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3章 悪役令嬢狩り
第37話 神の余興
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「ふむふむ、今のところ人気なのは予想外じゃが、『美女転生、世界を股にぶっかける~わからセックス孕ませエンド~』が読者に人気があるらしい。やはりエロがウケたのかのぉ」
そこは世界のどこにもない、しかし世界のどこからでも繋がる場所にある、異次元空間。
人型のぼんやりと光る何者かの姿が浮かんでいた。
その光の人型の前には二つの鏡が置かれている。
一つは、荒れ狂う海で暴れる海龍と戦う冒険者たちの姿。
もう一つには、いくつかの物語のタイトルだと思われものが羅列し、その横に数字が掲げられている不思議な文章画面が映っていた。
その数字は時間が経つと増えているようだ。
物語のタイトルの横には「連載中」という表記があるものと「打ち切り」と書かれ灰色に反転されたものがある。
そして上位にあるタイトルには「注目作」と目立つ赤色で書かれていた。
「いよいよ物語が動き出したという感じで、面白くなってきたのう。転生者たちには頑張ってもらいたいものじゃ」
光の人型は楽しそうに鏡を覗いている。
海龍と戦う冒険者たちに向かって「そこじゃー負けるなー」とエールも送り、まるでスポーツ観戦でもしているようなノリだ。
だが、そんな楽しげな様子を鼻で笑う者がいる。
「面白い? これが?」
真っ向から否定するように、暗がりから男の声が聞こえた。
そこにはソファセットが置かれており、何者かが腰をかけてくる。しかしゆったり寛いでいるというわけではなく、その足はひっきりなしに貧乏ゆすりをしていた。
「普段あいつらは人が血涙で作り上げた作品をけなして、つまらない、もっと面白くしろ、絶対売れない、二番煎じ――なんて好き勝手に言うくせに、この程度の物語しか作れないなんて肩透かしだな」
その男はくたびれたパーカーを着て、頭はすっぽりとフードで覆っている。手入れを怠って伸びっぱなしの髪と、無精ひげがちらりと覗いていた。
「自分で推薦しておいて、それはないじゃろう。ラノベの編集者なら面白い物語を作れるとわしに言ったのはおぬしじゃ。まさかおぬし、彼らに復讐するためにわしを利用したのではないじゃろうな?」
「まさか、神様。考えすぎです。思った以上に彼らがつまらなかったんで、俺もビックリしてるだけですよ」
ニタァと笑う男の口元に悪意が感じられるが、「神様」と呼ばれた光の人影はそれを咎めることはなかった。
「まぁ、よい。全てはただの余興じゃ。わしを存分に楽しませてくれればそれでよい」
「ええ、この調子でどんどん転生させて、つまらない奴はさっさと殺して打ち切りにしてしまいましょう」
「それを決めるのはわしではない。わしはただ、転生させ、見守るのみ」
ケラケラと光の人影が笑っていると、急にその空間の壁の一部がぐにゃりと歪んだ。
神域に乱暴に入って来たのは、黒いローブに身を纏った人物。こちらもまた姿をすっぽりと布に覆っているが、袖から出ている手が長い杖を握っており、それがしわがれた老人のものだとわかる。
「……」
老人は無言で、二つの鏡を見つめた。
「なんじゃ、わしの『余興』に文句でもあるのか?」
「……」
まるで「お前の行動は全て見ているからな」と言わんばかりの圧力で周囲をゆっくりと見渡してから、その老人はどこかに消えていった。
「なんじゃ、一緒に『余興』を楽しんでいけばよいのに。ノリがわからぬ奴め――」
世界のどこにもない、しかし世界のどこからでも繋がる場所で、不思議な会話が交わされた。
そこは世界のどこにもない、しかし世界のどこからでも繋がる場所にある、異次元空間。
人型のぼんやりと光る何者かの姿が浮かんでいた。
その光の人型の前には二つの鏡が置かれている。
一つは、荒れ狂う海で暴れる海龍と戦う冒険者たちの姿。
もう一つには、いくつかの物語のタイトルだと思われものが羅列し、その横に数字が掲げられている不思議な文章画面が映っていた。
その数字は時間が経つと増えているようだ。
物語のタイトルの横には「連載中」という表記があるものと「打ち切り」と書かれ灰色に反転されたものがある。
そして上位にあるタイトルには「注目作」と目立つ赤色で書かれていた。
「いよいよ物語が動き出したという感じで、面白くなってきたのう。転生者たちには頑張ってもらいたいものじゃ」
光の人型は楽しそうに鏡を覗いている。
海龍と戦う冒険者たちに向かって「そこじゃー負けるなー」とエールも送り、まるでスポーツ観戦でもしているようなノリだ。
だが、そんな楽しげな様子を鼻で笑う者がいる。
「面白い? これが?」
真っ向から否定するように、暗がりから男の声が聞こえた。
そこにはソファセットが置かれており、何者かが腰をかけてくる。しかしゆったり寛いでいるというわけではなく、その足はひっきりなしに貧乏ゆすりをしていた。
「普段あいつらは人が血涙で作り上げた作品をけなして、つまらない、もっと面白くしろ、絶対売れない、二番煎じ――なんて好き勝手に言うくせに、この程度の物語しか作れないなんて肩透かしだな」
その男はくたびれたパーカーを着て、頭はすっぽりとフードで覆っている。手入れを怠って伸びっぱなしの髪と、無精ひげがちらりと覗いていた。
「自分で推薦しておいて、それはないじゃろう。ラノベの編集者なら面白い物語を作れるとわしに言ったのはおぬしじゃ。まさかおぬし、彼らに復讐するためにわしを利用したのではないじゃろうな?」
「まさか、神様。考えすぎです。思った以上に彼らがつまらなかったんで、俺もビックリしてるだけですよ」
ニタァと笑う男の口元に悪意が感じられるが、「神様」と呼ばれた光の人影はそれを咎めることはなかった。
「まぁ、よい。全てはただの余興じゃ。わしを存分に楽しませてくれればそれでよい」
「ええ、この調子でどんどん転生させて、つまらない奴はさっさと殺して打ち切りにしてしまいましょう」
「それを決めるのはわしではない。わしはただ、転生させ、見守るのみ」
ケラケラと光の人影が笑っていると、急にその空間の壁の一部がぐにゃりと歪んだ。
神域に乱暴に入って来たのは、黒いローブに身を纏った人物。こちらもまた姿をすっぽりと布に覆っているが、袖から出ている手が長い杖を握っており、それがしわがれた老人のものだとわかる。
「……」
老人は無言で、二つの鏡を見つめた。
「なんじゃ、わしの『余興』に文句でもあるのか?」
「……」
まるで「お前の行動は全て見ているからな」と言わんばかりの圧力で周囲をゆっくりと見渡してから、その老人はどこかに消えていった。
「なんじゃ、一緒に『余興』を楽しんでいけばよいのに。ノリがわからぬ奴め――」
世界のどこにもない、しかし世界のどこからでも繋がる場所で、不思議な会話が交わされた。
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