73 / 101
9 復活を果たすエルベス大公家とギュンター
襲われたローランデのその後と、ローランデを抱いた事が夢じゃ無いかと疑うギュンター
しおりを挟むローランデはオーガスタスに
『ギュンターが、少し元気を取り戻したが、暗殺指令を撤回させるために、旅立たないといけない。
がしかし、君を抱きたい一心で、その責務を果たせない可能性が、強い』
と説得されて、訪問したのに…。
会うなり寝室に連れ込まれ、強引に寝台に押し倒され…。
後は押せ押せで煽りまくられ、挿入されて一時、意識が飛んで…。
オーガスタスのマントを羽織り、ディングレーに肩を抱かれて馬車に乗せられ、横のディングレーを見られなくて、俯いていた。
ディングレーは…もの凄く、心配げに覗き込んでは
「オーガスタスはその…。
つまり、どうしてもその…。
暗殺指令を、止めるためには………」
と、しどろもどろ。
ローランデはとうとう、王族の筈のディングレーが、狼狽えきって切れ切れに言葉を途切れさせる様子を見かね、顔を上げる。
「悪いのは、ギュンターですから…!」
ディングレーは困り切った表情で、微かに頷く。
「それは確かにそうだが…」
「だって!
オーガスタスが迎えに来なかったら!
ギュンターが押しかけて来ていたんでしょう?!
しかも…ずっと居座ってた!!!
彼の、気の済むまで!!!」
「た…確かに…そう…なんだ…が…………」
ローランデはまだ…。
強引に抱かれた熱が、体のあちこちに残り…ギュンターの存在を確かに感じて、身を震わせた。
馬車が王立騎士養成学校の、門を潜ろうとした時。
突然、止まる。
横に、オーガスタスの馬が付き、止まる馬車の、窓を覗き込んで、ローランデに謝罪する。
「すまなかった…!
こうなる事を知っていて、君をあそこに連れて行った!」
が、ローランデはオーガスタスに、怒鳴った。
「いいえ!
どうせギュンターは、勝手に来ていた!
たったの一度で途中、助けてくれたから!
朝、宿舎からギュンターが出て行き…。
いえ、居座って出て、行かないかもしれないけど!
私がギュンターと夜を過ごしたと!
教練中の者達に知れ渡り、抱かれた痕跡をジロジロと見られ探られ!
陰口叩かれずに、済んだんです!!!」
オーガスタスは、ローランデのその凄い勢いに、思わず絶句した。
「…………明日、ギュンターを暗殺指令を出した頭領の元へ、送り届けるが…。
伝言はあるか?」
そう聞いた時。
ローランデは呪いの言葉のように、その言葉を吐いた。
「“次に毒を盛られても、今度は絶対、心配しない!!!”
と」
オーガスタスは、無言で頷き…横で付き添う、ディングレーを気の毒そうに見つめ、馬車を行かせた。
馬車は王立騎士養成学校の門を潜り…。
オーガスタスは人を慰める事が苦手な、不器用極まりないディングレーの苦労を思い、心に誓った。
「(戻って来たら、酒と愚痴に、付き合ってやるからな!)」
ディングレーは、ギュンターへの怒りに包まれたローランデの横で…。
どうしていいか、分からないまま。
ローランデの私室まで、何とか送り届けた。
馬車に乗り込み、門を潜ると。
まだ、オーガスタスは馬上でそこにいて。
止まる馬車の窓からディングレーに
「酒に付き合う」
と一声かけ。
ディングレーは、居心地悪さ、極まりない状況から救い出されたように、ほっとして、オーガスタスに笑顔で、頷き返した。
朝。
ギュンターは揺れる馬車の中で、目を覚ます。
馬車内には、大量の食事入り、バスケットが山と積まれてた。
「食っとけ」
横のオーガスタスに言われ、ギュンターはオーガスタスを、睨む。
「…お前!
ちゃんと昨夜、ローランデを俺のとこに、連れて来てたんだな?!!!!」
オーガスタスはギュンターのその言動に、頭抱える。
が、言った。
「…夢じゃない。
その証拠に、昨夜のローランデからの伝言は。
“次に毒を盛られても、今度は絶対、心配しない!!!”
だから」
それを聞いてギュンターは、思い切り項垂れた。
がつがつがつがつ…。
「(腹立ち紛れもあるんだろうが…。
こいつの食欲って、底なし………)」
オーガスタスは、見てると胃腸が丈夫な自分でさえも、気分が悪くなりそうで。
目を背け、外の流れゆく景色を眺めた。
馬車は、崖の上で止まる。
馬車から、ギュンターは放り出され。
目前の、吊り橋をオーガスタスに指さされ。
「決着を、つけて来い!!!」
と怒鳴られ…。
馬車は来た方に向きを変えて、走り去り…。
ひゅぅぅぅぅぅぅぅ!
崖の上に一人、置き去りにされる。
揺れまくる吊り橋を眺め、沈黙して思う。
「(あんな、にやけ笑顔をチャーミングなんて自らほざく、馬鹿(アイリス)に従うのは不本意だが…。
これをしないと、決着はつかないんだな…)」
が、決着付けられれば…。
再びローランデを、腕に抱く幸福も、戻るはず。
ギュンターは気を取り直し、下から風が吹きまくり、激しく上下に波打つ吊り橋を、渡り始めた。
揺れまくる吊り橋を一つ渡り…。
そして先に延々と続く、吊り橋を睨み付け。
ギュンターは食べたばかりの食べ物が、ぐっ…と胃から、上がって来るのを無理矢理押し下げ。
吊り橋を睨み続けた。
途中、風に煽られ、高く上へと放り出されそうになって、横のロープをがっし!!!と掴む。
次の吊り橋では、放り投げられる前に渡りきろうと、一気に駆け込んだ。
が足場が悪く、ヘタすれば間隔の少し広い板の間に、重みで思い切り、足をはめ込みそうで。
速度を緩めた。
養生で暫く眠っていた、ギュンターの闘争本能は研ぎ澄まされ、いつの間にか腹一杯食った胃の、吊り橋で揺れまくる気持ち悪さもすっかり消えて。
何とか渓谷に落ちずに、吊り橋を渡りきるコトに集中し。
やっと王城らしき、石の橋に辿り着き。
平らな石橋の上に、一歩足を踏み出した時。
ギュンターは自分が、正常稼働に戻ったと。
確信した。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説


そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

嫌われ者の僕
みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。
※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

もういいや
ちゃんちゃん
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる