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5 敵を退けるため、動き出すエルベス大公家

策謀は続く

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 ニーシャがアドラフレンに依頼した、カンファッテとは…。
厳選された身分の者が集い、親密な催し物を隠密に行う。

昔より使用されている、幾つかある隠れ家的別荘で、数日間を楽しく過ごす。

招待を受けないと…最新の大切な情報を聞き逃す事が多い。
とあって、忙しくて出かけられない者ですら、代理の者を遣わす程…。
身分高い者らには、大切な集いだった。

ニーシャは、ここの常連。
皆、彼女を両手を広げて迎え入れる。

しかし集いを管理している者は、昔から代々カンファッテを取り仕切る、表向きは目立たないが由緒ある家柄の者で、秘密厳守。
更に対立する者同士だろうが、中での諍いは御法度。

どこの勢力にも付かない、中立を保ち続ける者。

集いに参加できる者は厳選され、無作法な者など決して入れない。

なので例え、王宮警備の長であるアドラフレンですら、招待状の発行者には、気を遣わなくては成らなかった。

「…ゼフィス様…。
ですか。
あまり、評判のよろしくない女性ですね?
残念ながら、そのような方はどれ程の御方の推薦状があろうが、招待状を送る訳には、まいりません」

アドラフレンが、口を開きかけた時。

彼はにっこり笑った。
「ですが、「左の王家」の王族で王宮警備隊長であらせられる、アドラフレン様のご要望。
フランデラッテ(偽の、カンファッテ)なら、招待状が作れます」

アドラフレンはつい、そう言った男の顔を見た。
フランデラッテとは、カンファッテに出たい。と要望を受けるものの、招待できないような相手の時、頼み込んで幾らかの大金を積み、偽の、カンファッテをでっちあげる事。

場所や接待はカンファッテと同様だが、招待客を自由に選べる。
カンファッテ出席者なら、招待状の横にある印で、フランデラッテだと知る事が出来て、誰を騙すのか、楽しみに来るカンファッテ常連客も多い。

アドラフレンは、頷くと言った。
「招待客リストを、直ぐに届けさせる」

が、別荘に戻ってニーシャにフランデラッテの事を告げると、直ぐ様ニーシャはアドラフレンを睨んだ。

「…カンファッテは、ロスフォール大公も常連なんだから。
彼から知らせが行けば、直ぐフランデラッテだって、ゼフィスにバレるじゃないの」

「招待主をレナーテ公爵にすれば、カンファッテのブログナ(個人が主催者で、カンファッテの出席者の幾人かを招待する。カンファッテ出席前の、新人の品定めに、良く使われる)に出来る。
カンファッテで無くても、ブログナでも十分、名誉な事だろう?」

ニーシャはアドラフレンの、用意周到な返答に、不満げにその端正な顔を見つめた。

「…確かに主催者がレナーテ公爵のブログナなら、ロスフォール大公もゼフィスも、私達が張った罠だなんて思わなくて、警戒しないでしょうね」
「それは賛成と。
受け取っていいのかな?」

ニーシャはにっこり笑う、品は良いけど陰謀に長けた王族の顔を、睨んだ。
「…仕方無いわね。
招待者リストはこちらで作って、届けさせるわ。
あなたの配下は誰を寄越すの?」

アドラフレンは、目を見開いた。
「…私の方からも、監視を寄越さないとダメかい?」
「当然でしょう?
お役人が動いてくれないと、困る事もあるかもしれないから。
素早く手配できるあなたの配下が来てくれないと」

アドラフレンは、ため息交じりに頷いた。
「では、サランフォール公爵を」
ニーシャは、頷いた。



 翌朝、アイリスはとうとう気絶した少年をようやく、寝台に横たえた。
「(しかし、半端ない精力…。
一晩で何回射精したんだろう…?
数えるのが面倒で、最後は止めたから…。
覚えてるだけで、30は超してた気がする)」

