感じやすいぼくの話

香月ミツほ

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第1章

感じやすいぼくの話 その後

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王都に着いて、フォルク様の家の人達に伴侶候補として紹介されてしまった。

これからどんどん綺麗になるから、釘を刺しておかないとね、って…
どうしよう…嬉しい。

こんな事言われて嬉しいのって、あれ?

まぁ良いや。保留、保留~。



フォルク様のお兄さんと王様にもご挨拶した。正式な謁見じゃなくて、昼休憩の時を狙って連れていかれた。身分が確定してないから正式な謁見はできないらしい。こっちの方が良いです。

2人とも優しくて穏やかだったけど、実は切れ者で有能な人達らしい。オンとオフの切り替えが上手なのかな?

そこへ王妃様が王子様を抱っこして現れた。

王妃様は…色気たっぷりのゴリマッチョさん。王様が惚れ込んで孕体ようたいに育てたんだって。それで今抱っこしてる赤ちゃんは第二王子で3ヶ月。

大きな王妃様が抱くと、大木にセミがくっついてるみたい、って言ったら怒らせちゃうかな?

「王子様はお休みですか?」
「起きてるんだが…」

縦抱っこで顔が見えないし、あんまり静かなので聞いてみたら顔を見せてくれた。

眉を寄せて大きな目を見開いてへの字口。
まるでこの世の終わりを見ているような表情かお

ぶふっ…

可愛すぎる!!

「そんな反応は初めてだな。」
「そ、そうですか?すみません、可愛くて思わず…ぷぷっ…」
「抱くか?」
「良いんですか!?」

赤ちゃん抱っこするのなんて久しぶり!!
親戚の子4人を抱っこしたけど、程よい重さが幸せなんだよね~。

横抱っこさせてもらって、目を合わせて挨拶をする。

「王子様、初めまして。イクです。よろしくお願いします。」

そう言って小さな手をつつくと、きゅっと握ってくれる。ちっちゃい手がホカホカ…眠いのかな?

僕の顔をじっと見るから笑いかけたらほにゃって笑ってくれた!!
可愛い~~~~~~!!

「笑った!?」
「笑顔…」
「まさか…?」

「どうかしました?」

周りの反応が変なので聞いてみたら、この王子様は今までさっきみたいな顔ばっかりで笑った事がなかったらしい。まぁ、3ヶ月ならそれほどは笑わないかも知れないけど、第一王子は3ヶ月の頃にはずいぶん笑っていたそうで心配されてたんだって。

握った僕の指を引き寄せてちゅっちゅっと吸いながら寝てしまった。

あぁぁぁぁ…
なんて可愛いのぉ!?

「イク、と言ったか。乳母にならないか?」

乳母?
乳母って子育て経験者がやるものじゃないの?だいたい、誰でも良いの?

「第二王子はかんが強くて、邪な心根の者を極端に嫌って泣き止まなくなるんだ。その王子が安心するんだ。問題なかろう。」

ざっくりしすぎ!
たまたま嫌った人がそうだったからって、必ず当たるとは限らないよ!?

「でも、王子様にはもう乳母の方がいらっしゃるのではありませんか?」
「いるが…こんなに安心した寝顔は初めてだ。だからイクに頼みたい。」

自信なんてないからフォルク様を見ると、笑顔で頷いている。

「1人では無理です。でもその方と一緒なら頑張れます。」

たまたま機嫌よくなったからって、怪我や病気も心配だし、責任が重すぎるもん。だから2人でなら、と言ったらそれで良いことになった。

フォルク様のお屋敷での仕事って、なんだったんだろう?乳母を引き受けちゃったらできないよね。

「我が家での仕事は、イクに合う仕事を見つけるために色々体験させようと考えていたので、第二王子の乳母ができるならそれで良い。無理をするなよ?」

「はい!」

第二王子の乳母はすらっとした綺麗な人で、でも王子の乳母と言う大役で緊張しっぱなしだったらしい。その緊張が王子に伝わったのかもね。

もっとベテランは居なかったの?

あ、王様も育てたベテランさんはぎっくり腰ですか、そうですか。ぎっくり腰が治ったら相談役に出てきてもらえると嬉しいな。



第二王子は甘えん坊で抱っこが大好きで、しかも小さいのに骨太で結構重い…抱っこ紐を作ってもらいました。これで長時間抱っこも大丈夫!

でも肩凝りと腰痛が…

王様と宰相様が仕事に戻った後、しばらくして5歳の第一王子が今日の勉強を終えたと知らせが入ったのでご挨拶をする。

「初めまして、イクと申します。第二王子の乳母を務めさせていただく事になりましたので、よろしくお願いいたします。」
「けっ…けっこんしよう!」

挨拶もなしにプロポーズされた。(笑)

教育係でもある侍従に叱られているけど全然聞いてない。後ろからフォルク様が覗き込み、笑顔でぼくの手を握った第一王子の手を外す。

「イクはわたくしの伴侶となる予定ですので、第一王子にはご遠慮いただきたい。」

目が笑ってないけど、5歳の王子には分からないみたい。

「予定なら変更すれば良いではないか。」
「変更などありません。」

5歳児相手に本気を出すフォルク様…



翌日から第二王子を抱っこしながら第一王子とこの国の歴史を学ぶ。第一王子にせがまれて色々な勉強に付き合っているけど、算数以外は同レベルなので助かる。だって言葉は分かるけど文字がアルファベットみたいで読み書きできないんだもん。

ダンスは簡単なステップならこのひと月で踊れるようになったので、時々フォルク様が夕食後に相手をしてくれて、上達を褒めてくれてすごく幸せ。

それからフォルク様が泊りがけの仕事で出かけると、ぼくがお城にお泊りするので、第一王子がフォルク様を遠くに行く仕事をさせてくれと王様にお願いして怒られてた。

こうして子供と赤ちゃんと楽しく過ごしているうちに、能天気なぼくは妊娠出産への恐怖が薄れ、たったの半年で甘々なフォルク様の求婚を受け入れた。

結婚の準備として、身分の釣り合いを取るため隣国の侯爵家に養子に入り、結婚。じつはその侯爵家の息子とフォルク様は婚約してたんだけど、向こうは婚姻の事実が欲しかっただけなのでこの形で問題ないんだって。ただ、婚約者の方は結構乗り気だったみたいで滞在中、いっぱい嫌味を言われた。でも言われっぱなしで言い返せないぼくに呆れて世話を焼いてくれるようになった。

義兄は良い人だった。

そして結婚式当日、大号泣の第一王子(7歳)につられて第二王子(1歳)まで大泣きで厳かな雰囲気の全く無い結婚式になって、緊張がほぐれて助かった。

ぼくは少し背が伸びて、顔も大人びたと思う。どんどん綺麗になって嬉しいけど心配だなんてフォルク様に言われてる。綺麗になった…かな?確かに姉達に似て来たと思うけど…

こちらの世界に来て1年半。
ぼくは天国に来ちゃったのかな?

答えは誰にも分からないけど、この幸せがずっと続きますように。
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