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帰り道 5

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 ローランデが叫ぶ。
「どうして、飛ばす?!」

ギュンターは叫び返した。
「女の執念を、甘く見るな!!!」

「……?」
意味の解らぬローランデは暫く考え込む。
が思い立って馬に拍車を掛けた。
飛ばすギュンターの横に並走して尋ねる。

「…で、泊まる予定の知り合いなんて、北領地[シェンダー・ラーデン]に君、居たのか?」
「居る筈無いだろう!
断る口実だ!!!」

ローランデは髪を振ってギュンターを見た。
「どうして嘘を付く!」

「あの連れのブロンド女と公爵はどう見たってデキてるし、公爵はブロンド女に弱味を握られ、逆らえない!

どう見たって公爵は自分の女が俺に、あからさまに媚び売って楽しい筈無いから、嘘を付いても断るのが公爵に取っての親切だろう?!」

ローランデはギュンターの馬の首一つ分前に飛び出すと叫んだ。
「…じゃ、どうして結局公爵の所に泊まる事に成ったんだ?!」

ギュンターが叫び返した。
「女が張り合い出し、負けたら公爵の男としての面目が丸潰れだからだ!」

「…どうして君が急に公爵に親切にする?
だって…公爵の女性に迫られたら、君だって困るんだろう?!」

ギュンターはようやく、ローランデに振り向く。
「後からしゃしゃり出て来たお前目当ての赤毛女に、お前を取られたくないからに決まってるだろう!!!」

ローランデは一瞬呆け…馬は速度を落とす。
ギュンターは後ろに遅れ始めるローランデに振り向き、怒鳴る。
「また、薬を盛られて女に弄ばれたいのか?!」

「!」
ローランデは遮二無二馬を飛ばし、ギュンターに並走して叫んだ。

「どうして薬をまた、盛られると解ってる?!
私はもう、結婚してるのに!!!」

ギュンターは怒鳴り返した。
「愛人の座が残ってる!
子が出来れば愛人だろうが安泰だ!」

ローランデは、かっ!と怒る。
「もう結婚してるのに!
愛人なんて、持つ気はないぞ!」

「知らないのか!
他の地方大公では当たり前のことだ!

愛人がごろごろ居ないのは、『光の王』の血を引く西領地(シュテインザイン)の大公か、北領地[シェンダー・ラーデン]のお前の親父くらいだ!」

「だって!私にその気が無いのに!!!」

「無いのに子が出来て結婚する羽目に成ったのは、どこのどいつだ!!!」
咄嗟に叫び返し、沈黙が訪れて駆け続ける馬の駒音しかしなくて、ギュンターは振り返る。

ローランデは馬上で無言で、俯いていた。
ギュンターは自分の失言に舌打つと、速度を落としローランデの馬に並走した。

「…だって、事実だろう?」
そっと聞くと、ローランデは頷いた。

そして顔を上げる。
「つまり君は私の私生活を…これ以上の混乱から、救おうと思ったのか?」

ギュンターは後でしまった!と思ったがつい、怒鳴った。
「折角お前と二人っきりの滅多に無い道行きなのに!
変な女に邪魔されたくなかっただけだ!!!」

言った途端、言葉はもう喉へと戻せないと、ギュンターは痛感した。

ローランデはつん!とギュンターから顔を背け、振り向くと睨んだから。




 直に公爵が追いつき、叫ぶ。

「次の曲がり角を右へ!」
ギュンターとローランデは同時に振り向いたが、公爵の背後からは二台の馬車が、黒髪の美女と赤毛の美少女を乗せ、猛速で追い縋っていた。

赤毛の美少女は金切り声で叫んでいた。
「二人も乗ってる馬に絶対!
負けるんじゃないわよ!!!」

御者は必死で馬に鞭入れていた。

黒髪の美女は隣の馬車に後れを取るな!と御者に指示を出す。

その背後から、最後の成り行きを見たい野次馬が大勢、馬を飛ばして付いて来ていた。

ギュンターは咄嗟に馬の首を曲がり角の道へと向ける。
ローランデも鮮やかに角へ向きを変え、公爵はそれを見て背後から叫んだ。

「流石見事な手綱捌きだ!!!」
が、そう言う公爵も乗馬の名手で、ローズマリーを後ろに乗せて速度も落とさず、鮮やかに曲がり切る。

背後で二台の馬車が同時にカーブに突っ込み、曲がりきれずにそれぞれ右と左の路肩に、突っ込んで馬車は傾き、車輪を空回りさせた。



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