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夢の出来事(ディングレー&ゼイブン)

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 ディングレーは凄く怖かった。
だから、振り返りたくなんか、無かった。

が、そこには自分の姿が列記としてあり、背を向けても目を閉じても透けて見える。

『ああ…。夢だからか』

何とか理性を取り戻す。
そして夢だからこそ…その姿を探しに行こうとした。

途端
『どこへ行く』
突然現れたギュンターに片腕掴まれ
『お前が消えると、夢迄消えるだろう?』
そう言ってもう片手を、ディンダーデンが握る。

『放せお前ら!』
二人の真ん中で身もがくが、どっちも自分よりガタイのいい喧嘩自慢だ。
ここで二人を相手どって戦い抜くか、それとも…。

キョロキョロと視線を彷徨わせる。
夢ならば…奴が居たっておかしくない。

だが…オーガスタスは勿論、ローフィスの姿はどこにも見えない。

“薄情な奴らだ!”

心の中で思い切り、悪態を吐(つ)く。

「止め…っ!」
ゼイブンの叫び声が聞こえ、つい振り返ってしまい、ディングレーはその様子を思わず凝視し、結局そのまま…過去の自分の夢にとうとう…捕らわれ、引きずり込まれた。

両隣に、ディンダーデンとギュンターの気配をぼんやり感じたが、構ってる場合じゃなかった。
明らかに、14の頃のまだ、線の細く今よりうんと背の低い自分の姿が、華奢そのものの色白の美少年を寝台の上で組み敷き、丸っきりソノ気で両腕で抱きしめ、熱烈に唇を奪っている様が、視界いっぱいに映り込んでいたので。

がディングレーはその、自分では到底見る事の出来ない若き日の自分の姿をつい、まじまじと見つめた。

背に流れる黒髪は艶があり良く、手入れされていて品良く見える。
自分の顔も当然若々しく、色も今よりは色白で顔を傾ける度、随分気取って見えた。

(俺……こんなんだっけ???)

そうして、ぼんやりと思い出す。
教練に入学する為、修行の旅から屋敷に帰った途端、執事頭に大騒ぎされた顛末を。

あちこち擦り傷と包帯だらけの、ボロボロな姿だが、彼の言った第一声は
「なんて悲惨なお召し物を王族が!」

ディングレーは、自分の衣服をチラと見た。
普段着とはいえ、それでも銀刺繍の施されて優雅だった元、上着は。
原型を止めぬ程汚れ、あちこち穴が開き、埃だらけだった。

…それから怪我の手当てもそこそこで、髪を洗われ、蜂蜜を塗られ蒸しタオルでぐるぐる巻きにされ、体中に泥のパックを施され、文句を吐けよう物なら侍従頭に怒鳴られた。

「それならどうして…!
もっとお早く帰れなかったんです!
入学式迄日がありません!
断じて!
王族の誇りにかけて、あなた様をこんなお姿で大衆の目に晒す事は出来ません!
お嫌だと言うのなら!
私と執事頭は、首を括らねば成りません!」

泣き出しそうな目でそう、訴えかけられ、ディングレーはもう何も言えず、召使い達が体中に香油を塗りたくってまさぐる度、傷に触れる痛みを、我慢した。


 …そうだ…。だから………。

やけに整い、こざっぱりし、気品。なんて言葉も浮かびそうで、その割に態度が据わっていて、ただのちゃらちゃらした貴族には見えない。

旅先で鍛えた体はお陰様で、上品な衣服を堂と逞しく着こなして見えたし、少年ながらも肩幅があり、なかなか立派な風体に見える。

今更ながらに
『成る程。奴らの言う王族の風体。ってのはこんな風か』
と過去の自分を見て、しみじみ思った。

昔から、ロクにマジマジと、鏡を見た試しも無かったので。

…が、見ていると体の下敷きにしたゼイブンが、唇を奪われる度、うっとりとした表情に変わるのを、つい凝視する。

髪は今より長く…そうだ。女の話になると途端活気づく、あの通った鼻筋の銀髪に近い栗毛の美少年!

