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【BL】花見小撫の癒しの魔法⑤

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「神子様は我々がお側にいるのはご不快ですか?」
「そんな事ない! 居て欲しい!! 一緒に寝るの、安心してぐっすり眠れたもん!」

「……共に寝た、だと?」
「我らに子は望めませんから、親子気分を味わわせていただきました」

怒りのオーラを放出する王様を笑顔でいなすマーギアさん、すごい!! だからあんなにお世話したがったのか。

「ふふふ、じゃあリッター父さんとマーギア母さん?」
「神子様!」
「ミコ!!」
「マーギア母さん、母さんなら様付けおかしいよ? ミコって呼んで?」
「ミコ……、リッターは騎士、マーギアは魔法使い、と言う意味ですから、ただ父さん、母さんと呼んで下さい」

泣かなくても、って言っても涙は出てくるよね。3人でくっつき合ってたら王様に引き剥がされた。

「そなたらの居住、および神子の世話は認める。だが触れるな」
「陛下、我々がミコの父母なれば、陛下は息子婿。我らをぞんざいに扱うべきではありませんね」
「肩を揉めとは言わないが、親子として慈しみ合うのは認めてもらおう」

父さんと母さんが強い。

「なれば其方達こそ蜜月を邪魔しはせぬな」

ゴゴゴゴゴッて音が聞こえそうな睨み合い。ケンカにはならないよね?

「王様、ぼくまだ伴侶になる、って覚悟が決まってません。ずっと側にいるのは良いけど、その…… む、睦み合うって…… 考えられなくて……」
「む、そうか。そなたはまだ幼いからな。人の成長は早い。ゆっくりと待つとしよう」

すでに成人してる、って言ったら待ってもらえなくなりそうだから、年齢は黙っておこう。


───────────────────


それからしばらく、父さんに剣や体術を習い、母さんに生活魔法やこの世界のあれこれを教わり、うーちゃん達と遊んでお城の中の人達と仲良くなった。

大広間に可愛い系の魔族達を集め、ラジオ体操のように朝のチェッコリを踊るのが慣例化したのは微妙……。

小人、小妖精ピクシー、小型の獣人によるユニットは、アイドルグループみたいだけど、センターが幼児化したおれなのでお遊戯会かな?

1年経ってまるで成長しないおれを不思議がった王様に問い詰められ、年齢を白状してしまった。

でもね、朝晩きらきらの笑顔で愛を囁かれたらね、好きになっちゃうよね。抱きしめられて眠るとドキドキしてムラムラしちゃうし。だからもう、覚悟は決まった。

正式に結婚します!





決意をして1ヶ月。国を挙げての結婚式。
広大な惑わしの森に点在する町や村から来る代表者だけでもすごい数になった。代表達が詰めかける王城の大広間で誓い合い、そのまま披露宴。

パレード代わりに、翌々日から王様にお姫様抱っこで運ばれて森の中の町を回る。父さんと母さんはそれぞれのウマで空を飛んでついてくる。

……飛べたんだ……。
ウマが飛べるならこのお城も難攻不落じゃないような……?

留守番のうーちゃんが拗ねてたので、後でいっぱい甘えて機嫌を取ろう。

どこに行っても歓迎されるので町を回り終えるのに1ヶ月もかかった。夜はお城に帰って来るし、運んでもらうだけだから楽ちんだけど、ひと通り挨拶が終わったらやっぱりほっとした。

リラックスしたせいかな?
挨拶まわりが終わった翌日、ベッドに猫が丸くなったくらいのサイズの卵があった。

「小撫! 我らの子、次世代の王だ。大切に育てよう」
「これが、ぼく達の?」
「そうだ。どんな子が生まれるのであろうな」

いちゃいちゃして寝て起きると卵がある、って……。

不思議。でも王様の結界を通り抜けられるのは王様本人と神様だけだから、誰かのいたずらではない。

「さぁ、撫でてみよ。子が喜ぶぞ」
「え、っと、こう?」

こわごわ卵をなでなですると、卵がほわんと白く光った。次いでヒルフェが撫でると、柔らかな若草色に光る。神様に認められた夫婦以外が撫でても光らないらしい。

「かわいいね」
「我らの子だからな」

卵の両側にそれぞれキスしたら、卵が白と若草色にゆっくりと点滅した。



「ミコ、あなたも卵を授かったのですね」
「え!? じゃあ母さん達も?」
「あぁ。諦めていたんだが、今朝、卵が届いていた」
「ね、何色に光るの?」
「黄色とオレンジだ」
「会いに行って良い?」
「「持ってきた!」」

2人はぼくの世話係と護衛だから、卵も一緒に育てようと持って来たようだ。幼馴染になるのかな?

