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帰り道 1
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恋の勝者 その後
(ギュンターとローランデ、帰りの道中)
デルアンネを遠く後ろに追いやり、隣にローランデを伴い晴れやかな気分が落ち着いた頃、ギュンターはその沈黙に気づく。
その時ようやくローランデの事が気になって、横で馬を走らせる恋敵から勝ち取った愛しい相手を伺い見た。
「…マリーエルと別れて、寂しいのか?」
ローランデは前を見ていたが、ふ…と珍しく気遣うような金髪美貌の野獣の表情に気づく。
「勿論、寂しいさ…だが………」
「だが?」
ギュンターに聞かれ、ローランデは吐息混じりに俯く。
そして、思い出した様に頬を赤らめ、ギュンターより顔を背けて呟いた。
「…デルアンネの前で二度も……。
あんな様を晒さなくて良かったんじゃないのか…?」
ギュンターは問い返した。
「あんな様………?」
ローランデは思い出すだけで真っ赤に成るらしく、ギュンターから顔を、背けたままだった。
ギュンターはその甘い出来事をローランデが恥じているのを感じ、落胆のため息と共にその言葉を吐き出した。
「…ああ…。
お前を抱いた事か」
そしてローランデに振り向く。
「…どうして、見物客の意見を気にする?
俺として…良くなかったなら文句は聞くが」
ローランデは瞬間、真っ赤な顔をし怒鳴ろうとして振り向き、がじっ。と見つめる紫の瞳のその美貌の男に、言い返そうと言葉に詰まった。
「良く…良い……………!」
ギュンターは首を傾げ、ローランデからの文句を、待っていた。
がローランデは感じすぎて意識が飛んだ事を思い返すと、とても…『良くなかった』とは言えなかった。
同じ男だったから、事情は良く、解った。
彼…ローランデだって、女性相手の時は感じさせる苦労を知っていた。
手ほどきの女性から、感じるツボは聞いていたが、どれだけ感じているのか。ちゃんとツボなのかも、毎度疑わしい。
結果、ロクすっぽ前技もせずにおざなりで挿入し、自分が果てて終わって相手が気絶した、試しも無い。
事が終わって、大して乱れもせず微笑みかける女性に
『良かった?』
…なんて、とても聞けなかった。
自分が“大公子息”だと言う肩書きが、モノを言ってるとしか思えない余所余所しい微笑みを、大抵彼女達は浮かべていたし、極力情事の内容には触れまい。と話題を毎度別の優雅な催し物やら…ローランデから期待できる、贈り物の話にすり替えたから。
手配してくれる父にはとても相談出来ず、父の部下の話の分かりそうな男に相談したら
「ご紹介の相手はどれも皆が経験豊富だから、貴方が未熟でも初々しい少年。と言うだけで免除されますよ」
と、慰めてくれた。
けど経験を増やす様に。と一度紹介された女性は始終彼に指示を与え、言われるまますればする程相手が勝手に乱れ、喘ぎまくって、ローランデは導かれるまま体が勝手に興奮し気持ち良くなって解き放ち、性の興奮と快感の醍醐味を少し覗き見た気分で、彼女との二回目を待ったが、その女性からは次は体よく断られた。
デルアンネの時は興奮状態に成って、酒も入っていたし薬を盛られてたのにも気づかず、自分も年頃なんだ。と納得し、固くなった股間に戸惑ったが、彼女は
『解ってるわ。いいのよ』
と言う、抗いがたい許容を示してくれて…殆ど自分のした事を、覚えていない程夢中で…事は終わってた。
ただ欲望を解き放った満足感と、応えてくれた彼女への感謝だけだった。
…そんな経験しか持ち合わせていなかったローランデは、じっ。と自分の技に対しての評価を伺う、経験豊富な年上の男に、駄目出しなんて出来やしない。
“確信犯なのか?”
ローランデはギュンターを見つめ返す。
首を傾げ、真剣に伺う表情はしてはいるものの、自分の技に自信たっぷりで
『あれだけやってまだ不満がどこかにあるのか?』
そんな“自分に不足がある筈がない”と腑に落ちない様子で問いかけるギュンターの視線を見つめ返し、言い返せずに更に顔を、真っ赤にした。
「…君は本来の男役だけど、私は違うんだ!
