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ムストレス派の糾弾と直接攻撃
ディアヴォロスが退席したその後の賭けとその結末
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酒が召使いによって運び込まれ、皆が使者の訪問で退出したディアヴォロス抜きで、その超高級酒の入ったグラスを傾ける。
皆アイリスの衝撃の結婚話に口が重く、がローフィスがそっとささやく。
「もう痛まないか?」
アイリスは顔を上げ、その時ようやく皆が自分の事で気まずい思いをしてる。と感じ、言った。
「幸い。彼の力はやはり凄い。
でなければ今この酒をこんなに美味い。と思いながら飲んでたりはしない」
微笑むが、ディングレーもギュンターもやり切れないないように俯き、オーガスタスは二人の様子にやれやれ。と首を横に振る。
「意外にも念願叶って奴を殴れたんだ。
美酒を味わえ」
言われてギュンターは、咄嗟にオーガスタスに怒鳴った。
「そりゃ俺だって、奴だと思って殴ったんならすっきりするさ!
だがララッツを沈めようと思い、叶ってないんだぞ!」
ローフィスはやっぱり馬鹿だ。とギュンターを見た。
「ララッツを殴ってたら今頃全面戦争だ!
ノルンディルもレッツァディンも、フォルデモルドもやる気満々だったからな!」
オーガスタスもつぶやく。
「戦闘に明け暮れていたのに、いきなり平和に成って奴ら、元気を持てあましてる。
そんなのに付き合う気か?本気で?」
ディングレーがぼそり。と言った。
「元気を持てあましてるのは、こっちもなんだけどな………」
ギュンターも、今この平和な時にローランデが居たら、相思相愛は当然無理だとしても少なくとも二人の時間を、楽しめただろうに。と重苦しい吐息を吐く。
アイリスは思いついたように顔を上げてローフィスとオーガスタスを見つめる。
「…つまりディアヴォロスは………。
私が諦めずに彼女との結婚を押し切ったんだから、ギュンターの事は言えないだろうと…そう言ったのか?」
オーガスタスが即答した。
「当然」
ローフィスも頷く。
「ギュンターと全然変わりない」
アイリスはがっくり…!と首を落とす。
ギュンターが咄嗟に怒鳴る。
「…どういう意味だ?それは。
嫌味にも程があるぞ!」
アイリスは項垂れきった。
そして顔を上げず、掠れた小声で呻いた。
「黙っててくれ………。
事実を認識するのに、暫く時間が要る」
ギュンターとディングレーは顔を見合わせ、憮然。とその年下の男を見た。
「…………駄目だ…。
だってどう考えても……だって………。
だって、私とは違う筈だろう………?
ローランデはギュンターに愛されて不幸な目に合ってる筈なのに………違うのか?」
顔を上げてローフィスとオーガスタスを交互に見る。
ギュンターが、沸騰した。
「どうしてそれを奴らに聞く!
俺に聞け!」
アイリスはその濃紺の瞳でギュンターを真っ直ぐ見、怒鳴り返す。
「だって君はローランデの周囲の状況なんてこれっぽっちも、見えて無いじゃないか!」
「惚れてたら周囲が関係あるか!
結局お前だって相手の両親に反対されても、押し切ったんだろう!」
ギュンターが言った途端、アイリスは頭を抱えた。
そして情けない声で呻く。
「…私のした事はギュンター同様なのか?」
オーガスタスはついそんなアイリスに感想を洩らした。
「…ショックを受けてるな」
ローフィスは頷く。
「自分は文明人だと信じていたらしいからな」
ギュンターが途端、目を剥く。
「どうせ俺は野獣だ!」
ディングレーがぼそり。とつぶやく。
「やれやれ…。
ディアヴォロスに女のように甘えてたのを突っ込んでやろう。と思ってたのにな………」
アイリスが途端、埋めていた両手から顔を、上げた。
「ああ…。流石に彼相手だと女性の気持ちが解る。
滅多に無い機会だからつい、思い切り抱きついてしまった」
さっきの話と打って変わって調子のいいアイリスについ、皆が凝視する。
ディングレーの瞳が険しくなった。
「…やっぱり、そうか」
ギュンターは項垂れて吐息を吐く。
「思わずカンぐりそうに成ったぜ。
幾らお前でも流石に彼とは、寝て無いんだろう?」
アイリスは眉間を寄せるとそっとつぶやく。
「それは君だろう?
