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9 ギュンターの注進
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唇に湿り気と、つんと鼻を突くアルコールの香にローランデが目を開けると、やっぱり崇高に見えるギュンターの紫の瞳が自分を、覗き込んでいた。
どうして………。
いつも決まってこういう時、彼の顔は伝説の英雄や神話に出てくる若い神のように見えるんだろう……?
あんな……あんな事を平気で………。
がばっ!
ローランデがいきなり身を、起こした。
そこはローランデが使っていた客室の寝台の上で、ローランデはつい、ギュンターに尋ねる。
「…どうして、ここに…?」
横に座るギュンターは、瓶ごと酒を煽ると口の端を手の甲で拭い、つぶやく。
「失神したから、運んだんだ」
ローランデは暫く、呆然とした。
「…服は………」
着ていた。ギュンターは言った。
「まぁ……この場所を召使いに聞くのに、お前が素っ裸じゃ、な」
まずいだろう。と言い、ローランデは一瞬にして、デルアンネの事を思い出す。
「…デル…デ…デルアンネ……」
ローランデは慌てすぎてろれつが回らなかった。
「彼女の前ではどうして、まずく無いかって?」
ローランデは真っ赤に、成った。
いつも正気に戻るとそれは恥ずかしそうだったから、今回は死にたいくらい恥ずかしかったろう。きっと。
が、ギュンターはまた、瓶から酒を、煽った。
「だって、近衛に残りたいんだろう?」
ローランデがその意外な返答につい、からかわれてると思って赤くなったまま、つぶやく。
「それと、どういう関係がある」
「俺が熊のぬいぐるみなんかで無く、お前が卒業出来る幼児かどうか、彼女に見せないとな」
あんまり素っ気なくそう言われ、ローランデはやっぱりギュンターとは住んでいる世界が違うと改めて、感じた。
「…だからって!!!
あれは……必要無いだろう?!!」
真っ赤になりついそう怒鳴るが、ギュンターは素で怒鳴り返した。
「無い訳、無いだろう?!一番肝心な点だ!
お前だってあれで困って俺と、付き合ってるんだろう?」
ギュンターを、見るが真顔で、ローランデはつい、視線を落としささやく。
「じゃ…君は本気で、あの…あれで……」
ローランデがまた、思い出して真っ赤に、成る。
ギュンターはにべも無くつぶやいた。一応、労りも滲ませながら。
「いいからとっとと、先を言え」
「彼女が納得すると、思うのか?」
「諦めさせるには、ちょいと脅しも、要るが」
ローランデがそう言う、ギュンターを見つめた。
ギュンターはぶっきら棒につぶやく。
「なかなかの、戦士だからな。彼女は。
君を簡単に諦めるような女じゃ、無い」
ギュンターに言われ、ローランデは途端、不安そうに俯いた。
「…私の意思は一切、無視だ………」
ギュンターは、頷いた。
「俺は大層派手に遊んでるから、ああいうのには詳しい。
改めて言わせてもらうが、とんでも無い女に引っかかったな!」
ローランデは、俯ききった。
その様子につい、ギュンターが言葉を続ける。
「救いは………」
ローランデが咄嗟に顔を上げる。
「あるのか?!」
ギュンターは肩をすくめる。
「あばずれじゃない所だ。
誇り高い、俺と同じ野獣で、欲しい物を手にする為には手段を選ばない」
ローランデはじっと、見惚れる程素晴らしい美貌のギュンターを、見つめた。
「俺と、同じ………?
