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3 妖女ゼフィス 復讐の始まり
襲撃を受けるギュンター 一度目 夜の酒場で
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もしゼフィスの訪問後、ギュンターがローランデの元を訪れていたら、ローランデの苦情を耳が痛くなる程、聞かされていただろう…。
が、ギュンターはその時、それどころでは無かった。
立て続けの、襲撃を受けてたから。
まず1度目。
夜半ディンダーデンと共に訪れた酒場で。
扉を開けた途端、中に居た女性達は一斉に歓声を上げ、席を立ってディンダーデンを取り囲む。
その半数は、ギュンターを。
それまで女性達と同席していた男達は、男の登場に、ムッとして顔を上げる、ものの。
近衛の暴れん坊、ディンダーデンと目が合う前に、慌ててさっ…と顔を下げる。
ディンダーデンとギュンターは、女性らに大歓迎されつつ、席に着く。
もうその後の女達は、誰が今夜彼らと寝るのかで、争奪戦。
それまで、彼女らを口説いてた男客達は、寝る。
どころか、デートの約束ですら、マトモに返答も貰えなかったのに。
と、騒ぐ女達の本性に、ジト目で沈黙して見、雰囲気は最悪。
店の髭ヅラ親父は、さっきまでそれぞれ目当ての女を口説きつつ、盛り上がってた男客らが、それぞれのテーブルで、盛り下がりまくるのをチラと横目で見つつ、二つのデカいジョッキをどん!と、ディンダーデンとギュンターの目前に、置いてぼやく。
「…あんたらが来て、喜ぶのは女客だけだ」
ディンダーデンは抱きついて来る女を体に巻き付かせたまま、ジョッキを持ち上げ、店主に言う。
「俺が来ると、無作法なゴロツキは来なくなるだろう?」
髭の店主は頷く。
「あんたが出入りするこの辺の酒場では、女に無体な真似をする馬鹿は、一切見かけないよ」
ディンダーデンは頷く。
が、店主が背を向けると。
ギュンターが、ジョッキを口に、ぼそり…と告げる。
「あれは男客が減った。
と、文句垂れてたんだろう?」
「俺は毎晩顔出してないから、俺が来ない時はちゃんと来てるさ」
『ホントか?』
ギュンターは思った。
が。
懐を探ると、財布が見当たらない。
ツケにして貰う方法も、ディンダーデンに借りる方法もあった。
が、馬の鞍に挟んだ記憶が蘇る。
このまま財布を無くしても困るので、ギュンターは馬の鞍にちゃんと財布は、挟まってるのかを、確認する事にした。
ギュンターが
「忘れ物を思い出した」
と立ち上がると、ディンダーデンが笑う。
「今か?」
ギュンターは席を離れつつ、ディンダーデンに振り返る。
「…もう少し酒が進むと、忘れる。
女と上の部屋に上がったら、なおさら。
記憶から綺麗に消え去るからな」
ディンダーデンが、座ったままひらひらと手を振り、ギュンターは戸口へ向かった。
が、何気に酒場の扉を開けた途端。
暗がりから、剣が振り下ろされ。
咄嗟ギュンターは防衛本能の塊となって、身を下に沈めていた。
気配が一人じゃないと分かり、殺気をひしひしと感じた時。
剣の柄に手をかけ、抜き去って振り斬るものの…。
手応えは僅か、掠る程度。
直ぐ、斜め横から振り下ろされる剣を避けつつも、敵相手に再度剣を振る。
が。
バランスを崩し、思い切り急所を外し“チッ!”と舌打つ。
身を起こす間もなく三人目に斬りかかられ、その剣が身に届く直前。
手に握る剣を、突然の、訳も分からぬ襲撃に怒りまくって一気に横に、なぎ払う。
ずばっ!
手応えはあったが、動けぬ程に斬りつけたのかを、見定める間すら無い。
降って来る剣を避けつつ横に詰め寄り、剣を振り上げてる男の胸に靴底を押し当て、一気に後ろに吹っ飛ばす。
その間も、別の男から振られた剣を。
体を反らせ咄嗟、避け様剣を振り入れる。
ざっっっっ!
後ろに引かれ、避けられて斬る事叶わず。
更に遠くから、駆け寄る微かな足音に耳をそばだてる。
「(…二人…?
