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10 逆転する明暗

サスベスを蕩かすギュンター

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 寝室と同じ階にある執務室にサスベスは座り、立て続けに報告を受けながら、横の男の忠告に耳を傾け、次々に指示を与えていく。

ギュンターは斜め後ろの椅子に座って、あくびをこらえていた。
「(アイリスはともかく、本当にディンダーデンもこんなのに、付き添ったのか?)」
と思いながら。

が、直ぐ報告の男らの列は途切れ、執務官らしき男が、座るサスベスに頷く。
サスベスが振り向くから、ギュンターも立ち上がり…サスベスの横に付いた途端。
サスベスはぐらっ!と姿勢を崩す。

直ぐ、肩を抱き寄せ支えるが…。
サスベスは、真っ赤。

「(…勃っちまったのか………)」

男はそうそう無いが、ディンダーデンと濃厚に過ごした後の女のおおかたは。
事後、直ぐ欲情してたから、ギュンターは内心首を横に振る。

「(ディンダーデンと過ごした後なら、こうなるよな…。
しかもあいつ、多分サスベスが凄くタイプで、全力投入してるから…。
エロエロでも、無理も無い)」

ギュンターはサスベスを抱き支えながら、耳元で囁いた。
「…寝室に、戻るか?」

サスベスは真っ赤な頬の、顔を下げたまま、こくん。
と頷く。

寝室に戻るなり、崩れかかるサスベスをギュンターは抱き止め、素早くサスベスの股間に手を這わすと、サスベスは恥ずかしげに首を横に振る。

ギュンターは一気にサスベスを抱き上げ、寝台に下ろすと顔に倒れ込んで口づけた後、囁く。
「…やっぱり…腰を抱えられて、真上から突き刺されたいか?」

サスベスは恥ずかしさに真っ赤になる。
が、ギュンターはもう、サスベスをうつ伏せに寝かせた後、一気にサスベスの腰に腕を巻き付け、腰を上に引き上げると、股間から猛った自身を取り出し、サスベスのズボンの布を、ボタンを外して剥がし、蕾みを探って先端を擦りつけた。

もうそれだけで、サスベスはびくん!びくん!と身をのたうたせ、蕾は期待で、ひくひく収縮している。

それを見た途端、ギュンターは沸騰するような興奮に包まれて、一気に自身を滑り込ませた。

「ああっ!!!っんっ!!!」

顔を布団に付けたサスベスが、シーツを固く握りしめ、高く掲げられた腰をギュンターに抱きかかえられて、揺らす。
ギュンターはまた、腕に力を込めてサスベスの腰を引き寄せながら、一気に深く、抉り込んだ。

