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26.薬湯が流通しない訳
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執事のヴァルターに先導されてベイセルの後ろから客間に入ると、お客さんが立ち上がったようだ。オレはベイセルの真後ろにいるので、全く見えない。
「ご無沙汰いたしております。フェルンストレーム師団長閣下におかれましては……」
「モーゼス、その口上は言わないと済まないのか?」
「仕事だろ。……ん? そちらは?」
モーゼス……?
「あぁ、こっちはタカラ。あー、私の恋人だ」
「……さきほどはどうも」
「もう会ってたのか?」
オレはついさっき露店を見て回ってたときに会ったこと、この人がレーチェの知り合いだったので紹介されたことを話した。
「好みがベイセルじゃあ、俺に靡かないのも道理だな」
「顔を隠して声をかけてきたら警戒するのが当たり前でしょう?」
「いや、大抵は好意的だぞ」
「口調も全然違うし」
「あれは営業用」
ニヤリと笑ってどかりと座る。大仰に足を組んでそっくり返る姿はワイルドだ。そう言えばフェイスベールをしていない。褐色肌に黒髪の巻毛、瞳はオリーブ色で細い目、薄い唇がシャープで顔立ちは整っている。
だけど、どこまでも胡散臭い。
お茶を飲みながら話を聞く。
オレは警戒を解いてないから2人掛けのソファでベイセルにピッタリくっついて座っているけどね! モーゼスは向かい側、3人掛けのソファの真ん中に1人で座っている。
「タカラ、モーゼスは海路を利用した情報屋だ。リンホウも探ってもらっていた」
「おい、聞かせていいのか?」
「タカラは関係者だ」
そう言ってくれるのは嬉しいけど、まだまだこちらの常識を知らないよ? それに痛いの嫌だから拷問されたらペラペラ喋っちゃうと思うし。
「影の護衛がついてる。拷問なんかさせない」
「影の護衛! なにそれかっこいい!!」
「……気が抜けるな」
能天気でごめんなさい?
モーゼスの報告によると、例の香木はリンホウの魔術師長が手配したもので、トラソタルという国で採れるものらしい。かぶれた人にはあの香木を少量入れた媚薬が普通より効くらしく、手駒に使えそうな人を探してたんじゃないか、って。……ちょっと不安。
そういえば木の粉末ってことはおがクズで、そんなのが入った水でお尻洗ったら傷つくよねー、とか考えてたんだけど、『香木』って名前ながら乾燥させた樹液を加工した粉だったので、水に溶けるんだって。
ずっと気になってたことが分かってスッキリ!!
「王妃がアンタにご執心らしいな」
「迷惑な話だ」
あぁ、ベイセルを性的に味わいたかったみたいだもんね。隷属もさせたかったみたいだし。そうか、ベイセルのことが好きなのか。
あげないよ!!
「王妃があんなにアホっぽくて、あの国は大丈夫なの?」
「お? あの王妃を知ってんのか。あの女はな、阿呆だが美貌で家が筆頭侯爵家。しかも貴族では珍しい好きものなんだ。清楚貞淑を尊ぶ貴族令嬢には不可能な閨の技術で国王を籠絡している。まぁ、他の令嬢だって陰ではどうだか分からんがな」
「それ、王様は耐性つけとかないと危ないやつ!!」
「だが王は王妃に守られる結果になってる」
王妃が自分の地位を守るために王様を狙う人達を遮断してるのか。閨以外は近衛が守っている。国は大丈夫なの?
有力貴族が財産を出し渋るので大きな戦はできず、小競り合いばかりだからあまり疲弊していないという。ベイセルが行ってたのも小競り合いで、和平交渉もいつも通り。それでも戦えばそれなりに疲弊すると思うんだけどなぁ。
案外、豊かな国なのか。
後はオレとは関係ない部分だから、と部屋に戻されたので久しぶりに文字の書き取りをしてベイセルを待った。
そう言えばユピピアのトルスティ公子殿下に手紙を書く約束したんだった。
……オレから書くべき?