あれが…………。

ディングレーは思い出すとつい、沈黙する。

あの、美少年。と言われれば思い出せた。
今のチャラけた色男、ゼイブンとかじゃなくて。

なぜならディングレーの記憶にも残る程の美少年は、今のゼイブンと比べると雲泥の差で綺麗で、ゼイブンに会って昔の彼を、思い描けなくても無理はない。と思った。

同級だけで無く、上級にも彼に目を付けてる男達が居たし、ディングレーもあの、美少年。なら確実に思い出せた。

金とも銀とも取れる淡い髪の色の、ブルー・グレーの瞳の…。
小さく整った顔。
興奮すると赤く染まる唇。
見た目は確かに、人目を引いた。
が………。

しゃべらせるとてんでお門違いだし、組み敷くには色気が無さ過ぎだ。と皆が匙を投げ……。
だが顔だけは綺麗だったから、奴が通るとその淡い色の髪色と瞳も手伝って、つい皆視線が、吸い寄せられて振り返る。

が、それは見かけだけで、良く連(つる)む連中と固まると、女のアソコの下品な話題で声高に盛り上がり、一斉にソノ気の男達を引かせていた。

…だが………。

ゼイブンの、言った意味が少し、解った。
『俺も、お前に惚れる女達の気持ちが解りそうで、凄く怖かった』
下に成ってる奴は確かに…抱き返しては来ないがそれでも…顔を傾け口付ける度、どんどん抵抗を、無くしてないか?

どころか恍惚の表情で…。

「んっ…」
上ずった声を上げ頬を染め…口づけを…待ち構えてる…風…だ。

ディングレーは愕然。とした。
経緯は覚えてる。
確か、ローフィスと飲んでいて、ゼイブンの奴が来て、ローフィスの悪友が、女とトラブった。
とローフィスを呼びつけ…それで奴はローフィスに
「ディングレーを見ててくれ。
随分今夜は深酒してる。
ぶっ倒れそうに成ったら、奥の寝室へ連れてって寝かせといてくれ!」
と言われ…ローフィスはトラブル解決の為に奴の友達の所へと駆け姿を消し…。


確か俺は耳は聞こえてたが視界は歪んで…ゼイブンが、絶世の美少年に思え、その場で迫ろうとしたら椅子から落ちて床に崩れ落ち、ゼイブンはいよいよその時だ。と俺の肩を担ぎ
「まだ…吐くな。
寝台に転がってからなら好きなだけ、ゲロれ」

そう…耳元で怒鳴りながら俺を引きずり…俺は確か…意識の遠のく自分に、言い聞かせた筈だった。
(これは違う…。
薔薇を纏った、ヒキガエルだ)と。

なのにどうして……………!

ディングレーは真っ青に成った。
相手が無防備だったから、熱烈に唇を…どうやらあの手、この手使って奪いながら…ああ、間違い無く舌を使っている。
しかも手は…どういう訳か組み敷いた奴の下半身に伸びて、愛撫なんてしてるから…そりゃ、ゼイブンがうっとりしながら唇を奪われても、仕方無いのかもしれない。

手が下で蠢く度…組み敷かれたゼイブンは腰を俺に…擦り寄せたりしてるから相当…イイんだろう…。
イイのはいいが、何だって俺はゼイブンをソノ気にさせてるんだ?

俺はまた顔を上げ…熱烈に惚れた奴を見つめるように、ゼイブンの綺麗で艶を帯びた顔を、ソノ気で熱く見つめながらまた、顔を傾けて唇を、奪うように塞ぐ。

その度、ゼイブンは感じたように喉を晒したりしてるから、ディングレーはつい、ぞっ。と悪寒で身が寒々と震った。

知らない奴が見たらまるで…熱々で両思いの、恋人同士だ……。

チラ…と、埋もれたような気配の、ギュンターとディンダーデンの様子を探る。
が、二人は画面の中を見入っているようで、その気配を完全に埋没させていた。

…その後が最悪だった。

獲物がすっかり抵抗しない。と俺は本能的に感じたのか、つい手を奴の胸元に滑らせて思い切り剥がし、ゼイブンが顔を振って口づけから逃れる隙も与えず、手に握り込んだ物へ、立て続けに刺激を与えて黙らせる。

胸の上着をはだけ、唇を今度は胸の……。

ディングレーは思わず無言で顔を、下げた。

ゼイブンの胸は薄く色白で、その両の乳首は興奮で赤味が増し、それが処女のように初々しく目に映り、つい顔を傾け貪りながら、ゼイブンが意を唱えるように身を逃そうともがく度、手に握り込んだ急所に愛撫を加えてやる。

「………………………」

何だって俺は…あんな的確な事を酔って意識の無い状態で、してるんだ?