私は君程節制無しじゃないぞ?」
オーガスタスもローフィスも顔を背け、ディングレーがつい二人のそんな態度を見、ギュンターが言った。
「この場で知らないのはディングレーだけだ。アイリス。ばっくれても無駄だ。
お前が下手したら俺以上の相手と寝てる事くらい、とっくにオーガスタスもローフィスも知ってる」
アイリスは二人を見たが、二人共アイリスから目を逸らした。
「…やっぱり?
でも二人共大人で礼儀正しいから、知ってても口に出したり態度に出したりしない。
第一、君を対象にしたら私なんててんで可愛いものだ」
「嘘付け!」
ギュンターが怒鳴り、アイリスは突っ込んだ。
「君の方こそディアヴォロスと、関係を持ったりしてないのか?本当に?」
ギュンターが怒鳴った。
「近衛でローランデしか目に入らずそれでさんざ、二人(オーガスタスとローフィス)にいい加減にしろ!と怒鳴られてるのに、左将軍を口説いてる間なんか、あるか!
だいたいそれはお前の方がよっぽど怪しいだろう?
秘密主義だしな!
どうせ、結婚祝いも欲しくないんだろう?」
アイリスが怒鳴り返す。
「冗談だろう?!
私は盛大に式を挙げたいんだ!
君からも祝儀を、うんとふんだくりたいさ!
先が長くないなら素晴らしい式にして、思い出を作ってあげたいじゃないか!
待ってろ!
絶対相手の両親の信頼を勝ち取って式を挙げ、君からごっそり祝儀を、毟り取ってやるからな!」
ギュンターが、にやり。と笑った。
「お前にそれが出来たらその時は、俺の上着のポケットを全部はたいて有り金全部くれてやるさ!」
アイリスは怒鳴り返す。
「その時文無しに成っても後悔するなよ!」
オーガスタスもぼそり。と言った。
「有り金全部アイリスに取られ、金を貸してくれ。と俺に泣きつくなよ」
ギュンターはオーガスタスに怒鳴った。
「お前は誰の友達だ?アイリスか?」
オーガスタスは思い切り肩をすくめて言った。
「勿論お前の友達だが、勝ち目の無い賭けが絡むとあっちゃ、話は別だ。
アイリスが詭弁で自分の意見を押し通し、曲げた事が無いのを忘れたのか?」
ギュンターが途端、悔しそうに唇を噛んで言い淀む。
がディングレーは意外そうに目を見開く。
「…あんた本気か?
既に結婚してるってのに女とああ不摂生に遊んでちゃ、アイリスは絶対無理だろう?」
オーガスタスが、茶目っ気たっぷりに微笑った。
「じゃ、賭けるか?
負けた方がこの、シュランゴン酒を好きなだけ相手に奢るんだ」
ディングレーはそのライオンのような大柄で朗らかな男を、真っ直ぐな青の瞳で見据える。
「いいだろう」
ローフィスは呆れたようにオーガスタスを見た。
「本気か?
奴は王族だぞ?例え負けて超高級酒を奢ったって、財布は痛まない」
オーガスタスはもっと笑った。
「だが“負け"に誇りは痛む」
ディングレーはつい、そう言ったオーガスタスを睨んだ。
がオーガスタスはローフィスに振る。
「お前は混じらないのか?」
ローフィスはそっ…と、アイリスとギュンターを見る。
「…冗談だろう?
ローランデと恋人のように熱々に成りたい。と思ってるギュンターの夢は幻だと俺は確信してるのに。
それと同等馬鹿なんだろう?アイリスも」
ギュンターもアイリスも、同時に叫んだ。
「幻だと確信?!」
「同等馬鹿って、どういう事だ?!」
ローフィスは肩をすくめる。
「だってディングレーの言う通りだ。
結婚した男は身持ちを固めるのが普通だがお前は変わらない。
それで本当に相手の両親の信頼を勝ち取るつもりか?」
がアイリスは目を見開いた。
「女性とちょっと親しく過ごしたら不貞なのか?
食事をするのと変わらないのに」
そこに居る皆が一瞬言葉に詰まった。
アイリスは更に畳みかける。
「君達だって腹が減ったら食べるだろう?
