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困窮するローフィス
しおりを挟むローフィスは出来るだけシェイルを見ないよう、衣服を脱いだ。
そしてそのまま浴槽に向かう。
端に金の蔦の手すりと、浴槽に入る三段程の階段があり、手すりに掴まり、降りて行く。
シェイルはローフィスの…ディアヴォロスに比べると細身に見える体付きが…けれど引き締まりきって若々しくって、見惚れた。
脱いで…そっとローフィスの後を辿り、金の蔦の手すりに掴まる。
ローフィスが、振り向く。
とても若々しい…ゴツさの無い、すんなりした頬と顎…。
けれどその中の、意志の強いくっきりとした青い瞳が、湯気でぼやけて優しく見える。
シェイルはローフィスの横に寄る。
ローフィスは肩まで浸からず、背を浴槽にもたせかけていたから、そっとローフィスの胸元に身を寄せて見上げる。
ローフィスはシェイルの長い銀の髪が、腕の辺りで湯面に散る姿を見つめた。
エメラルドの綺羅綺羅した瞳が、欲するように見つめて来る。
そっと胸に手を添えられ、ローフィスは覚悟はしてたけど…やはりぐっ!と内から湧き上がる熱を感じ、それが…灼熱に感じて、俯く。
“その熱さは…それだけシェイルが今まで、自分の当たり前に発する筈だった熱を、抑えつけられ凍らせられていたせいだ…。
君とディアヴォロスが、凍っていたシェイルの無意識の感情を溶かした。
だから今君は、シェイルの熱を感じ、同調し…。
その熱さを、直に感じ取っている"
ワーキュラスだとは…知っていた。
状況を理解する事で、自分の性急な、抑制不可能な欲望を制御しやすいように…忠告してくれているんだと。
分かっては、いたけれど…。
「(…でも普通、こういう時に話しかけられたら
“余計なお世話”
とか“下世話”
とか、“邪魔者”
って…なるんだけどな。
…仕方無いか。
相手は神で、光竜だしな…)」
ローフィスは胸にシェイルがぴったり顔を寄せて頬を擦り付けてくるから、もう無理だった。
正直、この状態で風呂は熱すぎた。
なのでローフィスはシェイルの背に手を添え、立ち上がって上半身を湯から出す。
シェイルは気づいて顔を上げ、そして…。
顔を下げて湯に沈むローフィスの股間の、性器に手を添え、持ち上げて湯面から出る先端を、口に含む。
「…っ!
だからシェ…イル!
そういうのは、娼婦がやるやり方で…」
シェイルが、びっくりして顔を上げる。
「女将さん…娼婦だったの?!」
ローフィスは自分の初体験の女性の事を、シェイルが今だ…脳裏に刻んでるのに、内心舌打つ。
よっぽど…嫉妬して、意識しまくって、対抗意識を持ってるようだ。
ローフィスは敏感な先端をシェイルの口に含まれた余韻で、口がきけなくなってるのに、シェイルはまだ囁く。
「それともローフィス…娼婦…買ったことあるの?」
「…シェイルそれ…付き合ってる女が言う、疑問や文句…」
シェイルは眉間を寄せる。
「…だって…僕のライバルは女性だもの…。
ローフィス、本当は僕より…女の人がいいんだよね…?」
そう言って、顔を下げた後。
また上げて言う。
「…だから…僕、ローフィスが気持ちいいこと、うんとして…僕としたい…って、思って欲しい」
そうしてそっと…手で性器に、優しく触れる。
「…そう…して、あんまり直接的に刺激されず、優しくされると嬉しい」
ローフィスがそう言うと、シェイルはにっこり笑い、ローフィスの性器を愛おしそうに両手で触れて包んだ。
また、脳裏にワーキュラスの声が響く。
“シェイルは、君の欲望が制御できない事や、義兄の立場を捨てる事への躊躇いを。
君が、女性の方が少年の体をした自分より好きなのだと、勘違いしてるから。
ディアヴォロスの時より、とても積極的だ“
ローフィスは思わず頭の中でワーキュラスに尋ねた。
“それは俺に、シェイルへ
『誰よりもお前が大切で、死ぬ程好きで惚れてる』
と、告れって事か?!”
ワーキュラスは暫し躊躇い、囁く。
“それを言うと、シェイルは安心しきって恋人のように振る舞う。
それが君にとって、プラスになるかマイナスになるか。
判断するのは、君だ”
“…肝心なことは返答、してくれないんだな?!”
“君は神を勘違いしてる。
神とは、道を示す者。
どうするか最終的に決めるのは、君自身。
むしろ
『こうしろ、ああしろ』
と、命ずる者には注意しろ。
それは神の名を借り、君を利用する支配者だ”
“…………宗教論か?!
それはもっと、落ち着いてる時に…聞きたい”
なんとか…シェイルに優しく触れられてる・だけだったから…。
ローフィスはまだ、理性が僅かに残ってて、そう言えた。
ワーキュラスはローフィスがとっくに勃ってて、もう抜き差しならない所まで来てるのに、ようやく気づく。
“失礼。
人間は性的に興奮すると、余裕が無くなるんだったな。
ディアヴォロスなら私の光で包めるから、相手もぼおっとして誤魔化せるし、ディアヴォロス自身も少しは、落ち着くんだが…”
“それは俺に対しては、出来ないと!
そういう事なんだな?!
で?!
ディアヴォロスに頼まれて、俺の面倒見てるのか?!”
“ディアヴォロスは今、忙殺されてる。
でも心の中でとても、君とシェイルを心配してるから…”
つい余裕が無いので、ローフィスは頭の中で神を怒鳴りつけた。
“…俺、ってよか、ディアヴォロスの為か?!!!!”
ワーキュラスは、頷いた気がした。
“…不満か?”
ローフィスは頭の中で、泣き言を呟いた。
“ディアヴォロスみたいに光で包んでくれるとありがたいが…出来ないんだろう?”
“加減が分からないから。
迂闊に試すと…光の量を、調節出来ない”
その時、神聖騎士が慌てて心話に介入する。
“ワーキュラス殿の光は、我々『光の民』ですら、濃密で強烈ですから!
人間は迂闊に、そんな事頼んだりしてはいけません!
良く通じてるディアヴォロス殿ですら、光が少し強いと、お体に障ります。
ワーキュラス殿は、巨大。
微妙な力加減は、大変神経を使います。
貴方は蟻の触覚に付いた埃を、払えますか?”
ローフィスは神聖騎士の慌てた言葉で、一気に熱が冷めるのを感じた。
“…つまり…俺を光で包むのは…俺が蟻の触覚の、埃を払うのと同等の困難だと…?”
今度は神聖騎士が、頷いて言った。
“貴方が蟻なら…手加減を間違えられれば、潰されてしまいます”
ローフィスはそれを聞いて、自分がとんでもない願い事を、ワーキュラスにしたのだと。
ようやく理解出来て、ぞっと総毛立った。
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