届いてから返事をすればいい?
悩む。
程なくしてモーゼスが帰り、ベイセルといちゃいちゃして眠る。寝る前に少量の薬湯を飲んでおくと朝の目覚めがスッキリすることが分かった。大発見!!
この粉薬、味にクセがあるせいで輸入されてないらしいけど、オレのために入れて欲しいなぁ。ちょっと粉っぽくて土みたいな香りだけど、高麗人参に似てる。あと体育倉庫の匂いもする。体育倉庫の匂いはたぶん、ライン引き用の消石灰。
美味しくはないけど許容範囲です。
*******
翌日、研究所に行く。
薬湯のおかげでいちゃいちゃしたにも関わらず早起きできたのでベイセルと一緒の馬車。朝からデート気分~!
そして研究所に着くと、珍しくベイセルの従兄弟で研究所所長のエルンストがいなかった。住み着いてるかと思ってたんだけど、たまにはちゃんと家に帰るんだね。
「あぁ、モーゼスさんて人が来たので所長は2~3日お休みっす」
「モーゼスとエルンストって仲良いの?」
「ご存知だったんですか? えぇ、まぁ……、そうですね」
歯切れが悪いけど仲はいいらしい。
勝手にお茶を淹れてあげると、ジョシュアはちゃんとお礼を言って飲んだ。
「ぶーーーーっ!!」
「うわっ! 汚な!! なんだよ」
「これ、何を入れたんすか! 不味いっす! めっちゃ不味いっす!!」
「ユピピアで買った滋養強壮薬。良く効くよね」
「鬼だ……、鬼がいる……!」
「そんなに?」
癖がある、とは聞いてるけどオレは大丈夫なのになぁ。
アレか。ダメな人と全く気にならない人がいる人工甘味料みたいなものか。あれ、後味で口の中がカオカオする、って言っても誰にも伝わらなかったんだよなぁ。誰か共感してくれ!!
いや、こっちの世界に甘味料なんてなかったわ。
オレには分からない不味さがあるらしい。
「この粉薬、お土産のつもりだったのにダメかぁ。じゃあコレは?」
「あ! 松露酒っすね。高級品じゃないっすか」
「うん。少ししか買えなかったからエルンストには内緒ね?」
「天使!!」
鬼と天使て。
宗教観が謎だ。
いや、自動翻訳だから深く考えなくていいのか。
エルンストがいないので治療院へ行く。
この薬、治療院なら扱ってるのかな?
「こんにちは」
「おや、タカラ様。お元気でしたか?」
「はい。ちょっと国境に行ってたんでお土産を買ってきたんですが、不評で」
「不評ですか?」
「これです」
紙のような包みに小分けされた粉薬を見せると、ナゼール院長は苦笑いをした。
「良く効くのですが皆なかなか飲んでくれないんですよね」
「オレはお茶に入れて飲むんですけど、どうやって飲ませてます?」
「お茶に!? 大丈夫なのですか?」
逆に心配された!!
やっぱり味が悪いから輸入量は少なく、無理に飲ませると余計に具合の悪くなる人もいるらしい。糖衣錠はないのかな?
「丸薬にしたら飲めません?」
「丸薬ですか」
ただ丸めても昔の正◯丸みたいに飲めると思う。でも糖衣錠かカプセルにできたらもっと良いよね。
あ!
水飴で練ってみたらどうかな?
「ちょっと思いついたことがあるので帰ります!! 今度、試作品持ってきても良いですか?」
「えぇ、まぁ。ここには患者も来ますしね」
水飴作りについては誰に聞けばいいんだろう?とりあえず自作したやつ使えば良いか。
人に道を聞きながらベイセルの部屋に行き、先に帰ることを伝える。ベイセルは今日は帰れないらしいのでロニーには少しの間席を外してもらい、深い口づけを交わしてベイセルを補充した。
よし!!
