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特別追記 ユァルエルパの誇り高き王子
潜入
しおりを挟むテスアッソンとデルアンダーは即座に。
南領地ノンアクタルで雇い入れた部下らに連絡を取り、招集する。
ディアヴォロスは自分の別宅にいる、ユァルエルパの護衛らを連れて来るため、出立する。
オーガスタスだけが。
準備が整い、第16王子の招待に応える時間まで。
この町中の別荘で休憩。
が。
あちこちで、バタバタと足音。
招集された、南領地ノンアクタルの肌の黒い部下らがひっきりなしに訪れ、別室のデルアンダーやテスアッソンに、指示を仰いでる。
「(…これで俺に、ゆっくり休めだと?!!!!)」
オーガスタスは焼け糞で侍従に怒鳴った。
「この家に置いてある、最高級酒を持って来い!!!」
一点鐘と半刻後。
ディアヴォロスはユァルエルパの護衛を連れて別荘に戻り、第16王子の城を襲う部下らに会わせた。
護衛の三人が、真被りにしたマントを取ると。
肌の黒い南領地ノンアクタルの部下達ですら、更に黒い肌の、彼らの姿に驚愕して息をのむ。
オーガスタスは戸口からこっそり室内を覗いて、初めて黒人種を見た。
背は高く、ひょろりとして見える。
が、手足の長いその身体は、しなやかでとても強そうに見えた。
何より、見た事の無い異人種の、その顔立ちは。
皆目はアーモンド型で黒く、鼻は低く先がへしゃげ、唇はぶ厚い。
見慣れぬ風貌だが、三人共とても精悍に見える顔立ち。
三人は言葉が通じないらしく、ディアヴォロスが皆を三人に、紹介する。
肌黒の南領地ノンアクタルの部下らは三人の男らを凝視していたし、テスアッソンとデルアンダーですら、ぽかん。
と彼らと、ディアヴォロスとを、交互に見つめていた。
ディアヴォロスが、戸影から伺ってるオーガスタスに、顎をしゃくる。
ディアヴォロスと長時間過ごしてるオーガスタスはその合図で、直ぐ察し頷いて、マントと剣を取りに、部屋に戻った。
マントを左手にひっかけ、戻ると。
戸口から室内に顔を出し、デルアンダーとテスアッソンに
「出る」
と告げる。
その言葉で、二人は上司、オーガスタスに頷き返し、部下らに
「手筈通り、動け」
と告げて、出て行くオーガスタスの背を、見送った。
テスアッソンとデルアンダーは仲間を引き連れ、第16王子の城へと馬を走らせる。
テスアッソンは振り向くが、ディアヴォロスと三人の護衛らは、目立たぬよう身を屈め、部下の間に紛れてた。
城の通用門に着くと、下働きの男がこっそりと手招きし、皆一斉に雪崩れ込む。
コックの一人がテスアッソンに耳打ちする。
「ご命令道理、出した酒に睡眠薬をたっぷり、混ぜてあります」
テスアッソンは頷く。
デルアンダーが、さっ!と手を上げ、それを合図に、部下らは眠りこける護衛を縄で縛り上げるため、城内へと散って行く。
ディアヴォロスはテスアッソンとユァルエルパの護衛を引き連れ、直ぐ、塔の入り口へと向かった。
オーガスタスは正面門で、騎乗したまま通される。
綺麗な花の咲き乱れる中庭で馬から降り、馬丁に手綱を手渡す。
白い石で作られた優美な外階段を上がり、豪勢な広間に通された。
南領地ノンアクタルの広間は、床に絨毯が敷かれた上に、肘を付けるクッションと背もたれのクッションが置かれ、ふかふかの絨毯の上に腰を下ろす。
第16王子はにこやかに、客人であるオーガスタスを。
室内でもひときわ豪勢な、金刺繍の大きなクッションに身を沈め、迎えた。
確かに、背が高く鍛え上げた体付きの、筋肉ムキムキの他の王子らと比べると。
第16王子は肌の色も薄め。
どこか線が細く、軟弱に見える。
…あくまでも、他の王子と比べれば。
だが。
髪は黒く、波打つウェーブで肩迄あり、瞳の色は薄いブルーグレー。
美女揃いの後宮の王妃らの、内の一人の子だけあり、確かに整ってる顔立ちだった。
が、他の王子らがインパクト有りすぎで、とても地味で大人しく見える。
髪から肌にじゃらじゃら付けてる、宝石のはめ込まれた金飾りは、これでもか。
と豪華だったが。
彼は自分の横に座らせた、両手首に枷を嵌められ、鎖で繋がれた性奴隷を、手で指し示して、オーガスタスに見せる。
「どうです?