…六人かがりで俺を殺す気か!!!)」
ギュンターは、きっちりキレた。
闇討ちで滅茶苦茶卑怯な上、更に数が増える。
「(どんだけ汚い手を使いやがる!
何が何でも俺を殺したいのか!!!)」
その後、追加の二人も加わって、そこら中から剣の嵐が降るさ中。
怒りで研ぎ澄まされたギュンターは、殺気を帯びて振られる剣を、剣で思い切り弾き、しなやかに身を反らしながら避け続けた。
握り込まれた柄に、指が食い込む。
剣を敵に思い切り振り込む、間すら無く、避けるので精一杯。
ほんの僅か、剣の嵐が途切れた時。
斜め横の男に隙を見つけ、一気に詰め寄り。
別方向から降って来た剣を、体を斜めに倒し避けながら、思いっきり回し蹴った。
どんっ!!!
凄い音で酒場の壁に叩きつけられ、やっと一瞬、胸が空く。
がその間も、立て続けにあちこちから剣が振って来て、ギュンターは歯を食いしばって降って来た剣を弾き、避け続けた。
相当な手練れらしく、避ける度掠り傷を負わされ、ギュンターは更に頭に血が上る。
剣の柄を握り込む手に力は漲りきるが、剣なんて敵に思い切り振ってたら、次に襲い来る剣を避けるのに間に合わない。
鬱憤は溜まりまくり、殺そうとする男らをぶった斬れない怒りに煮えたぎってると、酒場の扉が開く。
振って来る剣の数が、突然減り…。
ギュンターはすかさず一人に詰め寄るものの、直ぐ後ろに引かれ避けられ、ちっ!と舌打ちした時。
ずばっ!と激しい、剣で斬り裂く音とほぼ、同時。
「ギュンター!!!
何お前一人で遊んでるんだ?!」
ディンダーデンの、頼もしい咆吼が聞こえ、加勢してくれたと知る。
剣を浴びせてた数が更に減り、反撃の機会とギュンターはまた一人に詰め寄る。
が、引かれ様別方向から、剣が降って来る。
ずばっ!
腹立ち紛れと防戦一方だった鬱憤を、全て込めて相手の剣が届く前に、思い切り叩き斬った。
「ぎゃっ!!!」
やっと倒せて勢いづいて、もう一人を捌きにかかる。
斜め横ではディンダーデンが
「手応えのあるごろつきだな!
だが俺様に剣を向けると言う事は!
命を捨て去る覚悟があると言う事だ!
その辺り、ちゃんと分かってるな?!
きっちり、あの世に旅立つ覚悟を決めとけ!!!」
と吠えて威嚇し、相変わらず豪快に、豪速の剣を敵相手に振り回してる。
ざしっ!
音でディンダーデンが確実に動ける敵を減らしてる事を知り、ギュンターは小声で唸った。
「今度は、こっちの番だ」
一人を追いかけるふりをし、背後に詰め寄る気配に、振り向き様一気に瞬速で、斬りつける。
ざしっ!
「うがっっ!」
ギュンターは深手を負いながらも後ろに引く、敵をチラと見、思う。
「(…相当、戦い慣れてる…!
普通ならあれで、殺せてるはずだ。
例え相手が騎士だろうが)」
が、ディンダーデンがまた、ずばっ!と剣で敵を捕らえ、怪我を負った仲間を、刺客達が見た時。
「仲間の傷が深い!」
「一旦、引く!!!」
そう叫びながら、突然敵は気配を消し、逃げ始める。
闇に隠れるようなその静けさに、ディンダーデンが、かっか来て追いかけ始めた。
「こら!
死ぬ覚悟があるんだろう?!