「ああ…んっ!!!
あんっ!」

サスベスの声は鋭く、けれど艶を含みきっていたから。
ギュンターは腕で引き寄せながら腰を幾度も突き入れ、一気に…射精した。

「(…ヤバい…早すぎたか?)」

金髪を揺らし、下のサスベスの顔を見ようとした。
が、その角度からは見えなくて、抱えたサスベスの腰を下ろした後、顔を覗き込む。
目を閉じて、気絶同然。

「…………………」
サスベスの股間も確認した。
…既に二度、イった様子で…。

ギュンターはいつ、サスベスが一度目にイって、二度目にイったのかも、気づかなかった。

抱き寄せて、横のサイドテーブルのワイングラスを取ると、口移しでサスベスに飲ませる。

サスベスは、口づけと口移しのワインで、失いかけていた気を取り戻す。
ギュンターの胸に手を添え、甘えるようにすり寄ってしなだれかかる。

ギュンターはその様子に、ほっとして思った。
「(ディンダーデンの言った通り…“ハンナ”体位ですっかり虜に出来ちまった………)」

膝がサスベスの股間に触れた時、既にもう…勃っていて。
ギュンターは思わず彼に倒れ込んで、二戦目に突入した。

ゆっくりのしかかると、サスベスの睫が期待に瞬く。
もうその、受け入れてるサスベスの表情を見ただけで。
ギュンターは自分が完全に欲情したと知る。

倒れ込んで唇を塞ぎ、直ぐ猛ったサスベスの股間を探り、握ると。
サスベスは口を塞がれながらも、仰け反った。

ますます興奮を煽られ、ギュンターはもう…サスベスの腿を引き上げて蕾を開かせ。
一気に腰を進めて、挿入を果たす。

「………っ!」

サスベスの身が、腕の中でくねる。
それが…快感を期待しての震えだと分かると、ギュンターは一気に奥まで鋭く突き刺す。

「っあ!」

唇を外し背を反らせ…快感のうめきを上げるサスベスの声を聞きながら…。
ギュンターは病人まがいに(正真正銘病人なんだけど)寝台に伏せなければならなかった鬱憤を、一気に晴らす。

「あっ!あああっ!あっ…んんっ!」

立て続けに鋭く抉る。
正直、初めての相手にする行為じゃなかったけれど、ディンダーデンの後なら別。
どれだけ激しくしても、ねだるように身をくねらせ、腕を首に巻き付け…。
しがみついてくるから。
ギュンターはサスベスの背を抱き止めながら、更にきつく、サスベスの後腔を、自身の興奮の赴くまま、抉り上げた。

「あぅ…んっ!」

サスベスは解き放っていたが、ギュンターは“まだだ!”と内心叫び、更にきつく擦って、サスベスを一気に復活させ、勃たせた。

涙目でサスベスは、首を振る。
が、その嗜虐そそる色香溢れる表情に、ギュンターは更に脳天が沸騰するような興奮に包まれ…。
「(…ディンダーデンも…多分そうだったんだな)」
と僅かに残った理性で感じ取りながら、また一気に鋭く、抉り上げた。

「ああ…あああっ!!!」

「(………………………………)」

一気に身を震わせて射精し、先にイくサスベスに、ギュンターは内心呆け…。
このあまりの早さは、やっぱりローランデを彷彿とさせ…。
“…根元縛って、もう少し(無理矢理)保たせてやるべきか?”
と一瞬思案した。

が、精を搾り取る予定なら、出しまくらせるのが正解。

かくしてギュンターはまた、サスベスの奥を思いっきり抉り、一気に勃たせると、また激しく突き始める。

けれど直ぐ。
サスベスは射精してしまう………。

…聞きたかった。
アイリスの時も、ディンダーデンの時もこうなのか?
と。

が、サスベスに聞けるはずも無い。

事前に、ディンダーデンとアイリスにしっかり聞くべきだった。
と思っても、もう遅い………。

結局、サスベスが放つのを無視して自分のペースで抉り続け、やっとギュンターがイった時。
サスベスは計七回も。
射精していて。

ギュンターは汚れた下腹を無言で、手を伸ばし横のテーブルに乗ってる布を掴んでさり気なく拭きながら、ぐったりするサスベスを、抱き寄せた。

拭き終わって布を放り投げ、両腕でサスベスを抱き込んでようやく。
顔に視線を向けたが、サスベスは気絶していた。

「……………………………ま…。
…まあ、いいか…………」

言いつつ…ここ数日寝台から出られずロクに食べられず、動けなかった屈辱を、
晴らすが如く、怒濤の攻めを繰り返し続けた事を、ぼんやりと思い出す。
が、それでもサスベスが辛そうだったら止めたろうが…。

ディンダーデンと激しく過ごした後のサスベスは、きつく突けば突き上げる程、首にしっかり腕を巻き付け、縋り付いてきたりしたからつい…。

彼も、望んでる刺激だと思って、更に思い切り強く鋭く、サスベスのイイ場所を立て続けに…抉り上げてしまった……………。

ギュンターは片腕でサスベスを抱き込んだまま、今度は果実酒の入ったグラスを取り、一気に飲み干した。

“この後って、どうするんだっけ?”

