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17.芋泥棒!?
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まずは最初に契約。
さすが王政だけあって話が早いな。
こう言う場合の契約については書類ができているから、確認してサインするだけ。だけ、なんだけど。
「……すみません、読めません」
「何?」
「宰相殿、タカラは喋れますが読み書きは勉強中なのです。私が代わりに読み上げても構いませんか?」
「おぉ、遠方より参ったのであったか。構わぬ」
宰相さんの許可をもらい、ベイセルが読んでくれる。でも何を言われているのかチンプンカンプンだった。アパート借りる時の契約書もそうだったよなぁ。
「要約すると作り方を関係者以外に教えない、関係者であっても教える際には宰相殿の許可を得る、タカラの立場は顧問とし、売り上げの1000分の1、もしくは金貨4枚が毎月支払われる。顧問には経理の確認をする権利があるが、売値を勝手に釣り上げることはできない、だな」
「1000分の1? 将来を考えたらむしろ多くない?」
「ははは、タカラは相変わらずだな」
治療院と研究所からもらっている上に貿易で扱うことになったら凄い金額になるよ? 1000分の1が金貨4枚より少ない場合は金貨4枚くれるんだって。
月の収入が100万円に……。
貯めないと! いや、やっぱり使わないと!!
まぁ使い道はおいおい考えるとして、とりあえずざっくりとした作業工程を説明して、それを元に製造所の計画を立ててもらう。衛生を保つための水道設備と服装、住み込みならシャワーは必須だからね!!
製造所が稼働するのは早くて半年後だろうって。ホントにおおごとだなー。
*******
治療院と研究所に10日間の休みをもらって水飴作りを繰り返す。人に教えるなら成功率100%にしないとね。
でも最初の2回は上手くできたのに次は2回続けて失敗。試行錯誤を繰り返し、温度計を手に入れ、保温のための鍋カバーを作ってもらってようやく安定した。
うん。
温度計、大事!!
ちなみにこちらの温度計は温度によって色が変わるタイプだった。
酵素がでんぷんを糖化させるのに約6時間。朝のうちに仕込んで糖化が終わったら搾り、あくを取りながら煮詰める。1日仕事だ。
今使っている鍋だと1度に2瓶しか作れないけど、作業所が稼働すればまとめて作れるからどんどんできるだろう。副師団長の家の連作障害が改善されれば芋の収穫量が上がるし、ウハウハだ。
上手く軌道に乗りますように!!
*******
「おい! 芋泥棒!! 覚悟しろ!」
「はいっ!?」
10日間の休みを終え、治療院へ行く前に神殿に行くと、見知らぬ子供に濡れ衣を着せられた。危ないから木の枝振り回すのやめなさい!
「セルマ!」
え? レーチェの知り合い?
レーチェに羽交い締めにされ、騒ぎを聞きつけて出てきた神官様に宥められ、カイサという妹も現れてカオス。神殿の小さな1室を借りて話を聞くことになった。
『この子はセルマ、こっちのカイサと姉妹で2人きりの家族なんだ』
「レーチェ離せ! 離せってば!!」
『2人きり、ってことは他の家族は』
『流行病で亡くなったそうだ』
『それはかわいそうだけど、何でオレが芋泥棒になるの? クズ芋にはちゃんとお金払ってるよ?』
『それがね……』
今までは村でお手伝いをして食べ物や古着を分けてもらっていて、特にクズ芋はお腹が膨れるから助かっていた。それなのにオレが買うことになってクズ芋が貰えなくなり、食べ物が減ってしまった、と。
「かわいそうだけど泥棒は違うだろ」
「うっ、うるさい! アタシはともかく妹には必要なんだよ!! それを横から……、うぅ……、ひぐっ、うぇぇぇぇんっ!!」
「おねぇちゃん、わたしはだいじょぶだから、泣かないで。がまんできるよ」
がまんしすぎると死んじゃうよ?
でも孤児院があるのに、なんで自分たちだけで暮らそうとしてるのかな?
『いつの間にかうちの荷車に乗り込んでついてきて、街まで来ちゃったんだ』
『村まで2人だけじゃ帰れないだろ? 孤児……、孤児か! そうだ、これから孤児達を救済するための事業が始まるからやる気があるなら働けるように頼んであげるけど、どうかな?』
おっと、レーチェの国の言葉になってたか。
こほん。
「セルマ、まだ発表されてないけど王様が孤児達に仕事をくれるんだ。働く気はあるか?」
「はっ、はたらく、って、どんな?」
「調味料を作る仕事だよ。子供でもできるけど根気のいる仕事だから、楽じゃない。それでも頑張れるなら2人ともお腹いっぱいご飯が食べられるし、ベッドもあって安全だよ」
「わたしが! わたしがはたらく! おねぇちゃんに休んでほしいもん!」
「カイサ! カイサはアタシが守るの!」
「わっ、わたしだって、おねぇちゃんをまもりたいんだもん」
「よし、決まり! でも仕事が始まるまで少しかかるんだよな。オレは居候だし……」
「タカラ殿、うちの孤児院でお預かりしましょう」
静かに話を聞いていた神官様が快く預かってくれると言った。
「孤児院は王都か、大きな都市にしかないので村育ちのこの娘達は知らなかったのでしょう。無理に仕事を探さなくても、16歳まではいられますよ?」
「それはこの子達が決めることだから、作業所が動き始める頃に確認しましょう」
ひとまず安心して預けられたので、金貨1枚をお布施として渡した。
それにしても、使わなきゃもったいないと思った物が、必要とされている物だったなんて……。
リサーチ不足、だなぁ。
オレは落ち込みながら研究所へ行った。
*******
「どうかした?」
開口一番、エルンストに聞かれて姉妹のことを話したら軽く笑われた。
「しかたのないことだろう? 商売人は売れるものは何でも売る。問題が出たら対処する。それに孤児院の周知は神殿や国の責任だ。君が落ち込むことじゃない」
そうなのかな?
