マーラ様にお願いっ

香月ミツほ

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マーラ様にお願いっ!

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『マーラ様、マーラ様。どうかボクを幸せにしてください』

一人暮らしのワンルームで、期待に身を震わせる全裸の青年は、男性器を模した御神体に祈りを捧げ、おもむろに粘り気のある液体をかけた。

粘りと滑りを併せ持つ液体を丁寧に御神体に塗り込み、納めるべき淫らな快楽の道へとあてがった。

「あっ……、はぁ……、ん……」

御神体を納めるため、丁寧に清められたそこは熱く、柔らかく熟し、期待に満ちた青年を優しく満たす。

「おっき……、ぁうっ、はっ、キモチイイ……」

胎内に納めたのち、固定用の補助具に設置する。角度が変えられるようになっていて、自ら腰を振れば良いところに当たるのだ。

あららもない嬌声をあげながら、青年は白濁を捧げた。


*******


大人気商品で品薄、注文しても半年待ち。
それがこの神秘のディルド『マーラ様』だ。

手順通りにすれば最高の快楽を与えられるという。ディルドを御神体と呼ぶなど、宗教団体から叩かれそうだが、こういう宗教なのでしかたがない。

「気持ち良かった……。普通のディルドに見えるのに、不思議だなぁ」

見えると言いながら、実際には胎内に納めたままだ。白く滑らかな肌の腹部をうっとりしながら撫で、感じている。

身体が落ち着き、もう一度快感を得ようと手を伸ばすと、ふいに質量が消失した。

抜け落ちた感触はなかったが、他に考えられず、四つん這いになって床を見回した。

《よき眺めである》
「は?」
《そなたの願い、聞き入れた》
「アーーーーッ!!」

ずちゅんっ!
と卑猥な音を立てて何かが後孔に押し入った。先程達したばかりなのに、またも白濁を溢す青年の蜜茎。鍵はかけたはずで、何者かが侵入できるはずもない。部屋は自慰のために防音の部屋を借りている。

「あっ、はぅんっ! あんっ! だ、誰……っ!?」
《我はマーラ。そなたの祈りを聞き、供物を受け取り、願いを叶えに来たのである。さぁ、好きなだけ快楽を貪るが良い》

見ず知らずの男に背後から突かれ、怖がるべきなのだが、セクシーすぎる美声のためか恐怖心が湧かない。激しく突かれたかと思えば動きを止め、ゆるゆると焦ったい動きをする。

そして徐々に快感が全身に広がり、触れ合う肌、全てが気持ちよくなってしまった。

「あんっ! だめぇ……! 耳も、首も、うなじもぉ……!! おっぱい摘まんじゃダメぇ!!」
《うむうむ。耳も首も良いのじゃな。うなじも、せなかも良いが、乳首が特によい、と』
「ふにゃぁぁぁぁんっ!」
《まだ脇腹もヘソも触れてはおらぬぞ》
「あぁんっ! きもち、良すぎてぇ……! やぁんっ! お尻、入れながら、乳首くりくりしたらぁ……、あっ、あっ、あっ!! ふんんんんっ!!」

抽送をせずとも身体を撫で回すだけで打ち震え、絶頂する。理性を手放し、本能の赴くままに最奥を穿たれようと身をくねらせるので、奥の奥へと入り込み、神気のこもった精を注ぎ込んだ。

絶叫し、全身を朱に染めて気を失う姿をながめ、神を名乗る存在は青年を愛おしそうに髪を撫でた。そして最後の言葉を呟き、去った。

《よい交合であった》


その後、愛する人と結ばれて海外で結婚。
彼の連れ子とも良好な関係を築き、幸せな老後を送った。



*******



『マーラ様、マーラ様。どうか俺を幸せにしてください』

「……こんなに大きいの、無理だよぅ……」

高校を卒業したばかりの少年は、運良く手に入れたマーラ様を、いつか己の後孔に納めようと拡張している。エネマグラで快楽を拾えるようにはなったが、まだまだ大きなディルドに挑戦する勇気が出ない。

少年はエネマグラを入れ、ディルドで兜合わせの真似事をしている。透明なローションに塗れた双方はじゅうぶん卑猥で、興奮をもたらしてくれる。

(あっ、あっ、あっ、あーーーーっ!!)

実家住まいで大きな声を出せない少年は、どうにか声を殺しながら爆ぜた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」
《祈りの形は人それぞれ。そなたの願い、聞き届けよう》
「え? あーーーーっ!!」

エネマグラを抜き取られ、拡張プラグと同じ大きさのモノが胎内に入り込む。誰? なに?

