若き騎士達の危険な日常

あーす。

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アドラフレンのコテージの豪勢な夕食

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 ローフィスはシェイルと…まったりとしたキスをし、シェイルの可愛らしい唇を味わう。

けど突然。
このコテージには、緊急お助けのオーガスタスも。
牽制するディアヴォロスもいないのだと思い出し、思いっきり、狼狽えた。

けどその時。
頭の中で、声がする。

“父親と会った後。
シェイルの心の中は幼児期のトラウマが表面化しやすい。
だから君を求める。
だが君が無理だと思うなら…”

ローフィスは直感で、それがワーキュラスだと感じた。

“俺がヤバくなったら、ストップかけてくれるか?!”

そう勢い込んで尋ねる。
ものの、ワーキュラスは暫し無言。

暫くして、ワーキュラスの声が脳裏に響いた。

“…ディアヴォロスを通じて。
やっと私には君が、分かる。
ディアヴォロスの状態は、常に一緒に居るから把握しているが。
君と私は直接繋がってる訳では無いから、君の場合、どういう状態の時止めれば良いのか。
タイミングが、まるで分からない。
判断材料が、少なすぎて。

状況は分かっているから、事前に警告だけは、与えられるが”

ローフィスは、顔を下げる。
「(言われてみれば確かに…。
俺とは、ツーカーじゃないもんな…)」

けれどシェイルから唇を離し、そう考えてると、ノックの音。

ローフィスは振り向いて、告げる。
「どうぞ!」

腕を握ってたシェイルの手が、きつく握られたけど。
召使いは
「失礼します」
と言ってワゴンを押して、入って来る。

少人数用の、グレーがかったピンクのビロウドの、洒落たソファの前に置かれた、象牙色のテーブルの上に、料理が並べられ始め…。
手の込んだ盛り付けの、ご馳走の数々に、ローフィスは目を見開いた。

「(…アドラフレン…いっつもこんなご馳走が常食か?
流石、宮廷貴公子…)」

シェイルはローフィスを睨む。

召使いが
「給仕を致しますか?」
と聞くので、ローフィスは首を横に振った。

召使いは、一礼して部屋を出て行った。

シェイルは背後に振り向いてるローフィスに、思わず叫ぶ。
「僕より…ご馳走がいいの?!」

ローフィスは眉下げて囁く。
「腹ペコで力が出ない…」

シェイルはそんな、降参するようなローフィスの表情を見、俯いて囁く。
「…ごめん…」

ローフィスはシェイルの肩を抱いて背を押し、ソファへと導く。

「入らないか?」
シェイルは、けど呟く。
「…あれ?
お腹、わりと減ってるかも…」

ローフィスはソファにかける。
シェイルも横にかけた。
そして、ローフィスが早速、ナイフとフォークを取り上げるのに習って、自分もナイフとフォークを手に取った。

ローフィスはさっと、目前の大皿に盛られたローストチキンを切り分け、シェイルの皿と自分の皿に器用に盛り、フォークで刺すと、さっさと頬張る。

「『光の民』があれだけ長身なのは。
光の結界の中に居ると、体の細胞が活性化して、体が普段より軽くなって凄く動けて。
その分、腹も直ぐ減って、いっぱい食べるからだ。
覚えて無いか?
今日行った東の聖地の『光の里』で育つ農作物は、他よりうんと成長が良くて。
りんごも桃も、凄くデカい」

シェイルはうんと小さな頃、ディラフィスがお土産で桃を持って帰った時のことを、思い出した。

「…凄く、大きいのに…凄く甘くて美味しかった?」

ローフィスはまた、さっさとソースのかかった柔らかな肉を切り分け、シェイルと自分の皿に盛る。
ずっと手は素早く動き、サラダやポテトとかを、シェイルと自分の皿に次々、乗せて行き、その間も食べ物を口に運んでた。

「…だから、今日の露天のパンも、普通よりデカかったけど。
小麦も育ちが良いから。
種は同じでも、出来る量が、『光の里』じゃ倍量で。
更に味も、凄く濃縮されてて美味い。
あ、俺達が今日歩き回った場所が『光の里』って…知ってたっけ?」