妻の前であんな…様を見せて、どうして平気でいられる?!」
ギュンターは吐息混じりに言った。
「…別に、思い切り感じて乱れてみせて
“君にこんな事が出来ないしギュンターの代わりには成れない”
とちゃんと、教えといてやればいいじゃないか。
どうして気持ちいい様を見せるのがそんなに恥ずかしいのか、理解出来ない」
ローランデはもう、手綱を握る手が、わなわな震った。
きっ!と顔を上げ、ギュンターを睨め付ける。
「じゃ君は他に誰か居ようが毎度お構いなしで、自分の欲望優先なのか?!」
ギュンターの、眉が寄った。
「ただ犯して相手の欲望を置き去りにしてるなら、その非難は受けるが!
一方的に、楽しんでないぞ!!!
ちゃんと気絶する程、感じさせてやったろう?!!!」
ローランデは、ぐっ。と喉が詰まるのを感じた。
が言った。
「私が言ってるのは、そこじゃない!」
「どこだ?」
ストレートに問い返されて、ローランデは俯く。
「…他人(ひと)が居ても君は毎度、平気なのか?
と聞いている」
ギュンターが即答した。
「平気な訳無いだろう?
亭主の前で妻は抱かない!
幾ら誘惑されようがな!!!
そんな事したら情事で無く、喧嘩をする羽目に成る。
幾ら俺でもそこ迄馬鹿じゃない!!!」
「けど妻の前で!
その夫とはしたじゃないか!!!」
ギュンターは眉間を寄せた。
「ちゃんと確認を取った。
残るかどうかの」
「だって挑発したろう?
相手はまだ16に成ったばかりの小娘なのに!!!」
「…だが部屋を出、剣を取って戻って俺を刺す危険は無かった。
結果最後迄無事終わったろう?!」
ローランデはもう…開いた口が塞がらなかった。
「………君の注意点は、そこか?」
ギュンターは、話の内容がくだらなさ過ぎるが、相手がローランデだから付き合わざるを得ない。と言うように諦め混じりに肩を竦めた。
「情事をしたいのに、決闘沙汰にすり替わって嬉しい筈が無い。
決闘がしたいなら、わざと挑発し目前でするが」
ローランデはやっぱり………もうどう言えばギュンターと会話が成立するのかが、解らなく成った。
だから不機嫌に、成って言った。
「私が、恥ずかしいんだと言ってる!」
ギュンターはやっぱり、がっかりした表情で呟く。
「失神する程良くても、恥ずかしいのか?」
ローランデは男相手に良くされて失神してしまった自分を、心から恥じた。
やっぱり真っ赤に成って、俯き囁く。
「…君は私も男だって事、忘れてないか…?」
ギュンターはようやく、ローランデが自分と男としての技量を比べ、劣ってる。と落ち込んでいると気づく。
「…別に、俺のやり用を真似ればいいじゃないか……。
お前も楽しめば、幾らでも俺から盗める」
ローランデはムキに成った。
「どう参考に成る?
だって私は女じゃないのに…。
感じるツボは違う筈だ。
そうだろう?第一………」
言いかけて、あんまりギュンターが真剣に自分を見つめるので、顔を逸らした。
「第一…?
言いかけてやめるな。
気になるだろう?」
ローランデは真っ赤に成って俯いて、ふくれっ面だった。
ギュンターはそんな彼が可愛くて、つい視線が吸い付くのを感じた。
「君が………それは経験豊富でその……上級者だし息つく間も無く攻めるから……感じすぎて参考にしてる暇も、無いじゃないか!」
ギュンターは思いっきりげっそりして、肩を落とした。
「…ツボを外し、良くなかった。
と言う文句は昔たくさん聞いたが……。
思い切り感じさせて文句を言われたのは、始めてだ」
ローランデはつい、そんなギュンターに振り向いた。
表情は変わらなかったが、全身からがっかりした気分と
“これ以上どうすればいいんだ?!!!”