君は自分の事をそう、思ってるのか?」
「だって、そうだろう?」
だがそう言うギュンターはやっぱり、崇高な、若く美しい青年神のように見えた。
「どう同じだ…。君と、彼女と」
「お前からは同じに、見えないのか?」
ローランデは、俯いた。
伏せた青い瞳と、白い頬が本当に綺麗だと、ギュンターは思った。
ローランデの声は、掠れていた。
「…だって………君が私の言葉を聞かないのは寝室の中だけだ………」
ギュンターは、頷いた。
「あっちは女だからな。
この屋敷全部が彼女にとっての寝室だ。そして子供を産み、権利があると思ってる」
「何の、権利だ?」
子供のように不安げにそう問うローランデを、ギュンターはその紫の瞳で真っ直ぐ見つめた。
「お前を、所有する、権利だ」
「…私は彼女にとって、物なのか……?」
「まあ、似たようなもんだろう。
お前のエスコートで外に出て見ろ。
彼女は今まで以上に注目され、羨ましがられて彼女の誇りは大いに満足する。
しかも自分のような女を満足させる事を誇りに思えと、お前に言う気だ。
女王様のつもりなんだろう?」
「取り巻きが、大勢居たと聞くからな……」
ローランデの、しょげた様子のその可愛らしさについ、ギュンターがぼそりと言った。
「お前を、奪い取っていいとお前に言われてる以上、俺はそうするが」
ローランデは顔を上げてギュンターを、見た。
が直ぐ、思い立って真っ赤に成る。
「…まさか彼女がうんと言う迄、あれを、し続ける気じゃないだろうな?」
ギュンターは肩を、すくめる。
「残って見物すると決めたのは、あっちだ」
ギュンターは頬を染めるローランデを、少し覗き込むように続ける。
「…つまり彼女には、それくらいの、覚悟があるんだろう?」
ギュンターの言葉が終わらない内にローランデはそのとんでもない事を平気でする無神経な美貌の野獣を、真っ直ぐ見つめ返し怒鳴った。
「私には、無かった!」
ギュンターは、顔を下げて吐息を付いた。
…そろそろローランデの苦情を聞く覚悟が要る。
が、ローランデは真っ赤になって狼狽えきった。
「もう、どういう顔をして彼女に会っていいのかさえ、解らない!」
ギュンターは気の毒そうに彼を覗き込んだ。
「あっちは顔色も、変えないぞ?」
ローランデはその言葉に呆然と顔を、上げる。
ギュンターは真顔で、ローランデはギュンターの、少し気の毒げな真剣な表情を見つめたままつぶやく。
「…だって、年下の少女だ」
「中味は成熟した野獣だ」
ローランデはそう言うギュンターを、呆然と見つめ続けた。
どうして………。
いつも決まってこういう時、彼の顔は伝説の英雄や神話に出てくる若い神のように見えるんだろう……?
あんな……あんな事を平気で………。
がばっ!
ローランデがいきなり身を、起こした。
そこはローランデが使っていた客室の寝台の上で、ローランデはつい、ギュンターに尋ねる。
「…どうして、ここに…?」
横に座るギュンターは、瓶ごと酒を煽ると口の端を手の甲で拭い、つぶやく。
「失神したから、運んだんだ」
ローランデは暫く、呆然とした。
「…服は………」
着ていた。ギュンターは言った。
「まぁ……この場所を召使いに聞くのに、お前が素っ裸じゃ、な」
まずいだろう。と言い、ローランデは一瞬にして、デルアンネの事を思い出す。
「…デル…デ…デルアンネ……」
ローランデは慌てすぎてろれつが回らなかった。
「彼女の前ではどうして、まずく無いかって?」
ローランデは真っ赤に、成った。
いつも正気に戻るとそれは恥ずかしそうだったから、今回は死にたいくらい恥ずかしかったろう。きっと。
が、ギュンターはまた、瓶から酒を、煽った。
「だって、近衛に残りたいんだろう?」
ローランデがその意外な返答につい、からかわれてると思って赤くなったまま、つぶやく。
「それと、どういう関係がある」
「俺が熊のぬいぐるみなんかで無く、お前が卒業出来る幼児かどうか、彼女に見せないとな」
あんまり素っ気なくそう言われ、ローランデはやっぱりギュンターとは住んでいる世界が違うと改めて、感じた。
「…だからって!!!
あれは……必要無いだろう?!!」
真っ赤になりついそう怒鳴るが、ギュンターは素で怒鳴り返した。
「無い訳、無いだろう?!一番肝心な点だ!