結婚したら妻が居る食卓でしか食事をしないのか?」
ディングレーが呆れ返って口を、開けたまま尋ねる。
「お前の“寝る”って、食事とイコールなのか?」
アイリスは不思議そうにディングレーを見つめた。
「君は、違うのか?」
オーガスタスとディングレーは同時に、ローフィスを見た。
ローフィスは二人が期待する言葉を言った。
「…やっぱりギュンター同様、ここ迄固まってたらこの年で頭の中身の価値観を変えるのはまず、不可能だ」
アイリスはさっぱり解らず、まだ言った。
「だってギュンターは常識が無い」
ギュンターは言い返したかったが、自分の見解は正しい。と信じ切ってるアイリスに、何も言う言葉は、見つからなかった。
オーガスタスが、ぼそりと言った。
「くれぐれも俺と“食事”しようだなんて、考えないでくれ」
ローフィスも、ディングレーでさえもが頷く。
「俺も除外してくれ」
「俺もだ」
アイリスはギュンターを見た。
「…だって君だって思うだろう?
食事だって誰とでもするもんじゃないと。
プライベートで特別な食事は」
ギュンターは真顔で尋ねるアイリスを、頭がおかしい危険人物のように見つめ、そっとささやく。
「そうだ。だから当然、俺とも“食事”しないよな?」
「どうしてそんな心配をするのか解らない。
だって君達として、美味しい食事を味わう気分に成れるか?」
オーガスタスは安心したように心からほっとし、つぶやく。
「腹を下すな。間違いなく」
アイリスが、頷く。
「それどころかあんまり不味そうでまず口に、入らない」
皆の安堵の吐息がその場を埋め尽くし、アイリスはやっぱりそんな彼らは常識外れだ。と見解を下した。
が数日後、オーガスタスは笑っていた。
ディングレーが悔しそうに超高級酒を1ダースも取り寄せ、オーガスタスに手渡したので。
確かに彼に取っては手痛い出費ではあったが、ギュンターのような最悪な打撃では無かった。
ローフィスとギュンターは周囲から借りれるだけの金を借りてディングレーに突き付け、ディングレーは結婚式への贈り物として、更にもう八ダースものシュランゴン酒をアイリスへと送り付け、三人は出席した式の席で自分達の送った酒を腹いせに、しこたま飲んで酔っぱらった。
その時の空は晴れ上がり素晴らしい晴天で、彼の結婚が真実だった。
と知らされた悲嘆に暮れる女性達を尻目に、アイリスの笑顔はその青天の下、輝き渡った。
END
皆アイリスの衝撃の結婚話に口が重く、がローフィスがそっとささやく。
「もう痛まないか?」
アイリスは顔を上げ、その時ようやく皆が自分の事で気まずい思いをしてる。と感じ、言った。
「幸い。彼の力はやはり凄い。
でなければ今この酒をこんなに美味い。と思いながら飲んでたりはしない」
微笑むが、ディングレーもギュンターもやり切れないないように俯き、オーガスタスは二人の様子にやれやれ。と首を横に振る。
「意外にも念願叶って奴を殴れたんだ。
美酒を味わえ」
言われてギュンターは、咄嗟にオーガスタスに怒鳴った。
「そりゃ俺だって、奴だと思って殴ったんならすっきりするさ!
だがララッツを沈めようと思い、叶ってないんだぞ!」
ローフィスはやっぱり馬鹿だ。とギュンターを見た。
「ララッツを殴ってたら今頃全面戦争だ!
ノルンディルもレッツァディンも、フォルデモルドもやる気満々だったからな!」
オーガスタスもつぶやく。
「戦闘に明け暮れていたのに、いきなり平和に成って奴ら、元気を持てあましてる。
そんなのに付き合う気か?本気で?」
ディングレーがぼそり。と言った。
「元気を持てあましてるのは、こっちもなんだけどな………」
ギュンターも、今この平和な時にローランデが居たら、相思相愛は当然無理だとしても少なくとも二人の時間を、楽しめただろうに。と重苦しい吐息を吐く。
アイリスは思いついたように顔を上げてローフィスとオーガスタスを見つめる。
「…つまりディアヴォロスは………。
私が諦めずに彼女との結婚を押し切ったんだから、ギュンターの事は言えないだろうと…そう言ったのか?」
オーガスタスが即答した。
「当然」
ローフィスも頷く。
「ギュンターと全然変わりない」
アイリスはがっくり…!と首を落とす。
ギュンターが咄嗟に怒鳴る。
「…どういう意味だ?それは。
嫌味にも程があるぞ!」
アイリスは項垂れきった。
そして顔を上げず、掠れた小声で呻いた。
「黙っててくれ………。
事実を認識するのに、暫く時間が要る」
ギュンターとディングレーは顔を見合わせ、憮然。とその年下の男を見た。
「…………駄目だ…。
だってどう考えても……だって………。
だって、私とは違う筈だろう………?