と言う煮詰まった感情が伝わり、ローランデはつい、俯いた。
どういう訳だか、厚顔無恥なギュンターが自分の言った事で、落ち込んでる感じがして、罪悪感を覚えた。
(ギュンターとローランデ、帰りの道中)
デルアンネを遠く後ろに追いやり、隣にローランデを伴い晴れやかな気分が落ち着いた頃、ギュンターはその沈黙に気づく。
その時ようやくローランデの事が気になって、横で馬を走らせる恋敵から勝ち取った愛しい相手を伺い見た。
「…マリーエルと別れて、寂しいのか?」
ローランデは前を見ていたが、ふ…と珍しく気遣うような金髪美貌の野獣の表情に気づく。
「勿論、寂しいさ…だが………」
「だが?」
ギュンターに聞かれ、ローランデは吐息混じりに俯く。
そして、思い出した様に頬を赤らめ、ギュンターより顔を背けて呟いた。
「…デルアンネの前で二度も……。
あんな様を晒さなくて良かったんじゃないのか…?」
ギュンターは問い返した。
「あんな様………?」
ローランデは思い出すだけで真っ赤に成るらしく、ギュンターから顔を、背けたままだった。
ギュンターはその甘い出来事をローランデが恥じているのを感じ、落胆のため息と共にその言葉を吐き出した。
「…ああ…。
お前を抱いた事か」
そしてローランデに振り向く。
「…どうして、見物客の意見を気にする?
俺として…良くなかったなら文句は聞くが」
ローランデは瞬間、真っ赤な顔をし怒鳴ろうとして振り向き、がじっ。と見つめる紫の瞳のその美貌の男に、言い返そうと言葉に詰まった。
「良く…良い……………!」
ギュンターは首を傾げ、ローランデからの文句を、待っていた。
がローランデは感じすぎて意識が飛んだ事を思い返すと、とても…『良くなかった』とは言えなかった。
同じ男だったから、事情は良く、解った。
彼…ローランデだって、女性相手の時は感じさせる苦労を知っていた。
手ほどきの女性から、感じるツボは聞いていたが、どれだけ感じているのか。ちゃんとツボなのかも、毎度疑わしい。
結果、ロクすっぽ前技もせずにおざなりで挿入し、自分が果てて終わって相手が気絶した、試しも無い。
事が終わって、大して乱れもせず微笑みかける女性に
『良かった?』
…なんて、とても聞けなかった。
自分が“大公子息”だと言う肩書きが、モノを言ってるとしか思えない余所余所しい微笑みを、大抵彼女達は浮かべていたし、極力情事の内容には触れまい。と話題を毎度別の優雅な催し物やら…ローランデから期待できる、贈り物の話にすり替えたから。
手配してくれる父にはとても相談出来ず、父の部下の話の分かりそうな男に相談したら
「ご紹介の相手はどれも皆が経験豊富だから、貴方が未熟でも初々しい少年。と言うだけで免除されますよ」
と、慰めてくれた。
けど経験を増やす様に。と一度紹介された女性は始終彼に指示を与え、言われるまますればする程相手が勝手に乱れ、喘ぎまくって、ローランデは導かれるまま体が勝手に興奮し気持ち良くなって解き放ち、性の興奮と快感の醍醐味を少し覗き見た気分で、彼女との二回目を待ったが、その女性からは次は体よく断られた。
デルアンネの時は興奮状態に成って、酒も入っていたし薬を盛られてたのにも気づかず、自分も年頃なんだ。と納得し、固くなった股間に戸惑ったが、彼女は
『解ってるわ。いいのよ』
と言う、抗いがたい許容を示してくれて…殆ど自分のした事を、覚えていない程夢中で…事は終わってた。
ただ欲望を解き放った満足感と、応えてくれた彼女への感謝だけだった。
…そんな経験しか持ち合わせていなかったローランデは、じっ。と自分の技に対しての評価を伺う、経験豊富な年上の男に、駄目出しなんて出来やしない。
“確信犯なのか?”
ローランデはギュンターを見つめ返す。
首を傾げ、真剣に伺う表情はしてはいるものの、自分の技に自信たっぷりで
『あれだけやってまだ不満がどこかにあるのか?』
そんな“自分に不足がある筈がない”と腑に落ちない様子で問いかけるギュンターの視線を見つめ返し、言い返せずに更に顔を、真っ赤にした。
「…君は本来の男役だけど、私は違うんだ!
