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6 好転し始める被害状況
回復を果たし、ローランデに会いに出向くギュンター
しおりを挟む翌日、目覚めたギュンターは、内臓にのしかかるような重さ、苦しさが、綺麗に消えているのを感じた。
昨夜、ローフィスに渡された薬草のコップが、空になって横のテーブルに乗ってる。
「(…ディアヴォロス…凄すぎる)」
起き上がるものの、やはりロクに食べてないので、足元はふらふら。
けれど、胃腸の痛みや苦しみが無く、すっ。
と立てるし、動ける。
上着を取ろうと、椅子の背にかけてあるのを引っ張った時。
がたん。
と、椅子が倒れる。
上着を羽織っていると、扉が開いて、ディングレーが顔を出し、背後のローフィスに振り向いて、怒鳴った。
「やっぱりだ!
もう上着を羽織ってる!」
ギュンターは直ぐ、ローフィスが来ると思った。
が、ズボンをはいてもまだ、姿を見せない。
それで戸口で見張ってる、ディングレーに囁く。
「…ナニか食える物、持ってないか?」
腕組みしていたディングレーは、ふい。と顔を扉の外に向け、何かを受け取り振り向く。
両手に盆を持ち、差し出すから…ギュンターは、ふらつきながらもディングレーの元へ行き、受け取る。
「食って良いのは、これだけだ」
見ると盆の上に、どろりとした野菜粥の入った皿が。
「…たった…これだけ?」
聞くとディングレーは頷く。
「ディアヴォロスに、動けるようになったら一日は、これしか食わせないようにと。
申し渡されてる」
ギュンターは、ディアヴォロスの薬で腹の痛みがすっかり消えたので…。
無言で盆を受け取り、寝台に腰掛け、たったの数秒で、完食した。
暫く伺ったが、以前と違って、こみ上げて来る悪寒は無く、吐き気もしない。
「…大丈夫みたいだな。
もう気分も悪くないから、馬に乗っても平気そうだ」
まだ、ふらつきながらも昨日と比べれば雲泥の差の、しっかりした足元で歩いて来るギュンターを、ディングレーは見つめて、戸口の方へ怒鳴る。
「やっぱ、出る気満々だ!」
ギュンターはローフィスに向けたその言葉に頷き、ディングレーの横に来て、扉に手をかけ。
半分開いてる扉を全部開けて、ディングレーに振り向く。
「ちょっと、出てくる」
ディングレーは歩き出すギュンターを、頷いて見送る。
がっ!
どっすん!
ギュンターは、戸を潜ろうとして…一気に転ぶ。
「…やっぱ付添いが要る」
ディングレーの言葉が頭上から聞こえたものの、ギュンターは突発的に転び、胸を打って息が詰まり、転がっていると。
目前にブーツの先。
ギュンターが見上げると、ローフィスが立って見下ろしていて、ディングレーの言葉に頷いていた。
ギュンターは這いつくばって、背後。
戸口でまだ立ってる、ディングレーに振り向き、歯を剥く。
「なんで!
足を引っかける!!!」
が、返答したのはローフィス。
「元気な時ならお前、転ばず避けてるだろう?」
ギュンターは、肘を突っ張りながら、言い返せずに黙した。
「…………」
「だがもう、怒鳴れるみたいだな」
ディングレーが感想を述べ、ローフィスも。
「腹に力入れても、痛まないんだな」
ギュンターは腹立ち紛れに、再度怒鳴った。
「病人引っかけるなんて!
反則だぞ!
気遣いはどうした!」
が、ディングレーに冷たく言われる。
「一人で起き上がれないなら、外出は諦めろ」
ギュンターは歯ぎしりして、両腕を床に付け、突っ張って身を起こし、立ち上がる。
「どけ!
外出を阻むな!!!」
が、ディングレーとローフィスはため息交じりに、ギュンターを阻むこと無く先を歩き始める。
「…阻まないのか?」
ギュンターが聞くと。
ディングレーが振り向き、とても残念そうに。
ぼそり、と囁いた。
「流石に病人は、殴れないからな」
結局ギュンターは、まだふらふらながら、ローフィスとディングレーに伴われ、かつて在籍した王立騎士養成学校『教練』へと騎乗して向かった。
王族で卒業生のディングレーを見た途端、門番は直ぐ道を開ける。
三騎は中へと馬を乗り入れる。
ディングレーは、厩を目指しながらギュンターの視線を感じ、振り向いて問う。
「…なんだ?」
「……………俺はいつも、袖の下を渡さないと、すんなり入れて貰えないのに」
ローフィスは手綱を繰りながら、まだ青い顔して生気の戻らない馬上のギュンターをチラと見、くすくす笑った。
「…だっていい加減、講師にお前がここに来るのは、ローランデとの逢瀬の為だとバレてるからだろう?
講師共も、色々手伝ってくれて重宝なローランデが、大事だから。
彼を惑わすお前を、極力入れたくないんじゃ無いのか?」
ディングレーがギュンターを見ると、ギュンターは歯ぎしりしていた。
「…やっぱ、奴らの差し金か…!
オーガスタスだって。
あの、ディンダーデンですら…。
『別に門番に、止められた事なんて無いぞ?
お前だけ、特別ルールなんじゃないのか?』
と言われた」
ディングレーはそれを聞くと頷く。
「間違いなく、お前は出入り禁止リストに載ってる」
ギュンターはそれを聞いて、もっと怒った。
「俺の方から出向かないと、会えないのに…!」
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