「たまごちゃん、おはよう」

撫でてみても無反応。
ヒルフェを見るとおれの意図を察して撫でて見せてくれた。

うん、無反応です。
それから父さんが撫でるとオレンジ色に、母さんが触ると黄色に光った。卵のうちからお返事してくれるなんて、たまごちゃん達はおりこうだねぇ。(親バカ)


───────────────────


10ヶ月で生まれた子はヒルフェに似た天使だった。でも髪は銀髪で羽は黒い。甘えん坊でおれから離れないけど、父さんと母さんの子の竜人とは仲良しで、並べて寝かせるとよく手を繋いでる。

「かわいいですねぇ……」
「うん! ……でも、この子もいつか闇落ちして苦しむのかと思うと……ぐすっ」
「今から落ち込んでどうするんだ。チェッコリのお陰で闇落ちする前に神子が来るかも知れないだろう?」
「そっか! この子の好きな物をたくさん集めておけば、辛い目に合わなくて済むかも!!」

さすが父さん!
ヒルフェに相談したら魔族は基本的にかわいいものが大好きなので、他にもかわいいダンスがあれば教えておいて欲しいって。

ぼくは子供の頃にやった手遊びを思い出して、みんなに教えた。




魔族の成長速度は人間と変わりなく、20歳くらいで大人になる。それから緩やかに歳をとっていくと言う。

2歳になった息子のプリン(仮名)は大人しいけどいつもにこにこ笑っていて、無口な竜人のリュージン(仮名)と目と目で会話をしている。

……神子要らないんじゃない?
と、思わないでもないけど。次の神子も生まれ変わって来て幸せになれるならぜひ仲良くなりたいと思う。

あ、寿命が足りなくて会えないかな?

必ずしも神子が魔族の王の伴侶になる訳ではないらしいし。見届けられない寂しさには蓋をしよう。

ヒルフェと一緒に、世界中の子供達の幸せを願おう。

プリンが成人して王座を譲り、惑わしの森の町を巡る。みんなが幸せになるように、みんなで踊って、お祭りをして、握手して、子供達をなでなでして。

ヒルフェと父さんと母さんが、ずっと一緒にいてくれる。

「リュージンの側に居てあげなくて良いの?」
「あいつはもう大人だからな」
「……邪魔にされました」

反抗期かな?

ぼくはありがたく3人に守られながら、動ける限り町を巡る。

「それにしても、小撫は歳をとらぬな」
「なんでだろうね? ちびっ子になれるのと関係あるのかな?」

そう、父さんも母さんも普通に歳をとっているのに、ぼくの姿は変わらない。42歳になるのに、12~13歳にしか見えない、って。

夜だけは少し大人になるんどけどね?

「なんで夜が明けると戻っちゃうんだろう?」
「あの艶めいた姿は我だけに見せるものなのではないか?」
「つやっ!?」

身長が少し伸びるくらいだよ?
……色気、感じてくれてるの?

「20年の間、夜毎思いの丈を伝えていると言うのに、まだ足りぬのか?」
「……た、足りてます。でも好きだからぼくを喜ばそうとしてる気がして……」
「そなたの姿を思い出すだけでこのようになると言うのに……」
「ひにゃっ!! やぁん……、だめ、まだぁ……」
「うむ。夜の宴は早々に切り上げようぞ」

夜の宴を用意してくれてる町の人に申し訳ない……。
そう思うのにはっきりと欲しがられたりしたら……、もう身体が期待しちゃってる。

ヒルフェが早く帰る、って言ったら町長さんはにこにこしながらまたいつでも来て下さい、って。王様と神子様が仲良しだと世界が安定するから、って。

そうだよね。
ぼく達は好きなだけいちゃいちゃして良いんだよね。

都合のいい言い訳をして、文字通り飛んで帰ったぼく達の愛の巣で、今夜も心ゆくまで満たされる。

翌朝、起き上がれなくなったぼくを心配するヒルフェを、今日もなでなで、癒しています。

今日も明日も明後日も、ずっと、ずーっと、癒します。



《終わり》
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