「もしまた困っている孤児がいたら孤児院に連れて行ってあげたらいい。タカラにできることはそのくらいだよ」
今は戦災孤児が多いと聞いた。
でもその子供達の救済に向けて国が動いている。だったらオレにできることは孤児を見つけたら孤児院に連れて行くだけか。
あと寄付。
「スッキリしたみたいだね。じゃあ……」
「リスト作りしましょう!」
エルンストが話をまとめ、ジョシュアが明るく促す。時々ジョシュアをからかいながら、夕方までリスト作りをした。
「毒はだいたい嫌な感じで、武器は冷たいんだね。薬は何かあると感じる程度、病気ははっきりした患部があると判るけど、全体的なものだと判らない、って感じっすね」
「オレのはそんな感じだけどエルンストは?」
「僕は魔力のあるもの、例えば竜の素材とかなら判るけど普通の武器や毒は何の反応もないよ」
「ジョシュアは?」
「僕は毒も武器も嫌な感じっすね」
「それぞれの興味や恐怖心からくるのかな?」
「嫌いなもので試してみる?」
「「遠慮します!!」」
恐ろしい提案をされて声を揃えて断った。
エルンストはやばい。絶対、ヤバい!!!!
「それじゃジョシュア、タカラをベイセルの所まで送ってあげて」
「えぇ~……、あの、部屋の前まででいいっすよね?」
「あんなにかっこいいベイセルの何が怖いの?」
「迫力があるじゃないっすか。近寄り難い雰囲気というかなんというか」
「迫力はあるけど嫌な感じじゃないでしょ? むしろこう、誘われるような」
「いやいやいやいやいやいや」
「従兄弟の恋人の惚気とか聞きたくないから早く行って」
エルンストに追い出され、2人でしゃべりながら軍務局へ行くと、目に見えてジョシュアがこわばりだした。
さすが王政だけあって話が早いな。
こう言う場合の契約については書類ができているから、確認してサインするだけ。だけ、なんだけど。
「……すみません、読めません」
「何?」
「宰相殿、タカラは喋れますが読み書きは勉強中なのです。私が代わりに読み上げても構いませんか?」
「おぉ、遠方より参ったのであったか。構わぬ」
宰相さんの許可をもらい、ベイセルが読んでくれる。でも何を言われているのかチンプンカンプンだった。アパート借りる時の契約書もそうだったよなぁ。
「要約すると作り方を関係者以外に教えない、関係者であっても教える際には宰相殿の許可を得る、タカラの立場は顧問とし、売り上げの1000分の1、もしくは金貨4枚が毎月支払われる。顧問には経理の確認をする権利があるが、売値を勝手に釣り上げることはできない、だな」
「1000分の1? 将来を考えたらむしろ多くない?」
「ははは、タカラは相変わらずだな」
治療院と研究所からもらっている上に貿易で扱うことになったら凄い金額になるよ? 1000分の1が金貨4枚より少ない場合は金貨4枚くれるんだって。
月の収入が100万円に……。
貯めないと! いや、やっぱり使わないと!!
まぁ使い道はおいおい考えるとして、とりあえずざっくりとした作業工程を説明して、それを元に製造所の計画を立ててもらう。衛生を保つための水道設備と服装、住み込みならシャワーは必須だからね!!
製造所が稼働するのは早くて半年後だろうって。ホントにおおごとだなー。
*******
治療院と研究所に10日間の休みをもらって水飴作りを繰り返す。人に教えるなら成功率100%にしないとね。
でも最初の2回は上手くできたのに次は2回続けて失敗。試行錯誤を繰り返し、温度計を手に入れ、保温のための鍋カバーを作ってもらってようやく安定した。
うん。
温度計、大事!!
ちなみにこちらの温度計は温度によって色が変わるタイプだった。
酵素がでんぷんを糖化させるのに約6時間。朝のうちに仕込んで糖化が終わったら搾り、あくを取りながら煮詰める。1日仕事だ。
今使っている鍋だと1度に2瓶しか作れないけど、作業所が稼働すればまとめて作れるからどんどんできるだろう。副師団長の家の連作障害が改善されれば芋の収穫量が上がるし、ウハウハだ。
上手く軌道に乗りますように!!