妻の前であんな…様を見せて、どうして平気でいられる?!」
ギュンターは吐息混じりに言った。
「…別に、思い切り感じて乱れてみせて
“君にこんな事が出来ないしギュンターの代わりには成れない”
とちゃんと、教えといてやればいいじゃないか。
どうして気持ちいい様を見せるのがそんなに恥ずかしいのか、理解出来ない」
ローランデはもう、手綱を握る手が、わなわな震った。
きっ!と顔を上げ、ギュンターを睨め付ける。
「じゃ君は他に誰か居ようが毎度お構いなしで、自分の欲望優先なのか?!」
ギュンターの、眉が寄った。
「ただ犯して相手の欲望を置き去りにしてるなら、その非難は受けるが!
一方的に、楽しんでないぞ!!!
ちゃんと気絶する程、感じさせてやったろう?!!!」
ローランデは、ぐっ。と喉が詰まるのを感じた。
が言った。
「私が言ってるのは、そこじゃない!」
「どこだ?」
ストレートに問い返されて、ローランデは俯く。
「…他人(ひと)が居ても君は毎度、平気なのか?
と聞いている」
ギュンターが即答した。
「平気な訳無いだろう?
亭主の前で妻は抱かない!
幾ら誘惑されようがな!!!
そんな事したら情事で無く、喧嘩をする羽目に成る。
幾ら俺でもそこ迄馬鹿じゃない!!!」
「けど妻の前で!
その夫とはしたじゃないか!!!」
ギュンターは眉間を寄せた。
「ちゃんと確認を取った。
残るかどうかの」
「だって挑発したろう?
相手はまだ16に成ったばかりの小娘なのに!!!」
「…だが部屋を出、剣を取って戻って俺を刺す危険は無かった。
結果最後迄無事終わったろう?!」
ローランデはもう…開いた口が塞がらなかった。
「………君の注意点は、そこか?」
ギュンターは、話の内容がくだらなさ過ぎるが、相手がローランデだから付き合わざるを得ない。と言うように諦め混じりに肩を竦めた。
「情事をしたいのに、決闘沙汰にすり替わって嬉しい筈が無い。
決闘がしたいなら、わざと挑発し目前でするが」
ローランデはやっぱり………もうどう言えばギュンターと会話が成立するのかが、解らなく成った。
だから不機嫌に、成って言った。
「私が、恥ずかしいんだと言ってる!」
ギュンターはやっぱり、がっかりした表情で呟く。
「失神する程良くても、恥ずかしいのか?」
ローランデは男相手に良くされて失神してしまった自分を、心から恥じた。
やっぱり真っ赤に成って、俯き囁く。
「…君は私も男だって事、忘れてないか…?」
ギュンターはようやく、ローランデが自分と男としての技量を比べ、劣ってる。と落ち込んでいると気づく。
「…別に、俺のやり用を真似ればいいじゃないか……。
お前も楽しめば、幾らでも俺から盗める」
ローランデはムキに成った。
「どう参考に成る?
だって私は女じゃないのに…。
感じるツボは違う筈だ。
そうだろう?第一………」
言いかけて、あんまりギュンターが真剣に自分を見つめるので、顔を逸らした。
「第一…?
言いかけてやめるな。
気になるだろう?」
ローランデは真っ赤に成って俯いて、ふくれっ面だった。
ギュンターはそんな彼が可愛くて、つい視線が吸い付くのを感じた。
「君が………それは経験豊富でその……上級者だし息つく間も無く攻めるから……感じすぎて参考にしてる暇も、無いじゃないか!」
ギュンターは思いっきりげっそりして、肩を落とした。
「…ツボを外し、良くなかった。
と言う文句は昔たくさん聞いたが……。
思い切り感じさせて文句を言われたのは、始めてだ」
ローランデはつい、そんなギュンターに振り向いた。
表情は変わらなかったが、全身からがっかりした気分と
“これ以上どうすればいいんだ?!!!”
と言う煮詰まった感情が伝わり、ローランデはつい、俯いた。
どういう訳だか、厚顔無恥なギュンターが自分の言った事で、落ち込んでる感じがして、罪悪感を覚えた。
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