アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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特別追記 ユァルエルパの誇り高き王子

奪還

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 塔への階段を上がると、先を鉄柵に阻まれる。
ディアヴォロスは護衛三人を手でそっと制し、後ろに下げて道を開け、最後尾のテスアッソンを、前へ出す。

テスアッソンは進み出ると、鍵で鉄柵の門を開け、ディアヴォロスと護衛三人を通した。

ディアヴォロスはテスアッソンに振り向く。
テスアッソンが頷き、その場に残り、ディアヴォロスと三人の黒人護衛らは駆け上がった。

階段の先には広間。
五人の少年と、八人の少女らが俯いて絨毯の上に座っていて、皆驚いて、一斉に顔を上げる。

ディアヴォロスは護衛ら三人の方へと彼らを促す。
「立って!
彼らに続いて!」

皆、一瞬呆け…。
けれど弾かれたように次々と。
立ち上がり、護衛三人に階段の方へと導かれて、駆け出した。

「まだ…!
まだ個室にジャノンが…!」
「テッサもよ!助けてあげて…!」
駆け去る少年少女に叫ばれ、ディアヴォロスは一つ、頷くと広間の奥の開いた扉を潜り、駆け込む。
横幅の、広い廊下。
その両側には、幾つもの扉が並ぶ。

背後に護衛の一人が駆け込んだ時。
ディアヴォロスが一瞬、光ったのを見た。

その途端、並ぶ扉が突然弾けたように、ばんっ!と音立て、一斉に開く。

ディアヴォロスが、背後に振り向く。
護衛の一人は、ディアヴォロスの目線の合図を受けて左の室内へ駆け込むと、中を覗き込んだ。

ディアヴォロスは右側の扉の中を覗き込み、空だと分かるとその次へ。
護衛の一人は左側を、次々と見て回った。

開いた扉の中を覗き込み、寝台に横たわる少年を見つけると、護衛は駆け込んで、ぐったりする少年を抱き上げる。

廊下に出ると、ディアヴォロスが少女を抱き上げ、駆けて来る。

二人は無言で、それぞれ腕に少年と少女を抱き上げ、廊下を駆け抜けた。

塔の階段に来ると、テスアッソンが振り向く。
ディアヴォロスに両腕差し出し、少女を引き継ぐ。
護衛の一人には、テスアッソンの部下の一人が。
両腕の中に気絶した少年を引き取り、ディアヴォロスと護衛の一人は、階下で待っていた他の二人の護衛と合流。

そのまま塔の階段を駆け下りる。

下にいたデルアンダーは、駆け込んで来るディアヴォロスに、一つ頷く。
デルアンダーと彼の部下らは、囚われた少年少女を次々と。
周囲に付き護りながら、裏門に続く階段の下へと、逃がすため促していた。

ディアヴォロスは塔を降りきった先の、広い踊り場を。
第16王子の私室や広間のある廊下へと、向かい走りながら、頭の中で叫ぶ。

“オーガスタス!
直行く!”



 オーガスタスはシャムノウムが。
少年の後腔に指を差し入れ、いやらしくいたぶる様を見、頭に響く主の声に、一気に顔を、引き締めた。

ゆっくり、微笑を浮かべ立ち上がりつつ…。
「楽しそうですね。
間近で拝見しても…?」
そう、囁く。

オーガスタスは鎖に吊された少年と、鍵を胸に下げて離れた背後に立つ、召使いの間に歩を運ぶ。



 ディアヴォロスと護衛三人は。
王子の私室や広間に繋がる廊下に立つ、幾人もの屈強な護衛が振り向く間も与えず、急襲する。

ディアヴォロスが一気に二人のみぞおちを、ほんの数秒差で殴り、両腕で倒れかける二人を抱き止め。
気絶してる男らを、音を立てないよう廊下に、ゆっくりと横たえた。

護衛ら三人も、駆け寄ろうとする二人の第16王子の護衛に、拳を振って殴りかかる。

がっ!
どっ!

倒した男を抱き止め。
ディアヴォロスを習って、音を立てぬよう、そっと廊下に転がす。

邪魔が消えるとディアヴォロスは、三人を連れて広間の入り口へと。
音を殺して、駆け寄った。

中ではオーガスタスが。
背を向けつつそろそろと、背後の召使いに近づくのが、見える。

が。
その横。
鎖で吊され、背後に張り付く第16王子シャムノウムに、悪戯されてる自国の王子の姿を見つけた時。
黒人種の護衛の一人が、咄嗟広間に飛び込んだ。

ディアヴォロスは、はっ!とし、直ぐ背後から後に続く。
残りの二人も広間へと、ディアヴォロスの後ろから、駆け込んだ。

先に飛び込んだ護衛の男は、王子に駆け寄る。

「!!!」

飛び込んで来る面々を見たオーガスタスは、咄嗟シャムノウムに駆け寄り。
叫ぼうとした、その口を背後から手を当て、塞ぐ。
短剣を懐から素早く取り出すと、シャムノウムの腹に突きつけ、低い声で凄む。
「…動くな。
腹が裂けるぞ」

駆け込んだディアヴォロスの背後にいた護衛二人は、シャムノウムに襲いかかろうとし、咄嗟目前のディアヴォロスに、両腕広げ阻まれた。

護衛二人は、歩を止める。
そして彼らの仇、第16王子の背後で。
口を塞ぎ短剣を突きつけてる、オーガスタスを見る。

オーガスタスは先に自国の王子の横に駆け寄った護衛に、咄嗟後ろに首を振り。
召使いの胸元の、鍵へと視線を向けた。

護衛の男はその胸に下がる鍵を見、オーガスタスに頷くと、狼狽える召使いの元へと、駆け出す。

ディアヴォロスの背後にいた護衛二人は。
ディアヴォロスが制した腕を下げた途端、自国の王子に駆け寄る。

吊されている王子は顔を上げ、護衛らを見て異国の言葉で短く叫び。
護衛らも。
異国の言葉を王子に、かけて側に寄る。

感激の再会で、護衛らは王子の肩に手をかけ、言葉を詰まらせながら囁きかける。

護衛の一人はが召使いの首から下げた鍵を、引き千切る。
ディアヴォロスは素早く召使いの背後に回ると、首を軽くはたいて気絶させた。
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