アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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7 逆転し始める優位

レスルの部下の訪問を受けるオーガスタス

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 左将軍官邸、執務室。
その前の部屋の、使者の待合室になってる準備室に、中からの声が響く。

「まだ…不在なんですか?」

レスルの部下は、居並ぶ使者達の列の最後尾に並び、その声を聞いた。

間もなく、叫んだ男が出てくると。
列を成してた使者達は。
皆、ため息交じりに、回れ右。

ぞろぞろと、部屋を出て行く。
一人がレスルの部下に
「貴方は帰らないんですか?」
と聞くから、部下は
「補佐殿は、いらっしゃるんですよね?」
と答えた。

使者は
「ああ!
補佐殿が目当てですか!
大変ですよね。
補佐官邸に出向いても、殆ど不在で。
この左将軍官邸に詰めていらっしゃるんですから。
私なんてこの間、補佐殿への使者をした時。
どちらを先に訪れようか、迷いましたよ」
と朗らかに告げる。

レスルの部下は、にっこり笑った。
「ホントですよね」

会釈して使者は姿を消し。
レスルの部下は、執務室の空いた扉へと入る。

「左将軍は不在だ!
所在も知れないから、連絡は当分…」
「貴方に。
連絡したくて」

オーガスタスは怒鳴ってる途中にそう言われて。
改めて、笑ってる地味な男を見つめる。

「アドラフレン殿に聞きました。
「左の王家」の血筋を引いてる、この男と我々は現在、敵対している。
直、拉致しようと計画しています。
が、その後の動向について、指示を仰ぎたい」

オーガスタスが、手渡された羊皮紙を手に取った所で。
頭の中に、すうっ…。
と光が射す。

「あんたの知ってる男か?」

オーガスタスの質問に、レスルの部下は言い淀む。
オーガスタスは直ぐ気づくと
「ああ、質問は君にじゃ無い」
と言うので、部下は頷いた。

「…その男を捕らえたら。
俺の所に連れて来てくれていい」

今度は、オーガスタスに顔を見て言われ、レスルの部下は、目を丸くする。
「…ですが、いつと、お約束は出来ません」

「ディアヴォロスがずっと探してた男だそうで…。
「左の王家」の血筋を、その男が強く意識した時。
ワーキュラスはその男を見つけ出せるらしいから。
その男が、俺の所に向かって来た時。
ワーキュラスが即座に、俺に知らせる。
俺は直ぐ様、ここに来て君らを待とう」

オーガスタスの真剣な真顔は、随分男前に見えるな。
と部下はオーガスタスに見つめられて、思った。

が、オーガスタスは顔を下げる。
「ああ、ワーキュラスって…」

レスルの部下は、にっこり笑った。
「大丈夫。
貴方が言われることは全て。
理解してます」

オーガスタスが、ほっとした様子で頷く。

「(…真顔の時だけか。凄く男前に見えるのって…。
崩れると、頼りになる体格の良い男に成り代わるな…)」

レスルの部下がそう思ってる時。
オーガスタスは独り言のように、呟いてた。

「…ワーキュラスを良く知る、アドラフレンと知り合いの、使者だっけ…?
この言葉を伝えてくれと言われた」

使者が頷くと、オーガスタスは少し…たどたどしく、伝え聞いた言葉を発するように、使者に告げる。
「“同じ…「左の王家」の…血を、持つ男。
ラデュークが………もし、ロスフォール大公の元を離れる決心をし……別の主を探すというのなら。
私が面倒をみたい”
…面倒見るのはワーキュラス…いや結局、ディアヴォロスだな」

言った後、オーガスタスはどこからか声を聞きとったように頷き、言い足す。
「…ディアヴォロスが。
面倒見るそうだ。
多分内部隊の配属を予定してる」



そして顔を上げ、真っ直ぐレスルの部下を見つめて言う。

「ハッキリ言って、給料はかなりいい」

部下は笑って頷き、尋ねる。
「他には?」

暫く。
オーガスタスは聞こえぬ声に聞き耳立て、その後言った。
「…もしそれでもラデュークが。
首を縦に振らなければ…。
現在支払われてる大公家の、10倍以上の給料を支払うと。
そう伝えてくれ。
だそうだ。
それで…以上だ」

「では、退出しても?」

レスルの使者に、親指で背後の扉を指され、オーガスタスは頷く。

「では」
レスルの使者は、帽子に手をやり軽く会釈して、左将軍執務室を後にした。

扉が閉まると、オーガスタスはぼやく。

「10倍の給料って…。
大公家の今現在支払ってる給料、そんなに安いのか?」

が。
頭の中でディアヴォロスとの通訳してたワーキュラスは
“ラデュークに会った時。
暇があるようなら、直接彼に聞け”

と言って気配を消し去るので。
オーガスタスはぷんぷん怒って、内心呟いた。

「(一方的に、言うだけ言って説明ナシか!
俺の意思なんて関係無く、俺に跨がって勝手に欲望果たした、スベタなオンナくらい、タチが悪いぞ!!!)」

けれど消えたはずのワーキュラスはその言葉を、ディアヴォロスに伝えたらしく。

暫くしてディアヴォロスの、くすくす笑いだけが頭の中に響き。
オーガスタスはげんなりした。

「…迂闊に、内心の悪態もつけないんだな?
ワーキュラス相手だと」

頭の中で笑ってるディアヴォロスが、言った気がした。

“教訓として、覚えておくんだな”

オーガスタスは、がっくり首を下げて、項垂れた。
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