丸薬作り、やるぞー!!
「ご無沙汰いたしております。フェルンストレーム師団長閣下におかれましては……」
「モーゼス、その口上は言わないと済まないのか?」
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モーゼス……?
「あぁ、こっちはタカラ。あー、私の恋人だ」
「……さきほどはどうも」
「もう会ってたのか?」
オレはついさっき露店を見て回ってたときに会ったこと、この人がレーチェの知り合いだったので紹介されたことを話した。
「好みがベイセルじゃあ、俺に靡かないのも道理だな」
「顔を隠して声をかけてきたら警戒するのが当たり前でしょう?」
「いや、大抵は好意的だぞ」
「口調も全然違うし」
「あれは営業用」
ニヤリと笑ってどかりと座る。大仰に足を組んでそっくり返る姿はワイルドだ。そう言えばフェイスベールをしていない。褐色肌に黒髪の巻毛、瞳はオリーブ色で細い目、薄い唇がシャープで顔立ちは整っている。
だけど、どこまでも胡散臭い。
お茶を飲みながら話を聞く。
オレは警戒を解いてないから2人掛けのソファでベイセルにピッタリくっついて座っているけどね! モーゼスは向かい側、3人掛けのソファの真ん中に1人で座っている。
「タカラ、モーゼスは海路を利用した情報屋だ。リンホウも探ってもらっていた」
「おい、聞かせていいのか?」
「タカラは関係者だ」
そう言ってくれるのは嬉しいけど、まだまだこちらの常識を知らないよ? それに痛いの嫌だから拷問されたらペラペラ喋っちゃうと思うし。
「影の護衛がついてる。拷問なんかさせない」
「影の護衛! なにそれかっこいい!!」
「……気が抜けるな」
能天気でごめんなさい?
モーゼスの報告によると、例の香木はリンホウの魔術師長が手配したもので、トラソタルという国で採れるものらしい。かぶれた人にはあの香木を少量入れた媚薬が普通より効くらしく、手駒に使えそうな人を探してたんじゃないか、って。……ちょっと不安。
そういえば木の粉末ってことはおがクズで、そんなのが入った水でお尻洗ったら傷つくよねー、とか考えてたんだけど、『香木』って名前ながら乾燥させた樹液を加工した粉だったので、水に溶けるんだって。
ずっと気になってたことが分かってスッキリ!!
「王妃がアンタにご執心らしいな」
「迷惑な話だ」
あぁ、ベイセルを性的に味わいたかったみたいだもんね。隷属もさせたかったみたいだし。そうか、ベイセルのことが好きなのか。
あげないよ!!
「王妃があんなにアホっぽくて、あの国は大丈夫なの?」
「お? あの王妃を知ってんのか。あの女はな、阿呆だが美貌で家が筆頭侯爵家。しかも貴族では珍しい好きものなんだ。清楚貞淑を尊ぶ貴族令嬢には不可能な閨の技術で国王を籠絡している。まぁ、他の令嬢だって陰ではどうだか分からんがな」
「それ、王様は耐性つけとかないと危ないやつ!!」
「だが王は王妃に守られる結果になってる」
王妃が自分の地位を守るために王様を狙う人達を遮断してるのか。閨以外は近衛が守っている。国は大丈夫なの?
有力貴族が財産を出し渋るので大きな戦はできず、小競り合いばかりだからあまり疲弊していないという。ベイセルが行ってたのも小競り合いで、和平交渉もいつも通り。それでも戦えばそれなりに疲弊すると思うんだけどなぁ。
案外、豊かな国なのか。
後はオレとは関係ない部分だから、と部屋に戻されたので久しぶりに文字の書き取りをしてベイセルを待った。
そう言えばユピピアのトルスティ公子殿下に手紙を書く約束したんだった。
……オレから書くべき?
