十字架のソフィア

カズッキオ

文字の大きさ
上 下
34 / 45
第三章

アレクシスの頼み

しおりを挟む
 ソフィア達がブロンに来てから数日が過ぎたある日の昼間。ライルは城内の書庫に向かっていた。
両手には皿一杯に積まれたクッキーと紅茶が入ったティーポット、それからティーカップを三つ乗せたお盆を抱えている。ソフィアとレティシアに届ける為だ。
ソフィアは今レティシアに文字や軍隊の動かし方、交渉の仕方などのこれから先必要とされるであろう事を教えてもらっていた。

書庫の扉をなんとか開けると書庫内の机にソフィアが座り隣でレティシアがなにやら話し込んでいた。

「よ、しっかりやってるか? 」

ライルは隣の机にお盆を置いて話しかける。

「あ、ライル。今レティシアさんに交渉術を教えて貰っていたところです 」

「そうか、上手くいってるのか? 」

するとレティシアは頷く。

「うん、彼女はかなり交渉上手だよ。それに軍を動かすカリスマ性もある 」

するとソフィアは照れ臭そうにクッキーを手に取り齧る。

それを見てライルは苦笑する。

「まぁそうだよな、交渉相手の机に剣を突き立てるくらいだしなぁ 」

ソフィアはそれを聞いて顔が赤くなる。

「ラ、ライル!それは言わないで下さい! 」

それを見てレティシアは笑う。
それからライルに言う。

「そういえばライル、アレクシスが君を呼んでたよ 」

「俺を?……わかった 」

ライルは書庫を後にする。それから執務室に向かう。

「アレクシス、居るか? 」

執務室の扉を開けるとアレクシスは椅子にもたれて寝ていた。

「ん、あ、ああライルかレティシアに聞いて来たのか? 」

「ああ、それで人を呼んどいて居眠りかよ 」

「はは、俺は一応お前の上官だぞ 」

「元、だろ。で?何の用事だ 」

するとアレクシスは一枚の羊皮紙を出す。

「これは…… 」

ライルは羊皮紙を見る。するとそれは何かの報告書のようだった。

「大海賊海蛇シーサーペントがブロン近隣の港町に向かっているとの報告があった。速やかに討伐しろとの事だ 」

「……報酬は? 」

「無い 」

ライルは苦笑する。

「実の父親を牢屋にぶち込むのにタダ働きかよ 」

「いいのか?お前の軍規違反今ここで処罰してもいいんだぞ 」

「はっ!お前じゃ俺を殺せない 」

二人は少し睨み合う。しかしすぐにライルは聞く。

「まあいいか、分かった、いつ行けばいい? 

「今からだ 」

「急だな 」

「現地にいる俺の部下と話し合う必要がある 」

「分かった、準備してくる 」

ライルは執務室を出る。それから自分用に用意された客室に向かう。

部屋で旅の支度をする。
といってもそこまで遠くに行くわけでも無いので荷物は少ない。
多分ライルの愛馬ユニコーンのユグドに乗れば一日あれば目的地に着くはずだ。

リュックに着替えと包帯や消毒液などの簡単な医療具を入れ金銭を入れた革袋を腰のベルトに吊るしそれからサーベルを六本吊って準備完了。

部屋を出てソフィアに会いに行く。

すると丁度ソフィアがこちらに来ていた。
それも背中に荷物を背負い腰に剣を吊っている。

「あ、ライル。準備できたようですね。それでは行きましょう 」

「行きましょうじゃねーよ!ソフィアは行く必要無いだろ! 」

「いえ、私もお手伝いします。最近座学だけで身体が鈍ってしまうので 」

ソフィアはやる気満々の様だ。
ライルはため息を吐くと言う。

「分かったよ、じゃあ行くか 」

それにソフィアは「はい」と返事をすると城を後にした。


 その頃、エルザーク帝国領海内のとある船。

「シュビレヴラウ船長、後一日で港町に着きやす 」

頭に青色のバンダナを巻いた男が言う。それに船端で腕を組んでいる身長が二メートルはあるであろう大男が言う。

「うむ、このまま直進する! 」

その言葉に甲板で働いていた船員が一斉に返事をする。 

その声に呼応する様に黒い帆に描かれた女神に巻きつく海蛇がなびいた—————。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。 最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。 でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。 記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ! 貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。 でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!! このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない! 何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない! だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。 それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!! それでも、今日も関係修復頑張ります!! 5/9から小説になろうでも掲載中

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...