「あっ…!
ああっ………!」

左右交互に唇を、その色づき始めた初々しい感覚器官に滑らせて貪る度。
ゼイブンの頬が染まり、目が潤み喉を晒す。

どう見ても…感じてたまらない様子でしきりに…俺の肩を握り…そして離し…突き放そうとしても出来ない様子だった。

俺と来たらそのまま顔を上げ、潤んだ奴のブルー・グレーの瞳を見つめたまま、また熱烈に口付けてそのまま、下半身の奴自身を握る手を、その下の蕾へと滑らせ始める。

ゼイブンは暫くしようやく、その場所に危機感を感じたのか。
いきなり怒鳴る。

「そこは止めろ!指を抜け!」

その怒鳴り声に反応したのか俺は、上半身を起こし、だん!と音を立てゼイブンの胸に手を当て、奴の上体を寝台の上へ片手で押さえつけ、強引に嫌がる奴のその奥へと指をほぐし入れ…。

ゼイブンは必死で…身もがき始めた。

「止めろ…って言って…あ…あ!」

ディングレーは仰け反るゼイブンを見て、真っ青に成った。

ゼイブンは体をびくん!と大きく反らし、その場所に指が触れる度辛そうに身を、跳ね上げたからだった。

「止め…抜け……!」

声が…詰まっていた。
胸の上に押しつけられた俺の手をどかそうと手を伸ばし、掴み外そうとしその度。

俺は幾度も多分、獲物を黙らせるため急所を………。

ディングレーはつい…腰を降ろし頭を抱え込んで目を閉じた。

だが夢だ。
目を閉じたって、見えている。

『これをゼイブンが見たと言うんなら…凄く、不味い…』

どう見ても強姦だ。

「嫌…!
止めろって言って…!あ…あっ!」

どう見ても、強制的に刺激を与えられている様子で、強姦と言うか、拷問に近いか?
そんな様相を呈して来た。

多分、酔った俺には相手が可憐な処女のような美少年に目に映り、傷付けては。と念入りに、ほぐしているつもりなんだろう…。

こういう時の習慣で、急所を見つけ辛くないよう…幾度もそこをまさぐりながら、指を増やしていくモノだが、どうやら酔っていて…。

更にそれをもっと的確に…しているらしい………。

多分、二本にされて突っ込まれたゼイブンは、激しく首を振りもがきながら
「うっ…!」
とか「んぐっ!」
とか声を上げてつんのめり、どうやらそこに俺の指が触れる度、喉を詰まらせたように激しく唇を、震わせている。

が酔った俺はゼイブンの上げる声にもう十分だと思ったのか、それとも機会あれば逃れようともがくゼイブンに業を煮やし、とっとと頂こう。と思ったのか………。

とうとう上体を暴れるゼイブンの上に倒し込み、のし掛かって抵抗を抑え、剥ぐように足元から布を取り払い、奴の太腿を………。

ディングレーは再び、顔を覆った。

すんなり伸びたその白い足は、綺麗だった。
腿を強引に引き寄せ抱え上げて、開かせる。

ゼイブンが必死で身の下で身もがく。
どう見ても俺の体格からしてゼイブンはうんと、華奢に見える。
が、学年でもガタイのいい方で通っていたから多分…俺が、年の割にはデカいんだろう………。

俺がその暴れる白い腿を引き上げ、腰を密着させた時…ゼイブンの青ざめた顔がびくん…!と大きく揺れ、その瞳が、大きく見開かれる。

小刻みにショックで唇を震わせてる辺り…どうやら俺は自分のすっかり誇張しきったそれを奴の…入り口辺りに当て…進入しようと………その穴を探ってる様子だった。

ゼイブンは両手をバタつかせて体を持ち上げようとし、俺は体を深く倒してゼイブンの背を寝台に押しつけ、太腿を掴み腕を奴の膝の下に組み入れ引き寄せ、下半身を捕らえたまま強引にそのまま奥へと進もうとし。