ローランデはギュンターに愛されて不幸な目に合ってる筈なのに………違うのか?」
顔を上げてローフィスとオーガスタスを交互に見る。
ギュンターが、沸騰した。
「どうしてそれを奴らに聞く!
俺に聞け!」
アイリスはその濃紺の瞳でギュンターを真っ直ぐ見、怒鳴り返す。
「だって君はローランデの周囲の状況なんてこれっぽっちも、見えて無いじゃないか!」
「惚れてたら周囲が関係あるか!
結局お前だって相手の両親に反対されても、押し切ったんだろう!」
ギュンターが言った途端、アイリスは頭を抱えた。
そして情けない声で呻く。
「…私のした事はギュンター同様なのか?」
オーガスタスはついそんなアイリスに感想を洩らした。
「…ショックを受けてるな」
ローフィスは頷く。
「自分は文明人だと信じていたらしいからな」
ギュンターが途端、目を剥く。
「どうせ俺は野獣だ!」
ディングレーがぼそり。とつぶやく。
「やれやれ…。
ディアヴォロスに女のように甘えてたのを突っ込んでやろう。と思ってたのにな………」
アイリスが途端、埋めていた両手から顔を、上げた。
「ああ…。流石に彼相手だと女性の気持ちが解る。
滅多に無い機会だからつい、思い切り抱きついてしまった」
さっきの話と打って変わって調子のいいアイリスについ、皆が凝視する。
ディングレーの瞳が険しくなった。
「…やっぱり、そうか」
ギュンターは項垂れて吐息を吐く。
「思わずカンぐりそうに成ったぜ。
幾らお前でも流石に彼とは、寝て無いんだろう?」
アイリスは眉間を寄せるとそっとつぶやく。
「それは君だろう?
私は君程節制無しじゃないぞ?」
オーガスタスもローフィスも顔を背け、ディングレーがつい二人のそんな態度を見、ギュンターが言った。
「この場で知らないのはディングレーだけだ。アイリス。ばっくれても無駄だ。
お前が下手したら俺以上の相手と寝てる事くらい、とっくにオーガスタスもローフィスも知ってる」
アイリスは二人を見たが、二人共アイリスから目を逸らした。
「…やっぱり?
でも二人共大人で礼儀正しいから、知ってても口に出したり態度に出したりしない。
第一、君を対象にしたら私なんててんで可愛いものだ」
「嘘付け!」
ギュンターが怒鳴り、アイリスは突っ込んだ。
「君の方こそディアヴォロスと、関係を持ったりしてないのか?本当に?」
ギュンターが怒鳴った。
「近衛でローランデしか目に入らずそれでさんざ、二人(オーガスタスとローフィス)にいい加減にしろ!と怒鳴られてるのに、左将軍を口説いてる間なんか、あるか!
だいたいそれはお前の方がよっぽど怪しいだろう?
秘密主義だしな!
どうせ、結婚祝いも欲しくないんだろう?」
アイリスが怒鳴り返す。
「冗談だろう?!
私は盛大に式を挙げたいんだ!
君からも祝儀を、うんとふんだくりたいさ!
先が長くないなら素晴らしい式にして、思い出を作ってあげたいじゃないか!
待ってろ!
絶対相手の両親の信頼を勝ち取って式を挙げ、君からごっそり祝儀を、毟り取ってやるからな!」
ギュンターが、にやり。と笑った。
「お前にそれが出来たらその時は、俺の上着のポケットを全部はたいて有り金全部くれてやるさ!」
アイリスは怒鳴り返す。
「その時文無しに成っても後悔するなよ!」
オーガスタスもぼそり。と言った。
「有り金全部アイリスに取られ、金を貸してくれ。と俺に泣きつくなよ」
ギュンターはオーガスタスに怒鳴った。
「お前は誰の友達だ?アイリスか?」
オーガスタスは思い切り肩をすくめて言った。
「勿論お前の友達だが、勝ち目の無い賭けが絡むとあっちゃ、話は別だ。
アイリスが詭弁で自分の意見を押し通し、曲げた事が無いのを忘れたのか?」
ギュンターが途端、悔しそうに唇を噛んで言い淀む。
がディングレーは意外そうに目を見開く。
「…あんた本気か?