《結界を張ったゆえ、声を殺す必要もない。そなたが満ち足りるまで快楽を与えよう》
「あ……、あなたは……?」
《我はマーラ。快楽を授けるもの》

濃密な淫気をまとう快楽の神は、限りなく美しい。その気になれば、流し目1つで人を孕ませることができるのではないだろうか。少年は夢を見ているのだと考えた。

「マーラ様、俺を、教え、導いて下さい」
《聞き届けよう》
「はぁんっ!!」

少年の胎内にあるマーラの魔羅マラが質量を増し、ゆるり、ゆるりと淫道を広げてゆく。緩慢な抽送に甘やかなうずきが蓄積する。

「あぁっ!! そこ、きもちいい……っ!」
快楽けらくの種ぞ。そなたの身体はまだ未熟ゆえ、優しゅう嬲ってやろう
「ふゃぁ……ん、あぁん……、ふぅ、んん……」

質量を増し続ける魔羅に前立腺を押され、淫欲の往路が緩やかに開いていく。

奥へ、奥へとねだる貪欲な若い身体に、求められるままに精を注ぐ。

「ひゃぁぁぁぁ……、あ、ふっ……」

未熟な身体に過ぎた快楽は、彼のありようを変えてしまうのだが、それもまた自然の摂理である。

後に「媚薬を振りまく者」と呼ばれる彼の、人生を変えた出来事であった。


*******


『マーラ様、マーラ様。どうかこの子を幸せにしてください』

「もう! ぼくは幸せだよ。何回言わせるの?」
「そうは言っても君は若い。まだまだ肉体的な満足が欲しいはずだ」
「だからそれはあなたの形の、このディルドでいいの! そんな、誰のものとも分からないので気持ちよくされたくない!」
「だが、それは私の全盛期ではないから、その……」
「これじゃなきゃ、いやだよ……」
「仕方ないな。では今日も全身くまなく舐めさせてもらうからね」
「はぁんっ!」

祈りを捧げておきながら拒否されるとは。出る幕がないではないか。

ふむふむ、あの者、なかなかに執拗に焦らしておるのう。年の功と言うべきか、互いの信頼のなせる技か。だがしかし、みているだけと言うのもつまらぬ。

よし、手を貸してやろう。

《我はマーラである。そなたらの素晴らしき愛を供物として受け取った。よって、新たなる道を示そうぞ》
「誰!?」
「はっ? いやいや、私はバリタチで……、そちらは才能が……っ、はぅっ!」
《我は神ぞ。指を魔羅の形にするも、そして質量も意のままだ》
「あっ、細いから苦しくない……? な、中で太く……! は、ぅん……」
「ちょっ!? そこ、気持ちよくないって……」
《ふふふ、我にかかればみな、愛らしく淫らに喘ぐのみ。そなたの愛する男の痴態、とくと見よ》

老年に差し掛かるかと思われる男は、こんな、情けない私を見ないでくれと、若い恋人に懇願する。だが恋人の目は愛する男のあられもない姿に釘付けで、願いを聞き入れはしない。

そして、見ないでくれと言いながら恋人の視線に興奮し、陰茎は若き日を取り戻したかのように膨らんだ。

《さぁ、いかにする? このまま我の手で快楽を極めるも良し……》
「返して下さい! その人を気持ちよくしていいのは、ぼくだけです!」
《ふむ。だがこの指を抜けばコレは力を失うぞ》
「そこにぼくが入ります」
「いやっ、しかし……、君は……、くぅん……」
「あなたのディルドを入れながら、あなたのココを満たしてあげる。これからはここで、ぼくをかわいがってね?」

まだ神の指が入ったままの、熟れ始めた秘所をひと撫でし、使い込んだ彼の写し身を、性器となった己の蕾に押し当てる。

「は……っ、んっ、あぁん……」

準備の整った若い男のそそり立つ男根は、あまり使い込まれていないようだった。それを年嵩の男の秘所に導く。

「ぼくのはあんまり大きくないから、満足させられるか分からないけど。あなたが教えてくれた腰使いで頑張ってみるね」
「ぁあっ! そんな、なぜ……っ!?」
「あぁんっ! あなたの中、気持ちいい! すごっ、こんな……っ!!」

互いに密着して身体をくねらせ、快楽のうねりに溺れてゆく。愛し合え。高め合え。ほんの少し、若い男の魔羅に力を貸そう。

「くっ! 急に、大きくっ!」
「ぁんっ! そんなに締めちゃ、いっちゃう!」
「「は、あぅっ、あっ、あーーーーーっ!!」」

同時に絶頂した2人は、溶け合うように眠りに落ちた。

《添い遂げよ》

夢の世界に身を沈めた2人の耳には届かなかったが、マーラの言葉は力となった。どちらも生涯現役となり、たびたび立場を交換しながら、心ゆくまで愛を与えあった。

「「永遠にあなたを愛しています」」
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