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9 復活を果たすエルベス大公家とギュンター
ロスフォールの秘密部隊をこっそり次々逮捕するアドラフレン
しおりを挟むアイリスがようやく地獄の補習を抜け、やっと試験を終えて、正常な講義を受ける日々に戻った頃…。
エルベス大公家の、各領地では。
襲撃が無くなり荷が戻った祝宴の、大宴会が繰り広げられていた。
領地の広場では、女将さん達が腕を振るった色々な自慢料理の、美味しそうな匂いが立ちこめ、皆皿を持っては、テーブルを回って料理を盛る。
真ん中では火が炊かれ、音楽が奏でられて皆、酒を飲んでは楽しげに踊る。
皆が再び出荷出来る事を祝い、大いに食べて飲み、そして踊って。
エルベス大公の名を叫び、祝杯を掲げていた。
エルベスは後のことを大公母に任せ、エラインと共に馬車で各領地を回り、宴会に顔を出しては領民をねぎらい、亡くなった遺族にお悔やみを言って挨拶し続けた。
領地では、エルベスとエラインの乗る馬車が入って来るなり、領民達が馬車に沿って走りながら、歓声を上げる歓迎ぶり。
広場に着くと、女将さん達が自慢の手料理を皿に盛って、差し出す。
エラインは子供達に、踊りに誘われて焚き火の周りを、一緒に笑顔で、飛んで回った。
そしてどの領地でも必ず最後に。
命を落とした者へ。
感謝の乾杯を捧げ、その雄志を讃えた。
ナグルスはレスルの部下の馬車が、ある邸宅の門を潜り…。
降り立った裏道から、植木越しに見える暗く広い建物の窓の中に、行方知れずの部下らの殆どの顔を見つけ、目を見開く。
が、レスルの部下は扉を開けて、室内へと促すので、ナグルスは自分も、あの連中と一緒に。
鉄格子の広い監獄へ、入る覚悟を決めた。
中へ通される。
が、廊下の先の部屋はかなり綺麗で。
中に宮廷警護長、アドラフレンの姿を見つけ、更に目を見開いた。
「やあ。
ナグルス…だね?
実は左将軍ディアヴォロスの指示で、ラデュークは王族に迎えられることになって。
ディアヴォロスの元で、仕事を請け負うことになり、その際君を、部下として使いたいと。
連絡を受けているので………」
アドラフレンは書類を見ながらそこまで言って。
肩迄ある栗毛の、面長の顔のレグルスが、目を見開いたまま沈黙してるのに、ようやく気づいた。
「…聞いてる?」
「…あ…お………。
ラデュークは………つまり…捕まって、無いんですか?」
「…多分ロスフォール大公が報復出来ない程力を無くした頃。
彼の父親の領地と爵位を受け継ぐから………。
大公爵の身分になる身で、逮捕は…出来そうに無いね」
「ディアヴォロス…左将軍の…仕事?…………ですか?」
アドラフレンは、ため息を吐きながら囁く。
「彼独自の、隠密部隊が必要らしくて。
今、そっちの人材が著しく不足してるらしい」
「………つまり…つまりラデュークは…ロスフォール大公より身分が高くなって…。
…ロスフォール大公から、ディアヴォロス左将軍に…仕える相手を変える?
って事で…いいですか?」
アドラフレンは、にっこり笑った。
「流石に理解力があるね?
ラデュークは今、重病の母親に付き添ってて不在だから。
君はその辺りをちゃんと理解してくれて、ロスフォール大公に垂れ込んだりしなければ。
左将軍官邸に出向いて…。
…いや多分今は。
忙しくて不在だろうから。
補佐のオーガスタスに、仕事と寝泊まりする場所と。
あと、給料を貰うと良い。
君、独身?」
ナグルスはこの質問で、やっとため息を吐いた。
「老け顔のせいで毎度年上に見られますが…。
まだ、23で独身です」
「…顔のせいだけじゃなくて。
君、落ち着き払って冷静に見えるから。
年が行ってるように見えるんだと思うけど…。
で?左将軍官邸に出向けそうかな?
レスルの部下達が送ってくれる筈だ。
まだ、その辺をおおっぴらに歩くと。
どこでロスフォール大公の、耳に入るとも限らないし」
「…もう戻れませんから。
ディアヴォロス様にお仕えします」
アドラフレンはその潔い返答に、にっこり笑った。
「ついでに、ラデュークから。
部下として使いたい男達の名を貰ってるので、捕らえた男の中にリストの名の男を見つけたら。
他の逮捕者とは隔離して、別室で預かってる。
彼らを連れて、一緒に出かけて貰える?
彼ら、ラデュークが居ない時は、君が頼りだそうだから。
あ、で、多分しばらくは、左将軍邸の部下詰め所で。
寝泊まりすることになると思う」
ナグルスは、王族アドラフレンに、丁寧に一礼した。
そして最後に、アドラフレンに告げる。
「…ディンダルティン公爵を逮捕されていたのなら…。
彼から、素晴らしいロスフォール大公の秘密を聞き出すことが、出来ますよ」
アドラフレンは気づいてナグルスを見る。
が、ナグルスは、微笑んで背を向け、扉を開ける侍従に軽く会釈して、部屋を出て行った。
ナグルスが廊下に出ると、扉を閉めた侍従が会釈して先を歩き、別室の扉を開ける。
その室内で見慣れた…“デュカス”の中でもかなり信頼出来る、頼もしい男達の連なる顔を見つけ。
彼らににっこりと、微笑んだ。
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