大変、珍しいでしょう?」
鎖で繋がれた少年の、真っ黒な髪はちりちりの縮れ毛。
伏せた顔を上げると確かに。
別荘で見た、三人の護衛らと、同じ人種。
一際黒い肌の中の、大きな黒い瞳。
額は丸く、鼻は低めだったが、鼻先はひしゃげて無くて丸く。
唇も…この国では厚めだが、護衛ら程は、ぶ厚くない。
黄色の、透けて肌の見える薄衣が、ひときわ黒い肌に映えている。
どこかあどけなさが残る、毛色の変わった美少年だった。
彼は異国語で、短く何か叫ぶ。
が、第16王子、シャムノウムはかまわず手を出し、黒人種の少年は、激しくその手を払い退けた。
シャムノウムはにやついて囁く。
「…手に入れたばかりで…まだロクに、調教も出来ていない。
見た事の無い珍しさでしょう?
もう少し…大人しくさせてから、兄弟王子に披露目をしようと考えています。
少し痛めつけたところで…怯みもしないし、泣きもしない。
こんなに反抗的では…兄達は、喜んで乱暴に犯し、使い物にならない程傷つけてしまうから」
黒い縮れ毛の少年は、ギラリ…!と鋭い瞳を、シャムノウムに向ける。
だがシャムノウムは離れた場所に立つ召使いに合図を送る。
すると…少年の、両手に巻き付く鎖が、上に吊された滑車で引き上げられて…。
膝は付いているが、両腕を上に、伸ばしきったところまで上げられて、吊される。
「とても…野性味がある。
この…細身の体がしなる様は、それは刺激的で…。
肌白の軟弱な少年では、味わえない…。
活きの良い魚のように、跳ねまくる…。
が、気をつけていないと。
こちらが、怪我をする」
オーガスタスは顔色も変えず、横の召使いが注いだ酒を手渡され、それを受け取る。
第16王子シャムノウムは、両腕を吊され、自由を奪われた少年の、背後に身を寄せると、黒い肌に手を這わせ…。
少年の屈辱にまみれた表情を、後ろから覗き込み、楽しげに伺う。
少年の両足首はそれぞれ、鎖で繋がれた枷を嵌められ…。
幾度か、いやらしく体に触れるシャムノウムを蹴ろうとして、膝を左右に振る。
けれど鎖に阻まれて、届かない。
少年が足を振り上げようとする度、がちっ!がちっ!と、鎖の引っ張られる音がした。
オーガスタスはゆっくり、酒をあおりながら内心思う。
「(…厄介だな…。
枷で繋がれていたら…)」
チラ…と、背後に控えている、鎖を上に吊り上げた、召使いの胸元に。
金色の鍵を下げているのを見つけ
「(あいつ、殴って鍵を奪い、そして…。
枷を全部、外さないと助け出せない…)」
そう、内心ため息を吐いた。
シャムノウムの手が、少年の股間の布の下に這い、触れると。
少年は激しく首を横に振る。
「…どうした?
イイんだろう?」
オーガスタスは、シャムノウムを殴り倒したい気持ちをぐっ!とこらえ、酒をあおった。
眠りこけてる護衛を縄で縛り上げ、眠りかける護衛を次々に殴っては。
デルアンダーの部下らは次々に、護衛を隠し部屋へと縄をうって運び込む。
皆、風のように素早く動きながら、阻む護衛を次々と。
音を立てないよう、物陰から襲いかかって、その数を減らし続けた。
ディアヴォロスとユァルエルパの護衛三人。
そしてテスアッソンと二名の部下らは、裏口の階段を駆け上がって、塔の入り口へと辿り着く。
見張ってる護衛二人を、ディアヴォロスが素早く飛びかかり、一人を倒したのは後ろの皆には見えたけど、直ぐ横のもう一人もが身を前へ、くの字に折って倒れ…。
皆がディアヴォロスの、その素早い襲撃に、目を見開いた。
ディアヴォロスが護衛三人に視線を振る。
三人は先に塔を駆け上がる、ディアヴォロスの背に続き駆け昇った。
テスアッソンは背後に振り向き、部下二人に
「縛り上げろ」
と囁き、屈み込んでディアヴォロスに倒された一人の首から、下げた鍵を、引きちぎった。
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