ぼんやり考えてはみたものの、久しぶりの情事だったし、ずっと腹が腹痛で苦悶の中にいたので。
一気に興奮し、放出しすぎて、脳が霞む。

気づいたらサスベス同様、気絶同然に、眠っていた。



コンコン。

ノックの音で、ギュンターは目を開ける。
扉の向こうから
「サスベス様、都の部下からの、報告使者が来ております!」
と野太い叫び声。

ギュンターは飛び起きるが、横のサスベスは気絶したまま。
ぴくりとも動かない。
ので、ギュンターはサスベスに倒れ込んで、口移しで酒を流し込み、頬を軽く叩いて覚醒させる。

うっすらと目を開けるサスベスに、小声で囁く。
「都からの使者だ」

サスベスのぼんやりしていた目に、一気に光が戻り、焦点が合う。

飛び起きるサスベスと同時にギュンターは身を横に避け、寝台から飛び降りると。
身を屈めて床に散らばるサスベスの衣服を拾い集め、寝台の上のサスベスに向かって、放り投げた。

サスベスは飛んで来る衣服を、片腕伸ばして空中でキャッチすると、床に屈むギュンターに感謝の会釈をし、素早く一気に身に付ける。

さっきまでぐったりと寝台に横になってたサスベスの、そんな様子を目にし、ギュンターは内心感嘆した。

「(……………頭領とも成ると…この年でもこんなに、しゃんとしてるもんなんだな)」

が。
着替え終わったサスベスは寝台から降りて、戸口に向かおうとした、途端。
腰がへしゃげたように、床に崩れかかる。
ギュンターは咄嗟駆け寄り、転ぶ寸前で、抱き止めた。

サスベスは、倒れ込む。
と思ったのにギュンターに抱きかかえられ、思わず金髪美貌の…ギュンターを見上げる。

「(凄く、俊敏なんだ…。この人)」

けれど腕も体も、とても逞しくて引き締まっていて。
サスベスは一気にさっきの激しい情事を思い返し、ぼっ…と赤く頬を染める。

「?
顔だけで無く、俺は体も、卑猥なのか?」
「………………」

サスベスはそれを聞いても返答せず、黙して俯き、真っ赤な顔を下げる。
ギュンターはその反応に、固まった。

「(…ヤバい…状況が、分からない………)
…ディンダーデンに、うんとされたから、恥ずかしくないだろう?
別に」

囁きかけると、サスベスはびっくりして顔を上げる。
「…ディンダーデンとは…たくさんしても…貴方とは…」
ギュンターは、真顔の素晴らしい美貌で聞いた。
「…し足りない?」

サスベスは更に真っ赤になって、顔を下げる。
そして、小声で言葉を返した。
「……………まだ、貴方を見慣れない………」

ギュンターはまだその反応が理解出来ず、優しい声音で問う。
「…………見慣れないと…恥ずかしいのか?」

サスベスは、やっと頷く。
「顔はとても綺麗で見惚れるけど…。
その…脱いでこんなに逞しいと…分かって無くて」

ギュンターは気づいたら、サスベスの衣服をいつの間にか剥がしつつ、自分の衣服も行為をこなしながら脱ぎ捨てていたから。
ロクに裸も意識せず、一気に行為に突入したのを思い返す。

いつもの流れだったから、いつ脱いだかの記憶すら、綺麗さっぱり無い。

が、引っかかった。

「それはつまり…俺の顔が軟弱だから、こんなに鍛えた体だと、予想してなかったと言う事か?」

…いつもオーガスタスと並ぶと、オーガスタスの素晴らしい体格に気づく。
それと比べ、自分は…。
と、コンプレックスにどっぷりハマり、奈落の底まで落ち込みそうになるので。
毎日、オーガスタスに負けない体格を手に入れるぞ!!!と、必死で鍛え続けた。
そのコンプレックスを、掘り返されたように感じてつい、言い様が陰険になる。

が、サスベスはそんなギュンターの意図に気づきもせず、恥ずかしげに真っ赤に頬を染めたまま、曖昧に頷きながら呻く。
「…こんなに…ここまで………。
締まりきったお体と…思っていませんでした」