*******
「おい! 芋泥棒!! 覚悟しろ!」
「はいっ!?」
10日間の休みを終え、治療院へ行く前に神殿に行くと、見知らぬ子供に濡れ衣を着せられた。危ないから木の枝振り回すのやめなさい!
「セルマ!」
え? レーチェの知り合い?
レーチェに羽交い締めにされ、騒ぎを聞きつけて出てきた神官様に宥められ、カイサという妹も現れてカオス。神殿の小さな1室を借りて話を聞くことになった。
『この子はセルマ、こっちのカイサと姉妹で2人きりの家族なんだ』
「レーチェ離せ! 離せってば!!」
『2人きり、ってことは他の家族は』
『流行病で亡くなったそうだ』
『それはかわいそうだけど、何でオレが芋泥棒になるの? クズ芋にはちゃんとお金払ってるよ?』
『それがね……』
今までは村でお手伝いをして食べ物や古着を分けてもらっていて、特にクズ芋はお腹が膨れるから助かっていた。それなのにオレが買うことになってクズ芋が貰えなくなり、食べ物が減ってしまった、と。
「かわいそうだけど泥棒は違うだろ」
「うっ、うるさい! アタシはともかく妹には必要なんだよ!! それを横から……、うぅ……、ひぐっ、うぇぇぇぇんっ!!」
「おねぇちゃん、わたしはだいじょぶだから、泣かないで。がまんできるよ」
がまんしすぎると死んじゃうよ?
でも孤児院があるのに、なんで自分たちだけで暮らそうとしてるのかな?
『いつの間にかうちの荷車に乗り込んでついてきて、街まで来ちゃったんだ』
『村まで2人だけじゃ帰れないだろ? 孤児……、孤児か! そうだ、これから孤児達を救済するための事業が始まるからやる気があるなら働けるように頼んであげるけど、どうかな?』
おっと、レーチェの国の言葉になってたか。
こほん。
「セルマ、まだ発表されてないけど王様が孤児達に仕事をくれるんだ。働く気はあるか?」
「はっ、はたらく、って、どんな?」
「調味料を作る仕事だよ。子供でもできるけど根気のいる仕事だから、楽じゃない。それでも頑張れるなら2人ともお腹いっぱいご飯が食べられるし、ベッドもあって安全だよ」
「わたしが! わたしがはたらく! おねぇちゃんに休んでほしいもん!」
「カイサ! カイサはアタシが守るの!」
「わっ、わたしだって、おねぇちゃんをまもりたいんだもん」
「よし、決まり! でも仕事が始まるまで少しかかるんだよな。オレは居候だし……」
「タカラ殿、うちの孤児院でお預かりしましょう」
静かに話を聞いていた神官様が快く預かってくれると言った。
「孤児院は王都か、大きな都市にしかないので村育ちのこの娘達は知らなかったのでしょう。無理に仕事を探さなくても、16歳まではいられますよ?」
「それはこの子達が決めることだから、作業所が動き始める頃に確認しましょう」
ひとまず安心して預けられたので、金貨1枚をお布施として渡した。
それにしても、使わなきゃもったいないと思った物が、必要とされている物だったなんて……。
リサーチ不足、だなぁ。
オレは落ち込みながら研究所へ行った。
*******
「どうかした?」
開口一番、エルンストに聞かれて姉妹のことを話したら軽く笑われた。
「しかたのないことだろう? 商売人は売れるものは何でも売る。問題が出たら対処する。それに孤児院の周知は神殿や国の責任だ。君が落ち込むことじゃない」
そうなのかな?
「もしまた困っている孤児がいたら孤児院に連れて行ってあげたらいい。タカラにできることはそのくらいだよ」
今は戦災孤児が多いと聞いた。
でもその子供達の救済に向けて国が動いている。だったらオレにできることは孤児を見つけたら孤児院に連れて行くだけか。
あと寄付。
「スッキリしたみたいだね。じゃあ……」
「リスト作りしましょう!」
エルンストが話をまとめ、ジョシュアが明るく促す。時々ジョシュアをからかいながら、夕方までリスト作りをした。
「毒はだいたい嫌な感じで、武器は冷たいんだね。薬は何かあると感じる程度、病気ははっきりした患部があると判るけど、全体的なものだと判らない、って感じっすね」
「オレのはそんな感じだけどエルンストは?」
「僕は魔力のあるもの、例えば竜の素材とかなら判るけど普通の武器や毒は何の反応もないよ」
「ジョシュアは?」
「僕は毒も武器も嫌な感じっすね」
「それぞれの興味や恐怖心からくるのかな?」
「嫌いなもので試してみる?」
「「遠慮します!!」」
恐ろしい提案をされて声を揃えて断った。
エルンストはやばい。絶対、ヤバい!!!!
「それじゃジョシュア、タカラをベイセルの所まで送ってあげて」
「えぇ~……、あの、部屋の前まででいいっすよね?」
「あんなにかっこいいベイセルの何が怖いの?」
「迫力があるじゃないっすか。近寄り難い雰囲気というかなんというか」
「迫力はあるけど嫌な感じじゃないでしょ? むしろこう、誘われるような」
「いやいやいやいやいやいや」
「従兄弟の恋人の惚気とか聞きたくないから早く行って」
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