逃げるな!!!」
「(…暴れ足り無いんだな…)」
そうは思ったが…。
突然の急襲で立て続けに剣を避け、息切れが激しくてギュンターは、膝を折って休止した。
「はっ…はっはっ…」
息を整えてると、ディンダーデンが剣を、びゅっ!びゅっ!と空ぶらせて、戻って来る。
「どんな、知り合いだ。
この俺から、怪我人担いで逃げ切るなんて。
並の野郎じゃないだろう?」
ギュンターは何とか呼吸を整えて、顔を上げると切れ切れに言葉を押し出す。
「…名乗…らない、礼儀知らず…で、どんな…素性か………」
そこまで言った時、ディンダーデンは剣を肩に担いで、ぼそりとつぶやく。
「何言ってるか、ちっとも分からんから、もう黙って休んでろ」
「………………………。
(息切れ押して、無理に返答してやったのに……!)」
顔を上げないまま、目線だけ上げて、ギュンターはディンダーデンを睨んだ。
が、ギュンターはその時、それどころでは無かった。
立て続けの、襲撃を受けてたから。
まず1度目。
夜半ディンダーデンと共に訪れた酒場で。
扉を開けた途端、中に居た女性達は一斉に歓声を上げ、席を立ってディンダーデンを取り囲む。
その半数は、ギュンターを。
それまで女性達と同席していた男達は、男の登場に、ムッとして顔を上げる、ものの。
近衛の暴れん坊、ディンダーデンと目が合う前に、慌ててさっ…と顔を下げる。
ディンダーデンとギュンターは、女性らに大歓迎されつつ、席に着く。
もうその後の女達は、誰が今夜彼らと寝るのかで、争奪戦。
それまで、彼女らを口説いてた男客達は、寝る。
どころか、デートの約束ですら、マトモに返答も貰えなかったのに。
と、騒ぐ女達の本性に、ジト目で沈黙して見、雰囲気は最悪。
店の髭ヅラ親父は、さっきまでそれぞれ目当ての女を口説きつつ、盛り上がってた男客らが、それぞれのテーブルで、盛り下がりまくるのをチラと横目で見つつ、二つのデカいジョッキをどん!と、ディンダーデンとギュンターの目前に、置いてぼやく。
「…あんたらが来て、喜ぶのは女客だけだ」
ディンダーデンは抱きついて来る女を体に巻き付かせたまま、ジョッキを持ち上げ、店主に言う。
「俺が来ると、無作法なゴロツキは来なくなるだろう?」
髭の店主は頷く。
「あんたが出入りするこの辺の酒場では、女に無体な真似をする馬鹿は、一切見かけないよ」
ディンダーデンは頷く。
が、店主が背を向けると。
ギュンターが、ジョッキを口に、ぼそり…と告げる。
「あれは男客が減った。
と、文句垂れてたんだろう?」
「俺は毎晩顔出してないから、俺が来ない時はちゃんと来てるさ」
『ホントか?』
ギュンターは思った。
が。
懐を探ると、財布が見当たらない。
ツケにして貰う方法も、ディンダーデンに借りる方法もあった。
が、馬の鞍に挟んだ記憶が蘇る。
このまま財布を無くしても困るので、ギュンターは馬の鞍にちゃんと財布は、挟まってるのかを、確認する事にした。
ギュンターが
「忘れ物を思い出した」
と立ち上がると、ディンダーデンが笑う。
「今か?」
ギュンターは席を離れつつ、ディンダーデンに振り返る。
「…もう少し酒が進むと、忘れる。
女と上の部屋に上がったら、なおさら。
記憶から綺麗に消え去るからな」
ディンダーデンが、座ったままひらひらと手を振り、ギュンターは戸口へ向かった。
が、何気に酒場の扉を開けた途端。
暗がりから、剣が振り下ろされ。
咄嗟ギュンターは防衛本能の塊となって、身を下に沈めていた。
気配が一人じゃないと分かり、殺気をひしひしと感じた時。
剣の柄に手をかけ、抜き去って振り斬るものの…。
手応えは僅か、掠る程度。
直ぐ、斜め横から振り下ろされる剣を避けつつも、敵相手に再度剣を振る。
が。
バランスを崩し、思い切り急所を外し“チッ!”と舌打つ。
身を起こす間もなく三人目に斬りかかられ、その剣が身に届く直前。
手に握る剣を、突然の、訳も分からぬ襲撃に怒りまくって一気に横に、なぎ払う。
ずばっ!
手応えはあったが、動けぬ程に斬りつけたのかを、見定める間すら無い。
降って来る剣を避けつつ横に詰め寄り、剣を振り上げてる男の胸に靴底を押し当て、一気に後ろに吹っ飛ばす。
その間も、別の男から振られた剣を。
体を反らせ咄嗟、避け様剣を振り入れる。
ざっっっっ!
後ろに引かれ、避けられて斬る事叶わず。
更に遠くから、駆け寄る微かな足音に耳をそばだてる。
「(…二人…?
…六人かがりで俺を殺す気か!!!)」
ギュンターは、きっちりキレた。
闇討ちで滅茶苦茶卑怯な上、更に数が増える。
「(どんだけ汚い手を使いやがる!