ギュンターはそのセリフが、褒めてるように聞こえたので。
やっとほっとして。
優しい声音で、囁く。
「使者を、待たせてる」

サスベスは、真っ赤な頬のまま、頷く。

が。
ロクに口も聞かずここまで激しくしてしまった、その直ぐ後。
腰が立たなくても無理は無い状態に、追い込んでしまったのは自分。

「立てるか?」

聞いてみるものの、サスベスは立ち上がろうと膝に力を込め…。
が、やっぱり腰がひしゃげたように力が抜けて、立てないのを見て。
ギュンターは顔を下げると、囁いた。

「掴まってろ」

サスベスの腕を引き、横のテーブルに掴まらせる。
サスベスがテーブルに寄りかかり、何とか立ってる間に。
ギュンターも素早く、衣服を身につけた。

全て着終えると、サスベスに振り向く。

サスベスは、チラ…とギュンターを見る。
けれどほぼ、初対面の相手に。
一気にこれほど激しく抱かれたのは初めて。
その上、ギュンターの美貌は艶を増し、光輝く天上の美男に見えるし。
更にその上、脱いであれほど…引き締まりきった男らしい裸体だと思わなくて、もう服を着てるのに、ギュンターの裸体がチラついて…。

同時に、激しく抉られ、一突きでイった事まで思い出すと。
………もう、ダメだった。

「あの………貴方にご一緒して頂くと…。
執務が果たせません」
真っ赤な頬で、蚊の鳴くような声で、そう告げる。

が、ギュンターは素っ気無く言った。
「…君が一人で歩けるんなら。
俺だって同行を遠慮できる」

サスベスは真横にいる、艶やかな輝く金髪の、美貌の麗人を見つめ、呆けた。

結局、腰を抱えられるように抱かれて、並んで歩くけれど。
直ぐ、勃ってしまいそうで、ものすごい自制心が必要だった。



 執務室は、寝室を出て廊下の先の、広い部屋だった。
奥に、幅の広いどっしりした焦げ茶の机と椅子があり、テーブルの上にはいくつかの羊皮紙が束ねられて乗っている。

ギュンターは、何とかサスベスを机の横まで連れて行き、サスベスはギュンターと机に掴まりながら、頭領の椅子に腰を下ろした。

机の前で待っていた都からの使者は、目を見開く。
質素な…猟師のような風体の、ゴツい顔と体格の男。

ギュンターは、視線を感じて振り向く。
使者の男は目を見開いたまま、ギュンターを凝視した後。
ギュンターにじっ…と鋭く見つめられ、慌てて顔を、背ける。

「…報告を…聞こう」
サスベスは椅子に腰掛けたものの、まだ…ギュンターの温もりを、体のあちこち…。
特に、鋭く抉られた蕾の奥に、生々しく感じていたから、ありったけの自制心でその感覚を遮断しようと試み…。
横に居るギュンターの気配を感じ、失敗していた。

頬が赤かったり、艶のある様子を、都からの使者にバレないか。
内心ひやひやだったから、ギュンターと使者の男の様子に、気づかなかった。

使者の男は、ギュンターを気にしながらも頭領に振り向き、話し出す。

「ロスフォール大公の命が無くなり、平常稼働のお陰で…かなりの成果がありました。
盗み取った宝石は5ガロンで売れましたので…千カネスを活動費として我々の資金とさせて頂き、先ほど残りの4ガロンと9千カネスを会計のデュロスに渡したところです」

「…そうか…」

使者は頭を下げたものの、躊躇いながら尋ねる。
「その…エルベス大公家の出荷物の襲撃命令は…もう出ないと、考えてもよろしいんでしょうか?」

おずおずと…そう切り出す。
サスベスは気づいて顔を上げると、頷く。

「報告を聞いた。
襲撃が続けば我らは儲けがまるで無く、財政が枯渇すると。
襲撃命令は、二度と下さない。
それは…確かだ。
今まで道理の仕事に、専念してくれていい」

だが使者は、顔を下げて囁く。
「…けれどロスフォール大公の…その、我々への報復は…」
サスベスはびっくりして尋ねた。
「報復されているのか?!」

使者はそっ…と、顔を上げる。
「いえ…。
どうやらエルベス大公家に就く、どこかの組織が動いており…。
ロスフォール大公の勢力は削がれ続けています。
が、強大な権力を持つ大公家。
滅すれば報復は考えずとも良いでしょうが…」

