【異世界転生】私はおじさんになりたい ~ゴリマッチョと美青年は実質おねしょた~

ねこのひつまぶし

文字の大きさ
上 下
37 / 88
3章 悪役令嬢狩り

第37話 神の余興

しおりを挟む
「ふむふむ、今のところ人気なのは予想外じゃが、『美女転生、世界を股にぶっかける~わからセックス孕ませエンド~』が読者に人気があるらしい。やはりエロがウケたのかのぉ」

 そこは世界のどこにもない、しかし世界のどこからでも繋がる場所にある、異次元空間。

 人型のぼんやりと光る何者かの姿が浮かんでいた。

 その光の人型の前には二つの鏡が置かれている。

 一つは、荒れ狂う海で暴れる海龍と戦う冒険者たちの姿。

 もう一つには、いくつかの物語のタイトルだと思われものが羅列し、その横に数字が掲げられている不思議な文章画面が映っていた。
 その数字は時間が経つと増えているようだ。

 物語のタイトルの横には「連載中」という表記があるものと「打ち切り」と書かれ灰色に反転されたものがある。
 そして上位にあるタイトルには「注目作」と目立つ赤色で書かれていた。

「いよいよ物語が動き出したという感じで、面白くなってきたのう。転生者たちには頑張ってもらいたいものじゃ」

 光の人型は楽しそうに鏡を覗いている。
 海龍と戦う冒険者たちに向かって「そこじゃー負けるなー」とエールも送り、まるでスポーツ観戦でもしているようなノリだ。

 だが、そんな楽しげな様子を鼻で笑う者がいる。

「面白い? これが?」

 真っ向から否定するように、暗がりから男の声が聞こえた。
 そこにはソファセットが置かれており、何者かが腰をかけてくる。しかしゆったり寛いでいるというわけではなく、その足はひっきりなしに貧乏ゆすりをしていた。

「普段あいつらは人が血涙で作り上げた作品をけなして、つまらない、もっと面白くしろ、絶対売れない、二番煎じ――なんて好き勝手に言うくせに、この程度の物語しか作れないなんて肩透かしだな」

 その男はくたびれたパーカーを着て、頭はすっぽりとフードで覆っている。手入れを怠って伸びっぱなしの髪と、無精ひげがちらりと覗いていた。

「自分で推薦しておいて、それはないじゃろう。ラノベの編集者なら面白い物語を作れるとわしに言ったのはおぬしじゃ。まさかおぬし、彼らに復讐するためにわしを利用したのではないじゃろうな?」

「まさか、神様。考えすぎです。思った以上に彼らがつまらなかったんで、俺もビックリしてるだけですよ」

 ニタァと笑う男の口元に悪意が感じられるが、「神様」と呼ばれた光の人影はそれを咎めることはなかった。

「まぁ、よい。全てはただの余興じゃ。わしを存分に楽しませてくれればそれでよい」

「ええ、この調子でどんどん転生させて、つまらない奴はさっさと殺して打ち切りにしてしまいましょう」

「それを決めるのはわしではない。わしはただ、転生させ、見守るのみ」

 ケラケラと光の人影が笑っていると、急にその空間の壁の一部がぐにゃりと歪んだ。

 神域に乱暴に入って来たのは、黒いローブに身を纏った人物。こちらもまた姿をすっぽりと布に覆っているが、袖から出ている手が長い杖を握っており、それがしわがれた老人のものだとわかる。

「……」

 老人は無言で、二つの鏡を見つめた。

「なんじゃ、わしの『余興』に文句でもあるのか?」

「……」

 まるで「お前の行動は全て見ているからな」と言わんばかりの圧力で周囲をゆっくりと見渡してから、その老人はどこかに消えていった。

「なんじゃ、一緒に『余興』を楽しんでいけばよいのに。ノリがわからぬ奴め――」



 世界のどこにもない、しかし世界のどこからでも繋がる場所で、不思議な会話が交わされた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...