シェイルが首を横に振る。
「…ローフィスが瀕死の大怪我した時来たけど…。
ローフィス、死なないか心配で。
誰かが何言ってたかなんて、全然耳に入ってこなかった」

ローフィスは同年の、体のデカい乱暴者に掴まって、背骨折ったガキの頃を思い出し、顔を下げた。

激痛で治療師にも首を横に振られ、ディラフィスは自分を荷馬車に乗せ、ここへ駆け込んだ…。
それで、麻痺も残らず不具にもならず。
更にあの世にも旅立たず。

今、ここにこうしていられる…。

『光の里』に来た途端、激痛が引いて。
シェイルはずっと付きっきりで…夢見心地でシェイルが天使に見え、天国に来たのかと思った…。

「…住民がいるのが、『光の里』。
丘の神聖神殿を含めて、東の聖地。
里ではみんな、作物育ててるから。
余所で買う必要も無い。
しかも作物は良く育つのに栄養満点で、凄く美味い。
自然と住民みんな、大食いになる」

シェイルはフォークの手を止め、頷く。
「…だからみんな…凄く、デカいの?」

ローフィスはまだ手を動かし、料理を次々切り分け、皿に乗せてシェイルに食べるよう促しながら、頷く。

シェイルもフォークに肉を刺して、口に運びながら尋ねる。
「じゃ…ベンジャルナンも…次に会ったら…」
「多分、あっという間にデカくなって、直ぐ俺達の身長を追い越す」

シェイルはお肉を頬張って尋ねる。
「…僕…も、あそこに居たら…」

ローフィスは、シェイルをふと見る。
「ぎりぎり、まだ成長期だから。
もう少し、背は伸びるかもしれないな。
が、元々骨格が小さいとかの場合は…さほど伸びない」

シェイルは自分の、華奢な腕を見た。

「…そうなんだ…」

そしてもぐもぐ口の中で肉を噛みながら、尋ねた。
「ローランデも…僕は食が細いから。
あんまり大きくならないだろうって。
けど…僕がすっごく、筋肉ムキムキになったら…ローフィス僕の事、嫌いになる?」

ローフィスは今度は魚の蒸し煮を切り分けてシェイルと自分の皿に盛りながら、呻く。

「嫌いってか…。
俺より背も高くなったら、男として焦るかな…」

シェイルは、顔を上げてローフィスを見る。

ローフィスはまだ忙しく、皿の料理を頬張ったかと思うと、また大皿から料理をナイフとフォークで器用に挟んで、自分の皿に盛ってた。

「ローフィスより…背が高くなったら?」

ローフィスは頷く。
「親父だって、186はあるから。
俺も多分それっくらいまでは伸びるだろうと。
あいつ、言ってたけどさ。
今だって、俺、180はある。
一般の場所じゃ、高い方なのに『教練キャゼ』だと…」

シェイルは顔を下げた。
「小柄?」
「いや。今はもう、やっと中ぐらい。
が、オーガスタスに集う悪友の中じゃ…一番チビなんだぜ?」

そう言って、頬いっぱいに料理を口に入れ、もぐもぐさせてる。

「…僕…そんなに伸びないかな?」
「多分な」
「…でも、横に伸びて、太ったら?」

ローフィスは目を見開いて、顔を上げる。
「…そしたらうんと安心で、毎度の心配事が無くなる。
お前、ちょっとの事で直ぐ食べなくなるから。
一度くらい、ばくばく食べるとこ、見てみたい」

シェイルは顔を下げた。
「…思い出した。
ディングレーがどーーして、王族。
でピンとこないのか」

ローフィスは、ぷっ。と吹き出す。
「あいつ、俺達ンとこ来ると。
すっげえ下品に食うよな?」

シェイルは頷く。
「ローフィスの方が、マシなぐらい…。
飢えた犬みたいに、がっついてるよね?」

ローフィスは食べながら、頷く。
「自宅じゃ上品に食わないと、執事に嫌味言われて食い物の味が、分からなくなると言ってたから。
…けどあんなにがっついたら…味、分かってんのか?
って、思うよな?」

シェイルは黙して、頷いた。

その時、ディングレーも大貴族らと、一緒に夕食を取っていた。
が、突然の悪寒に、周囲をキョロ。
と見回す。

テーブルの皆が、ちょっと情けないディングレーの怖気おぞける様子を見て、びっくりして目を見開くので。

ディングレーは慌てて背筋伸ばし、威厳をつくろってフォークを、取り上げた。



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