届いてから返事をすればいい?
悩む。
程なくしてモーゼスが帰り、ベイセルといちゃいちゃして眠る。寝る前に少量の薬湯を飲んでおくと朝の目覚めがスッキリすることが分かった。大発見!!
この粉薬、味にクセがあるせいで輸入されてないらしいけど、オレのために入れて欲しいなぁ。ちょっと粉っぽくて土みたいな香りだけど、高麗人参に似てる。あと体育倉庫の匂いもする。体育倉庫の匂いはたぶん、ライン引き用の消石灰。
美味しくはないけど許容範囲です。
*******
翌日、研究所に行く。
薬湯のおかげでいちゃいちゃしたにも関わらず早起きできたのでベイセルと一緒の馬車。朝からデート気分~!
そして研究所に着くと、珍しくベイセルの従兄弟で研究所所長のエルンストがいなかった。住み着いてるかと思ってたんだけど、たまにはちゃんと家に帰るんだね。
「あぁ、モーゼスさんて人が来たので所長は2~3日お休みっす」
「モーゼスとエルンストって仲良いの?」
「ご存知だったんですか? えぇ、まぁ……、そうですね」
歯切れが悪いけど仲はいいらしい。
勝手にお茶を淹れてあげると、ジョシュアはちゃんとお礼を言って飲んだ。
「ぶーーーーっ!!」
「うわっ! 汚な!! なんだよ」
「これ、何を入れたんすか! 不味いっす! めっちゃ不味いっす!!」
「ユピピアで買った滋養強壮薬。良く効くよね」
「鬼だ……、鬼がいる……!」
「そんなに?」
癖がある、とは聞いてるけどオレは大丈夫なのになぁ。
アレか。ダメな人と全く気にならない人がいる人工甘味料みたいなものか。あれ、後味で口の中がカオカオする、って言っても誰にも伝わらなかったんだよなぁ。誰か共感してくれ!!
いや、こっちの世界に甘味料なんてなかったわ。
オレには分からない不味さがあるらしい。
「この粉薬、お土産のつもりだったのにダメかぁ。じゃあコレは?」
「あ! 松露酒っすね。高級品じゃないっすか」
「うん。少ししか買えなかったからエルンストには内緒ね?」
「天使!!」
鬼と天使て。
宗教観が謎だ。
いや、自動翻訳だから深く考えなくていいのか。
エルンストがいないので治療院へ行く。
この薬、治療院なら扱ってるのかな?
「こんにちは」
「おや、タカラ様。お元気でしたか?」
「はい。ちょっと国境に行ってたんでお土産を買ってきたんですが、不評で」
「不評ですか?」
「これです」
紙のような包みに小分けされた粉薬を見せると、ナゼール院長は苦笑いをした。
「良く効くのですが皆なかなか飲んでくれないんですよね」
「オレはお茶に入れて飲むんですけど、どうやって飲ませてます?」
「お茶に!? 大丈夫なのですか?」
逆に心配された!!
やっぱり味が悪いから輸入量は少なく、無理に飲ませると余計に具合の悪くなる人もいるらしい。糖衣錠はないのかな?
「丸薬にしたら飲めません?」
「丸薬ですか」
ただ丸めても昔の正◯丸みたいに飲めると思う。でも糖衣錠かカプセルにできたらもっと良いよね。
あ!
水飴で練ってみたらどうかな?
「ちょっと思いついたことがあるので帰ります!! 今度、試作品持ってきても良いですか?」
「えぇ、まぁ。ここには患者も来ますしね」
水飴作りについては誰に聞けばいいんだろう?とりあえず自作したやつ使えば良いか。
人に道を聞きながらベイセルの部屋に行き、先に帰ることを伝える。ベイセルは今日は帰れないらしいのでロニーには少しの間席を外してもらい、深い口づけを交わしてベイセルを補充した。
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