お前だってあれで困って俺と、付き合ってるんだろう?」
ギュンターを、見るが真顔で、ローランデはつい、視線を落としささやく。
「じゃ…君は本気で、あの…あれで……」
ローランデがまた、思い出して真っ赤に、成る。
ギュンターはにべも無くつぶやいた。一応、労りも滲ませながら。
「いいからとっとと、先を言え」
「彼女が納得すると、思うのか?」
「諦めさせるには、ちょいと脅しも、要るが」
ローランデがそう言う、ギュンターを見つめた。
ギュンターはぶっきら棒につぶやく。
「なかなかの、戦士だからな。彼女は。
君を簡単に諦めるような女じゃ、無い」
ギュンターに言われ、ローランデは途端、不安そうに俯いた。
「…私の意思は一切、無視だ………」
ギュンターは、頷いた。
「俺は大層派手に遊んでるから、ああいうのには詳しい。
改めて言わせてもらうが、とんでも無い女に引っかかったな!」
ローランデは、俯ききった。
その様子につい、ギュンターが言葉を続ける。
「救いは………」
ローランデが咄嗟に顔を上げる。
「あるのか?!」
ギュンターは肩をすくめる。
「あばずれじゃない所だ。
誇り高い、俺と同じ野獣で、欲しい物を手にする為には手段を選ばない」
ローランデはじっと、見惚れる程素晴らしい美貌のギュンターを、見つめた。
「俺と、同じ………?
君は自分の事をそう、思ってるのか?」
「だって、そうだろう?」
だがそう言うギュンターはやっぱり、崇高な、若く美しい青年神のように見えた。
「どう同じだ…。君と、彼女と」
「お前からは同じに、見えないのか?」
ローランデは、俯いた。
伏せた青い瞳と、白い頬が本当に綺麗だと、ギュンターは思った。
ローランデの声は、掠れていた。
「…だって………君が私の言葉を聞かないのは寝室の中だけだ………」
ギュンターは、頷いた。
「あっちは女だからな。
この屋敷全部が彼女にとっての寝室だ。そして子供を産み、権利があると思ってる」
「何の、権利だ?」
子供のように不安げにそう問うローランデを、ギュンターはその紫の瞳で真っ直ぐ見つめた。
「お前を、所有する、権利だ」
「…私は彼女にとって、物なのか……?」
「まあ、似たようなもんだろう。
お前のエスコートで外に出て見ろ。
彼女は今まで以上に注目され、羨ましがられて彼女の誇りは大いに満足する。
しかも自分のような女を満足させる事を誇りに思えと、お前に言う気だ。
女王様のつもりなんだろう?」
「取り巻きが、大勢居たと聞くからな……」
ローランデの、しょげた様子のその可愛らしさについ、ギュンターがぼそりと言った。
「お前を、奪い取っていいとお前に言われてる以上、俺はそうするが」
ローランデは顔を上げてギュンターを、見た。
が直ぐ、思い立って真っ赤に成る。
「…まさか彼女がうんと言う迄、あれを、し続ける気じゃないだろうな?」
ギュンターは肩を、すくめる。
「残って見物すると決めたのは、あっちだ」
ギュンターは頬を染めるローランデを、少し覗き込むように続ける。
「…つまり彼女には、それくらいの、覚悟があるんだろう?」
ギュンターの言葉が終わらない内にローランデはそのとんでもない事を平気でする無神経な美貌の野獣を、真っ直ぐ見つめ返し怒鳴った。
「私には、無かった!」
ギュンターは、顔を下げて吐息を付いた。
…そろそろローランデの苦情を聞く覚悟が要る。
が、ローランデは真っ赤になって狼狽えきった。
「もう、どういう顔をして彼女に会っていいのかさえ、解らない!」
ギュンターは気の毒そうに彼を覗き込んだ。
「あっちは顔色も、変えないぞ?」
ローランデはその言葉に呆然と顔を、上げる。
ギュンターは真顔で、ローランデはギュンターの、少し気の毒げな真剣な表情を見つめたままつぶやく。
「…だって、年下の少女だ」
「中味は成熟した野獣だ」
ローランデはそう言うギュンターを、呆然と見つめ続けた。
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