ゼイブンは腰を左右に必死に揺すって…入り口をずらしていた。

これは…記憶の片隅にあった。
俺も今、思い出したが、抵抗する獲物で注意が必要なのは、強引に進入しようとすると狙いを定めかねて…その後が長い。

だから多分この後…挿入はきわめて素早く無ければならない。
そう…思って、いつだって機会を逃さずさっさと先に入れる事を念頭に……置いたが………。

あれは……この教訓から学んだ事だったのか………。

ゼイブンの暴れる腿を捕まえ、獲物になかなか止めを刺せず、つい強引にゼイブンの髪を後ろから鷲掴みにすると、口付ける。

「ん…んんんっ!」

ゼイブンの唇から唾液が垂れ…まるで説得するように体毎抱き込んで、俺で奴をいっぱいにする。
全部俺で覆い尽くされて逃げ場は無いから、抵抗は無駄だ。
と言わんばかりの。

唇を外した時、ゼイブンは悔しそうに…少し涙を、目の縁に滴らせた。
が再び俺が捻り入れようと、入り口をその先端で探っているのが解ったのか。

いきなり怒鳴った。

「ローフィス!助けてくれ!!誰か!!!」

俺はしぶとく左右に、僅かな空間しかないのに小刻みに揺れる腰に狙いを阻まれ、幾度も入れ損ねて終いにゼイブンの、腰に腕をきつく回して自分に引き寄せる。

ゼイブンの両手が巻き付き、引き剥がそうとするが非力だった。

腰の動きが止まったと思ったら、今度は足だ。

体の両脇に突き出されたゼイブンの足は、派手に揺れて体を揺する。
こっち迄揺すられかねない勢いだ。

俺は……俺は腰を抱き胸を奴の胸に押しつけて上体を身動き取れない程、寝台の上に押さえつけ…なのに奴は諦めず、両足を俺の左右でバタつかせ続け、倒してくる俺の顔を避けて怒鳴り続ける。

「来てくれ!火事だ!全部燃える!!
ローフィス!一大事だ頼む…!!来てくれ!!!」

だがごくり…!とゼイブンの喉が鳴り、真上で見下ろす俺は笑っていた。
その蕾に先端が、僅かのめったので。

ゼイブンが絶叫する。

「来てくれないと一生呪ってやるぞ!!ローフィス!!!」

俺がもし正気だったら
「無駄だ…」
とでも、言ったろうか…。

ともかく、無意識で本能だけだった。
やっと………そう思い、いつもの…慣れた感覚でその奥へと挿入を思い描きほっと…した途端。
目から火花が散った事は…覚えている。

時折…この二つがセットで思い出せるからだ。
ああやっと……。

まるで尿意を長い間我慢し、やっと解放される。
と安心しきったその時に、火花が散るのだ……………。

ディングレーは腰を降ろしたまま、口元に手を当て俯き………言葉を失った。

だらしなく寝台に突っ伏し、伸びた俺の背の上にローフィスが燭台を片手に、俺の下敷きに成ったゼイブンに向かって怒鳴ってた。

「やられたか?!」

ゼイブンはヒキガエルのような掠れ声で、怒鳴り返した。

「…やられてたまるか!」

そして遮二無二、自分の上にのし掛かる気絶した強姦魔(俺だ…)を押し退(ど)ける。

その時の奴の顔はやっぱり小顔の美少年のままだったが、その表情は後年の奴を彷彿とさせた。

ローフィスに救い出されたゼイブンは衣服が乱れきって、いかにも強姦されかけた美少年風だった。
が、寝台に俯せて気を失う俺の腕を掴み、引っ張り強引に仰向かせると、ふいに拳を握り振り上げる。

隣のローフィスが、手で遮って咄嗟に怒鳴る。
「顔は止めろ!」

ゼイブンは一瞬止めるローフィスを睨んだが、その拳を俺の無防備な、腹へと沈めた。

がつん…!
一発。

がつん…!
二発……。

だが三発目を放つ前にゼイブンは眉間を寄せて拳を開き、唇を、噛んで手を振る。

………腹を、鍛えといて良かった。

ゼイブンは憮然とローフィスに告げる。

「男のものは、殴ったっていいんだろう?」

ローフィスは、一瞬躊躇うようにささやく。

「そりゃ、それが最大のお前の惨事の元だとは解る。
だがこんな後で奴のモノが、触れるのかお前」

ゼイブンが真っ青な顔でがなった。
「だが潰さないと気が済まない!」

ディンダーデンとギュンターが、やれやれ。と吐息を吐く。
ゼイブンが、伸びたディングレーの剥き出しの股間のモノへと狙いを定め、拳を振り上げる。

ディンダーデンもギュンターもどうやら俺の気持ちが解るらしく、見たく無い。と顔を背けた気が、した。
が、その拳を振り下ろすその前、ゼイブンは余りにナマで俺のものを凝視したせいか。

真っ青に成ってうっ!と頬を膨らませ、顔を横向け、吐いた。

げろげろげろっ…!