「だが、直ぐ…と言う話では無いのだな?」

サスベスに問われ、使者は頷く。
が、横に立つ美貌のギュンターが視界に入ると、目を伏せる。

「その…もう一つのご命令…。
近衛騎士の暗殺命令は………」

サスベスは気づいて、顔を上げる。
「ああ…ゼフィスが随分酷い侮辱を受けたという…不徳の騎士か?
だが実行し…既に亡くなったのでは無いのか?」

サスベスの返答に、使者は横のギュンターをチラ…と見、声を落として囁く。
「いえ。
近衛でも名のある男らが面倒を見、本人の体力もあり、今だ葬式は出ていません」

「そうか…。
ゼフィスを弄び、酷い捨て方をしたとかで…。
ゼフィスは葬式を、待ち望んでいたようだが…」

そこまで言って、サスベスは…思い浮かぶ優しげなアイリスの顔の向こうに、小さく伺い見える、今では遠い思い出となったゼフィスを、思い返す。

そしてゼフィスが居た時と、ゼフィスが消え、アイリスが側に居た時の…この城の、居心地の違いを。
今ではくっきりと、思い出せた。

「…あの…女は、だが………。
他人の事をまるで…思いやらない…………」

使者は、顔を上げる。
はっ!とした顔で。

ギュンターは正直
「(この男、間違いなく俺を知ってる。
暗殺団の、一人か…)」
と内心、睨みまくっていた。
が、その表情を見た途端…怒りが引いて行く。

「…その、通りでございます!
暗殺を命じた騎士ですら…評判を聞けば、確かに女垂らしだが…。
無体なマネはせず、むしろ…むしろ、寄って来る女達の世話をし、困っている時は必ず助けると…!
ちゃんと情のある…真っ当な騎士だと!
そう聞きました!
頭領はそんな評判は…報告の必要が無いとおっしゃいましたが、しかし!
…そんな騎士を、暗殺などし、もし我々の仕業と知られれば…。
間違いなく、悪評が立ち!
…我らを恨みに思う、者らが大勢出るでしょう………!」

ギュンターはその言葉を聞いて、顔を揺らした。

それでも、頭領の命。
彼らは実行せざるを得なかった。

その心情が、言葉に溢れていた。

サスベスは顔を、下げきって項垂れた。
「…そんな無茶な命を…ロクに考えずに下してしまって、すまない………」

使者は素直にわびを告げるサスベスを。
目を見開いて見る。

そして深く、頭を垂れる。

まるで、感謝するように。

サスベスは囁く。
「われは…どうかしていた。
父を亡くしてばかりで更に、頭領にも成ったばかり…。
重責が重いと…言い訳るつもりもない。
ずっと父の傍らで…そのなさり方を見ていた。
が、ゼフィスと居た時のわれを見たらきっと亡き父は…。
われを恥じるだろうな………」

沈痛なサスベスの言葉に、使者は顔を下げ、がはっきりとした口調で告げた。

「それでもあなた様は、我らが頭領。
我々はどこまでも…頭領に、ついていきます!」

サスベスは顔を上げると、瞳に涙をにじませて…囁いた。
「…ありがとう…。
決して、忘れぬ……。
そして…これからは報告に、ちゃんと耳を傾ける。
われが聞かないようなら…怒鳴ってくれていい…。
大切な事なら…われを叱ってでも…告げてくれ」

使者のゴツい男ですら、目に涙をにじませて、しっかりと頷く。

「…では…これで、失礼させて頂きます。
都の皆に…早急にこの次第を、知らせなくては」

サスベスは頷く。
「よろしく伝えてくれ」

使者は頭を下げ、が、顔を上げた時。
横のギュンターを、しっかりと見た。

ギュンターは見つめ返し
「(事情は、了承した)」
と、はっきりと頷いて見せた。

使者は零れるように笑い。
そして深く頭を垂れた後、部屋を出て行った。

ギュンターはため息吐くと、思った。

「(…つまりその、暗殺対象が俺だと。
サスベスに明かすも伏せるも、俺次第と言う事か………)」
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