目を瞑る少年の頬が、少しやつれて見える。
「(平常の時って、何回なのかな?
やっぱ今夜私って、彼を煽りすぎ?)」

微かな寝息しか聞こえない、正体を無くして眠る少年の寝顔を見て、アイリスはちょっと、ぞっとした。

「(まずい…。
垂らし込む事ばっか考えて、惚れ込まれすぎて彼に離して貰えなくなったらどうしよう。
って時の対処法を、考えてなかった…。
ずっとご指名され続けたら、流石の私でも枯渇する…)」

けれど常に前向きのアイリスは思った。

「(臨時の要請なら、ディンダーデンだってギュンターだって居る。

噂に寄るとディンダーデンって、サスベスに負けず劣らずの精力の持ち主で…常にがんがん突っ込みたい男だそうだし。
ギュンターは…暗殺されるよりよっほどマシで、更にローランデにこれ以上の迷惑は、かけたくないだろう?
と脅してやれば、多分私の言いなりになってサスベスを犯してくれるはず)」

アイリスは一先ず、解決方法を思いついて、ほっとして…サスベスの横に、身を横たえた。

情事を共にした相手とは常にする、腕に抱き寄せて包み込んで共に眠る。
の体勢に入り…結局そのまま、寝入った。

昼前には、アイリスは目覚めた。
が、サスベスはまだ起きない。

室内に、こっそりレスルがやって来ては、様子を伺う。
「…良かった。
彼、生きてましたね。
途中諍いがあって、殺してしまわれたかと」

アイリスはまだ裸で、シーツを腰にひっかけたまま、びっくりして問うた。
「どうして、そう思ったの?」
レスルは小声で返答する。
「サスベスがこんな時間まで、眠っていた試しが無いからです。
一体、何回抜いたら、ここまで眠らせられるんです?」

アイリスも、レスルに身を寄せて、こっそり囁く。
「最後に覚えているので、確か32回。
その後も…彼って私が一度の時、多いと最中、五度も射精してるから」

アイリスはその時、レスルがあんぐり口を開け、かなりなマヌケ面して呆れるのを見た。

「…それであなたは、何度挿入したんです?」
アイリスは、くすくすと笑った。
「私はサスベス程じゃないから、左程でも無いよ。
10回よりは少ない。
他に口も手も使ってイかせてるし」

けれどレスルは、真顔で言った。
「…私はあなたが、サスベスより余程精力満々だと思いますがね」

アイリスは困惑した表情を、その美しい顔の上に浮かべた。
「…確かに常人よりは強いとは思う。
けれどサスベスより強い。
って言うのは…どうかな?
いくら何でも、褒めすぎだ」

「褒めてません。化け物に近い。
って感想ですから」

アイリスは口を開けたまま固まり、レスルは無言で背を向け、部屋を出て行った。


 アイリスはこっそり衣服を手に持ち、シーツで腰を巻いたまま、レスルの後に続く。
「…退出されるのですか?」
「姿を消して、サスベスの反応が見たい」

レスルはため息を吐いた後、アイリスを自室に入れて、精力剤のスープを処方した。

間もなく、レスルの部屋の扉を、家臣が血相変えて叩く。
「お前の紹介した、侍従見習いはここに居るか?!」

レスルは扉を開け、暖炉の前の椅子に座るアイリスを見せる。
家臣はほっとした様子を見せ、けれど直ぐ怒鳴った。
「サスベス様がお呼びだ!!!
お前の姿が無いと。
狂乱して叫ばれている!!!」

アイリスはにっこり笑うと
「今直ぐ、お側に」
そう言って、椅子を立ち上がった。
扉を閉め様、室内のレスルに微笑みかける。

扉が閉まると、レスルは直ぐ部下を呼び寄せ、大公家への報告を言付けた。

“ゼフィスがこの城に立ち入り禁止となるのは間近”
と。
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