ローフィスはやれやれ。とゼイブンの背に手を当て、さすりながらささやく。
「ちゃんと俺が奴の頭を燭台でカチ割った。
結構効いてる筈だ。それで我慢しとけ」

ゼイブンは何か言おうとして咄嗟にローフィスに振り向き…結局彼の、衣服の真ん中にゲロを、吐き出した。

げろげろっ…!

ローフィスは眉間を寄せ、両手上げてバンザイし…。
が、ゼイブンは尚もローフィスの腕を掴み抱きつくようにして…その胸の衣服に二度目の…ゲロを吐いた。

げろげろっげろっ…!

ゼイブンは口元をゲロまみれにしながら呻く。
「悪い……あんたの服は俺が…あら………うっ…!」

げろげろげろ……。

だが流石に今度はローフィスは、身をさっ!と横向け、避けてつぶやく。

「…気遣い無用だ。
ゲロをそれ以上俺に吐きかけなければ」

ゼイブンは頷きながらまた…込み上げる吐き気で床に、思い切り、ぶちまけた………。

俺は仰向けたままだらしなく…急所を思い切りはだけたまま。
今度はこっちが仰向けたヒキガエルのように横たわり、恥を晒していた。

が、ギュンターもディンダーデンもどうやら俺が気の毒だったらしく、忍び笑いは聞こえては、来なかった……………。

ディングレーは大きく、吐息を吐き出す。

ローフィスはゼイブンのゲロが落ち着く迄付き添い、水を飲ませ、衣服を直す手伝いをし…。

そして奴を部屋から送り出し、残った俺の股間に布団を掛けると、掃除しに来た下働きの男を迎え、女主人にゲロ塗(まみ)れの上着を脱いで渡し…。

掃除を終えた男に賃金を渡し…。
そして、俺の布団を剥がすと剥き出しの股間をさっと手早く衣服の中に終い。
更に…頭の傷に薬を塗り…。

大きく吐息を吐き出すと、伸びた俺の横に横たわり、暫く目を閉じて居た。

ディンダーデンの、吐息混じりの呻きが聞こえる。

「あいつは良い奴だ」

がギュンターは異を唱えた。
「…お前がいつか喧嘩しまくって酔いつぶれた時も、俺はあれに近い事をお前にしたんだぞ?
…さすがに股間は終わなかったが」

ディンダーデンの、声が聞こえた。

「…あいつは、触って終(しま)って、ボタン迄掛ける。
男になかなか出来る事じゃない」

ディングレーは更にがっくり、肩を落とす。
ギュンターの、声がぼそり。と響く。

「ローフィスに触られた事、知ってたのか?お前………」

ディングレーは言いたかった。

意識不明の後は一切何も、覚えてなんかいないし、こういう出来事は相手がゼイブンの時意外は、後は裸でしなだれかかる女を腕に抱いて意識が戻るか。
…そうで無い時は女は消えていて、ローフィスに「服を着ろ!」と怒鳴られて意識を取り戻す。

奴が知らない間に触ってるなんて、解る訳あるか!と………。

だが返答を待つ、二人の為に言ってやった。

「ローフィスの目が醒めたら………礼を念入りに、言っておく」

ディンダーデンは当然だ。と頷く。

「俺なら絶対、見捨てて逃げる。
朝、酒場の従業員に恥を晒すのはお前だ」

ギュンターは吐息混じりにつぶやく。

「布団は掛けといてやるし、掃除くらいはする。
だが、終うのはごめんだ。
お前の意識が戻った時に怒鳴る。
“とっとと終え”と」

ディングレーは二度、頷くと言った。

「ローフィスには、感謝しても足りない」

二人は同時に、そうだろう。と頷いた。


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