何が何でも俺を殺したいのか!!!)」
その後、追加の二人も加わって、そこら中から剣の嵐が降るさ中。
怒りで研ぎ澄まされたギュンターは、殺気を帯びて振られる剣を、剣で思い切り弾き、しなやかに身を反らしながら避け続けた。
握り込まれた柄に、指が食い込む。
剣を敵に思い切り振り込む、間すら無く、避けるので精一杯。
ほんの僅か、剣の嵐が途切れた時。
斜め横の男に隙を見つけ、一気に詰め寄り。
別方向から降って来た剣を、体を斜めに倒し避けながら、思いっきり回し蹴った。
どんっ!!!
凄い音で酒場の壁に叩きつけられ、やっと一瞬、胸が空く。
がその間も、立て続けにあちこちから剣が振って来て、ギュンターは歯を食いしばって降って来た剣を弾き、避け続けた。
相当な手練れらしく、避ける度掠り傷を負わされ、ギュンターは更に頭に血が上る。
剣の柄を握り込む手に力は漲りきるが、剣なんて敵に思い切り振ってたら、次に襲い来る剣を避けるのに間に合わない。
鬱憤は溜まりまくり、殺そうとする男らをぶった斬れない怒りに煮えたぎってると、酒場の扉が開く。
振って来る剣の数が、突然減り…。
ギュンターはすかさず一人に詰め寄るものの、直ぐ後ろに引かれ避けられ、ちっ!と舌打ちした時。
ずばっ!と激しい、剣で斬り裂く音とほぼ、同時。
「ギュンター!!!
何お前一人で遊んでるんだ?!」
ディンダーデンの、頼もしい咆吼が聞こえ、加勢してくれたと知る。
剣を浴びせてた数が更に減り、反撃の機会とギュンターはまた一人に詰め寄る。
が、引かれ様別方向から、剣が降って来る。
ずばっ!
腹立ち紛れと防戦一方だった鬱憤を、全て込めて相手の剣が届く前に、思い切り叩き斬った。
「ぎゃっ!!!」
やっと倒せて勢いづいて、もう一人を捌きにかかる。
斜め横ではディンダーデンが
「手応えのあるごろつきだな!
だが俺様に剣を向けると言う事は!
命を捨て去る覚悟があると言う事だ!
その辺り、ちゃんと分かってるな?!
きっちり、あの世に旅立つ覚悟を決めとけ!!!」
と吠えて威嚇し、相変わらず豪快に、豪速の剣を敵相手に振り回してる。
ざしっ!
音でディンダーデンが確実に動ける敵を減らしてる事を知り、ギュンターは小声で唸った。
「今度は、こっちの番だ」
一人を追いかけるふりをし、背後に詰め寄る気配に、振り向き様一気に瞬速で、斬りつける。
ざしっ!
「うがっっ!」
ギュンターは深手を負いながらも後ろに引く、敵をチラと見、思う。
「(…相当、戦い慣れてる…!
普通ならあれで、殺せてるはずだ。
例え相手が騎士だろうが)」
が、ディンダーデンがまた、ずばっ!と剣で敵を捕らえ、怪我を負った仲間を、刺客達が見た時。
「仲間の傷が深い!」
「一旦、引く!!!」
そう叫びながら、突然敵は気配を消し、逃げ始める。
闇に隠れるようなその静けさに、ディンダーデンが、かっか来て追いかけ始めた。
「こら!
死ぬ覚悟があるんだろう?!
逃げるな!!!」
「(…暴れ足り無いんだな…)」
そうは思ったが…。
突然の急襲で立て続けに剣を避け、息切れが激しくてギュンターは、膝を折って休止した。
「はっ…はっはっ…」
息を整えてると、ディンダーデンが剣を、びゅっ!びゅっ!と空ぶらせて、戻って来る。
「どんな、知り合いだ。
この俺から、怪我人担いで逃げ切るなんて。
並の野郎じゃないだろう?」
ギュンターは何とか呼吸を整えて、顔を上げると切れ切れに言葉を押し出す。
「…名乗…らない、礼儀知らず…で、どんな…素性か………」
そこまで言った時、ディンダーデンは剣を肩に担いで、ぼそりとつぶやく。
「何言ってるか、ちっとも分からんから、もう黙って休んでろ」
「………………………。
(息切れ押して、無理に返答してやったのに……!)」
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