲け以上に散財してるな。
この辺の人は宵越しの金は持たないタイプなの?
売り上げが増えたから、と日当の他にご祝儀までもらえた。やったー!!
店が終わる頃、迎えに来てくれたウィシェールさんに翌日のことを告げる。闘技場は客達の柄が悪いそうで来るなら常連さん達と離れないよう約束させられたけど、全財産俺に賭けろなんて言われて心配しつつも喜んでいることにほっこりした。
ビビりなオレは全財産なんて賭けられないけど、思い切って金貨5枚! 賭けちゃうぞー!!
ご、五十万円!!
翌日に疲れを残さないよう、騎乗位したけどうまく動けなくて、逆に火をつけてしまった。呼び方は違うけど駅弁やら松葉崩しやら鵯越えやら。いろんな体位で喘がされました。
しかも!
しっかり手加減されてて怠さはあっても腰を抜かさない程度って言うね……。
もしかして性技のヒーロー!?
自分でも何言ってるのか分からないや……。
*******
ウィシェールさんに連れられて治安の良い地区と悪い地区の間にある映画館くらいの建物に着いた。まだ人はまばらだけど、見知らぬお客さんがウィシェールさんに気づいて声援を送る。
早くも1番人気らしい。
文字が読めないのでオッズも分からないけど、トーナメントの初戦でどちらが勝つかを当てるもの、優勝者を当てるもの、1~3位を当てるもの、全員の順位を当てるもの、バトルロイヤルで優勝者を当てるもの。色々なパターンがあるらしい。
人数が集まらないとバトルロイヤルはやらないって言うけど、それはできないだけだよね。まぁいいか。
出場者は8人。トーナメントだと3回勝てば優勝。少なく感じるかも知れないけど数時間で3回も闘うんだから選手はバテると思う。それに毎日やってるらしいからね。
全員の順位を当ててみようと思う。
ウィシェールさんが1位なのは固定として前に優勝争いをしていたという2人のどっちが2番になるか、かな? うんうん唸っていたらウィシェールさんが予想した番号を書いた紙をくれた。オレはそれを胴元に渡し、お金を払う。結局、金貨1枚しか出せなかったよ……。
どうせチキンだよ!!
いや、10万円出せたら充分だよね?
賭け札を受け取り、喋っていたら常連さん達が来たのでそちらに合流してウィシェールさんを控え室へ見送る。
どんな感じかなぁ?
カァンッ!
ガキンッ!
ドゴッ!
痛そうな音が響き渡ってる。
革鎧を着て盾と剣を持ち、闘う姿は映画のグラディエーターさながらで、会場が狭いから迫力がありすぎる。木剣らしいけどね。
1位、2位、3位は初戦でぶつかり合わないよう試合順が固定されている。でも相手はランダムだし毎日出場する選手は少ない。怪我をしたらしばらく出られないし。
怖がりつつも薄目で試合を見守りようやくウィシェールさんの出番。
頑張ってー!
怪我しないでー!!
叫ぶオレに向かってニヤリと笑い、対戦相手に向き直る。審判の合図で打ち合いが始まるけどあっという間に終わったようだ。危なげないのでさほど怖くなかった。
相手も振り下ろした木剣をいなされ、盾で手を叩かれて剣を落としての敗退だったので呆気に取られている。籠手の上からだから怪我もしてないんじゃないかな?
昨日2位だった人は初出場の小柄な選手に負けてしまった。この人とウィシェールさんはたぶん、決勝で当たる。
確かに動きが速いし、無駄がない感じがするけど地味だと観客からブーイングが出る。でも小柄な選手は気にした様子もない。
ロニーくんて何者なんだろう?
何はともあれ、慣れてきて楽しめるようになってきたオレです。
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