既に結婚してるってのに女とああ不摂生に遊んでちゃ、アイリスは絶対無理だろう?」
オーガスタスが、茶目っ気たっぷりに微笑った。
「じゃ、賭けるか?
負けた方がこの、シュランゴン酒を好きなだけ相手に奢るんだ」
ディングレーはそのライオンのような大柄で朗らかな男を、真っ直ぐな青の瞳で見据える。
「いいだろう」
ローフィスは呆れたようにオーガスタスを見た。
「本気か?
奴は王族だぞ?例え負けて超高級酒を奢ったって、財布は痛まない」
オーガスタスはもっと笑った。
「だが“負け"に誇りは痛む」
ディングレーはつい、そう言ったオーガスタスを睨んだ。
がオーガスタスはローフィスに振る。
「お前は混じらないのか?」
ローフィスはそっ…と、アイリスとギュンターを見る。
「…冗談だろう?
ローランデと恋人のように熱々に成りたい。と思ってるギュンターの夢は幻だと俺は確信してるのに。
それと同等馬鹿なんだろう?アイリスも」
ギュンターもアイリスも、同時に叫んだ。
「幻だと確信?!」
「同等馬鹿って、どういう事だ?!」
ローフィスは肩をすくめる。
「だってディングレーの言う通りだ。
結婚した男は身持ちを固めるのが普通だがお前は変わらない。
それで本当に相手の両親の信頼を勝ち取るつもりか?」
がアイリスは目を見開いた。
「女性とちょっと親しく過ごしたら不貞なのか?
食事をするのと変わらないのに」
そこに居る皆が一瞬言葉に詰まった。
アイリスは更に畳みかける。
「君達だって腹が減ったら食べるだろう?
結婚したら妻が居る食卓でしか食事をしないのか?」
ディングレーが呆れ返って口を、開けたまま尋ねる。
「お前の“寝る”って、食事とイコールなのか?」
アイリスは不思議そうにディングレーを見つめた。
「君は、違うのか?」
オーガスタスとディングレーは同時に、ローフィスを見た。
ローフィスは二人が期待する言葉を言った。
「…やっぱりギュンター同様、ここ迄固まってたらこの年で頭の中身の価値観を変えるのはまず、不可能だ」
アイリスはさっぱり解らず、まだ言った。
「だってギュンターは常識が無い」
ギュンターは言い返したかったが、自分の見解は正しい。と信じ切ってるアイリスに、何も言う言葉は、見つからなかった。
オーガスタスが、ぼそりと言った。
「くれぐれも俺と“食事”しようだなんて、考えないでくれ」
ローフィスも、ディングレーでさえもが頷く。
「俺も除外してくれ」
「俺もだ」
アイリスはギュンターを見た。
「…だって君だって思うだろう?
食事だって誰とでもするもんじゃないと。
プライベートで特別な食事は」
ギュンターは真顔で尋ねるアイリスを、頭がおかしい危険人物のように見つめ、そっとささやく。
「そうだ。だから当然、俺とも“食事”しないよな?」
「どうしてそんな心配をするのか解らない。
だって君達として、美味しい食事を味わう気分に成れるか?」
オーガスタスは安心したように心からほっとし、つぶやく。
「腹を下すな。間違いなく」
アイリスが、頷く。
「それどころかあんまり不味そうでまず口に、入らない」
皆の安堵の吐息がその場を埋め尽くし、アイリスはやっぱりそんな彼らは常識外れだ。と見解を下した。
が数日後、オーガスタスは笑っていた。
ディングレーが悔しそうに超高級酒を1ダースも取り寄せ、オーガスタスに手渡したので。
確かに彼に取っては手痛い出費ではあったが、ギュンターのような最悪な打撃では無かった。
ローフィスとギュンターは周囲から借りれるだけの金を借りてディングレーに突き付け、ディングレーは結婚式への贈り物として、更にもう八ダースものシュランゴン酒をアイリスへと送り付け、三人は出席した式の席で自分達の送った酒を腹いせに、しこたま飲んで酔っぱらった。
その時の空は晴れ上がり素晴らしい晴天で、彼の結婚が真実だった。
と知らされた悲嘆に暮れる女性達を尻目に、アイリスの笑顔はその青天の下、輝き渡った。
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